あらすじ
江戸の盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられている、「鬼平」こと火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵。
火付盗賊改方とは江戸の特別警察とでもいうべき組織。その長官を務める旗本の平蔵は、いまでこそ人あたりもよく笑顔を絶やさないが、若い頃は「本所の銕(てつ)」と呼ばれ、無頼の者からも恐れられた乱暴者だった。「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」と口にしながら、人情の機微に通じた鬼平が悪を退治する時代小説の金字塔。
中村吉右衛門が鬼平を演じたテレビ版をはじめ、映画、舞台、マンガと様々な形で愛されてきたが、2017年1月からはアニメ「鬼平 ONIHEI」が放送され、大きな話題になった。
2017年は池波正太郎の「鬼平」誕生50周年。これを記念して人気絶大のロングセラー「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、ふりがなを増やし、読みやすくなった決定版で順次、刊行する。
第2巻は、鬼平の命を執拗に狙う「蛇(くちなわ)の平十郎」一味と対決した「蛇の眼」、平蔵が「おれとしたことが、あのときほど辛く苦しかったことはない」と述懐した強敵が登場する「妖盗葵小僧」ほか、「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」を収録。
感情タグBEST3
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①蛇の目→冴える勘働き
②谷中いろは茶屋→兎忠登場
③女掏摸お富→習慣は性格になる
④妖盗葵小僧→辛抱、機を待つ
⑤密偵→佐嶋の嫌な役回り
⑥お雪の乳房→兎の奇跡II
⑦埋蔵金千両→ホッコリ話
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独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。
鬼平犯科帳の面白さのひとつに、登場人物のバラエティさがある。密偵たちや火盗改方の与力・同心たちとこれまた個性の強い盗賊たち。そして彼ら全てを包み込む平蔵の人間力の壮大さが素晴らしい。
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「鬼平犯科帳2」池波正太郎、文春文庫。連載は1967-1989くらいのシリーズで、第二巻なので恐らく初出は1968あたりでは。
舞台は1780年代~1790年代(史実的に長谷川平蔵が火付盗賊改をしていた時代)。実在した長谷川平蔵を主人公にして、ほぼほぼ一話完結で貫かれた連作時代小説。長寿人気シリーズになったのは、各話各話で魅力的なゲスト(多くの場合、そのエピソードの"主演格"。多くの場合が犯罪者)が彩る人間模様ですね。全作通して長谷川平蔵という人間の内面を描く訳では全くありません。
池波正太郎ここにあり、という節回しで、人情味あり、人のどうしようもない悪い面や怠惰な面を描く"業"の味わいに満ち溢れ、お色気と江戸グルメに貫かれています。
こういうのはすっかり忘れてたりするので、長い人生二度読み三度読みが楽しめる訳ですが…。以下のあたりは印象に残っています。
▼過去の悪行から脅されて掏摸を働く「女掏摸お富」
▼平蔵の部下・忠吾のすっとこどっこいな数奇を描く「お雪の乳房」
▼志ん朝の朗読でも知っている「埋蔵金千両」。余命ないと思い込んだ元盗賊が遺産を愛人に渡す気になったが病状が持ち直してしまい…。
第二巻は収録内容は以下。
蛇の眼
谷中・いろは茶屋
女掏摸お富
妖盗葵小僧
密偵
お雪の乳房
埋蔵金千両
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池波正太郎 著「鬼平犯科帳 2」、2017.1発行。7話。第4話妖盗葵小僧、第6話お雪の乳房、第7話埋蔵金千両が面白かったです。特に、埋蔵金千両が秀逸でした!
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「一の悪のために十の善がほろびることは見逃せぬ」
「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」
……と、大江戸の悪党をガンガン始末しまくる鬼の平蔵さんとその仲間たち。
この巻に出てきた『妖盗葵小僧』は、今の時代だったら、こんな解決はできないと思えるお話でした。
顔も性格も悪くて女性にモテない大馬鹿野郎が、美女のいる良家ばかりを狙って、その女性たちをキズモノにしていく。
しかも、旦那さんや親の目の前で。
それを正統なルートで裁くとなると、被害者である彼女たちがまた世間という魔物によって更なる被害を受けてしまう。
それを苦に自殺を図る夫婦も出ちゃった。
性根の腐ったコンプレックスの塊オトコは、捕まった途端、今まで自分が犯してきた女性たちの名前をぺらぺらと話し、事件を裁く過程で被害を隠してきた彼女たちを公儀が調査することで、わざと再び彼女たちを傷つけようとした。
それに気づいた鬼平さんは、さくっとダメくず男をその日のうちに殺しちゃったんだよね。
で、上には余罪を一切報告しなかった。
これ、今の司法制度じゃできないよね。
なんか、まさに「一の悪のために十の善がほろびることは見逃せぬ」だよね。
犯罪はキレイごとじゃないからね。
頭でっかちすぎてもダメだよね。
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鬼平の世界では、男は欲深で女好き、女も妖艶で色好みだ。人間の欲望を肯定し、その中で人生の機微を味わう。「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「お雪の乳房」などを収録。
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第二巻
「蛇の眼」蛇の平十郎は平蔵と蕎麦屋で顔を合わせた。
押し込む日蛇一味の福太郎が恋人を生かした。
その御蔭で小田原近くで捕縛。
それまでの経緯は直前で捕まえた彦の市情報。
「谷中・いろは茶屋」
木村忠吾(平蔵部下)が惚れた妓。
実は「川越さん」と呼ばれる墓火の秀五郎。
気弱な忠五は うさぎ とも呼ばれるほど。
忠五は盗みをした秀五郎の現行犯として見咎め、
平蔵に伝え、秀五郎は火炙りに。
「女掏摸お富」
巣鴨に住む従兄弟仙右衛門と王子権現様へ。
卯吉とお富という夫婦が営む店。
スリの霞の定五郎が捨て子のお富を広い養女に。
養父が亡くなり一人足抜けをしたお富。
しかし居場所がバレて強請られて。
平蔵にお縄になるお富。七五三造捕縛。
再犯をして平蔵に捕まるお富。
「妖盗葵小僧」
「鶴や」にて、二人の男が話し込む。
粂八は事の顛末を平蔵に話す。
押し込み強盗、内儀を犯される。
こんな事件が立て続けに起こる。
心中する夫婦は多い。
口真似をして門を開けさせる。葵の紋が入った着物。
ついに付け鼻をして、化ける男を捕らえる。
白状をしたが、届け出を出してない被害者も多い。
妻が犯されて公表出来ないでいる。
だから。鬼平はその晩首をはねた。手柄は粂八に。
「密偵」 いぬ と読ませる。
「ぬのや」の弥一、縄抜けの源七が江戸に居ることを知らされる。
知らせたのは乙坂の庄五郎。
弥一は錠前外しの仕事を頼まれて。
女房に黙って働くから「浮気」を勘ぐられて。
錠を作って裏切られて、死んでしまう。
押し込む前に捕縛は出来たが、弥一は少なかった。
「お雪の乳房」
うさぎの忠五、手を出したのは元怪盗の娘。
鈴鹿の又兵衛は、思案する。
忠五は鬼平に相談。
粂八、彦十と吉松が張り付き見張りをする。
その甲斐あって全員を捕縛。
忠五はお雪を諦めたが、生娘のおっぱいは忘れられない様子…
「埋蔵金千両」
病床の老人万右衛門は死を感じていた。
一緒に住むおけいに昔は、小金井の万五郎という大泥棒だったと打ち明ける。
おけいは隠した金を掘り返しに行く。
医者の桃庵が中村宗仙という指圧の名人を紹介。
万右衛門は宗仙によりみるみる回復する。
治るなら、50両でもポンと出すという事を知った平蔵に目をつけられる。
ある程度回復した万右衛門、自ら掘り返しに。
しかしおけいの方が早く、それを知って死ぬ。
平蔵はおけいを捕らえて、軽い刑に処す。
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内容(「BOOK」データベースより)
うまいと評判の蕎麦屋“さなだや”で、貝柱のかき揚げをやりはじめた平蔵だが、店を出た先客がどうも「気に入らぬ」と…。独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。
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一巻からの連続性があるのは世界観が造られていく上では興味深い。また往時の江戸の街並みが丁寧に描かれている点が物語の世界観の構築に寄与している。
人間模様としては、一巻の方が面白かった。
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鬼平シリーズ第二作。
(各話の結末にも触れているので読みたくない方は飛ばしてください)
木村忠吾登場。ドラマとは少し違って惚れっぽいというか、すぐにのめり込むのだが飽きやすい。う~ん、これじゃいつまでも結婚は出来ないな。
知らずに盗賊の娘と恋仲になってしまった「お雪の乳房」など、ドラマと違って『お雪さんそのものが好きだったんじゃなくて、そっち?』とガッカリしたし。これでは女性層には受けないだろうとドラマでは結末を変えたのだろう。
しかし「谷中・いろは茶屋」ではそののめり込み癖が思わぬ活躍に繋がる。本来デスクワーク専門で捕物、ましてや剣術などからっきしの忠吾だが、こうして見るとやはり火盗改メ同心なんだなと納得する。
そしてそんな忠吾を厳しくも甘やかす鬼平。彼もまた若き頃は数々のヤンチャをしていたらしいから彼の気持ちも分かるのだろう。
鬼平といえば数々の密偵(いぬ)が登場するのだが、その密偵たちの活躍だけでなく、それぞれのドラマや人生模様が描かれるのもシリーズの魅力。
「密偵」に登場する弥市。彼もまたかつては大泥棒の元で数々の悪行を繰り返してきたものの、同心・佐嶋に見いだされ密偵としてかつての同業者たちを捕縛するための情報を伝える役目をしている。
だがそのお役目は妻のおふくにすら言ってはいけない危険なこと。ましてやかつての仲間の生き残りが自分を狙っていると聞いて緊張感も最高潮。密偵としての役目と自分の命を狙うかつての仲間との間で揺れ動く弥市の結末は、過去の業を切れない密偵の厳しさを感じた。
だがそれでも『悪を知らぬものが悪を取り締まれるか』という鬼平の意志はブレない。
悪を知り悪に染まること悪に毒されることの恐ろしさを知っている者、そこから這い出そうとする者だからこそ出来ることがある。
純粋培養の者、正義感の塊だけの者では出来ない解決法がある。
「妖盗葵小僧」などはその最たるものだろう。本来なら事細かにその悪行を書類に残した上で裁くのだろうが、現代で言うセカンドレイプを危惧した鬼平は何も残さずその場で犯人の首を刎ねてしまう。
それが何よりも被害者の心の傷を最小限に抑える術であり、犯人の歪んだ悦びを叩き潰す何よりの罰だと判断したからだ。
現代ならこんな乱暴な裁判はないのだが、それが良いかどうかは別としてこれが鬼平流ということだろう。
また「女掏摸お富」では、過去と決別するために再び掏摸を繰り返すお富を見逃してやろうとする鬼平だったが、お富がそのうちに再び掏摸の快感に絡め取られようとしているのを見るや厳しい態度に出る(これもドラマでは少し結末が違う)。
いたたまれず悪行を繰り返しているのなら止められるが、悪行の快感に掴まってしまえば人はどこまでも堕ちてしまう。その瞬間を見逃さず、今なら厚生出来るという絶妙なタイミングで声を掛ける鬼平、さすが。
Posted by ブクログ
名作、鬼平犯科帳。
密偵の小房の粂八や兎忠こと木村忠吾の活躍など目が離せない。
妖盗葵小僧では、葵小僧の捕縛により、妖盗の毒牙にかかった女達、家族を思い、すぐさま妖盗の首をはねる。平蔵の粋で痛快な生き様が心にささる。