あらすじ
2017年、本格時代劇アニメ「鬼平 ONIHEI」登場。
本格時代劇というアニメの新ジャンルを拓き、今後の展開にも注目が集まっている。
原作はもちろん、池波正太郎の「鬼平犯科帳シリーズ」である。
人気絶大のシリーズ全24巻を、さらに大きな文字とふりがなを増やした【決定版】で順次刊行中。
いかなる時もブレない平蔵の指揮下、命を賭して働く与力・同心・密偵のチーム鬼平。
とはいえ、同心たちの個性もそれぞれ、一筋縄ではいかない。
それにしても、このところ切ない事件が続く。
「俄か雨」「馴馬の三蔵」「蛇苺」「一寸の虫」「おれの弟」「草雲雀」の全六篇を収録。
感情タグBEST3
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『俄か雨』
市中見廻りの途中で俄か雨に振られた鬼平は百姓やに飛び込んだ。どうやらそこは空き家らしい。だが隠れ暮らしている人間がいる気配もする。
そんな鬼平の耳に、絡み合いながら駆け込んでくる男女の声がする。その男の声に聞き覚えがあった。火付盗賊改で勘定方の同心細川峯太郎だ。外に出て捕物をする他の同心からからかわれても言い返しもせず一日中算盤を弾き帳簿を着けているまだ若いが控えめな男。その細川峯太郎が女と抱き合うようにして空き家に入ってきたではないか!
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なんか新しい名物同心が増えそうです。
『馴馬の三蔵』
鬼平の密偵の粂八は、昔盗賊だった時に知り合いだった馴馬の三蔵を見かける。昔気質の盗賊で、一人働き。血腥いことなどしない。
盗みの下見なら鬼平の旦那に伝えなければならない。だが粂八は馴馬の三蔵には大いに迷惑をかけたことがあった。密告などできない…。
『蛇苺』
鬼平は夜道で中年商人風の男に斬りつける人影を見た。「盗賊改方長谷川平蔵だ!」の名乗りに、斬り付けた人影は消えた。だが斬り付けられた中年商人風の男も消えた。
鬼平の名前を聞いて逃げるとは、あの男も盗人関係なのだろうか?
鬼平は同心、密偵たちに探りを入れさせる。
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盗賊に入る商家や民家を探す「嘗役(なめやく)」という役割、好色な女、殺しも厭わない盗人そして辻斬りなど、いろいろな人たちが絡み合って、事件が複雑になっていた。
『一寸の虫』
密偵の一人、仁三郎は、かつて船影の忠兵衛というお頭のもとで働いていた。船影の忠兵衛は「盗まれて難儀するものは手を付けない。殺さない。女を手籠めにしない」を守り、一つのお努めに何年も準備をする昔気質の盗人働きをしていた。だが仁三郎がその禁忌を犯したために船影の忠兵衛に叩き出された。仁三郎はお頭を恨むどころか、むしろ自分の未熟さを反省してお頭に感謝すらしている。
そんな仁三郎に声をかけてきた者がいる。やはり禁忌を破って船影の忠兵衛に叩き出された鹿谷の伴助だ。伴助は忠兵衛を恨み、仁三郎に共に復讐をしようと誘ってきたのだ。
忠兵衛は売れない。伴助は生かしておけない。だが鬼平への恩義も感じている。悩んだ仁三郎は、ある結論にたどり着く。
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鬼平の密偵たちは、以前は盗賊だったが鬼平に見込まれて密偵になった者たちが多い。そんな密偵たちは、鬼平の人柄に感服して命懸けで働いている。でも「どうしてもこの人だけは売れない」という恩のある盗人仲間(お頭)もいる。
この18巻では『馴馬の三蔵』では粂八が、『一寸の虫』では仁三郎がそんな恩ある相手と鬼平の間で悩む姿が出ています。そして粂八と仁三郎はそれぞれ違う決断をします。
『おれの弟』
鬼平が若い頃通っていた本所の高杉道場に、鬼平の弟弟子の滝口丈助がいた。次男の滝口丈助は継ぐ家もなく、四十に近い年齢の今まで真面目に、剣術道場の師範を勤めている。
鬼平は、その滝口丈助が、人妻と密会している場を目撃した。あの真面目で剣一筋の滝口丈助が、おれの弟のような滝口丈助が!?
気になった鬼平は滝口丈助の家を見張ると、夜中に身支度をきっちりした姿で家から出てきたではないか。そしてその気魄。どうみても決闘に向かう様子だった。剣に生きるとはいえ、太平のこの世に真剣の立ち合いだなんて。
そっと後をつける鬼平と同心たち。
だが決闘の場で、滝口丈助に向かって放たれた矢、そして刀を持った複数の男たちが襲ってくるではないか!
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弟のように大切にしている男のために鬼平が「似合わぬこと」をします。
『草雲雀』
一人働きの盗賊(非専属と書いて、「フリー・ランス」の振仮名が・笑)の盗賊、友次郎は絶望していた。かつてある親方に仕込まれた盗っ人の掟を破り人を殺してしまったのだ。悩み抜く友次郎に、引退した老盗賊は「これを機に足を洗って気質になれ」とだけ言った。
ところが家に帰った友次郎に襲いかかった男がいて…。
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『俄か雨』に出てきた勘定方の同心細川峯太郎は、市中に出て盗っ人探索の役目を賜りました。細川峯太郎が先輩たちから教わることで、読者にも「こんな捜査するのね」ということが分かります。
なお細川峯太郎は『俄か雨』の最後で鬼平の紹介(ほぼ命令)で女房をもらって新婚ですが、新しいお役目に得意になって早速浮気心を起こします! なにやってんだー!読者は許さないぞー! と思っていたが、鬼平にバレまくり、厳しく叱咤されます。曰く「市中に出て盗っ人と対峙するというのは、いままでのように休みの日の逢引きを楽しみに算盤はじいていれば良いわけではない。いざとなったら命懸けだ。その覚悟を持て!」
命懸けで働く者たちにはただの「浮気☆」では済まないのですね。他の話でも同心が女に迷って道を外す話もあったしなあ。
Posted by ブクログ
第十七巻「鬼火」のラスト辺りの空白期間に起きた出来事という設定のエピソードばかりなのだが、一話完結ながら、数話に渡る伏線の張り方が巧みで唸らされた。
主に脇役にスポットを当てて、一筋縄ではいかない人間の心模様を描写するエピソードばかりで、どれも胸に沁みた。
特に、「馴馬の三蔵」と「おれの弟」が印象に残った。前者は小房の粂八の葛藤が、後者は平蔵の苦悩が、人間という生き物の奥深さを表しているようで読み応えがあった。
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鬼平犯科帳シリーズ第18弾
17巻が長編だった反動か、今回は全部短編で話がどんどん完結するので前巻を読んでから読むとサクサク読めて面白かった(^.^)
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「剣客商売」や「仕掛人・梅安」のシリーズと違って、いまひとつしっくりこない「鬼平犯科帳」シリーズですが、第18巻は、6話すべて満足しました。女好きの同心が年貢を納めた「俄か雨」。盗賊と元盗賊(密偵)の義理と人情「馴馬の三蔵」。身を滅ぼした男好きの女盗賊「蛇苺」。密偵の筋を通した「一寸の虫」。平蔵怒りの一撃「おれの弟」。年貢を納めたはずの同心の浮気心に喝を入れた平蔵「草雲雀」。第19話にも期待してしまいます(^-^)
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池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈18〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだ『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 鬼火〈17〉』以来ですね。
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大恩ある盗賊の娘が狙われていると知った密偵・仁三郎は、平蔵に内緒で非常手段をとる。盗賊上りの部下を思いやる長官の情と密偵の苦悩を描く「一寸の虫」。
尾行中の鬼平の前で提灯が闇に飛んだ。辻斬りか? 「神妙にせよ!」、途端に逃げ失せた賊と共に傷ついた男も消える。謎が謎を呼ぶ「蛇苺」。
盗賊改方の勘定方・細川峯太郎が初の調査にのりだす「草雲雀」。
そのほか「俄か雨」「馴馬の三蔵」「おれの弟」と、円熟の短篇全六篇を収録!
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1978年(昭和53年)6月号から1978年(昭和53年)11月号に連載された後1989年(平成元年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第18作です。
■俄か雨
■馴馬の三蔵
■蛇苺
■一寸の虫
■おれの弟
■草雲雀
目黒不動まで見廻りに出た平蔵は、門前の桐屋で妻・久栄の好物である黒飴を求め、少々のんびり過ごす……帰り道、驟雨にたまらず、近くの百姓家に入ると、そこに、同心・細川峯太郎が女連れで飛び込んできた(「俄か雨」)、、、
同心たちも一筋縄ではいかない……ほかに「馴馬の三蔵」「蛇苺」「一寸の虫」「おれの弟」「草雲雀」の全6篇を収録。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
密偵・小房の粂八が料理屋・万亀で食事をしていた際、客の男が物置小屋に入り込み、居坐り盗めの準備をしているところを目撃……その男は粂八の知る馴馬の三蔵という盗賊で、粂八は馴馬の三蔵に対して恩があったことから平蔵に報告することが出来ず、粂八が馴馬の三蔵に犯行を未然に防ごうと奔走する『馴馬の三蔵』、
嘗役・針ヶ谷の宗助の女房で女盗賊・おさわは宗助の体を貪りたくて仕方がない……宗助の体を貪る一方で、おさわは盗賊・沼目の太四郎とも関係を結んでいた! 身を滅ぼした男好きの女盗賊を描く『蛇苺』、
高杉銀平門下の平蔵の弟弟子・滝口丈助が旗本の三男・石川源三郎との決闘に挑むが、その決闘は立会人もなく、複数人が待ち伏せており、弓まで使うという、理不尽なものだった……源三郎のあまりに卑劣なやり口に激怒し、仇討ちを決意した平蔵は、盗賊改方の長官でもなく直参旗本でもなく一人の武士として行動し、見事に仇討ちを果たす『おれの弟』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……第19作以降も順次、読んでいこうと思います。
Posted by ブクログ
▼収録作品は以下。
俄か雨
馴馬の三蔵
蛇苺
一寸の虫
おれの弟
草雲雀
▼「馴馬の三蔵」が印象深い。
密偵たちが、「過去にお世話になった良き盗賊」と「平蔵」との間で葛藤するシリーズはいくつもあり、割と佳作が多い気がします。
▼密偵が「殉職」する回はどれもぐっときますね。
これはさしずめ、「太陽にほえろ」とどっちがどっちみたいな影響下だったのでは。時代的にも。
Posted by ブクログ
自分に合ったポジションとは思いながらも、だんだんと心身ともに疲労がたまってきているのを鬼平さんも自覚している感じ。
部下にもいろんな人がいるみたい。
ただ、男性の描き分けはバリエーションが豊富だけど、女性は型にはまった「男性から見た女性」っぽいタイプしかいないのが少し残念かな…。
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
目黒不動まで見廻りに出た平蔵は、門前の桐屋で妻・久栄の好物である黒飴を求め、少々のんびり過ごす。帰り道、驟雨にたまらず、近くの百姓家に入ると、そこに、同心・細川峯太郎が女連れで飛び込んできた(「俄か雨」)。同心たちも一筋縄ではいかない。ほかに「馴馬の三蔵」「蛇苺」「一寸の虫」「おれの弟」「草雲雀」の全六篇を収録。