あらすじ
最近わたしたちの町で、奇怪きわまりない事件が続発した。町の名士ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の奇妙な「友情」がすべての発端だった……。やがて、夫人の息子ニコライ・スタヴローギンが戻ってきて、呼び寄せられるように暗い波乱の気配が立ちこめはじめる。ドストエフスキー最大の問題作、新訳刊行なる!
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Posted by ブクログ
登場人物が多いであろうことは覚悟していたが、何人かが頭の中で同一人物になってしまって、修正するのが大変だった。でもそれだけたくさんの人が登場するだけに、人間関係に厚みがあって面白い。
見た目だけの人物描写ではなく、その人物のかもしだす空気まで伝わってくるようで印象的だった。信念は顔に表れるし、それぞれに生々しい感情があり生きていると感じられる。激情的なのにも関わらず非常に繊細な面も描かれており、言葉の意味をひとつひとつ拾いながらそれぞれの事情を読み解いていく。
ハッキリとものを言わない人々の見せた断片を集めて、徐々にこの町で起きた問題の姿が明らかになってくる点が絶妙だった。下手なことを言わないように口を閉ざして、登場人物の一人として動向を見守っているよう。
2巻、3巻でどのような話になっていくのか楽しみだ。
Posted by ブクログ
<登場人物>
ヴェルホヴェンスキー氏
ワルワーラ夫人
ニコライ・スタヴローギン 奇行がある。
アントン・G わたし 物語の語り手。
リーザ リザヴェータ・ニコラーエヴナ
ダーリヤ
キリーロフ
レビャートキン大尉
シャートフ
リプーチン
ペトルーシャ ヴェルホヴェンスキー氏の息子。
プラスコーヴィヤ リザヴェータの母。
ワルワーラ夫人の性格
”夫人が何にもましてがまんできなかったのは、裏にまわってこそこそと陰口を叩くやり方で、つねに正々堂々とした戦いを好んでいた。” (p390)
【物語】
ワルワーラ夫人とヴェルホヴェンスキー氏との関係で話は進んでいく。
ワルワーラ夫人の勧めで、ヴェルホヴェンスキー氏とリーザとの結婚話が持ち上がる。
第1部の後半に一気に物語は急転回する。
レビャートキン大尉がスタヴローギンを脅し、ワルワーラ夫人に匿名の手紙を出していたことが暴露される。
スタヴローギンの帰国。
シャートフが、いきなり、スタヴローギンを公衆の面前で殴る。
[レビュー]
ヴェルホヴェンスキー氏とワルワーラ夫人の会話劇が中心で、物語が中々動きださない。
それが、後半、怒濤のように物語が進む。
彼の物語るテクニックにおいて、この『悪霊』だけでなく、まず、行動、言動のその反響をまず書き、そして、その実際の言動、行動を書くというものがある。
Posted by ブクログ
キリスト教的世界観の抱える問題をどう突き詰めるか。
それを表現するにあたって、
『悪霊』はうってつけの舞台である。
ドストエフスキーは本作において、
記憶するのが容易でない数の人物を登場させ、
かの世界を、政治的文脈を交えた隘路を超克しうるものとして提示する。
ここに脈絡づけられるものとして、
本作に据えられたプーシキンの詩とルカ福音書のエピグラフは
あまりにも象徴的である。
《悪霊》には少なくとも三つの意味を見出すことができる。
西欧から入り込んできた無神論という思想。
無政府主義実現のため、活動組織をオルガナイズすべく暗躍するピョートル。
そして、ニヒリストであり退廃的なスタヴローギン。
さまざまな《悪霊》が、
農奴解放令を迎えた過渡期に生きる人々のエートスを揺がせ、
また彼らを惑溺させる。
中でも注目すべきがスタヴローギンだ。
汎スラヴ主義者のシャートフ、人神思想の持ち主キリーロフ、
無政府主義の五人組、リーザを始めとする女性たち……。
多くの登場人物がこの悪霊に憑依され、
身を滅ぼしてゆく。
そのアンチテーゼとして存在しえたのは、
「信仰」の象徴たるステパン・ヴェルホヴェンスキーくらいであろう。
その空虚さゆえの妖しさと魅力が、
スタヴローギンにはある。
最後に、物語において重要な位置を占める「スタヴローギンの告白」。
チーホン僧正の述べる、
「無神論は完全な信仰へ向かう道である」とは非常に意味深い。
問題をロシア正教の再肯定に収斂させてゆく、
ドストエフスキーの真髄をここに見て取ることができよう。
Posted by ブクログ
殺人とか反社会主義とか神がかりとか、ドストエフスキーおなじみの要素満載。登場人物が意図的にせよそうでないでせよ狂いすぎていて、感情移入して読むにはキツイ。しかも救いがない分やや胃もたれ。
古典を読んで思うのは聖書やらのモチーフに関する知識がないせいで解説がないとキツイ。
Posted by ブクログ
ロシア人って、こんなにしゃべるんだろうか?
でも好き。
巻末の読書案内も分かりやすくて良いです。
訳は昔なじみの新潮文庫のほうが好き。