一夜のうちに人間をおぞましい異形へ変えてしまう奇病、「異形性変異症候群」。
ある傾向を持つ若者たちがかかるというその病気は、かかったが最後、患者は死んだものとみなされる。
ある日、専業主婦である美晴が息子の部屋に入ったところ、そこにはおぞましい芋虫の様な生き物が。理解のない夫と衝突を繰り返しながら、
...続きを読む美晴の悩める日々が始まる。
高校中退したニートの息子・優一が、突然異形へと変わってしまう病にかかった専業主婦の母親・美晴を主人公に、家族の関係性を描いた作者さんのデビュー作です。
ニートや引きこもりなど、社会に適合できない若者がかかる奇病、「異形性変異症候群」。
異形へ変わってしまった人間は死んだものとされ、人間として扱われることは二度とない。それこそ山に捨てようが、保健所に引き取ってもらおうが、極論殺してしまったところで家族が罰せられることもない。
家族がそんな異形になってしまった時、一体人はどんな行動に出るのか。
美晴を中心に様々な家族の姿が描かれていますが、受け入れがたい事情を抱えた各登場人物たちの心情や人間関係と、ジェンダーステレオタイプな美晴の家庭の姿が、とても息苦しくて痛々しい。親世代だけではなく、異形へと変わってしまった若者たちが悲痛な胸の内を吐露するシーンは心乱されました。
帯には、子供を殺す前に。親に殺される前に。すべての「向いてない人」に捧ぐ、とありますが、逆に親をどうしても憎んでしまう。いっそどうかしてしまいたいという人も読んだら少しだけ気持ちの整理がつく……かもしれません。