あらすじ
江戸の盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられている、「鬼平」こと火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵の活躍を描く時代小説の金字塔。
火付盗賊改方とは江戸の特別警察とでもいうべき組織。その長官を務める旗本の平蔵は、いまでこそ人あたりもよく笑顔を絶やさないが、若い頃は「本所の銕(てつ)」と呼ばれ、無頼の者からも恐れられた乱暴者だった。「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」と、人情の機微に通じた鬼平が悪を退治する。
中村吉右衛門が鬼平を演じたテレビ版をはじめ、映画、舞台、マンガと様々な形で愛されてきた作品で、2017年に放映されたアニメ「鬼平 ONIHEI」も大きな話題に。
2017年は「鬼平」が誕生して50周年。これを記念して全24巻を、ふりがなを増やして読みやすくなった決定版で順次、刊行。
「もはや、すでに、死んだつもりよ」「いまのわしは、若いころの罪ほろぼしをしているようなものじゃ」……鬼平が自身のかなしみを吐露する「春の淡雪」ほか、著者自身が好きな作品ベスト5に選んだ「瓶割り小僧」など、全6篇を収録。
感情タグBEST3
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『泣き男』
前巻で、やらかしてしまった同心の細川峯太郎が頑張ってちょっとだけ成長する話。
座頭の辰の市と女房のお峰は、それぞれが盗人働きをしていたが今では気質となっている。腕の良い按摩の辰の市を呼ぶ同心や与力もいるくらいだ。
だが辰の市は浪人盗人の青木源兵衛に見つかってしまった。盗みの協力を断る辰の市に対して、青木はお峰を人質に取り…。
==足を洗った盗賊は何度か出てきて、密偵になったり、死んだり、捕縛されたりします。今回の夫婦は恩に対して筋を通す人たちなので無事でいてほしいなあと思いながら読みました。
『瓶割り小僧』
鬼平は捕らえられた盗賊、石川の五兵衛に見覚えがあった。正確には顔ではなく、その傷に。
そうだ、まだお役に付く前の鬼平が見かけた困っしゃくれた悪ガキの後の姿なのだ。
鬼平は思う。誰も信用できず世を拗ねた者がいたとして、だれかが目をかけてやれば盗賊になどならないのかもしれない。
しかし盗賊となった者を決して許さないのが鬼平の役目でもあるのだ。
『麻布一本松』
前の話でちょっとは名誉回復した細川峯太郎に対して、こちらの話は思いっきり名誉失墜してしまった木村忠吾(^_^;)
木村忠吾は最近見回りも女房にも「なんか面白くない」とむくれている。市中見回りに出た時に、浪人に乱暴を働く無頼の輩のような真似もする。
数日後、また市中見廻りに出た木村忠吾に近づいてきた女がいた。「私は以前あの浪人に絡まれて嫌な思いをしたんですよ。やっつけてくださってスッキリしました。お礼に明後日別の場所でお会いしませんか」木村忠吾の好みの婀娜っぽい女!ついに女房以外の女を抱けるぞ!
だが翌日、鬼平の共をして見回りに出た時に、二人は浪人たちに襲いかかられる。
==
今回の忠吾はやり過ぎ。
鬼平のダンナ、忠吾をきっつく叱ってやってくだせえ。
『討ち入り市兵衛』
鬼平の密偵でもある茶屋のお熊婆さんが、道で倒れていた男を見つける。それは松戸の茂蔵という盗賊だった。茂蔵の親分は隠居した昔気質の盗賊蓮沼の市兵衛だ。そんな隠居老人のところに上方の盗賊の鹿間の定八が来て「江戸で大仕事をしたいので手引を頼みたい」という。市兵衛は定八の血生臭さを嗅ぎ取り「あんな畜生に江戸を荒らされたら名折れになる」ときっぱり断った。そこで怒った定八の配下が、茂蔵を襲ったのだ。
隠居の蓮沼の市兵衛は盗賊の大親分とは思えないほどの穏やかで小柄な老人となって静かに暮らしている。だが片腕の茂蔵が襲われ、凶悪な盗賊が江戸に入ったとなったら覚悟を決めた。自分とともに命を捨てる配下の者たちとともに、定八の盗人宿に討ち入るのだ
『春の淡雪』
同心の大島勇五郎が使っている密偵である博打打ちの雪崩の清松が盗賊とともにいる姿を目撃された。大島勇五郎は小柄で控え目で剣も弱いが、聞き込みと尾行では良い働きをする。大島は、清松が盗賊だとは知らないのか?
だが大島は抜き差しならない状態になっていて…
『男の隠れ家』
昔気質の盗賊玉村の弥吉が江戸に現れた。鬼平は同心や密偵に見張りをさせる。だがどうもおかしい。江戸の町をただ散歩したり、浪人に追いかけられて泡を食って逃げ出したり、とても手練れの盗賊とも思えない。
実は弥吉の武士装束と編笠で江戸を歩いていたのは、吉野家の旦那だったのだ。この旦那さん、よく働く誠実な人柄で商売も上手いのだが、婿養子で女房にはバカにされ、奉公人たちからも軽んじられている。そんな折に出会った二人は意気投合したのだ。
==ちょっと軽い面白い話、なんだけど、最後の悪い女への意趣返しが現代の女である私には「そりゃー悪い女だけど、さすがに気の毒(-_-;)」と感じてしまうのよ。
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この巻は秀作揃いで大変によかった。
木村忠吾も久しぶりに活躍? したし、平蔵が佐島与力を本当に信頼している感じも伝わる一編もあり、瓶割り小僧はプロットがよいし。
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『討ち入り市兵衛』『男の隠れ家』が良かった!
やっぱり江戸って、何だかいいなぁ。
実際、暮らしたら大変なんでしょうが、人間らしさが爆発してて、いいなぁと思ってしまう。
Posted by ブクログ
池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳〈21〉』を読みました。
『決定版 鬼平犯科帳〈20〉』に続き、池波正太郎の作品です。
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大島勇五郎は、名前ほど勇ましくないが有能な同心だ。
しかし最近おかしい。
不審を感じた平蔵が、自ら兇盗の跳梁を制する「春の淡雪」、探索方から勘定方に戻されて、ふて腐れていた細川峯太郎が、非番の日に手柄を立て、再び探索方に戻るまでを描く「泣き男」、浮気の虫が騒ぎ出した木村忠吾にも温かく厳しい眼をそそぐ「麻布一本松」ほか、「瓶割り小僧」「討ち入り市兵衛」「男の隠れ家」を収録。
“仏の平蔵”の部下への思いやりをしみじみと描く、慈愛溢れる一冊。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1980年(昭和55年)6月号から1982年(昭和57年)3月号に連載された後1991年(平成3年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第21作です。
■泣き男
■瓶割り小僧
■麻布一本松
■討ち入り市兵衛
■春の淡雪
■男の隠れ家
第21巻は「泣き男」「瓶割り小僧」「麻布一本松」「討ち入り市兵衛」「春の淡雪」「男の隠れ家」の全6篇を収録……この中で、池波正太郎自身が好きな作品ベスト5に選んだ「瓶割り小僧」は、児童虐待がテーマになっています、、、
ほかにも、鬼平が自身のかなしみを吐露する「春の淡雪」など、心に沁みる作品が多い巻です。
テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! 本作品の収録作では、
情事の相手だったお長への未練を断ち切れず、勘定方へ戻された同心・細川峯太郎は、非番の日に歩いていて座頭の辰の市を見かけるが、座頭のはずの辰の市が目を見開いて歩いており、不審に感じた細川峯太郎は……平蔵の部下管理能力に感嘆させられる『泣き男』、
捕えた盗賊・石川の五兵衛がしぶとく何も吐かない……平蔵はその訊問ぶりを見ていて、五兵衛の顔になんとなく見覚えがあることを思い出した! 利口でトンチが得意だった少年、周囲に助けてくれる人がいれば、違う人生があっただろうにと感じた『瓶割り小僧』、
同心・木村忠吾が巡回中にむしゃくしゃして路上の石を蹴飛ばしたら、浪人の向こう脛に当ってしまい、怒った浪人が忠吾に襲い掛かろうとするが、忠吾は逆に毒づき急所に一蹴り入れて逃げてしまう……久しぶりに同心・木村忠吾のおっちょこちょい振りが面白おかしく描かれる『麻布一本松』、
が印象的だったかな……連作短篇のカタチを取っており、1篇ずつでも愉しめるのですが、それぞれの短篇が繋がって大長篇としても読める構成なので、順番に読み進めると大河ドラマ的な愉しみがありますね。
平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残り少なくなってきましたが、第22作以降も順次、読んでいこうと思います。
Posted by ブクログ
▼第21巻は「泣き男」「瓶割り小僧」「麻布一本松」「討ち入り市兵衛」「春の淡雪」「男の隠れ家」の全6篇を収録。
▼レギュラー同心・木村忠吾が女にもてたいがために情けない大活躍をする「麻生一本松」。偽の侍になって威張って歩きたい、というちょっとへんたいな町人の姿を描いた「男の隠れ家」。印象に残りました。
▼やっぱり、情けない男、みっともない男、落ちていく男を描くと独特の色気があって素敵ですね。池波さん。ただ、そればっかりやられると読後感がつらい。だから片方に平蔵がいて、エンタメになっています。
これは、当たり前ですが「メグレ警視シリーズ」そのものですね。やっぱり。
鬼平が終わったらメグレを読もうと思いました~。
Posted by ブクログ
池波正太郎 著「鬼平犯科帳 21」、2017.10発行。細川峯太郎、木村忠吾が登場すると、その情けなさにガックリきますw。かわいらしさもありますがw。第21巻は、テンポもよく面白かったです。6話の内、特に第2話「瓶割り小僧」、第3話「麻布一本松」、第4話「討ち入り市兵衛」が良かったです。特に第4話は秀逸でした。
Posted by ブクログ
悪いヤツは徹底的に潰すけど、盗賊でも義のある人は自分の密偵にして対応する。
そんな鬼平さんのキャラがとても生かされていた1冊でした。
今の時代の司法って、誰も怒らないもんね。
裁判でも最後にちょろっと裁判官が訓示するだけだし、刑務所だって丁寧だし…。
被害者の声なんて届かないんだろうな~。
だから鬼平さんを読むとスッキリするのかも…。