あさのあつこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
美しい都市に住む純粋培養の少年と、その都市の外側に住む危険な匂いのする少年が、不思議な巡り合わせで強く結びつく物語。
紫苑とネズミ。当然、無垢で理論的な少年が紫苑であり、薄汚い場所の乱暴者がネズミである。しかしネズミは、粗忽者としか思えない登場の仕方なのにも関わらず、古典や物語に精通した教養を備えており、時折紫苑を小馬鹿にしたように使う敬語も美しく、なんとも途方もなく、魅力的な少年なのである。
紫苑はネズミによってその命を救われる。が、ネズミは紫苑によって、過去すでに命のみならず、その心をも、はからずも救われていたのであった。
「救いの手が奇跡のように差し伸べられることもあるんだって……あんたが初めて、教えてくれた。
ここにある何千という物語のように、人間には予想もつかないことが起こるんだ。だから、おれは、生き延びることができた……あんたの言うとおりだ、人は確かに人に救われることがある。それをあんたが教えてくれたんだ。あんただけが教えてくれた……そっちの貸し分は高い。悔しいけどな」
これはネズミの台詞であるが、最も好きな言葉でもある。
自分に希望を与えてくれた、ただ命を救うよりその価値の方が重いというネズミの言葉を、とても好ましく思う。
この美しく整備された都市の本性と、その外側について、読者は紫苑と共に少しずつ触れていくのである。 -
Posted by ブクログ
「贅沢は敵だ 欲しがりません勝つまでは」
そんな厳しい戦時下でも輝きを失わなず前向きに必死に生きようとする少女達の
友情と青春物語。
青春物語が得意なあさのさんならではの
小説。
戦時下でも今と変わらない少女達のおしゃれへの憧れ、美味しいものが食べたい、友人とのおしゃべり、恋ばな、と思春期の女の子の
「好き」の気持ちが良く伝わってくる。
戦時下では大声で笑ってはダメ、服装はモンペだけ、敵性語を口にしたらダメ、などダメなことのフルコース。
そんな中でもささやかな喜びを支えに少女達の明るさが物語を照らしてくれているので戦争ものだけど暗くなく、むしろ眩しく感じるシーンもある。
4人が美しい布でブラウスを縫い、おしゃれを楽しみながらデザイナーへの夢や将来3人が着るウェディングドレスのデザイン画を渡すシーンはとってもいい。
少女達にとってこの4人で過ごす時間とおしゃれの話や夢が、生きる原動力となり心の支えになっていたのだろう。
だからこそ希望を失わず夢を持つことが大切なのだと感じた。誰もが戦争中で悲壮感を持つなかおしゃべりを楽しみ笑っている少女達の姿が誰よりも光り輝いて見えました。
読み進めながら4人のなかの誰かが欠けてしまうのではないかと不安で仕方なかった。
4人全員に美しい花を咲かせて欲しいと祈りながら読まずにはにはいられなかった。
読後もしばらく少女達が頭から離れなかった。
戦争さえなければと…。
好きな本を読んだり友達と大きな声で笑ったり、おしゃれをしたり、美味しいご飯を食べたりと当たり前が戦時下では当たり前ではない世の中。
今の平和の世に感謝の気持ちを忘れないように、本を読んで戦争と平和について学んでいきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ去年の新刊案内で気になっていた『おもみいたします 凍空と日だまりと』(あさのあつこ)。
揉み師の盲目17歳少女と、その患者達の話でしたが…
内容はもちろん、【凝りが解れた人の心理】や【江戸の警備組織】などを知れて面白かったー。
トップが言ってる事は揺らいじゃならないし、全て正しいものとされるという理不尽には今もイラッと来てて、
今が江戸幕府下じゃなくて良かったと思ってしまいます。
本書がキッカケでシーシャのお店のお姉さんと話せたし、『信長のシェフ』(西村ミツル 梶川卓郎)にも【諸白】という日本酒が出てきたと部分的な事を何故か思い出せたので、
嬉しかったー。
こういう繋がりっていいね。
ただ…日本酒を覚えようと思っていたわけじゃなかったのに、何で諸白を思い出せたんだろうっていう謎は残ってますが、
まぁいいか。 -
Posted by ブクログ
怖かったり、切なかったり、温かい気持ちになれたり、様々な感情を呼び起こされる短編集でした。海の美しさと青さを描く「仕舞い夏の海」は文章力の高さに惚れ惚れとしながら読みましたし、達樹の傍から茉莉がいなくなってしまう寂しさも伝わってきて、引き込まれました。「うちの猫は鼠を捕りません」では夢を見ているかのような気持ちにさせてくれる不思議なBARの雰囲気と、仲の良かった夫婦が引き裂かれていく様子を堪能することができました。「夢女房」では時代劇を見ているかのような気分で読むことができました。下駄を作る職人である矢八の妻を想う気持ちと、受けた恩に報いようとする姿には胸を打たれるものがありました。どうして和之介が矢八の妻をあやめてしまったのか、それだけがよくわかりませんでしたが、商人として生計を立てなければいけない緊迫感や使命感はよく伝わってきました。個人的に好きな短編は「お花見しましょ」です。仲が良かった友達が川で溺れてなくなってしまった悲しみと、その友達の体調が悪いと知っていながら釣りに誘ってしまった後悔の念がよく伝わってくるお話でした。それでいて、なかなか心の距離が近くならなかった優衣と最後は通じ合えたのも良かったです。一番恐ろしく、人の怨念というものを感じたのは「蛍女」でした。他人の命や金を奪うことになんの抵抗感も抱いていなかった我丈が、生き方や名を変えても怨念に苛まれ続けるという展開に、背筋が凍るような思いをしながら読むことができました。
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Posted by ブクログ
シリーズ6作目となると安定した面白さに、登場人物たちも友人知人かのように思えてくる。
父の診療所を手伝いながら医者を者を目指すおいちは、飾り職人・新吉と結婚する。その祝言を挙げている時に、商家で毒物混入事件が起き、事件の幕が切って落とされる。
おいちの長屋の元住人が犯人は自分だと名乗り出るが、彼の無実を信じるおいちは、岡っ仙五郎親分と力を合わせ、真相解明に奮闘する。
このシリーズの魅力の一つにおいちの父松庵と伯母おうたとの掛け合いがあり、今回も楽しませてくれる。さらに、おいちと新吉とのいちゃいちゃ問答も加わり、楽しみが倍加する。
おいちが通う医塾に3人の娘が入塾し、またおいちの身にもある変化が。
新たな人々の登場に、このシリーズはますます目が離せない。次回作は『虹色の幻』だとか、読まずにいられないだろう。