池波正太郎のレビュー一覧
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鬼平初の特別長編「雲竜剣」。ふと「不知火剣」はあるのかしら?と相撲の型から連想してしまった。
かなりのボリュームであったが、読んでいる際にはそれほど長く感じなかったのは、やはり世界観に引き込まれたからだろうか。事件が立て続けに起こった後、これがどのように繋がるのか、読んでいくと…なるほどねぇ。という感じである。ちょっとしたミスリードらしいものもあってついつい止まらなくなる。
長編ではあるが、連載時にはそれぞれに小タイトルが付けられていたようで、順番に「赤い空」、「剣客医者」、「闇」、「流れ星」、「急変の日」、「落ち鱸」、「秋天清々」の七タイトルがある。
今回は被害にあった同心や門番が多く、捜査 -
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今回収録されている話は、
「あごひげ三十両」、「尻毛の長右衛門」、「殿さま栄五郎」、「浮世の顔」、「五月闇」、「さむらい松五郎」の六篇。
鬼平の世界では、盗人の世界の話として、掟がよく出てくる。盗みの三ヶ条がそれだろう。しかし、盗人間の決め事というのは、その都度説明されることが多い。
「尻毛の長右衛門」では、口合人に仕事を世話してもらった布目の半太郎が、お世話になる長右衛門の組織の女性といい仲になってしまう。「さむらい松五郎」では、既に轆轤首の藤七の一味に加入している須坂の峰蔵が一味を抜け、別の組織に入りたいという。これはどちらもアウトらしい。
組織を束ねる者からすれば、それはそうかもしれない -
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今回収録されている話は、
「熱海みやげの宝物」、「殺しの波紋」、「夜針の音松」、「墨つぼの孫八」、「春雪」、「一本眉」の六篇。
「殺しの波紋」では、与力 富田達五郎が登場する。またしても剣の達人が登場するが…何とも切ない。
犯罪者を相手にする仕事をしているからか、何かの拍子に暗黒面に陥ってしまうことがあるのだろう。そのままズブズブと沈み込んでしまう恐ろしさを感じた。
今回、最も楽しめた話は「一本眉」である。中村吉右衛門の『鬼平犯科帳』では、「墨つぼの孫八」と一緒にして脚本が練られている。どちらかというと、「墨つぼの孫八」に力点が置かれているように思われる。
どうしても話の都合上、盗賊がたくさん -
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この巻で全体の半分。
今回収録されている話は、「いろおとこ」、「高杉道場・三羽烏」、「見張りの見張り」、「密偵たちの宴」、「二つの顔」、「白蝮」、「二人女房」の七篇。
「いろおとこ」、「高杉道場・三羽烏」、「白蝮」とレベルが高い剣士が登場するが、残念なことばかり。
火盗改には平蔵のほか酒井、沢田と剣の力のある同心がいるが、そんなに多くない。機動力があり、手に余るようならば盗人を斬って捨てることもある火盗改。捕縛も含め、剣の能力に長ける者がもっといてもいいように思うが、なかなか難しいようだ。
私としてはお気に入りの沢田が活躍してくれるので嬉しい。
「密偵たちの宴」は珍しい展開を見せる。そのまま話 -
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今回収録されている話は、
「男色一本饂飩」、「土蜘蛛の金五郎」、「穴」、「泣き味噌屋」、「密告」、「毒」、「雨隠れの鶴吉」の七篇。
しょっぱなから、忠吾さんの貞操がピンチになっていた。かわいそうだけれど、読んでいてついつい笑ってしまった。普段、女性に目がないゆえに、ムキムキの男色家に迫られるのは、さぞ恐ろしかったことだろう。
「土蜘蛛の金五郎」に出てくる一膳めし屋、美味そうであった。映像では丹波哲郎主演の『鬼平犯科帳』バージョンが近いイメージだろうか。
「泣き味噌屋」は少々気分が重くなる。愛してやまない妻子を辱められた上に殺害されるなぞ、考えるだけでもはらわたが煮えくり返る。川村弥助の死亡フラ -
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1巻から読み始めて、気付いたらもう10巻。
今回収録されている話は、
「犬神の権三」、「蛙の長助」、「追跡」、「五月雨坊主」、「むかしなじみ」、「消えた男」、「お熊と茂平」の七篇。
このうち二篇で、平蔵の密偵になった者が死んでいる。レギュラーの密偵になるのは難しいようだ。
個人的には、雨引の文五郎はもう少し活躍してほしかった。
「蛙の長助」にて、長助が「生きているうち、せめて飲み食いだけは好きにしたい」と願う一節がある。これは結構大事なことだと思った。現代は様々なモノであふれている。コレクターやマニア向けのアイテムも山のように存在し、その購入と維持に大金をつぎ込んでいる。これにより、文化水準が -
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今回収録されている話は、
「雨引の文五郎」、「鯉肝のお里」、「泥亀」、「本門寺暮雪」、
「浅草・鳥越橋」、「白い粉」、「狐雨」の七篇。
「本門寺暮雪」では凄腕の刺客が登場する。丹波哲郎主演の『鬼平犯科帳』では、それこそ作中の刺客を表現する「凄い奴」というタイトルに変更されていた。
「血闘」の時なども読んでいて思ったが、長谷川平蔵は決してスーパーマンではない。確かに剣の腕は素晴らしいのだが、だからといって10人以上を相手に、ズバズバ斬っていけるわけではない。そういうところが、よりリアルに感じる。
「浅草・鳥越橋」はなんとなく話が途中で終わっているような気がしてしまう。捕り物があったわけではないか -
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収録された話は、
「用心棒」、「あきれた奴」、「明神の次郎吉」、「流星」、
「白と黒」、「あきらめきれずに」の六篇。
収録篇数が少ないが、それは「流星」のボリュームによる。頭脳派でしたたかな賊に剣客までつくと、ろくでもないことになる。
「兇賊」は平蔵暗殺を企てる賊の話だったが、今回は平蔵の周りの人々を襲い、平蔵を凹ませるだけでなく、その隙に盗みまではたらこうとする話。そんなこともあって、内容が濃い。
そういえば、丹波哲郎主演の『鬼平犯科帳』での、この「流星」では、剣客役に『ルパン三世』の銭形警部役の納谷悟朗
さんが出演されていた。声だけでなく、演技も素敵だった。
さて、「あきらめきれずに」では -
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収録された話は、
「雨乞い庄右衛門」、「隠居金七百両」、「はさみ撃ち」、
「掻掘のおけい」、「泥鰌の和助始末」、「寒月六間堀」、
「盗賊婚礼」の七篇。
真っ当な(?)盗賊であっても、その引き際は難しい。
組織の維持というのも難しい。優秀な「右腕」がいるのはいいことだけれど、それが大きな野望を抱いていると怖いことに。
本巻も様々な盗賊の人間模様が見られる。
気になったのは、巻末の「解説」。いらないと思う。
解説を請け負った人は、それがずーっと残るということをよくよく考えて書いてほしい。何刷目であろうと、残るわけだから。
冒頭で「池波さんの文章は映画的である」と述べながら、結局その話ができずに終わ -
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今回収録されている話は、
「礼金二百両」、「猫じゃらしの女」、「剣客」、「狐火」、
「大川の隠居」、「盗賊人相書」、「のっそり医者」の七篇。
「礼金二百両」は、話の冒頭で火盗改メの運営資金捻出について触れられている。仕事内容に反比例するような予算額のため、長官に就任した者の私財を売らないと十全な捜査ができないというのは、誠に大変な話。「寛政の改革」の時期にあたり、倹約が尊ばれたのだから、さらに困難といえる。
「剣客」は同心沢田の剣の強さを実感できる話。お気に入りのキャラになった。酒井祐助もいいけど、沢田小平次の出番もこれからさらに増えるといいなぁ。
「のっそり医者」は敵討ちに関係する話だが、1