池波正太郎のレビュー一覧
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『鬼平犯科帳 2』
池波正太郎
『鬼平犯科帳 2』
第二巻では、長谷川平蔵(鬼平)が火付盗賊改方として江戸の闇に潜む盗賊たちと向き合いながら、彼自身の人間味や判断の深さがより濃く描かれる。物語は複数の短編で構成され、盗賊の哀しみ、裏切り、義理、そして人が悪へと傾く理由が丁寧に浮かび上がる。
鬼平は冷徹な役人ではなく、過去の荒事を知る者として、悪人の心の影を理解しながらも、許すべきでない悪は容赦なく裁く。その“情と非情の境界”が、この巻でも強く印象づけられる。また、平蔵の配下である同心や密偵たちの働きが光り、彼らの忠義や生き方が物語に厚みを与える。
江戸の町の空気、職人の暮らし、料理屋の匂いなど、池波正太郎らしい生活感のある描写が続き、読者は「江戸の人間模様」をじっくり味わうことになる。第二巻は、鬼平の信念と、彼を支える人々の姿がより深く描かれ、シリーズの世界観が一段と広がる一冊。
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以前、『散歩のとき何か食べたくなって』を読んだ時思った事、池波先生って、お酒お好きなんだなぁ(笑)
最初の「巣と食」からすっかり引き込まれてしまった。
二十余年も前に結婚したとき、当然のことながら、私は、母と妻という二人の女にはさまれて暮らすことになった。母はまだ血気さかんであり、家内また気の強い女であったから、お定まりの〔もめごと〕が起るのは、これまた当然であった。
こうしたとき、一家の主である男は、二人の女に屈服するか、または二人の女を屈服させるか、そのどちらかを選ばねばならない。
〔もめごと〕は、先ず台所からはじまる。
飯のたき加減、味噌汁の味、漬物のつけ方などから、姑と嫁のいさかいが起る。
「おれは自分ひとりで飯を食べる。それはお前(家内)がつくれ。お前とあんた(母)が食べるものは、あんたがつくって、おれの飯がすんでから二人が食べるのだ。」
と、私はいった。
二人は服従した。
中略
人それぞれに、わが〔巣づくり〕に努力しているわけだろうが、私の場合は、母と家内の〔共同の敵〕になることによって、姑と嫁を接近せしめた。
叫び、怒鳴り、叱り、脅し、全力をつくして〔悪者〕となったのである。
いまや、私が数日の旅行をするときいたとき、母と家内が実にうれしそうな顔つきになり、母はいそいそとカレンダーの前へ行き、私の旅行日へ赤鉛筆で〔しるし〕をつけるのだ。
こうした〔悪者〕になる場合、母と家内のどちらへも一分の〔えこひいき〕があってはならない。家内を叱りつけた翌日は、むりにも母を叱る。母に注意をあたえたときには、むりにも家内に注意をする。
なるほど! すごいなぁと思う。確かに共通の敵がいれば、協力し合う。けれどなかなか出来る事ではないし、自分が悪者になる勇気を持つことは難しい。
もうひとつ、〔酒〕というエッセイについて
先生のお父様は、すごい酒飲みで、一夜に二升は軽く飲んだそう。それもすごいけど、なんと、四つか五つの頃先生も、台所の一升瓶から酒をゴクゴク飲み、身体じゅうに火がついたようになって苦悶したらしい。笑ってしまった!そんな先生をお父様は、戸外の積雪の上へ抱いていって、ころがし、こうすると、すぐに酔いがさめるから…と雪だらけにしてしまったらしい。ほんとかな?今だと救急車で病院行きです。
晩酌は、膳に出る食べ物によって、家のものが日本酒、ウィスキー、ブドウ酒、ビールなどをはこんで来る。
いろんな料理を食べるシーンが出てくるたびに、この時、先生は何を飲んでらしたのかな?と思う。「煉瓦亭」のカツレツを食べた時は、ウィスキー・ソーダを2杯飲んだ記載がある。カツレツにはハイボールなんだ(笑)
ところで、先生の飼い猫のシャム猫さんは、清酒が好きと書かれていてびっくり。小皿に入れてもらって、ピチャピチャ飲んでいるなんて、信じられないけど、家の中に飲み友達がいたんですね。私も欲しいなぁ、飲み猫友達! -
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『鬼平犯科帳 1』
池波正太郎
池波正太郎の代表作である『鬼平犯科帳』は、江戸の町を舞台に、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵(鬼平)が、盗賊たちの悪事を取り締まりながら、人間の弱さや哀しみと向き合っていく物語。第一巻では、鬼平の人物像が丁寧に立ち上がり、彼がどのような信念で“悪”と対峙しているのかがじっくり描かれる。鬼平は冷徹な役人ではなく、過去に自らも荒事に関わった経験を持つため、悪人の心の影や事情を理解する目を持っている。だからこそ、ただ斬り捨てるのではなく、必要な場面では情をかけ、しかし許すべきでない悪は容赦なく裁く。その“厳しさと優しさの同居”が、鬼平という人物の魅力を強く支えている。物語には、江戸の町の空気が生き生きと描かれ、料理屋の匂い、町人の息遣い、職人の技、裏社会の緊張感が、池波の筆致によって鮮やかに立ち上がる。第一巻はシリーズの導入として、鬼平の信念、仲間たちとの関係、そして江戸の町の“生きた舞台”を味わうことができる一冊。読み進めるほどに、鬼平の「人間を見る目」がじわじわと沁みてくる。