あらすじ
胸を匕首(あいくち)で刺された骸(むくろ)が発見された。北定町廻(きたじょうまちまわ)り同心の木暮信次郎が袖から見つけた一枚の紙、そこには小間物問屋遠野屋の女中頭の名が。そして、事件は意外な展開に……(「楓葉の客」)。表題作をはじめ闇を纏う同心・信次郎と刀を捨てた商人・清之介が織りなす魂を揺する物語。時代小説に新しい風を吹きこんだ『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第3巻、待望の文庫化。
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シリーズ3作目、清之助、信次郎、伊佐治が事件の解明に一肌脱いでいくのは同じである。
今回は4つの短編だったが、弥勒の月で冒頭で亡くなった清之助の妻おりんのことも描かれていてシリーズに厚みを感じた。
「楓葉の客」は春日屋の娘お絹が遠野屋で櫛を万引きをする。そのころ、信次郎と伊佐治はあがった死体の見分をしていた。どんな縁があるのか。
「海石榴の道」は帯屋の三郷屋の主である吉治がおせんの元を訪ねたらおせんが首を吊っていた。吉治は人殺しの嫌疑をかけられる。さて結末は?
「宵に咲く花」では、伊佐治の義理の娘おけいは、幼いころから夕顔の花が怖く、白い花を見ると熱を出したり、気を失ったりしていた。伊佐治の息子と結婚し忘れていたが、ひょんな事から夕顔に出くわしてしまう。おけいの内面に潜むものはなんだろう。かんぴょうが夕顔の実からだとは知らなかった。干瓢と漢字で見ても夕顔は出てこなかった。知らないことを知る喜びは人のDNAに組み込まれている不変の欲求のように思う。
「木練柿」は熟柿だろう。私は甘い熟柿が好きで、ふるさと納税でいただいたが一箱届き、食べきれそうになかったのでご近所にお裾分けした。さて、物語はおみつに連れられ散歩に出ていた赤ん坊のおこまが拐われる。おこまは清之助とおりんの間の子ではないが、清之助が育てている娘だ。
木が清之助やおりんで、おこまが木練柿で木に守られて育っていくのだろう。
短編4作というが、私には一つの作品の章立てのように感じた。そう感じるのは親子の間柄がテーマになっていると感じたからだ。あさのあつこさんの表現力に魅了された。
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信次郎の「うるせえよ」にいつもドキッとしてしまう。
ホント酷いし、実際居合わせたら(そんな、言い方ってもんがあるだろうに)って絶対思うんだろうけど、確かに騒ぐより大事な事があるわけで、間違ったことは言ってなくて……。
だから、ハッとしてしまうのかな。
遠野屋さんは風のない月夜のイメージだなぁ。
信次郎と出遭ったことは良くも悪くもあるだろうけど、
親分さんを父のように慕ってて欲しいなぁって思ってしまう。
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『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第3巻。
⬛︎ストーリー⬛︎
胸を匕首(あいくち)で刺された骸(むくろ)が発見された。北定町廻(きたじょうまちまわ)り同心の木暮信次郎が袖から見つけた一枚の紙、そこには小間物問屋遠野屋の女中頭の名が。そして、事件は意外な展開に……
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遠野屋を真ん中にした短編集。
めちゃくちゃ面白かった。
本シリーズ3作目までの、最高傑作。
ハートウォーミングな話もあれば、謎解きを満喫できるものもあり、さらには遠野屋とおりんの恋話まで大満足の一冊だった。
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3作目になったからか、短編集だからか、登場人物に慣れてきたからか、前2作に比べるとスルスル読めて気持ちが良かったです。
ホッとする感じがありました。
このシリーズの映像化も難しいだろうなあ。登場人物を演じられる人って、とても上手な人だろうな、と思います。
主人公二人、けっこう若いんですよね。読んでいくうちに、人生の深い経験者のような年齢を思ってしまうけれども、若いんですよね。
さて、4作目に進むとしましょうか。
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清之助と信次郎の2人の関係がなんとも言えず興味深い。研ぎ澄まされた刃で向き合うような緊張感がありながら、お互いに惹かれ合う好敵手。
また、物語も血縁ではない者が本当の家族になろうとする心の繋がりを描いたものが多く、そのひた向きさに世知辛いこの世界に希望が見える気がした。
あさのあつこ、さすがと思わせる。
前作をもう一度読み直したくなった。
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このシリーズ、弥勒シリーズって名前なのか…どうなの?いいの?弥勒は一昨目だけなのにな。
兎に角。
第三弾にして、短編集。四つのお話が入っています。私は伊佐治贔屓なので、宵に咲く花がお気に入りです。
このシリーズで、この第三弾が一番好き。短編で描いても、くすまないあさのあつこの旨さには唸る。
まぁしかし、清さんに怒涛のごとくトラブル発生なのは…物語の性質上仕方ないとしても。なんというか。トラブルまみれで、気の毒になる(笑)がんばれ、清さん、がんばれ、遠野屋。
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いくつかの短編からなる今回の木練柿。主要な登場人物たちの周りを固める人たちに焦点をあてた物語。おみつ、おけいなど女性たちに焦点が当てられた物語が多かった印象。
おこまが攫われた話や、おけいが夕顔を見ると気分が悪くなることから始まる話、商いの話や、おみつが貰った文が汗で読めなくなってしまった話など多種多様で、どれも遠野屋らしさと信次郎らしさかある。
さて、次は長編かな?
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小間物問屋遠野屋の主、清之介。北定町廻り同心の小暮信次郎。岡っ引の伊佐治。この3人を中心に江戸で起こった事件を解決していく。
清之介は暗い過去を持つ、得体の知れない何かを持つ男。小暮信次郎はいけ好かない心がすさんだ男。伊佐治は人の心を持ち、悪を正したいと思うまっとうな男。性格が全く合わない3人の共通点は切れ者であること。切れ者であるが故に何故か心がそそられて繋がっている。
「木練柿」を最初に読んだ私は「何故、清之介は武士を捨てて町人になったのか?」「何故、過去に敵でも仇でもない人々を斬り殺したのか?」「妻の死の真相は何なのか?」など読後は前シリーズが気になった。
登場人物が個性豊かでグッと惹きつける言いまわしや描写はさすが、あさのあつこだなぁと思わせる作品でした。
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「弥勒」シリーズ第三弾。今回は短編集。表題になっている「木練柿」は、清之助が刀を捨て、遠野屋の婿として迎え入れられた頃の回想が挟まっていて興味深い。清之助と義母おしのとの関係もまた変化しているようだ。おりんは清之助を闇から救い出し、陽の下へ立たせてくれた。そのおりんはもういないけれども、伊佐治のように、清之助が商人としての生を全うできるよう願わずにはいられない。
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弥勒の月シリーズ第三巻。
同心の信次郎、岡っ引きの伊佐治、小間物問屋遠野屋の主、清之介。
この三人を中心にした短編集で、表題作を含む四編がどれもとても良かった。
読者である自分が三人の関係性に段々と慣れてきたのか、江戸の町で生きる人々の思いに感情移入できて楽しめました。
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内容(「BOOK」データベースより)
胸を匕首で刺された骸が発見された。北定町廻り同心の木暮信次郎が袖から見つけた一枚の紙、そこには小間物問屋遠野屋の女中頭の名が、そして、事件は意外な展開に…(「楓葉の客」)。表題作をはじめ闇を纒う同心・信次郎と刀を捨てた商人・清之介が織りなす魂を揺する物語。時代小説に新しい風を吹きこんだ『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第三巻、待望の文庫化。
令和2年2月23日~25日
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弥勒シリーズ3作目。
短編集となっていたけど、読みごたえがあって途中でやめられなくなってしまった。
捕物帳としての謎解きも面白く、決して人から好かれる性格ではない信次郎の魅力が、じわじわと伝わってきて癖になる。
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胸を匕首で刺された骸が発見された。北定町廻り同心の木暮信次郎が袖から見つけた一枚の紙、そこには小間物問屋遠野屋の女中頭の名が、そして、事件は意外な展開に…(「楓葉の客」)。表題作をはじめ闇を纒う同心・信次郎と刀を捨てた商人・清之介が織りなす魂を揺する物語。時代小説に新しい風を吹きこんだ『弥勒の月』『夜叉桜』に続くシリーズ第三巻
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前作2編が物足りなかったので期待していなかったが、作者が登場人物を描くのに慣れてきたからか、ずっと面白くなっていた。
信次郎は名前に反して、だーれも信じていない歪な男だが、今回歪なままにかわいげのあるところを見せている。
ホームズに影響を受けているようだが、ワトソンくんに心を開いていないホームズって単なる性格破綻者なのがよくわかる。
一応ワトソン役の伊佐治さんに対しては少し心を開きかけているようなそうでもないような、どっちかというとドラマのジョンの立ち位置に近い。腹も立つけど見捨てられないみたいな。
そこに第三の男、清之介が信次郎の前に『大きな謎』として立っている。
この構図は今までの探偵ものに少なく、面白い。
捕り物の謎はありきたりだが、それはホームズもいっしょ、解いていく過程をいかに面白く描くのかが大事だが、それは成功していると思う。
出てすぐ死んだおりんとの話おみつの過去を夢だと思う話など、脇道の方が読みごたえがあった。
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相変わらず、人物造型のうまさが際立つシリーズ。
まったく相反する立ち位置ながら、互いに惹かれあう清之介と信次郎の緊張関係が秀逸。
間を取り持つ伊佐治のキャラクターが、また魅力的。
伊佐治に「ほとほと愛想が尽きる」と言わしめる信次郎が、素直で人の善い同心になってしまったら、事件の解決はできないだろうし、魅力も半減する。
闇を抱え、それでもあるいはそれゆえ、物腰も佇まいも穏やかで、周りの人々を惹きつける魅力を持っている清之介も捨てがたい。
この三人の関係のまま、シリーズは続くだろうし、それを期待したい。
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清之介と信次郎の緊張感あるやり取りがたまらない。
人間味がますます出てきた清之介もつんつんしっぱなしの信次郎も嫌いじゃないw
そしてそれを一歩引いて見ている伊佐治も。。
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通勤電車に乗ると本を開きます。読みながらも、何駅目だとか、周りの乗客の様子などは意識しています。ところが本に集中してしまい何駅か分、周りへの意識が飛んでしまうことがあります。流石に乗り過ごすことは無いですが、それは好きな本だという証拠なでしょう。
この本もそうでした。でも不思議です。
あさのさんは特別好きな作家さんという訳ではありません。鋭く切り込む描写、それも二太刀、三太刀としつこいほど続く靭すぎる文体です。そして主人公たちのキャラが時代小説にしては強すぎるように私には思えるのです。しかし読み始めると一気に引き込まれてしまいます。
面白かった。
ところでこのシリーズ、名前が無いのです。
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やっぱり、やっぱり、私は信次郎が好きだーーー!
しゃべり方が、口調が、江戸時代ってことを考えるととってもかっこいい!
解説にも書いてあったけど、信次郎って、実際いたらめっちゃ嫌なヤツなんですよね。でも、何故か読者は信次郎を好きになってしまう・・・。私も、あさのさんの罠にはまっちゃいましたよ。
あ、あと、少ししか出てこないけど、太助も地味に好き。
話の内容はね・・・、実はあんまり覚えてないって言うか、印象がないというか・・・。おこまが無事に帰ってこれて良かったと思います。あと、信次郎が清之助に刀を向けるとは思わなかった。周りから見たら非常識な行動なんだろうけど、それも格好良く見えてしまうのは私が異常だからなのでしょうか・・・?(泣
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シリーズ第三弾は短編集。
遠野屋は相変わらず過去の闇から抜け出すことに苦心しているものの、信次郎についてはあさのさんが特別な存在として描こうとしているけれど、自分にはそこがまだ完全に腑に落ちないでいる。
彼の屈託をもう少し深く掘り下げて欲しいところです。
伊佐治親分の真っ当さが全体の雰囲気を極端に暗くせずに踏み止まっているところは上手いと思います。
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今回は短編集。
信次郎のヒトデナシ感もパワーアップ。
清之介のヒトタラシ感もパワーアップ。
伊佐治、最後の良心。
心理描写は相変わらず細かいが、若干しつこい。一つ間違うとクドい。
しかも、細かいのに何か物足りない。
事件自体は、心理描写がなければ秒で終わる。
バランスが、悪いのかも。
人物描写が深く穿ち過ぎなのか?
でも今のところ、細か過ぎる心理描写・人物描写は、ギリ欠点までは行っていないと思う。
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弥勒シリーズ第三弾
4編からなる短編集でした。
■楓葉の客
殺された男の袖には、遠野屋の女中頭おみつの名前が書かれた紙が。
おみつの過去が明らかになります。
そして、遠野屋が家に匿ったお絹
二つの事件の真相とは
■海石榴の道
殺人事件の濡れ衣を着せられた三郷屋の吉治
遠野屋と新しい商売を立て直そうとしていた矢先の事件。
吉治を救うことができるのか?
■宵に咲く花
伊佐治親分の娘のおけいが神社で襲われます
おけいは思い出せないが、過去、夕顔の花に絡む事件が..
おけいが過去に見たものとは?
■木練柿
遠野屋とおりんの過去の物語。
さらに、おこまがさらわれます。
おこまを助け出すことができるのか?
遠野屋がより魅力的な人物になってきました(笑)
信次郎はあいかわらずだけど(笑)
楽しめました。
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シリーズの短編集。
こんなに全ての話に遠野屋を絡ませてくるのかと驚いた。もうこれは名探偵コナンと同じだ!w
短編はあまり好きではないので星3つ。
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星3つにしたが、本当は星3.7…(笑)
シリーズ初の短編集。
今回は信次郎、伊佐冶、清之助の周りを取り巻く人たちに起こる事件だが、やっぱり三者三様に事件に絡み、心が動いていくさまがおもしろい。
不思議だ。なぜ、こうも魅了されているのか分からない…。
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弥勒シリーズの第三弾。
シリーズの登場人物、主人公の遠野屋清之介ほか、同心木暮信二郎や岡っ引きの伊佐治の家族などが出てくる短編集。これまでのような大きな事件が起きた訳ではないけど、清之介の商人としてだけではない人心掌握術のすごさ、それはそうしようと意図してしていることではないすごさ、同心信二郎の事件の概要のとらえ方(本人曰く、下絵を描くようなもの)が読んでいて面白い。