あさのあつこのレビュー一覧
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ネタバレ大学進学が決まった千香、中学生で不登校になった甲斐、詐欺事件を起こし逮捕歴のある陽太、大手会計事務所を辞めたコトリ。四人は生きづらい人間のための居場所を提供するために「アーセナル」を軌道に乗せようと奔走する。
失敗してもやり直せる社会であってほしいし、それぞれの必要にこたえてくれる場所はほしい。そして一歩踏み出すための「武器」となる方法を教えてくれる人がいることは大事だ。精神論よりも大事なことかもしれない。
筆者のもどかしさや願いが詰まった作品。
問題も起きるし、火種が残っていて今後不穏な感じもある。作品自体は全体にうまくいきすぎで甘いかもしれないけれど、こういう問題提起は大切だと思う。 -
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腕っこきだが冷たい感じのする同心木暮信次郎、人情家岡っ引き伊佐次。
最愛の女房を殺されながら動揺を表に表さない訳ありの過去を持つ遠野屋の主人。
三者三様の登場人物がストーリーを紡ぎ謎を解いていく。
当初本作の主人公は信治郎という思いで読んでいたが、次第に伊佐次の目を通した人間物語に思えてきた。
「バッテリー」などスポーツ関係の作品が多いのだと思っていた著者の初めての時代小説。
なんともキレのあるキップのいい文章に魅了されました。
古今亭志ん生さんの「黄金餅」を聞いているような気がしました。
文章に酔うという感じで。
文庫本巻末に亡くなった読書家、児玉清さんの解説があり、こちらも素敵でした。 -
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弥勒シリーズ第10弾。
父親の手で暗殺者として育てられた過去を持ち、徒ならぬ気配を纏っている遠野屋・清之介。
「まっとうなひとかどの商人だ」としょっちゅう伊佐治は口にするけれど、信じてない自分がいる。
凍えた殺気、底なしの暗みを岡っ引の伊佐治が感じ取れないはずがない。
同心の信次郎が「遠野屋は死神さ。本人にその気がなくても、人の死を引き寄せちまう」と言う様に、清之介の周りには血生臭い事件ばかりだ。
やはり、信次郎は清之介を有為な駒として手放す事は出来ないし、それを楽しんでいる。
清之介自身も殺したいほど憎い信次郎の名推理に興味を示し、何故か事件に首を突っ込んでしまう。
このまま、信次郎に利用さ -
Posted by ブクログ
弥勒シリーズ第9弾。
今回も惨殺から事件は始まるが、相変わらず、遠野屋の主・清之介、北町奉行所定町廻り同心・小暮信次郎、岡っ引の伊佐治のやり取りは読者を惹きつける。
悪人を斬れと煽る信次郎。
清之介は「わたしは人を殺しはいたしません。まして、あなたの目の前で誰かを斬るぐらいならあなたを斬ります」と言ってのける。
そんな信次郎も「やってみな。おもしれえよな。ぞくぞくするほどおもしれえ」と返す。そんな2人を冷静に宥める伊佐治。絶妙な掛け合いが面白い。
いったん人殺しの技を身に付ければそうそう容易くは戻れないと清之介も信次郎も理解している。
清之介は今後、人を殺さずに生きていけるのか?信次郎は悪人