池波正太郎のレビュー一覧
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大坂夏の陣の後の話であり、真田昌幸も幸村も既に世を去っているため、読む前はエピローグ的な内容になっているのかと思った。
確かにそういう側面もあるが、しかし物語はまだ続いていた。つまり真田vs徳川の闘いは終わっていなかったということである。
前巻までは真田昌幸・幸村vs徳川家康だったのが、この最終巻では真田信之vs徳川秀忠になっている。もちろん、互いに武器をとってのドンパチというわけではないが。
信之が松代に移るところで話が終わっているため、信之と秀忠のどちらが勝ったのかは定かではないが、松代藩は明治維新まで生き残ったわけだから、その意味では信之の勝ちではないかと思う。 -
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関ヶ原前夜。というよりも、実質的に「関ヶ原」は始まっている。さらに言えば、この時点で西軍は既に負けているということが、本巻の終盤から読み取れる。原因は、言うまでもなく石田三成その人のパーソナリティにある。
本巻は関ヶ原本戦前夜の話が中心なので、所謂「犬伏の別れ」ももちろん出てくる。ただ、真田家の今後を左右する重要な出来事であるにも関わらず、割とあっさり書かれている。おそらく、昌幸・幸村と信幸とも意を固めていて、犬伏はそれを確認する場に過ぎないという池波の意図があるのだろう。
あくまでも物語からだが、徳川家康という人物は相当な勝負師である。もっとも、稀代の勝負師だからこそ、江戸幕府を築くこと -
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『雨乞い庄右衛門』
盗賊の頭の雨乞い庄右兵衛は、病を得て田舎で療養に入っていた。江戸に残した妾のお照は一味の若い男を寝所に引き込んでいた。
庄右兵衛は最後の勤めをしようと江戸に上がる。そしてその後を付ける男たち。
『隠居金七百両』
長谷川辰蔵は、火付盗賊改方の長官鬼平の長男だが、刀の腕はからっきし、悪友に教えられた女遊びに明け暮れるお気楽人生を歩んでいる。
辰蔵が今目をつけているのは茶屋の小女のお順。しかしお順の父次郎助は、盗賊のお頭白峰の田四郎の隠居金を預かっており、そのためにお順は男たちに誘拐されてしまう。
『はさみ撃ち』
薬種屋「万屋小兵衛」の女房おもんは、貸本屋の友蔵との屋敷内での -
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旗本の若様がかどわかされ、家に伝わる名刀が盗まれた。
背景には、昔主人の子供を身籠ったまま家を追い出された娘の因縁話が合った…。
/ 「礼金二百両」
平蔵にとって盗賊改めという職は、好きでもないしこのままでは長生きできそうにないけれど、あまりにもぴったり自分自身の性にはまっていて、辞めるにやめられない、という平蔵のつぶやきがあります。
またこの役目の長官にもなると、自腹を切って密偵を使ったり情報を仕入れたりしなければならないという当時の事情も書かれています。
鬼平の修行仲間の岸井左馬之助は、やりたくて盗賊改めを手伝っているけれどまったくの無給って最初に書いてありましたね。
この時代は賄賂とも -
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ネタバレ手術後、食欲のない時に少しずつ読んで、味を想像したり、自分ならどうやって食べようかなあなどと想像して楽しんでいた。
旬のものを大切に味わって食べる。
ああ、なんという幸せ。
ビールは小さなコップに1/3だけ注いで、一息に飲む。
自分のペースでコップに注いで、注いだら一息に飲む。
これが一番美味しいのだそうだ。
なるほど。
フランスで、「シャンパンに合ういちばんいい肴を持ってきてくれ」と言ったら、出てきたのはポテトフライだったというのにびっくり。
確かに冷たいシャンパンと熱々のポテトフライは、やめられない止まらない旨さだと思うけど。
日本人がそんなことを言ったら「田舎者」と馬鹿にされそうだ -
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ネタバレ母の出身は松代の下級藩士。だから松代は何度か訪れた町。真田家には親近感あり。
昌幸信繁は、戦を楽しむ、信之(文中では信幸ー関が原後、改名していたはず)は「領民家来の幸福を願う事」を考える。その生きざま。戦国時代後を見据えた藩の維持を考えている。今の政治家にここまでの矜持はあるだろうか。
池波作品は、人の心の機微も細やかに書き込まれていて安定感がある。恩田木工「しかし、おれも人間だからな(原たちのように思いあがるかも)」に妻みつの「みつが目をはなしませぬ」P292、さりげないこのやり取り。うまいなあ。「剣客商売」は読破したが、「真田太平記」は手を付けていなかった。これを機に着手を考える。