ドストエフスキーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ぺトラシェフスキー事件で逮捕され、死刑宣告を受けたのち、刑の執行直前に恩赦によってシベリア流刑を言い渡されたドストエフスキーの、獄中体験をもとにした記録。「死の家」とは監獄のことである。
ドストエフスキーは、それぞれに強烈な個性をもった数々の囚人や刑吏の言動を克明に記録し、その心理状態に透徹たる観察眼を向ける。人間が非人間的になる様を剔抉する描写は、流石だ。
囚人は、過酷な監獄生活の中で、粗暴であったり狡猾であったりと野獣的な存在に陥っている。然し、その描写は必ずしも常に陰鬱な調子を帯びているわけではなく、獄中に生きる者たちのしたたかな生活力、ときには明るさや人間味さえ感じさせるところ -
Posted by ブクログ
うーん、先に他の傑作を読んでいたせいか、どうも退屈というか、凡庸というか、そういう感は否めなかったような気がする。
個人的にはヒューマニズムってあんまり好きじゃない。
ある哲学者が「ドストエフスキーは哲学的にあまり掘り下げたものでもないから、今では読む気がしない」というようなことを述べていたが、そういう部分は如実に感じた。
この作品は思想という面ではあっさりしたものなのだが、作中の哲学批判なんかは自分も普通すぎて面白くも何ともなかった。
ドストエフスキー的・ロシア的なものを平均化して分冊せずに1冊にまとめたような作品だとは思った。
当時は相当受けが良かったそうだが、それには納得。
-
Posted by ブクログ
老婆を殺害するという犯罪を犯してしまったラスコーリニコフ。彼は自らを愛する者たちに対しても警戒と不信を抱き、愛すべき母と妹を悩ませる。
そして妹に結婚を申し込んだルージンとの争い──そんな中で、「事件」の衝撃から立ち直れないラスコーリニコフは、心清らかなソーニャとの交流を次第に深めていく。
人を殺すということは、紛れもなく大きな罪である。たとえ一時の激情に任せたとはいえ、老婆を殺害したラスコーリニコフの心の苦しみと家族への葛藤、そして苛立ち。
様々な人間模様が交錯する中で、ラスコーリニコフの行動を不審がる者たちの心の動きまでを、作者は巧みな筆さばきで描き出している。 -
Posted by ブクログ
極端な物語だ。
登場人物みんなが、切羽詰まっている。こういうギリギリの状況こそ、文学が人間を描くのには最適な舞台なのだろう。そう考えてみると、賭博場というのは、作家にとって理想的な環境が揃った空間であるのかもしれない。
この小説には、二人の強烈な賭博者が登場する。
一人は「わたし」という一人称で語られる主人公、もう一人は、高額な遺産を遺すであろうと親戚から期待されている老婆。いずれも常軌を逸したギャンブルの仕方をして、その行為で、自分の人生そのものを博打のタネにしようとする。
そして、もう一人、自らはギャンブルには関わらず、大儲けした男の金を使って堅実に地場を固める、峰不二子っぽいマドモア -
Posted by ブクログ
古い悲しみは人の世の偉大な神秘によって、しだいに静かな感動の喜びに変わってゆく。沸きたつ若い血潮に代わって、柔和な澄みきった老年が訪れる。わたしは今も毎日の日の出を祝福しているし、わたしの心は前と同じように朝日に歌いかけてはいるが、それでも今ではもう、むしろ夕日を、夕日の長い斜光を愛し、その斜光とともに、長い祝福された人生の中の、静かな和やかな感動的な思い出を、なつかしい人々の面影を愛している。わたしの人生は終わりかけている。そのことは自分でも知っているし、その気配もきこえているのだが、残された一日ごとに、地上の自分の生活がもはや新しい、限りない、未知の、だが間近に迫った生活と触れ合おうとして