池波正太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『男色一本饂飩(なんしょくいっぽんうどん)』
なんか強烈な題名で始まった(笑)「鬼平犯科帳11」
今回ちょっと危ない目に合うのは、火付盗賊改方同心の木村忠吾、うさぎ饅頭に似ているのであだなは兎忠(うさちゅう)。
体力も胆力も足りなくお調子者でしょっちゅう女に引っかかりおっちょこちょいちょいだが、いざとなったら夢中で働き裏表なくて愛嬌もあるので、与力同心たちからも鬼平からも可愛がられている。
そのうさ忠が好物の「一本饂飩」を楽しんでいるところに強引に同席してきた巨漢で毛深い男。野太い声をみょ〜に柔らかな口調でうさ忠の耳元に囁きかけてくる。
店を出たところで、うさ忠は数人の男たちに拉致されて…。
***拉致されたのが女性ならまず無事では済まない(実際に無事ですまなかった話もあるし)状況になったのですが、でもうさ忠だよ?まさかそんなにひどい目には合わないよね?という思いながら読みました。
まあ結局うさ忠を拉致ったのが強盗団だったため、鬼平としてはうさ忠救出と強盗団壊滅できたのですが、行方不明時は心配されたうさ忠が、助けられたら同心たちから「あいつなんかめずらしい体験したらしいなあ」と貞操を疑われてしまうのはちょいとお気の毒。
『土蜘蛛の金五郎』
三ノ輪の外れにできた「どんぶり屋」という飯屋。滅法安いし乞食にはただで食べさせる。
興味を持った鬼平は、荒んで汚れきった浪人の変装をして「どんぶり屋」へ通う。
そしてある時店に押しかけてきた暴漢たちを鬼平はあっさりと叩きのめす。
その腕前を見た店主の金五郎は、鬼平へ驚くような依頼をしてくれる。
「謝礼はたっぷり払う。火付盗賊改方の長谷川平蔵を殺してくれないか」
自分の暗殺を依頼された鬼平が立てた作戦は、緊迫の鬼平vs鬼平の決闘だった。
***すべてが終わって、汚い浪人から火付盗賊改方に戻った鬼平がつぶやきます。「おれは実に楽しかった。できることなら面倒なお役目は捨ててしまって、乞食浪人になってみたいもんだ」
若い頃グレていた鬼平なら乞食浪人も似合いそうですが、いまのあなたには家族も与力や同心も密偵たちもいるので、お役目は捨てないでね。
『穴』
大店の鍵のかかった蔵にしまわれた三百両が盗まれた。誰も気が付かない間に行われた見事な盗め(つとめ)仕事。
しかもその数日後、その鍵のかかった蔵に盗まれた三百両がそっくり戻されていた。やはり誰も気が付かないうちに行われた見事な仕事っぷり。
犯人は、隣に住む扇谷のご隠居平野屋源助とその番頭の茂兵衛だった。昔気質の盗賊だった源助と側近の茂兵衛は盗賊稼業から綺麗に足を洗い、死に支度に入ろうとしていた。
だが71となった今でも元気矍鑠たる源助は、ふとしたときに昔の盗みの血が騒ぎ、自分がまだ現役でやれるという証を見せたくてしょうがなくなっていたのだった。
***鬼平犯科帳では、筋の通った矍鑠たる老盗や御隠居が出てきますが、敵味方に関わらず鬼平と互いを認め合う話になります。
今回も、源助に対して鬼平は相手の腕を認めつつこれ以上やりすぎるなよと牽制してみせ、感服した源助はそれに応えることになりました。
『泣き味噌屋』
火付盗賊改方会計担当同心の川村弥助は、まるで相撲取りのような体格にもかかわらず、怖がりで押しが弱くて「泣き味噌屋(※泣き虫の意味)」と呼ばれている。
だがある日、新婚の愛妻さとが攫われてしまい…
***最初の話でうさ忠の操は無事だったが、やっぱり女性だと…
『密告』
「こんや、九ツはん、ふか川、せんだいぼり、かまくらやへおしこむぬすっと十五にん」
たどたどしい文字で書かれた強盗密告の手紙は、それが実行される直前に届けられた。
捉えられた盗人の一人の顔、それはかつて鬼平が知っていた男によく似ていた。
鬼平は知る。若くてグレていた頃の鬼平が片手間に気遣った女は、その後の苦労の人生でその親切をずっと支えにしていた。そしてとても苦しい決断を鬼平に託したのだということを。
『毒』
市中見廻りにでた鬼平は、若い男が陰陽師から財布を掏る場面を目撃する。
その掏摸を捕まえた鬼平だが、取り上げた財布には、毒薬が隠されていた。
***今回は、幕府に使える鬼平が、幕府制度の隠匿姿勢と、人民との距離に疑問を持ち、背後に巨悪があるかもしれないけど、火付盗賊改方とはいえ自分たちにはこれ以上道しようもないんだよね…という矛盾を吐露する話になっています。
『雨隠れの鶴吉』
強盗の引き込みをする雨隠れの鶴吉とお民の夫婦は十二年ぶりで江戸に戻ってきた。
鶴吉は大店の旦那と女中の間の子供だったが、正妻に追い出されていたのだ。
江戸についた鶴吉は、昔なじみから旦那様はいまでも鶴吉の行方を探していると聞かされる。
そして十二年ぶりの親子対面となったが、その店には別の強盗団の引き込み役が入り込んでいた…
***偶然に偶然が重なり、喜んで迎えてくれる場所と、でも別の人生に戻らなければいけないという板挟みのなかで、それぞれが仁義を通したというお話。
<物事には、いちいち理屈をつけるものではない。人間という生き物は理屈とは全く無縁のものなのに、どうも得てして理詰めにいきたがるのがおかしい。P308> -
購入済み
鬼平犯科帳の全てが一冊にまとめられているので、次はどれだ?と迷うことなく読み進めることができる。作者の文体はリズム感に溢れていて、本の選択をしなくても良いので、暇があるときなど一気に読み進んでしまうが、大部な本なので読み応えじゅうぶんである。
-
購入済み
痛快
時代小説が大好きで、ベットに入って寝る前にタブレットで読んでますが、池波正太郎さんの時代小説は時代の背景が明確で且つ主人公が圧倒的に強く痛快の一字です。以外性とハラハラドキドキと女が絡み寝る時間が過ぎても呼んでしまい睡眠時間が多少少なくなっているのが贅沢な悩みです。今後も読み続けたいです。梅安針供養では、襲われて怪我をした上に記憶を喪失した若者を助け、守り最終的に旗本の家に帰すことが出来たが、その為に母親と腹違いの兄を殺害する手立ては尋常では考えられないが、それが「家の安定」に結びつくと考えて、仕掛人としてお金で殺害する非情さが、何か正常化されるのがこの小説の神髄なのかも知れない。とにかく痛快である。
-
Posted by ブクログ
『雨引の文五郎』
まるで名物のような盗人だった。雨引の文五郎は、昔は西尾の長兵衛親分の片腕だったが、長兵衛が死ぬと跡目を断りきっぱりと一人働きへ鞍替えした。そのおつとめ(盗み)の見事さは「隙間風」と呼ばれるくらいだ。
こんなに有名なのに誰も顔を知らない。その文五郎の人相書きを鬼平に送りつけてきたのは文五郎自身だった。こうして鬼平をからかう洒落っ気に鬼平は苦るしかなかった。
その文五郎に恨みを持つ落針の彦蔵という押し込み強盗がいた。鬼平はまとめて彼らを相手にすることにして…。
※※※芸達者で他の盗人から「お縄にさせるにはもったいない」と言われるようなひょうきんな顔立ちで筋の通った盗賊。鬼平も真剣に勝ちたがっています。
『鯉肝のお里』
鯉は肝を潰すとその苦味臭味がなかなか抜けない。それを通り名にする女賊というからにはいかばかりか。
偶然そのお里を見かけた鬼平の女密偵おまさは、同じ鬼平の密偵で元盗賊の頭の大滝の五郎蔵とともに張り込むことになり…。
※※※裏社会でのストレス解消はセックス…というサガがなんとも言えない。そして元盗賊である密偵たちへも心遣いを持つ鬼平が、粋な仲人働きを見せる。
「鬼平犯科帳」では、鬼平と密偵たち、鬼平と町人たちのふとした交流も良い感じで書かれています。
『泥亀』
かつて盗人宿を預かっていた泥亀の七蔵爺さんは、隠居金をもらいかたぎ暮らしをしている。だがかつて世話になった親分が死に、残された妻子が貧乏暮らしに喘いでいると聞き、なんとか助けたいと一人働きを画策する。でもうまくは行かないのだ。だって七蔵爺さんはただの田舎の盗人宿の親父だし、引退の理由も痔が悪化して歩行にも支障をきたすからなのだ。別の線から事情を知り七蔵を捉えた鬼平でさえ、尻を痛がるこの爺さんを処罰する気にはなれなかったくらいだ。そこで鬼平は…
※※※いい感じで人情噺が進みちょっと緩んだ人が出てきます。やっぱりあまり情け容赦ない展開は読んでいて辛いからね。
『本門寺暮雪』
かつて鬼平と剣術を習った井関緑之助は、今では気楽な乞食坊主暮らしで、たま〜に鬼平の密偵めいたことをしている。だがそんな呑気な緑之助が鋭い目線を向ける相手がいた。かつて緑之助に斬り付け大怪我を追わせた゛凄い奴゛が江戸に現れたのだ…。
※※※名前も目的もわからず”凄い奴”としか形容されない人斬り。ドラマで見たらさぞかし緊迫感があっただろう。
決着の付け方はうまくいきすぎな気もするが、犬がいい働きしたから良し。
『浅草・鳥越橋』
大店に盗みに入る場合には一味のものを奉公人や下女として店に入れる。そうして何年もかけて準備をするのだ。
そのような”引き込み役”である仁助のもとに相棒の定七から思いがけない知らせが届く。家に残している女房が、盗人のお頭に寝取られたというのだ。あまりの仕打ちにお頭への恨みを募らせる仁助に定七が持ちかけた話は…。
※※※盗賊同士の裏切りやら酷い騙しやらなんか怪しい人間関係やらで、巻き込まれて犠牲になった人たちが気の毒な。
前作「本門寺暮雪」で出てきた柴犬は、鬼平が連れて帰り”クマ”と名付けられて長谷川家の愛犬に。そのうち市中見廻りにも連れて行くつもりらしい。かわいい。
『白い粉』
鬼平の屋敷の料理人勘助は悩み抜いていた。鬼平に毒を盛らなければ女房を殺すと脅されたのだ。もともと博打好きで何度も足を踏み外しては料理の師匠や鬼平により助けられた勘助。だがそのような危機を迎えてさらに博打へとのめり込むのだった。
『狐雨』
最近鬼平の部下になった同心の青木助五郎は、冴えない風貌と人付き合いの悪さとは裏腹に次々と手柄を挙げていた。同僚たちからはやっかみともつかない悪い噂も流れている。
そんな時青木はいきなり鬼平の屋敷に押しかけ、人間とも思えない振る舞いに及び出した。
極悪犯罪者に慣はれている鬼平も、いきなり狐憑きとなった相手にはさすがに畏れを感じ…。
※※※現在で言えば脳障害をきたしたのでしょうが、この裏にある人間関係や幼い時の体験話がなんとも物の哀れを感じる。 -
Posted by ブクログ
大坂夏の陣の後の話であり、真田昌幸も幸村も既に世を去っているため、読む前はエピローグ的な内容になっているのかと思った。
確かにそういう側面もあるが、しかし物語はまだ続いていた。つまり真田vs徳川の闘いは終わっていなかったということである。
前巻までは真田昌幸・幸村vs徳川家康だったのが、この最終巻では真田信之vs徳川秀忠になっている。もちろん、互いに武器をとってのドンパチというわけではないが。
信之が松代に移るところで話が終わっているため、信之と秀忠のどちらが勝ったのかは定かではないが、松代藩は明治維新まで生き残ったわけだから、その意味では信之の勝ちではないかと思う。