池波正太郎のレビュー一覧

  • 鬼平犯科帳(五)

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    間取りの万三、網切の甚五郎がこの物語から去り、本巻が一つの節目になろうか。しかし「世に盗人の種は尽きまじ」の歌にもあるとおり、次から次に平蔵の前に敵が現れるのだろう。「おしゃべり源八」「鈍牛」は、火盗改方内の同心にまつわる話だが、部下の不始末、不祥事に心痛める平蔵には、現代の中間管理職の苦心と共通するものがありそう。並の者ではこの職責に胃の腑に穴があくことだろう。

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    2017年09月05日
  • 鬼平犯科帳(四)

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    鬼の平蔵に対する盗賊達の復讐の連鎖がこの物語の底流を流れているのだが、読者を飽きさせることのない筆致が凄いと思う。「密通」で妻方の伯父に対して仕掛けた場面での最後の一言がふるっている。「あばたの新助」の末期は哀れであった。「夜鷹殺し」の下手人である旗本を斬って捨てる平蔵。本巻解説にもあるとおり、人の世は白と黒に二分できるものではない。最下層の夜鷹であっても人の命に変りはないと思う平蔵。そして、恐らく平蔵が斬らねば、この犯罪は止まらなかったし、最悪御咎めなしとなったかも知れない。そんな含みのある結末であった。

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    2017年09月05日
  • 鬼平犯科帳(三)

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    平蔵が一時御役を解任されて京へ遊山に旅立つのだが……やはり事件に遭遇したり首を突っ込んだりと、いやはや大変な道中になった。老盗賊から盗みの秘伝をしらばくれて伝授されようとするところは、なかなかに面白かった。平蔵一人で浪人どもと戦う段では、手傷を負い「もうダメか?!」って時に左馬之助が現れる。何とも憎い演出である。最後の「むかしの男」では、妻女の過去を知りながら、優しく泰然としている平蔵の姿に、男気を感じる。もっとも平蔵自身、若い頃にさんざん遊んでいたのだから、妻女を責めることはできなかろうが……

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    2017年09月05日
  • 信長と秀吉と家康

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    著者の歴史描写はさすがだ。戦国を戦い抜き、天下を統一した三人の武将について、それぞれ長編にもなるところを一冊にまとめた手腕が素晴らしい。歴史に「たられば」はないものの、織田信長が本能寺で命を落とさなかったら、今の日本は別の発展を遂げていたのではないか。

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    2017年08月31日
  • 剣客商売二 辻斬り

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    池波作品は読み出すと止まらなくなる。2巻は表題作をはじめお上の御用として裁くべき案件が多かった。『三冬の乳房』で本所の軍鶏鍋屋〔五鉄〕が出てきた時には、嬉しいやら懐かしいやら。それもあって、全体に「鬼平」の雰囲気を感じた。小兵衛の道楽が過ぎて、この巻ではおはるを可愛がっていないようにも思う。心配ですぞ、先生。

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    2017年08月29日
  • 剣客商売三 陽炎の男

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    2巻とは雰囲気が異なり、こちらが剣客商売としては本道だろうと思えた。おはると夫婦になってからの小兵衛がぞんざいになってきたのは、前巻同様の心配事。三冬が大治郎に思いを寄せるようになったのが読者には伝えられても、物語の中の当人同士はその思いを伝えられず、感じずという状況で、この先が楽しみである。印象深いのは、秋山父子が一緒に活躍する「嘘の皮」と、将軍家に近い桑名松平家の不祥事を治めた「深川十万坪」だ。水戸黄門のような勧善懲悪とは違い、血の臭いが感じられるような物語がリアリティを感じさせる。

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    2017年08月29日
  • 剣客商売五 白い鬼

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    表題作「白い鬼」でまたも出てきた不気味な剣士。このような相手に対する小兵衛の奇抜な戦い方は天晴れだ。「暗殺」での身勝手な旗本の当主によって危ういところまで追い込まれてしまう大治郎。まだまだ修行が足りないね。それでも大治郎の成長は目覚ましいものがある。三冬への想いにも目覚めたようで、先が楽しみだ。

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    2017年08月29日
  • 剣客商売六 新妻

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    タイトルから大治郎と三冬のことかと思って読んだのだが、良い意味で体をかわされた(笑)「品川お匙屋敷」が切っ掛けで、老中・田沼から縁組みを申し入れられるなどは当時としては破格のことだろう。「新妻」「道場破り」で大治郎の情の厚さが堪能できる作品だった。「金貸し幸右衛門」の中の『かえって戦乱絶え間もなかったころのほうが、人のいのちの重さ大切さがよくわかっていたような気がするのじゃ。(中略)生死の意義を忘れた人それぞれが、恐ろしいことを平気でしてのけるようになった。』とは、平成の世でも言えることだろう。

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    2017年08月29日
  • 剣客商売八 狂乱

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    しまった、七巻を飛ばして読んでしまった。しかし、本シリーズは巻が前後しても面白く読める。異色は「狐雨」の白狐だろう。この世のものではないモノを登場させたのには驚いた。表題作「狂乱」は小兵衛にしては石山の本質を見抜くのが遅れ、それが悲しい結末につながった。世の中、そうそう旨くはいかないという著者のメッセージとも感じる。本巻は「切れ場」を残したような結びとなる話が多かったな〜

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    2017年08月29日
  • 剣客商売九 待ち伏せ

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    表題作「待ち伏せ」にしても、「秘密」にしても殿様と呼ばれる者の所行が家臣に累を及ぼす切ない話だ。小平衛が歩けば事件に当たる「或る日の小平衛」は、本シリーズを通底する面白さがある。剣客として成長している大治郎が遭遇する悪者とも思えない相手と、行きがかり上真剣勝負をしなければならない流れとなるが、その相手が時に別の悪者に、時に病に斃れるというパターンが多いが、それでさえ読者は安心をし剣客商売を楽しめるのだなぁ。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売十 春の嵐

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    十巻にして長編。それとは気付かずに読んだのは、本棚から出すやいなやブックカバーをかけてしまうので、表装裏のあらすじを読まないからだが、こんな展開も初読みならではで面白い。一章「除夜の客」から二章に移る時に、これは二話完結なのだなと軽く思ったものだが、物語は徳川宗家を巡る陰謀に、剣客商売フルキャストで大治郎の無実を晴らすべく立ち働く様は感動的だ。初登場・菓子屋の芳次郎が愉快なキャラなだけに、今後の活躍が期待される。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売十一 勝負

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    「勝負」の大治郎の生真面目さが判る気がする。御前試合でわざと負けるというのは、何より剣客として相手に失礼だ。幸いなことに周りからの様々な働きかけで大治郎は力を発揮できなかった。これはこれで剣客としてどうかと思うが、この物語の良いところでもある。最終話「小判二十両」での『親と子というものはな、生み落し、生まれ出るということだけで成り立つものではないのじゃ。生んだ後、生まれた後の親子の暮らしあってこそ、親であり子であるのじゃ。』という一節に心打たれた。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売十二 十番斬り

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    「浮寝鳥」「十番斬り」などの短編を収めた本巻は切ない話が多かった。「逃げる人」では大治郎が小平衛に判断を強いられる修行の姿が印象深い。「罪ほろぼし」の永井源太郎の潔くもさばさばした態度に好感を覚え、結びの妻を娶ったことを小平衛に報告に来た様を読むと、ついホロリとしてしまった。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売番外編 黒白(上)

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    波切八郎を中心に、謎めいた人物が多く登場する物語だった。小兵衛と妻・お貞の夫婦になるまでと、夫婦になって後の息の合った姿が読者には嬉しい。八郎に関わる人物として、橘屋忠兵衛、お信、岡本弥助などは、八郎にしてみればまさに得体の知れない者たちだ。それぞれが自身の真の姿を隠し、表面だけで繋がっている。読者には、場面転換をし、時間軸を遡りしながら少しずつ彼らの正体を教えてくれる、そんな楽しみのある時代小説である。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売番外編 黒白(下)

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    下巻の始まりは、お信と八郎が「情を通じる」仲になった場面からで、小兵衛に引き取られている市蔵と三人で上方へ行くという無難な選択肢もあったはず。しかし、八郎がずるずると岡本弥助の行く末を気にするところから大きく物語は動き出す。本編と違うのは八代将軍・吉宗の逸話や、真田家の騒動という史実を交えて進行することだ。著者の『真田騒動-恩田木工』は未だ積読だが、読む楽しみが増えたというものだ。結びに、小兵衛の好奇心から命を救われた少年が大名となり、小兵衛の隠居祝いを送ったくだりでほろりとさせられた。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売十四 暗殺者

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    番外編『黒白』を読んだがゆえに深まる理解。終盤でキーパーソンとなる滝口を、かつての秋山道場へ弟子入りさせたのも、小兵衛の「人が変わった」ためであり、その発端は波切八郎の一件があったためだ。本書に登場する剣客・波川周蔵も、不幸な事件から出奔して裏稼業に身をやつすまでは波切と一緒だったが、結末に救われた。さて、本シリーズも残り本編2冊、番外編2冊となった。奥付の出版年から『二十番斬り』『ないしょないしょ』と進もう。

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    2017年08月28日
  • 剣客商売番外編 ないしょ ないしょ

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    波乱万丈のお福の人生だ。初めは奉公先の主人・神谷に凌辱され、恨みしか抱かなかったはずの神谷が何者かに殺されたところから、物語は大きく展開し舞台を江戸に移す。お福の急成長は、終盤で水茶屋の女主人となるところで、これまでの苦労と引き換えの結果として自分の胸にすとんと落ちた。お福の仇討に助太刀した小兵衛が、お福にとどめを刺させなかったことに感動した。これが他の時代劇であれば、とどめを刺させて目出度しで終わらせるのだろう。人にはその後の人生があり、人を殺めた過去を背負わせるようなことをさせない筆者の愛情を感じる。

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    2017年08月27日
  • 真田騒動―恩田木工―

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    時代小説の雄である著者の作品を久しぶりに読む。本書購入のきっかけは宮脇俊三氏の鉄道紀行本だった。折しも「真田丸」が人気を博しているが、大御所の作品の筆致の素晴らしさと、5編の作品を選び配した編集者の妙を感じた。真田幸村(信繁)の兄・信幸のしたたかさに胸打たれた「信濃大名記」。しかし、現代も財政難で苦しむ地方自治体の姿を重ねてしまう恩田木工を描いた表題作は、財政再建のヒントが多いと思う。

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    2017年08月19日
  • 殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一)

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    『日曜日の歴史学』で教材となっていた梅安シリーズを読む。時代考証からすると、梅安の住居がやや江戸の端にあることに難があるようだが、そんなことを微塵も感じさせない著者の筆致はさすが。初めは冷酷な仕掛人として梅安を描いているが、回が進むにつれて人情味のあるものに変わってきた。

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    2017年08月19日
  • 池波正太郎の銀座日記[全]

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    「銀座」を舞台にしたエッセイ。読んでいると「粋」というものを感じる。ただのエッセイではなく昭和末期から平成になるまでの世相を写した現代史でもある。

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    2017年08月09日