【感想・ネタバレ】悪霊 1のレビュー

あらすじ

最近わたしたちの町で、奇怪きわまりない事件が続発した。町の名士ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の奇妙な「友情」がすべての発端だった……。やがて、夫人の息子ニコライ・スタヴローギンが戻ってきて、呼び寄せられるように暗い波乱の気配が立ちこめはじめる。ドストエフスキー最大の問題作、新訳刊行なる!

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Posted by ブクログ

ドストエフスキーの小説を読んでいると、よく登場してくる人種がいるけど、『悪霊』では特にニヒリストにスポットが当てられ、彼らの話がメインプロットになっている。スタヴローギンの告白を始め、検閲との戦いに終始したのがよく分かる。

だからこそ、登場人物の微妙な仕草や、何を象徴しているのかよく分からない物の描写など、その曖昧さが作品を埋めているのだとも思いつつ、それを可能にするドストエフスキーの神がかり的な直観的なセンス、変態さ。他にこんな作品を描ける人はいるのか。

第一部の、我らが敬愛するヴェルホヴェンスキー氏の恋バナは、正直長く感じたものの、圧巻の作品。

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2024年11月01日

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ドストエフスキー。物語が動き出すと格段に引き込まれるのだが、前半の人物描写の部分(大いに伏線があるのだ)が、なかなか退屈で読み進まない。そこを超えると面白くなってくる。

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2018年01月12日

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『ネチャーエフ事件』に発想をえて綴られたドストエフスキーによる政治小説です。『内ゲバリンチ殺人』という陰惨なテーマとスタヴローギンという悪魔的な主人公に『人間とは何か』ということを突きつけられます。

ロシアの誇る文豪、ドストエフスキーが後年に発表した『五大長編』のうち、内容的にはもっとも『危険』とされる小説である『悪霊』それが亀山郁夫氏の新訳によって現代の社会に甦りました。

この小説の構想を得たものは1869年に発生した『ネチャーエフ事件』と呼ばれる内ゲバリンチ殺人事件で、架空の世界的革命組織のロシア支部代表を名乗って秘密結社を組織したネチャーエフが、内ゲバの過程で一人の学生イワン・イワノフ(物語中ではイワン・シャートフ)をスパイ容疑により大学の構内で彼を殺害し、池の中に遺棄したというなんとも陰惨な事件でございました。ちなみに、このネチャーエフをモデルとしてピョートル・ヴェルホヴェンスキーという人物が造形されております。

しかし、ドストエフスキーの関心はある一人の登場人物に移っていくのです。創作ノートに
『いっさいはスタヴローギンにあり、スタヴローギンがすべて』
『小説のパトスは公爵(引用者注:スタヴローギンの創作ノート中の呼称)』
『残り全てのものは、彼のまわりを万華鏡のようにめぐる』
と書き記すほどになっていくのです。そんな悪魔的な人物であるニコライ・スタヴローギンを中心に『地獄編』ともいえるような物語が綴られていく、ここではその長い長いプロローグ的な一冊でございました。正直な話、僕はこの亀山郁夫教授による新訳でなければ、最後まで読み通すことができたかどうか、これを書いている現在でも疑問に思っております。

全体の構成はレポート・ナビゲート役を務めるアントン・G氏の『クロニクル』という形をとられており、彼の『視点』を通してこの壮大な救いようのない物語が幕を開けるのことになるのです。年代及び舞台は、1869年の秋から冬にかけてロシアのとある地方都市と、その郊外にあるスクヴォレーシニキと呼ばれる別荘地です。

プロローグである第1部第1章ではこの領地を統括するスタヴローギン家の女主人であるワルワーラ・スタヴローギナ(以下ワルワーラ夫人)とかつてはロシアの思想界をリードすると目されていながら、現在はワルワーラ夫人の庇護を受け、年下の人間相手に酒とカード賭博に明け暮れるというステパン・ヴェルホヴェンスキー氏との20年にもわたる『友情』物語の経緯が綴られております。僕はここを読んでいて読み飛ばしてしまおうかと思いましたが、後の展開に繋がる重要な『複線』があるそうなので、我慢して読みました。

それにしても…。ステパン氏の会話の部分。日常会話であるロシア語の間に当時のインテリ、もしくは貴族階級の必須教養であったフランス語を交えるという話し方は読みながらなんとも言いようのないものを感じ、日本語と英語がちゃんぽんになってしゃべる人間…。たとえて言うならジャニー喜多川氏を連想してしまいました。第1部を読む限りではステパン氏は『いい人』です。ただ、この『いい人』ぶりが全体から見るとものすごく浮いているのですが…。しかし、この20年間の間に二人の関係は『行き詰まり』を迎えつつあるという暗示的な予感がところどころに挟み込まれております。

われらが主人公『ロシア負のファウスト』ことニコライ・スタヴローギンがようやく出てくるのは第1部2章の『ハリー王子。縁談』からになります。ニコライ・スタヴローギンはステパン氏から養育を受け、学習院へと進学し、軍務に就くというエリートコースの人生を歩みます。しかし、その頃からにわかに放蕩にふけりだし、さらには二度の決闘事件を起こし、ワルワーラ夫人を心配させるのです。ステパン氏はそんなニコライ・スタヴローギンの行動をシェイクスピアの戯曲である『ヘンリー四世』の登場人物である「ハリー王子(ヘンリー五世の青春時代のあだ名)」を引き合いに出し、「一時的なことだ」
となだめるのですが、ワルワーラ夫人の胸の中には言いようのない不安が渦巻いているのでした。

さらに地元にいるときのニコライ・スタヴローギンの起こした『事件』があり、それは
『公衆の面前でガガーノフという男の鼻をつまんで引きずり回す』
『リプオーチンの妻の唇に心行くまでキスをする』
『県知事であるイワン・オーシポヴィチの耳を噛む』
などのもので、どう考えても常軌を逸したものです。ニコライ・スタヴローギンは一連の事件が元で、故郷の町を追われることになります。それが物語の始まる4年前ので出来事でございました。

一方、ワルワーラ夫人はヴェルホヴェンスキー氏との『関係』を解決するために自らの養女であるダーシャと彼とを結婚させようと、あれこれと画策するのです。

物語の『転』である第1部第3章では何かにひきつけられるかのように、『悪霊』の登場人物たちが次々とこの町に帰還します。

さらに第1部第4章では足の悪い『神がかり』の女であるマリア・レビャートキナが登場し、大きな転換点を迎えることになります。

そして第1部のフィナーレである5章において物語はいよいよカオス的な方向へと導かれていくのです。マリアの兄であるレビャートキン大尉がニコライ・スタヴローギンからマリアに贈られた300ルーブルを横取りし、さらにその上、領地を貰い受けたと主張し、ヴェルホヴェンスキーと長年離れて暮らしていた息子であるピョートル・ヴェルホヴェンスキー。彼と父親であるステパン氏との『断絶』した関係を示すやり取りは、本当に読んでいてつらいものがありました。これらによって全体が引き裂かれていく中で現れたニコライ・スタヴローギンがマリア・レビャートキナと結婚していたのかという問いに、その『真実』をやんわりと否定したスタヴローギンがその事実を知るイワン・シャートフに殴られ、スタヴローギンはてを後で十字に組み、されるがままになっていたのです。それにはある恐ろしい『意味』が…。ひそかにスタヴローギンに思いを寄せるシャートフの妹であるリーザが絶叫して気を失うというところで終わります。


第1部でこのすさまじさ。残りを読むのが楽しみでもあり、また恐怖でもありますが、この『悪霊』がとてつもなく『危険』だといわれるゆえんだけは、なんとなく分かったような気がしてなりません。

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2013年08月30日

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ネンイチドストです!
2023年『罪と罰』
2024年『白痴』
ときて今年2025年は『悪霊』でございますよ!
ドストエフスキーの五大長編を執筆順に読んでいるんですねー

もちろん大好きな光文社古典新訳文庫です
全3巻+別巻という構成となっておりまして、それぞれ546頁、747頁、626頁、363頁という大長編!さすがのわいもえいや!と気合を入れてかかる必要がありますわ

エンヤ!

はい、本編
もうね、さすがに三作目ともなるとドスちゃんのやり口にも慣れてきましたよ
あっち飛びこっち飛びです
しかもですよダブル主人公と目されるニコライとピョードルがまぁ出てこない出てこない
一巻の最後の方ですよ二人が出てくるの

つか恐らく主要な登場人物が勢揃いしたのが最後の最後です
500ページくらい読まされてのやっとですよ
しっかーし!この無駄に遠回りさせられたと思わせといてーの、ほんとに遠回りだったー!てのがドストエフスキーなのよ(じゃダメじゃん)

そしてね、一巻を読み終えてわいが思ったこと言っていい?
ダメ言われても言いますけどね
最後まで読んで、あ、ぜんぜん違ったー!てなるかもしれんけど、言っちゃいます
旅の恥はかき捨てとも言うし(いつ旅立った)

『悪霊』ってタイトルが秀逸過ぎる!!!

今のところさ、悪霊感ないのよ
悪霊感ってなんなのか具体的に述べよと言われたら困るけどないのよ
まあまあ平和なのよ

だけどなんとなく不穏な空気も感じとれるのね
だけどだけどそれって『悪霊』ってタイトルに引っ張られて深読みしちゃってるだけ?なんてことも思えるのよ
いやーどっちなのー!キーっ!

やばい2巻が楽しみ過ぎてドストエフスキーの術中にはまってーる

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2025年01月26日

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ネタバレ

登場人物が多いであろうことは覚悟していたが、何人かが頭の中で同一人物になってしまって、修正するのが大変だった。でもそれだけたくさんの人が登場するだけに、人間関係に厚みがあって面白い。
見た目だけの人物描写ではなく、その人物のかもしだす空気まで伝わってくるようで印象的だった。信念は顔に表れるし、それぞれに生々しい感情があり生きていると感じられる。激情的なのにも関わらず非常に繊細な面も描かれており、言葉の意味をひとつひとつ拾いながらそれぞれの事情を読み解いていく。
ハッキリとものを言わない人々の見せた断片を集めて、徐々にこの町で起きた問題の姿が明らかになってくる点が絶妙だった。下手なことを言わないように口を閉ざして、登場人物の一人として動向を見守っているよう。
2巻、3巻でどのような話になっていくのか楽しみだ。

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2024年07月11日

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俗悪と悲劇を結びつけるために多大な労力を要したであろう作品であり,構造を把握するだけでも複数回読まねばならないことは決まっている。その中で訳者による解説は心強い。

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2023年03月25日

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ドストエフスキーの本、以前挑戦した時は名前の法則の難しさ、(リーザとエリザヴェータは同一人物か?)などが把握しづらく挫折したが、本書の巻末の「読書ガイド」にて解説が添えられている。

ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の関係がよくわからず、不思議だった。はじめは夫人の子供の家庭教師だったのか?とも思うけど、もう子供たちは大きくなり独立したりしているのに、未だに同じ屋敷に住んでいる。ハンサムなヴェルホヴェンスキーの服装にまで口出しして恋人のようにも見えるけど、姪との結婚を勧めたり。距離が近いパトロン?うーん。変な関係。

夫人の息子スタヴローギンとヴェルホヴェンスキーの息子ペトルーシャが登場するとちょっと面白くなってきた。

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2022年05月04日

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他のドストエフスキー作品と同じように、初めは名前を覚えるのが大変だった
序盤はそうでもないが、途中から段々と変な雰囲気になってきた
登場人物の一人一人に細かい設定があってすごいなあ

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2021年09月29日

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むかし手に取った時は、途中から何読んでるのかさっぱりわからなくなるほど、話が全く頭に入って来ず。
一巻の途中であえなく断念。

中村文則のエッセイ読んだことをきっかけに(バーの帰りに女の子の家にまんまと遊びにいけたのに、悪霊の続きが気になって仕方ない中村文則は、二兎を得ようとして女の子の部屋でモリモリ悪霊を読み進み、結局女の子との間には何も起こらず朝を迎えた、あの悪霊)、そんなにおもろいんかともう一度チャレンジ。

2回目手に取った今回は、あら、こんな話でしたっけ?
と思うほど、一度目の私のおぼろげな記憶にあった話とは全然違って、驚くほどスイスイと面白く読みました。
一巻の終わりまで難なくたどり着き、読書ガイドを読んでからは火がついた!
革命好きのあたしとしては、どうしても最後までたどり着きたい物語として認知した。

最後まで読んで、感想としては、それでもまだ今の私向きの話じゃなかったということ。
映画をたくさんみると、話なんか関係なく、この映画見ていたいと思える映画に出会えるようになるけど、
この本もきっとそういう本なんだと思った。
もっとたくさん本読んで、それでもっかい読んだらいつか、その豊かさが分かりそう。

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2021年02月19日

Posted by ブクログ

文庫本の栞に書いてある『主要登場人物』を、多分300回くらい見たと思う。亀山郁夫さんは人名呼称を随分とシンプルにしてくれてるらしいけど、聞き慣れない長い名前を覚えるところがいつもしんどい。。
前半ダラダラ、第一部第五章から物語が一気に加速を始めたところで、第二部へ続く。
150年前にこんな超長編書いてるって、ロシア人すげえなあ。(ほぼドストエフスキー個人の凄さだろうけど。)
ドストエフスキー本人がよく使う『ロシア的なもの』の意味が、掴めそうで未だ掴めず。残る二冊を読み終えた時に見えてくるか?

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2020年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<登場人物>
ヴェルホヴェンスキー氏
ワルワーラ夫人
ニコライ・スタヴローギン  奇行がある。
アントン・G  わたし 物語の語り手。
リーザ リザヴェータ・ニコラーエヴナ
ダーリヤ
キリーロフ
レビャートキン大尉
シャートフ
リプーチン
ペトルーシャ  ヴェルホヴェンスキー氏の息子。
プラスコーヴィヤ  リザヴェータの母。

ワルワーラ夫人の性格
”夫人が何にもましてがまんできなかったのは、裏にまわってこそこそと陰口を叩くやり方で、つねに正々堂々とした戦いを好んでいた。” (p390)
【物語】
ワルワーラ夫人とヴェルホヴェンスキー氏との関係で話は進んでいく。
ワルワーラ夫人の勧めで、ヴェルホヴェンスキー氏とリーザとの結婚話が持ち上がる。
第1部の後半に一気に物語は急転回する。
レビャートキン大尉がスタヴローギンを脅し、ワルワーラ夫人に匿名の手紙を出していたことが暴露される。
スタヴローギンの帰国。
シャートフが、いきなり、スタヴローギンを公衆の面前で殴る。
[レビュー]
ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の会話劇が中心で、物語が中々動きださない。
それが、後半、怒濤のように物語が進む。


彼の物語るテクニックにおいて、この『悪霊』だけでなく、まず、行動、言動のその反響をまず書き、そして、その実際の言動、行動を書くというものがある。

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2020年01月19日

Posted by ブクログ

以前別の出版社のものを読もうとしたら訳が馴染めず序盤でリタイヤしてしまったけど、こちらは読みやすい訳なので読みきれた。
この訳者の訳は批判されることもあるようだけど、細かいところは一旦おいておいてまず読みきることを前提とするなら一番向いてる気がする。
しおりに登場人物表もついてるのでわかりやすいし。

それでも後半までは話があまり進んでる感じがしなくてしんどかったけど、キリーロフの話は引き込まれるものがあったし、終盤やっとスタヴローギンとピョートルが登場してからは展開が気になって楽しく読めた。
ここからだいぶ話に勢いがつきそうな気がするので2巻も楽しみ。

(2024/01/22 再読)

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2019年01月26日

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「悪霊」は実は装飾本で部屋に一冊あるのだけれど、結局手軽に手にとれる光文社のものに手を伸ばす。ドストエフスキーを読むのは久々だけれど、一巻から徐々に感覚を思い出す。年始は悪霊の序盤を少しずつ読んだ。これから3月ぐらいまでの間、しばらくドストエフスキーの世界に浸りたい。

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2014年01月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キリスト教的世界観の抱える問題をどう突き詰めるか。
それを表現するにあたって、
『悪霊』はうってつけの舞台である。

ドストエフスキーは本作において、
記憶するのが容易でない数の人物を登場させ、
かの世界を、政治的文脈を交えた隘路を超克しうるものとして提示する。

ここに脈絡づけられるものとして、
本作に据えられたプーシキンの詩とルカ福音書のエピグラフは
あまりにも象徴的である。

《悪霊》には少なくとも三つの意味を見出すことができる。
西欧から入り込んできた無神論という思想。
無政府主義実現のため、活動組織をオルガナイズすべく暗躍するピョートル。
そして、ニヒリストであり退廃的なスタヴローギン。

さまざまな《悪霊》が、
農奴解放令を迎えた過渡期に生きる人々のエートスを揺がせ、
また彼らを惑溺させる。

中でも注目すべきがスタヴローギンだ。

汎スラヴ主義者のシャートフ、人神思想の持ち主キリーロフ、
無政府主義の五人組、リーザを始めとする女性たち……。

多くの登場人物がこの悪霊に憑依され、
身を滅ぼしてゆく。
そのアンチテーゼとして存在しえたのは、
「信仰」の象徴たるステパン・ヴェルホヴェンスキーくらいであろう。

その空虚さゆえの妖しさと魅力が、
スタヴローギンにはある。

最後に、物語において重要な位置を占める「スタヴローギンの告白」。
チーホン僧正の述べる、
「無神論は完全な信仰へ向かう道である」とは非常に意味深い。

問題をロシア正教の再肯定に収斂させてゆく、
ドストエフスキーの真髄をここに見て取ることができよう。

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2013年03月26日

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ネタバレ

殺人とか反社会主義とか神がかりとか、ドストエフスキーおなじみの要素満載。登場人物が意図的にせよそうでないでせよ狂いすぎていて、感情移入して読むにはキツイ。しかも救いがない分やや胃もたれ。
古典を読んで思うのは聖書やらのモチーフに関する知識がないせいで解説がないとキツイ。

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2012年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ロシア人って、こんなにしゃべるんだろうか?
でも好き。
巻末の読書案内も分かりやすくて良いです。
訳は昔なじみの新潮文庫のほうが好き。

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2012年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『罪と罰』を読んだときのような引き込まれるような感覚はないかな。まだ長い物語の序章のような展開で登場人物の紹介と事件に向けた伏線をはりまくってる状態なので仕方ないかな。後半になって濃い目のキャラクターたちが登場してきて2部に進むのに期待が持てる。解説が分かりやすくて良いな。光文社の古典新訳文庫は良い

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2025年12月04日

Posted by ブクログ

正直言って退屈な語りが大半なのだが、
キリーロフの神に対する考え方と
5章に入ってからの展開が見どころ。

名前が覚えられないので、
登場人物一覧をつけておいてほしい。

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2016年01月17日

Posted by ブクログ

この巻ではまだ、なぜ「悪霊」という題なのかがわからない。しかし癖のある人物がたくさん登場し、関係性も入り乱れ、目まぐるしく言葉が飛び交う中に、数々の伏線が張られていくような予感がある。
亀山さんの解説を読んで、物語がどうやら今後とんでもない方向に向かうらしいことを知ってどきどきしています。自分が女だからか特にワルワーラ、リザヴェータのアンビバレンツな言動に共感と関心をもって読んでるので、次巻以降の展開が楽しみ。男では今のところキリーロフに傾倒。建築技師ってところがまた素敵じゃないー。

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2013年03月01日

Posted by ブクログ

ゆったりとスタートします。まず、参加者の関係や関連する事件が語られる。ロシア文学は、名前が難しくて登場人物の名前を確認しながら読んで行きました。4章、5章あたりから物語は動き始める。ドストエフスキーの好きな伏線があちこちに仕掛けられているようです。後半を読み始めたら、関係する部分の再読が必要になりそうな予感がします。

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2010年11月23日

Posted by ブクログ

読みやすく、すぐに次が読みたくなったけれど、なかなか2巻がでない。出版社に問い合わせたら、年明けに発刊の予定だという!
いくら気合が入っているといっても翻訳書なのだから、続けて出して欲しい。河出文庫の『白痴』は3巻シリーズ毎月出されていたではありませんか。

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2010年11月07日

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