池波正太郎のレビュー一覧
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池波正太郎の長篇時代小説『乳房 新装版』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』に続き、池波正太郎の作品です。
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「まるで不作の生大根(なまだいこ)をかじっているようだ」さんざんにもてあそばれた挙句、罵られ捨てられたお松は、偶然出会ったその男、煙管職人の勘蔵を絞殺してしまった。
この言葉を胸に秘めて、数奇な運命を辿るお松を評して、長谷川平蔵は、「男にはない乳房が女を強くするのだ」というが……。
鬼平犯科帳番外篇。
解説・常盤新平
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1987年(昭和62年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの番外篇として位置づけられる作品、、、
平蔵がまだ火付盗賊改方の長官になる前から始まり、平蔵が重要な脇役として登場するので、第0作(エピソード・ゼロ)的な作品ですね。
■男の家
■阿呆鴉
■十一屋語り草
■倉ヶ野の旦那
■再・十一屋語り草
■五年後
■〔豆岩〕の岩五郎
■回生堂主人
■縁
■月夜饅頭
■雑司ヶ谷・鬼子母神境内
■解説 常盤新平
“不作の生大根”と罵られ、逆上して男を殺した女の数奇な運命と並行して、平蔵の活躍を描く……“乳房”が女を強くすると平蔵は言うが……。
若い女・お松の数奇な人生と、長谷川平蔵の若き日の姿が交錯する物語……女の弱さと強さ、情念と救いを描いた池波正太郎作品らしい濃密な人間ドラマが愉しめました、、、
お松は、煙管職人・勘蔵に弄ばれた末に「まるで不作の生大根をかじっているようだ」と侮辱され捨てられる……その後、偶然町で勘蔵を見かけたお松は衝動的に後をつけ、勘蔵を絞殺してしまう。
お松は、世間に顔向けの出来ない身となったことを自覚しながら生きていこうとしますが、阿呆鴉(あほうがらす)と呼ばれる売春業者・長次郎に出会ったことをきっかけに運命が変わっていく……お松の心の変化が丁寧に描かれ、無欲な人間へと変貌していく過程が印象的で、女性心理の描写が秀逸だと感じましたね、、、
また、平蔵がまだ若く、火付盗賊改方になる前後の姿が描かれるため、鬼平の人物像がより立体的に浮かび上がる作品でした……暗さと救いのバランスが絶妙で、深みのある余韻が残る作品でした。
お松の周囲を固めるキャラクターも良かったなぁ……長次郎はもちろんですが、隣に住む婆さんのお兼、京で妾としてお松を囲ってくれた倉ヶ野徳兵衛、その後、お松を後妻に娶った回生堂主人の松浦屋庄三郎 等々、魅力ある人物が多かったことも印象的でしたね、面白かったー。 -
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ネタバレ絶筆の最終巻。終わってないが、終わりとしてとても自然な印象。
梅安の心変わり、家を建てること、おもんとの別れ、徐々に終わりが見えてきた中、次々と現れる刺客との殺し合いの無限地獄の中にいること、生きてる限りその地獄から抜け出せない、梅安にとっての日常が続くという物語の終わり方のような印象。
梅安が倒される可能性も示唆しつつ、続く日常の地獄ということで、却って、仕掛人としての世界観、刹那的な修羅を味わえた。
付録の梅安余録がまた、秀逸。
男はどうだとか、女はどうだとか、女郎の話なんかも出てきて、今の時代とは異なるものの、編集者と違って、池波さんは男女の区別が少なく、人間とはという視点で共通の発言をしているのが、人を人として見る池波さんの眼差しを感じる。
曰く
男も女も共通して、人の身になって考えるということができる人が一番いいわけだよ。なかなかできないことなんだけどね。
そして、我欲が少ない方が幸せになれる。俺も我欲がつよいと言うことば。
池波さんの眼差しに、優しさと厳しさが同居している。この相反するものを体現できるのが、大人なんだと思う。
大名が、好悪を言わない、料理がまずいと言うことを言わないのは、その料理を作った人に累が及ばない様にする配慮からとのこと。そしてそのための教育を受けていたとの言葉は改めて勉強になる。
geminiで、大名の教育本を調べたところ、儒教の大学がルーツだと知る。
ということで、初めて大学を読もうと思った。四書五経も、論語より前の書と誤解していたので、よい勉強の機会となりました。 -
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2025 食欲の秋 〜私の知らない昭和の美味しいもの そして池波正太郎さんの人生〜
タイトルは『食卓の情景』ですが、私の生まれる前の「昭和の情景」も伝わってきます。池波正太郎さんのエッセイです。“うまい、うまい”と書いてあると、出てくる食べ物が美味しそうに感じ、味わいたくなってきます。食べ物のみならず、文章も味わい深く読みやすいです。絵が見えるような文章だなと思います。
私が好きなお話は、“梅雨の湯豆腐”“チキンライス”“とんかつとカツレツ”“カレーライス”“縁日”“菓子”です。
“カレーライス”のお話の中の先生と、10歳の池波くんの心温まるエピソード。じーんときました。池波さん流カレーレシピも載っています。スープカレーのようなものがお好みのようです。
“菓子”のお話に出てくる京都「村上開新堂」《好事福盧(こうずぶくろ)》みかんゼリーのようなもの。美味しそうです。
池波さんの生い立ちから仕事の遍歴、執筆時のひと工夫や、苦労話、小説が生まれ出る瞬間のことまで記されていて、読んでいてお得感がありました。表紙絵、挿画も自筆とのこと。素晴らしき才能!
池波さんは、本音丸出しで書いているので、良かった飲食店はもちろん、気分を損ねた飲食店についても言及しています。よく観察しておられる。
おそらく、また本書を読みたくなると思います。 -
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『泣き男』
前巻で、やらかしてしまった同心の細川峯太郎が頑張ってちょっとだけ成長する話。
座頭の辰の市と女房のお峰は、それぞれが盗人働きをしていたが今では気質となっている。腕の良い按摩の辰の市を呼ぶ同心や与力もいるくらいだ。
だが辰の市は浪人盗人の青木源兵衛に見つかってしまった。盗みの協力を断る辰の市に対して、青木はお峰を人質に取り…。
==足を洗った盗賊は何度か出てきて、密偵になったり、死んだり、捕縛されたりします。今回の夫婦は恩に対して筋を通す人たちなので無事でいてほしいなあと思いながら読みました。
『瓶割り小僧』
鬼平は捕らえられた盗賊、石川の五兵衛に見覚えがあった。正確には顔ではなく、その傷に。
そうだ、まだお役に付く前の鬼平が見かけた困っしゃくれた悪ガキの後の姿なのだ。
鬼平は思う。誰も信用できず世を拗ねた者がいたとして、だれかが目をかけてやれば盗賊になどならないのかもしれない。
しかし盗賊となった者を決して許さないのが鬼平の役目でもあるのだ。
『麻布一本松』
前の話でちょっとは名誉回復した細川峯太郎に対して、こちらの話は思いっきり名誉失墜してしまった木村忠吾(^_^;)
木村忠吾は最近見回りも女房にも「なんか面白くない」とむくれている。市中見回りに出た時に、浪人に乱暴を働く無頼の輩のような真似もする。
数日後、また市中見廻りに出た木村忠吾に近づいてきた女がいた。「私は以前あの浪人に絡まれて嫌な思いをしたんですよ。やっつけてくださってスッキリしました。お礼に明後日別の場所でお会いしませんか」木村忠吾の好みの婀娜っぽい女!ついに女房以外の女を抱けるぞ!
だが翌日、鬼平の共をして見回りに出た時に、二人は浪人たちに襲いかかられる。
==
今回の忠吾はやり過ぎ。
鬼平のダンナ、忠吾をきっつく叱ってやってくだせえ。
『討ち入り市兵衛』
鬼平の密偵でもある茶屋のお熊婆さんが、道で倒れていた男を見つける。それは松戸の茂蔵という盗賊だった。茂蔵の親分は隠居した昔気質の盗賊蓮沼の市兵衛だ。そんな隠居老人のところに上方の盗賊の鹿間の定八が来て「江戸で大仕事をしたいので手引を頼みたい」という。市兵衛は定八の血生臭さを嗅ぎ取り「あんな畜生に江戸を荒らされたら名折れになる」ときっぱり断った。そこで怒った定八の配下が、茂蔵を襲ったのだ。
隠居の蓮沼の市兵衛は盗賊の大親分とは思えないほどの穏やかで小柄な老人となって静かに暮らしている。だが片腕の茂蔵が襲われ、凶悪な盗賊が江戸に入ったとなったら覚悟を決めた。自分とともに命を捨てる配下の者たちとともに、定八の盗人宿に討ち入るのだ
『春の淡雪』
同心の大島勇五郎が使っている密偵である博打打ちの雪崩の清松が盗賊とともにいる姿を目撃された。大島勇五郎は小柄で控え目で剣も弱いが、聞き込みと尾行では良い働きをする。大島は、清松が盗賊だとは知らないのか?
だが大島は抜き差しならない状態になっていて…
『男の隠れ家』
昔気質の盗賊玉村の弥吉が江戸に現れた。鬼平は同心や密偵に見張りをさせる。だがどうもおかしい。江戸の町をただ散歩したり、浪人に追いかけられて泡を食って逃げ出したり、とても手練れの盗賊とも思えない。
実は弥吉の武士装束と編笠で江戸を歩いていたのは、吉野家の旦那だったのだ。この旦那さん、よく働く誠実な人柄で商売も上手いのだが、婿養子で女房にはバカにされ、奉公人たちからも軽んじられている。そんな折に出会った二人は意気投合したのだ。
==ちょっと軽い面白い話、なんだけど、最後の悪い女への意趣返しが現代の女である私には「そりゃー悪い女だけど、さすがに気の毒(-_-;)」と感じてしまうのよ。 -
購入済み
人気時代小説第8巻
もはや説明不要ですらある人気時代小説第8巻。
火付盗賊改方の長官である長谷川平蔵とその部下や元盗賊の密偵たちの活躍を描く今作。
この巻で、見逃せない話は見かけは鍾馗さまの様にイカツイのに剣術はからっきしダメの見掛け倒しの用心棒高木軍兵衛が登場する「用心棒」と、平蔵の親友岸井左馬之助がいよいよ結婚!?しかしお相手の女性には前夫の影しかも盗賊?という「あきらめきれずに」が見どころと思われる。
オール読物という雑誌に連載されていたためか1話完結の短編で書かれており、好きな話から読み進められるのがこういう時代小説のいいところだなと思う。
近年でも松本幸四郎氏主演のドラマが放送されているみたいなので気になる方は是非。 -
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老剣客の秋山小兵衛と道場師範の秋山大治郎、女剣士の佐々木三冬を中心に泰平の世で生きる武士が描かれる時代小説の第4巻です。
雷神、箱根細工、夫婦浪人、天魔、約束金二十両、鰻坊主、突発、老僧狂乱が収録されています。
副題の『天魔』は笹目千代太郎という小柄で無害に見える危険人物が登場するお話です。
尋常の親から生まれた化け物のような人斬り、この笹目千代太郎はドラマ版でも一際目立つ悪でありましょう…私は好きです。
『夫婦浪人』は男色の内容ですが、小兵衛のようにそういった嗜好に疎くても楽しめるお話でした。
全てお話したいところですが、これからお読みになる方の楽しみを奪わないためにもこの辺で…。
5巻にも期待します。