黒澤いづみのレビュー一覧
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ネタバレおぞましいのに、読み続けずにいられない。強烈に引き込まれる物語。
美晴は会社員の夫とひきこもりの息子と暮らす主婦。ある日、彼女は息子の部屋で虫に似た姿のおぞましい『異形』を見つけてしまう。小型犬ほどの大きさの不快な生物は、息子・優一の変異したものに違いなかった。なぜなら、その頃、世間では『異形性変異症候群』という不可解な現象が広がっていたのだから。社会から隔絶された状態で暮らすニートや引きこもりの若年層だけがかかるその病気に、親たちはさまざまな反応を見せる。美晴は同じ病気の子供を抱えた親たちの会を見つけ、そこに参加する。
まず、子供たちが変異する異形の姿が何種類ものバリエーションがあり、読んだ時にかなり衝撃を受けた。恐怖ではなく、生理的嫌悪感に訴える姿にしたのは上手いと思う。恐怖の対象だと完全に敵になってしまうけれど、嫌悪感だとそういう「逃げ」の理屈を親側が正当化できない。
引きこもりイコール厄介者として向き合ってこなかった子供に、強制的に向き合わざるを得なくなる。それがこの病気だと思う。たとえ、ついには殺してしまうという向き合い方だったとしても。
次に、美晴の優一に対する態度にちょっと感心した。決して慈愛に満ちたものではないのだが、最初にぎょっとした以外はぞんざいに扱ったりせずに、あくまで扱いに困っている『息子』として接していた。
もしかすると彼女は、優一が高校を中退し、引きこもりになった時もこんな風に困惑しながら世話を続けてきたのかもしれない。そういうマイペースなところが繊細な優一にとっては傷つく言動になっていたのだろうけれど、優一のためにだんだん変わっていく美晴はたくましかった。
終盤の、異形になった子供たちのモノローグが続く部分は圧倒された。何も発信しない、ひたすら内側に抱え込むしかなかったたくさんの悲鳴、泣き言、呪詛。そして、その言葉通りの姿になっていった彼ら。
最後は少しだけ変化する社会があって、明るさが感じられた。
たぶん、何度か読み返すと思う。 -
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独特な設定が見事に活きる作品。
異形になる病の子供を持った親のお話。
自分だったらとてもまともに育てることはできない、と思いながら親の愛情に心打たれました。
でも読んでいくうちに、その親が追い詰めたんだな、と気づいていきます。病の原因も察知する頃には、片方が悪いわけではないという思いになりました。
不快だったのは、助けあいましょうと言いながら、現実逃避に走る変異者の親たち。必死に問題と向き合おうとする人の前で、のらりくらりしながら、こんな子供でも私たちは大事にしてます、とアピールされているようで、好きになれませんでした。
でも、そういう色々な家族の姿を、独特の設定を活かして描いた、心に響く小説でした。 -
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ネタバレ美晴の愛はすごいと思った。
変異しても愛しづつけることができない人、殺してしまう人がいる中で美晴はものすごく頑張ったと思う。だから優一も結難病として認定された。『異形性変異症候群』、別名ミュータント・シンドロームから回復できたんじゃないかな。でもたぶんわたし的に夫は回復できないと思う。
・これに罹ったが最後、患者は死に至るのだ。それは物理的な死ではなく、人間としての死である。
・優一を切り捨てる、という選択肢は美晴の中に存在していなかった。どう考えても、たとえ人の形を成していないとしても、息子はやはり息子だったのだ。
・「……おかあ、さん」
・美晴はか細く「ごめんね」と呟いた。 「……どうして怒らないの」 優一が言うと、美晴が首を横に振ってみせる。「恨まれても仕方ないもの。言ったでしょ、何でも受け止めるって」「僕の気が済むなら、殺されてもいいって言うわけ?」「いいわけないじゃない」 即答する声音はどこか恨みがましい。「死んだら化けて出てやる。毎晩枕元に立ってやるの」「それ、すごいヤだな……」「でしょ? ああ、殺されなくて良かった」
・覗きこんでくる母親の顔。名を呼ぶ声。紺色に染まった空。星の輝き。 それらを目にしてようやく、優一は漠然と「まだ死にたくない」と感じた。
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もしも息子が虫になったとしたら、愛情を注ぎ続けられるのだろうか。
この小説では虫に限らず、犬や植物、魚などにも変身する。
しかし単なる変身ではなく、どれもグロテスクな外見になってしまう。
その姿を受け入れられず殺してしまう親もいれば、主人公のようにこれまでの関係性を見つめ直し、親子関係を立て直そうとする人もいる。
コミュニケーションが取れずに外見も受け入れられないとなれば、拒絶してしまう家族の気持ちも正直わかってしまう。
子どもは親の所有物のように扱われ、それが優一にとっては苦痛だった。
過干渉はよくないが、子どもの幸せを思うからこそ、親はつい口を出してしまうもの。
親と子の在り方を見つめ直すことができる内容だった。 -
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宮部みゆきが衝撃を受けたと紹介していた1冊
カフカの『変身』が病として起こった世界
罹患すると、ある者は鳥のような異形に、ある者は植物のような異形に、一夜にして姿を変える
昆虫のような異形に変わった息子を持つひとりの母親
父親は、もう人間では無いのだから処分するように主張する
『変身』後の家族の絆がリアルに描かれていて考えさせられるし、これでもかというくらい良質などんでん返しが続くので、脳トレにもなる小説
A book that Miyuki Miyabe once mentioned as having deeply shocked her.
A world where Kafka’s The Metamorphosis has become a kind of disease—
those afflicted transform overnight: some into bird-like creatures, others into beings resembling plants.
At the center is a mother whose son has turned into an insect-like creature.
The father insists that since he’s no longer human, he should be disposed of.
It’s a thought-provoking story that vividly portrays the bonds of family after the metamorphosis, with a series of superb twist endings that make it as stimulating for the mind as it is moving for the heart. -
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作品紹介・あらすじ
こんなことになるなんて!
1行目は全員一緒、25編の「大騒ぎ」。
早起きした朝、昼の休憩、眠れない夜ーー。
ここではないどこか、今ではないいつかへ、あなたを連れ出す7分半の物語。
『黒猫を飼い始めた』『嘘をついたのは、初めてだった』『これが最後の仕事になる』に続く、会員制読書倶楽部:Mephisto Readers Club(MRC)で配信(公開)された大人気ショートショート集第四弾。
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25編からなるショートショート集。
Mephisto Readers Club(MRC)が贈る大好評シリーズ第4弾とのこと。既に第3弾と第6弾は読み終えた。
最初の一文は必ず「だから捨ててと言ったのに」で始めなければならない、という括りがある。
他のシリーズと同様に玉石混交。ただ他のシリーズよりも本書の方が面白い作者が多かった。ただ、飛び抜けて面白いというわけではなかった。
以下が面白かった作者。
須藤古都離
黒澤いづみ
岡崎隼人
砥上裕將
清志まれ
舞城王太郎
高田崇史
背筋
多崎 礼
谷絹茉優
夕木春央
最果タヒ
このうち清志まれはいきものがかりの水野良樹のペンネーム。谷絹茉優はChevonというバンドのヴォーカリスト。ミュージシャンが二人参加している。
上記の中では砥上裕將と夕木春央が特に良かった。歳を取ると、こうした小さな感動話に思わずウルっとしてしまう。そして最果タヒの文章。詩人だからなのかもしれないけれど、とても心に響いてきた。 -
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短編なのでサクサク読めた。
今回の書き出しテーマは『だから捨ててと言ったのに』…だいたい恋愛絡みか、夫婦関係こじらせ系が多かったように思う。
誰に対して言っているかで、作者ごとに思い付く話が違い、個性があって面白い。
アンソロジーは、知らない作家さんを知って、見つける機会にもなる。
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↓読んだ中で印象に残ったもの。
●良い話
砥上裕將『母の箪笥』
金子玲介『恋文』
●じわじわ来る系
潮谷験『無理解』
五十嵐律人『累犯家族』
背筋『こわくてキモくてかわいい、それ』
●設定の世界観が独特
黒澤いずみ『捨てる神と拾う神』
舞城王太郎『食パンと右肘』
多崎礼『海に還る』
麻耶雄高『探偵ですから』
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個人的には、金子玲介さんの『恋文』が一番馬鹿っぽく軽いテイストが面白かった。
また、多崎礼さんの『海に還る』は短編の設定にしては面白い。短いから逆に良かったのかな?
潮谷験さん『無理解』と、五十嵐律人さん『累犯家族』は、表題テーマらしいイメージ。