あさのあつこのレビュー一覧
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「決意編」と副題がつく『おいち不思議ものがたり』第5弾は、おいちの一大転機の巻。
以前から想いを寄せる新吉との仲が進展、ついに・・・。
一方、医者の仕事では父の手伝いから離れ、女医を育てる医塾へ入塾の運びと。
そんなおいちが今回、岡っ引きの仙五朗親分と立ち向かうのが連続失踪事件。
おいちを巡る周りの人たちー叔母のおうたに父の松庵それに新吉ーと、無残な事件との明と暗の差が際立つこの巻。
おうたと松庵との丁々発止の愉快な会話が、このシリーズの魅力のひとつで、今回も楽しめ、おうたはさらに、おいちと新吉との仲を進ませる粋な役割も果たす。
一方、事件に対しても「あたしはいつだって正しい者の見方だよ。人さ -
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夏だな、と感じるとなぜ青春に浸りたくなるのだろう。久し振りにあさの先生の本を引っ張り出す。若者であった当時から十代のリアルさが刺さるなと思っていたが、端々に痛みを感じられるから、リアルなんだろうなあと今になって気付かされた。
夏の気配を感じるところから、初秋に思いを馳せるところまで、本当に読んだ時期がぴったり(例によって記憶が定かではないため偶然の産物)。主観で語られるため、時系列がたまに入り乱れるが、視点や思考が反復横跳びする17歳感があってむしろ自然な描写なんだろうな。理穂と美咲はもちろんのこと、如月や真央やスウちゃんも、個々の人物像が夏の浮き立つ空気の中に鮮やかに立ち上がっていて、ただた -
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東雲は全国で割と多くある地名で、私も近くに住んだことがある。本来、夜明け前の茜色の空を指し、これから成長していく期待が現れていると思うのである。
本題名は、さらにその前であろうか、東雲の途ということは東雲に向かっている、夜明けに向かっているのか、まだ東雲の状態の途中なのか、楽しもうと、ページをめくった。
町人風の男が殺害されるところから始まる。その男は武士だと木暮信次郎が見抜く、そしてその男は遠野屋清之助とどんな関係が・・・。
清之助の止まっていた時間が動き出す。
信次郎、清之助、伊佐治がそれぞれの味を出しながら、清之助の過去に迫る。過去を断ち切るには原点に戻ることなのかもしれない。それは心 -
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弥勒の次は夜叉、月の次は桜。
人の心の奥底に潜むもの、「死そのものより、人間の不可思議さ、暗さ、怪奇さに寒気を覚える」と伊佐治が思う場面が、全てを物語っているかのように感じた。
信次郎と伊佐治が「ほつれ」を解していく。3人の遺体から、読み取る場面は面白い。
清之助は「死」を呼び込むと信次郎は言うが、信次郎もまた同類なのだろう。清之助の周りも俄かに流れていく。面白くなってきた。
弥勒にも夜叉にもなれるのが人だ。内に弥勒を育み、夜叉を飼う。腕の立つ者ほど内を感じ取ることができるのだろう。
清之助の運命が流れるなかで清之助の志は貫けるのか?おりんがなぜ自死したのかが朧げに理解できはじめた。時代