【感想・ネタバレ】人間に向いてないのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年06月22日

泣いてしまった。
読み始めの第1章の印象と読み終わった最後で180度ガラッと印象が変わる作品。

書き始まり方は異様な世界観で、現実からかけ離れている描写を理解する為に少々苦戦し、中には好まない文体だと思う人もいるかもしれない。
しかし読み進めていくと、異様な世界観であると思っていたものが、現代の世...続きを読むの中を示唆するようなセリフや心情、コミュニティの様子が主人公を中心に繰り広げられていて、最終的には自己投影までしてしまった。
発売日がコロナが流行り始め、私が読み終わったのがコロナが緩和してきた頃という事もあり、非常に感慨深いものがあった。

どんな姿であれ、親子や家族という繋がりは強いものなのだと改めて感じた。良い意味でも悪い意味でも。

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Posted by ブクログ 2023年06月13日

ただのグロい、奇抜な本では無い。
例えば、病気で見た目が変わる者やその周りの反応などが連想された。

主人公の母親目線で話が進む。
主人公は変異性異形症候群という見た目がグロテスクや虫や、それらに近いものにある日突然変わってしまうという奇病にかかる。

変異性異形症候群にかかったものはその時点で死ん...続きを読むだものとされ、人権などは一切が奪われるため、殺されたり捨てられたりはざらだった。

親だからという理由で主人公を捨てきれない母親と、元から主人公に嫌気がさしていた父親が衝突する。
一見すると母親に問題がないように思えるが、実はエゴにまみれている愛情で主人公に、当たっていた。

昔の奇病が流行った時代にも、現代社会にも似たようなことはあるよなぁと思うことが出来る作品でした。

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Posted by ブクログ 2022年12月28日

一気読み。
終始信じがたく想像しがたいストーリーな上に、丹念な、「嫌悪」「不安」「憎悪」あたりの感情描写が心にきた。。。社会小説チック。

解説にある「えずいても読みたくて泣ける小説」という表現がぴったりだと思う。
わたしも何度も背筋がぞわぞわして本置きながら読んだのに、最後泣いた。
読んでいて気持...続きを読むちのいい話ではないけど、読んでよかった。もし身近な人や自分が異形になったらわたしはどうするんやろう。。。在るだけ、を中々認められないかもしれない。。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月25日

カフカの「変身」を「皮肉」の意味で捉えて書いたような内容。
魚のような生き物になった自分の子供を食べた話が衝撃的だった。自分がもしこの病にかかったら、直ぐに近くの山奥に捨てられるか、施設に送られ殺処分されるんだろうなぁと思いながら読んだ。

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Posted by ブクログ 2022年09月30日

読んだことないタイプの内容で面白かった...
「変異」の描写が妙にリアルで最初はゾワゾワしたけど、後半にいくにつれ優一への共感が止まらなかった。
私は引きこもりではないしちゃんと学校にも通っているけれど、家での居場所がないって感じたこともあるし別に生きてなくてもいいんじゃないかって思ったことも何度も...続きを読むあるから優一に感情移入してしまった。
今までの人生ずっと他人と比較されたり、順位つけられたりそのことで一喜一憂してきたから、誰かに必要とされているって感じることは大事なことなんだな~って感じた。今のところまだ必要とされてる!って身をもって感じたことってないけれど。

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Posted by ブクログ 2022年08月30日

人間がいきなり異形(虫や動物や植物っぽいもの)になってしまう病。公に認知されその法制度も整備されている。しかも罹るのはニートばかり。
ある日ついに異形になってしまった息子、割り切る父親と諦めきれない母親。
カフカの「変身」も虫になるがそれは「役に立たない」ニュアンスが含まれるらしい。それを踏まえると...続きを読むさらにこの作品の深みが増す。
蜘蛛・芋虫・ムカデが混ざったような異形がずっと視界に入る、いわばグロ系なはずなのに、終わってみればまったく違う作品だった。おすすめ。

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Posted by ブクログ 2022年08月14日

母が子供にやってあげてきたというエゴと、息子が母に虐げられてきたという恨みが交錯するのが恐ろしかった。ある日人間が異形になるという病はフィクションだけど、何が起こるかわからないこの世界で決してフィクションで終われない、見過ごせないもしもの世界を体験した。全ての親が、親だからという本能だけで子供を守る...続きを読むわけではない。見た目が変わってしまったら、子供とみなせない。子供から見た親ではなく、世間から見たいい親を演じるのもいる。自分の子供が異形になったら、子供の死は、死体がないと受け入れられないけど、世間の目から離して後者を演じてしまうのかもしれない。それは愛ではない。エゴだ。

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Posted by ブクログ 2022年08月05日

高校を中退して5年間引きこもっていた息子が、ある日虫のような異形の姿になってしまった。
この設定だけを知ったとき、カフカの変身みたいだな、と最初に思った。
しかし、読み終わってみて、この本はホラー要素もありつつ、現代の病理を描いた「家族小説」だなと思った。

「異形」という誰も見たことのないはずのも...続きを読むのを文章で表現するのはとてもむずかしいと思う。
でも、この本を読んでいて文章にまったく引っかからなかったし、それぞれ個性のある異形の姿を想像することができた。
若干のミステリー要素もあり、構成もいい。結果、一気読み。
黒澤いづみさんの本を読むのは初めてで、まだ単行本は2冊のみの発表みたいだけど、きっとすごく文章力のある作家さんなんだろうな。だってこれがデビュー作だ。

子育て、子の将来、親なら誰でも関心を持つことだし、親の理想を必死で目指すようにする親も、少なくないだろう。
と言うか、親からまったく何の押しつけもなく成長できる人のほうが、少ないと思う。
かと言って「親からその程度の期待されたくらいで引きこもるなんて甘え」とは私は思わない。人それぞれ、持てる重さは違うからだ。ある人にとっては難なくこなせることであっても、それができない人はいる。そういう前提を、親は子育てにおいて見落としてしまいがちなのではないだろうか。私を含めて。

優一がなった病気は結局なんだったのか?
第4章の「※」異形に変貌した若者たちの嘆き、怒り、恨みを読んでいて、私なりに、少しだけ理解した気がした。
タイトル通り「人間に向いてない」、生きるのも嫌だし、人に迷惑をかけたり痛い思いをして死ぬのも嫌だ。そういう精神が体を蝕むということなのではないだろうか。
誰だって、人間関係や仕事で大きな悩みを抱えたとき「次に生まれ変わるならこういう悩みのない生き物、もしくは植物がいいなあ」なんて思ったことはあるだろう。私はある。別に死にたいわけではない、でも、このときの私は、確かに「私は人間に向いてない」と思っていた。

私は、息子を愛し続けることができるのだろうか?
私は、息子が異形にならないよう母として接することができるのだろうか?
子育て中の身として、身につまされる記載がたくさんあった。
この本の妙は、優一の母である美晴が、どこにでもいそうなごく普通の母であり、どちらかといえば親切な人というところだ。美晴くらいの思い(人並みの学校、人並みの会社、人並みの生活)を抱く親は多いでしょう。子を虐待してるのではない。そして、それを易々と受け入れてこなせる子も世の中にはたくさんいるのでしょう。
でも優一は違った。美晴は、「優一本人」を見ずに、「理想的な人並みの子」として見て、そう扱ってしまった。それが、優一の苦しみを生み出しているとは気付かなかった。
子ども時代には親への反発や、大人の理不尽への不満を感じていた私も、親になってみて、子どもの私が抱いていた不満や反発の矛先と同じ態度を、我が子に対して取ってしまっているのではないだろうか。
6歳の息子の寝顔を見ながらこの本を読み、様々な思いが去来した。
我が身を見つめ直す本でもありました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月28日

直近で読んだ本。
自分が「現実に即しながらも非現実要素を含んだ設定」が好きなこともあって、どハマりな一冊だった。
非現実要素を含むからこそ言いにくい本音をあけすけに語れる部分もあるんだろうなと思った。
主人公は蟲になっていたけれど、姿かたちを変えずとも「蟲」として扱われるような立場の人は少なからずい...続きを読むるのが事実だし、世間体を取っ払った本音を完全否定もできないのがむずかしいなと思った。
小説だからこそかなり綺麗な形でまとめられていたが、(それはそれで後味が良くて好き)そうもうまくいかないのが現実なのかと思うと世知辛くなった。月並みだなあ。
どれだけ周囲の期待を背負うかは相対的なグラデーションでしかないけど、いち側面として自分にも当てはまる部分はあるなと感じる。期待を背負う側としても、背負わせる側としても。「無償の愛」と名付ければ全ての傲慢が許されるのか。エゴからくる献身は全肯定されうるのか。親子という関係性そのものが庇護者と被庇護者という非対称なものから始まる時点で健全な関係性に至るにはかなり望み薄なんじゃないかという持論は置いといて。
弱者がわかりやすく顕在化するとこうなるのかなあ、という感じだった。刻一刻と移り変わる状況の不可逆性が強くて、一挙手一投足が後悔になりうる世界観がシビアだった。我が子と知らずに鈍器で肉塊にしてしまうことも、心身の疲労から自失しいつの間にか我が子だったものを食べてしまうことも、「無償の愛」だけでは親子関係が成り立たないことの証明だと思う。どう足掻いたって、子への期待、親への期待からは逃れられない。「期待」という感情が持つ負のエネルギーの最大値がこの作品で描かれていると思う。
でも「完全に憎みきれない」って感情が、他者も己も救うことがあるんだと思った。愛と情けで、諦め合って生きていくしかないんだろうな。

あと、全然別方向からの感想を言うと、やっぱり私はエリートがこわい。スタンダードが高い分、自分の常識の範疇外の事象に対する許容度が極端に低い。寛容さこそ正義だと思って生きているから、生きている世界があまりにも違って理解が追いつかなかった。先天的な要因と後天的な環境要因と、どんな経緯で優一の父があんな人格形成を経たのかもっと詳細に知りたいなと思った。自分が通った道以外を許容できない、想像できない、過度に憐れみ憤る姿勢は頂けないや
無関心を装ったネガティブな執着に近い関心ってきもちわるい


なんにせよいい読書体験でした、

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Posted by ブクログ 2024年01月14日

朝、目覚めると毒虫になっていた… 家族の在り方をショッキングに描く異形モノSF #人間に向いてない

■あらすじ
専業主婦である美晴が、引きこもりの息子の部屋を訪れると、中からごそごそという物音が聞こえる。そっと扉を開けると、そこには虫に異形化した息子の姿を目にすることに。世間では異形性変異症候群が...続きを読む若者の間で流行しており、息子はその病気にかかってしまったのだ…

■きっと読みたくなるレビュー
引きこもり、差別、親子夫婦などの家族問題、社会福祉…
世の中にはまだまだこういった問題が山積みで、結果悲しい事件になってしまうことも多いですね。本作は名作フランツ・カフカ『変身』の現代版ともいえる作品で、これらの課題をダイレクトに読者に突き付けてきます。

母の苦しい心情や辛辣なセリフが強烈で、読めば読むほど胃が痛くなってくる。それでもこれは読まなければならない作品だと私の中の何かが叫んでくる。目が離せず、一気に最後まで読んでしまいました。

本作の一番の推しどころは、不快感と愛情のハーモニーです。決して映像では見たくないような描写が次々と襲う。発刊して大丈夫かと思えるほど、かなり攻めた表現もあり嫌悪感でいっぱい。しかし常に母が子に持つ愛情が表現されていて、読んでると静々と涙が出てくんのよ…

私も二人の息子の親をやってますが、ホント子育てに正解なんてないですね。ついつい自分の価値観を押し付けちゃうんですが、どんな時でも帰ってこれる場所を作ってあげることが大切なんですね。

■ぜっさん推しポイント
終盤の独白シーンが何とも胸が痛い… 決して大げさでなく、ありのままに淡々と語れれる卑屈な思いが辛くて読よめません。責任感が高く、真面目でひたむき。他人のせいにできず、全部自分に非を押し付けてしまう。どんな人間でも悪いところや苦手なことなんて一つや二つくらいあるし、思い通りの人生なんて誰も歩いてないのに…

適正になる必要はなく、負担にならないような、自分に適していることだけをやってればいいんです。実はみんなそうやって自分を調整しながら生きているだけなんですよね。二人にはありったけのエールを送りたいです。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月03日

設定が面白すぎる。これからどうなるのか気になって一気読みした。

最初は非常で自分本位の旦那に腹が立ち主人公を応援するような感じで読んでいた。なんでこんなバカな旦那と結婚したんだろう。流されやすくて頭が弱いのかなと思っていたけど最後の方の息子サイドの話を読んで方向性が違うだけで似た夫婦なのかもしれな...続きを読むいと思った。
こんな夫婦は腐るほどいるだろうし結局完璧にはなれない。この私の苛立ちも自分もこうなってしまいそうで怖い気持ちからくるものなのかもしれない。
子育てって本当に難しいだろうな。

視点によって見え方が違うのがとても良かったしリアリティがあった(特にただのハッピーエンドシーンにならず息子がマグマのような怒りを母に向けるところ)のが良かった。

実際こうなるだろう世間の反応も納得できたし展開も早く締め方も好みだった。何かしらの弱さを抱えていても強さを見出していく希望のある結末が好きだった。

他の作品も読んでみたい。

ほんタメ!より

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Posted by ブクログ 2023年09月16日

母は強し。

愛情深い母親を持つっていうのはとんでもない幸福だと思う。歪んだ愛にしても、その過程で辛く苦しく愛憎が生まれ持ってしても、最後には互いに互いを思い遣って修復へと向かえていけるのならこの上なく素晴らしいことだと思う。色々と考えさせられる作品で奥深く感じました。他の作品も読みてえ。

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Posted by ブクログ 2023年06月30日

購入はしたが、表紙の不気味さとか積読になっていた。読み出すとサクサク読めた。昔、SF短編で読んだことがあるような気もしたが、被害者の会の流れや独特な味もあり、甘めの★4

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Posted by ブクログ 2023年06月14日

一夜のうちに人間をおぞましい異形へ変えてしまう奇病、「異形性変異症候群」。
ある傾向を持つ若者たちがかかるというその病気は、かかったが最後、患者は死んだものとみなされる。
ある日、専業主婦である美晴が息子の部屋に入ったところ、そこにはおぞましい芋虫の様な生き物が。理解のない夫と衝突を繰り返しながら、...続きを読む美晴の悩める日々が始まる。


高校中退したニートの息子・優一が、突然異形へと変わってしまう病にかかった専業主婦の母親・美晴を主人公に、家族の関係性を描いた作者さんのデビュー作です。

ニートや引きこもりなど、社会に適合できない若者がかかる奇病、「異形性変異症候群」。
異形へ変わってしまった人間は死んだものとされ、人間として扱われることは二度とない。それこそ山に捨てようが、保健所に引き取ってもらおうが、極論殺してしまったところで家族が罰せられることもない。
家族がそんな異形になってしまった時、一体人はどんな行動に出るのか。
美晴を中心に様々な家族の姿が描かれていますが、受け入れがたい事情を抱えた各登場人物たちの心情や人間関係と、ジェンダーステレオタイプな美晴の家庭の姿が、とても息苦しくて痛々しい。親世代だけではなく、異形へと変わってしまった若者たちが悲痛な胸の内を吐露するシーンは心乱されました。

帯には、子供を殺す前に。親に殺される前に。すべての「向いてない人」に捧ぐ、とありますが、逆に親をどうしても憎んでしまう。いっそどうかしてしまいたいという人も読んだら少しだけ気持ちの整理がつく……かもしれません。

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Posted by ブクログ 2023年06月08日

変な病気を"異形"で表現し、現代の問題を
読者に伺っている小説だと思いました。
面白かったです。

親、息子、同じ境遇の人たちが抱えている
傷や悩みが生々しく文章で羅列されていて、
僕自身も読んでいて、正直悩んでしまった。。。

病気の設定がミソで、"愛する"...続きを読むから逸れていく形に
敷かれているし、きつい周囲からの目線を浴びる。
必然的に居場所が無くなっていく所も
リアルに表現されておりました。

最後まで読んで思ったのは、やはり家族間の
コミュニケーションと家庭環境はとても大事だと思いました。
子供は親の背中を見てますが、親も間違えるから
子育てに正解は無いと美晴の母親が言ってたセリフが
とても感慨深いですね。
「ただ、手助けするだけ。」 ← いいですね。

1人の人間として尊重し合い認め合う事が大事。
この小説で気づかされて、勉強になりました。

僕は"人間に向いている"かもしれない(笑)

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Posted by ブクログ 2023年05月27日

表層のグロテスクさと重い内容に比して、とても読みやすい作品。倫理的にも能力的にもそれぞれに欠陥があり、明晰過ぎない人物ばかりなのがリアルで良かった。

前半は特に、世間一般のやり方で処理しようとする勲夫にやや同調的に読んでしまったので、自分自身の冷酷さや未熟さを思い知らされる羽目になる。世間がなんと...続きを読む言おうと、どんな見た目になろうとも、我が子である限り見捨てないと言い切れるほど、私自身の「母性」に自信はない。

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Posted by ブクログ 2023年03月26日

ちょっと精神状態が不安定な時は読まない方がいい。
ズドーンと来てしまった。
これは「異形」という設定を借りた現代社会の家族問題の炙り出しだ。

自分も子供に対して、多かれ少なかれ似たようなことをしてしまったり、闇の心を持ってしまったりしているところがあるなと…。翻って自分がなんぼのもんなのだと…。
...続きを読む子供は出来が悪くてもそれなりに考えているし想いがあると思うので、極力それを尊重しようと思った。

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Posted by ブクログ 2023年01月15日

これは良かった。まずタイトルが面白くて手に取った。SFホラーチックで、内容が内容なんでグロもちょこちょこ出つつ、結局は社会派ドラマだった。人間の嫌な部分も全開に出てくるから精神的には良くないし、なかなかの長編なんだけど、リアルなテーマは最後まで一貫してるし、先が知りたくもなって読み進め易かった。

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Posted by ブクログ 2022年09月06日

引きこもりやニートといった、社会的に不必要とされる人間がかかる異形になってしまう病気。悍ましい虫の姿になった引きこもりの息子と、彼を思う母の心情の変化がよかった。所々で異形になった人たちの心情が綴られていて、苦しくなる。途中泣いてしまうところもあった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月26日

「家族愛」「親愛」なんて言葉があまりにチープに感じられ、その背景にある苦しみや嫌悪感を描いた作品でした。
自分なりの愛情が正しいとは限らない、自分の価値観が「普通」で周りから共感を得られるとは限らない。そんなことを考えさせられる、ほの暗さの中の少しの希望の光を我武者羅に手繰り寄せていく(その手繰り寄...続きを読むせ方も果たして正しいのかも分からないが)臨場感と、ゴールが見えない絶望を味わえます。

主人公は「異形性変異症候群」に罹ってしまった息子を持つ母親。愛を持って育てたはずの息子は、引きこもりニートになり、遂には生理的嫌悪感ある姿へと変貌を遂げる。理解のない夫、小言うるさい姑、子が異形になってしまった親が集まる会のイザコザ……etc
主人公はどのようにそれを乗り越え、どのような最後を迎えるか、ずっとドキドキしながらページをめくっていきました。

私が1番ゾッとし、圧倒されたのは第4章でした。
初めは笹山さんの息子視点かと思えば音もなく一人称が変わり、偏屈さのニュアンスも変わり、クルクルと目まぐるしく変化する文章に魅入られてしまいました。
この変異した人間達(恐らくはこの本に話題に昇った人物たち)の独白が綴られた第4章は怒りであり悲鳴であり、SOSであり放っておいて欲しい気持ちであり……。
私も過去に就いたクソ職場のお陰で鬱になりましたが、その時の気持ちを代弁してもらえたようでした。私は仕事を辞めて鬱になって暫く生産性のない生活をしていても親は味方になってくれて、「急がなくていい、大丈夫」と暖かな言葉をかけてくれたから今忙しくとも充実した毎日を送れています。きっと、この作品の重大なテーマである「親子関係」に少しでも拗れがあったのならば、今頃私は醜い異形へと変身していたでしょう。

勿論親に対して不満もあります。譲れないところもあります。それでも、腐らずに生きてこれたのは間違いなく親の愛があったから。
そんな愛を受け取れず、若しくは愛そのものがなかったが故に異形となった若者達の苦悩を、私は脳の片隅に入れておきたいと思いました。

私はまだ子供はいないのでつい子供視点に物語を読み進めていましたが、次は自分が親になった時にこの本を読んでみたいと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年07月13日

父親と姑の態度がすごく嫌で途中何度か気が悪くなったが、母親の子を思う気持ちに感動した。最後が自業自得だなと思い少しスッキリした。

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購入済み

こわい

2020年12月03日

表現がリアルで夜に読むとゾクゾクした。
現在のコロナウイルスのようで、それよりも怖くて、もし自分の子供や家族が、、と想像すると震える

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Posted by ブクログ 2024年05月05日

全国の毒親に読んでほしい。とはいえ毒親は毒親であるが故に、この本を読んでも自分のことが書いてあるとは思わない毒親っぷりを遺憾なく発揮されるだろうから効果は低そう。毒親のジレンマ。

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Posted by ブクログ 2024年05月02日

煮え切らない話だった。タイトルと冒頭の引きは中々だったが、ストーリー全体の曖昧さとラストに違和感。
カフカのオマージュ的設定の前提が現代社会を舞台にするとファンタジーに近く無理があるのと、重い題材の割にメッセージ性が弱くただのエンタメ的な作品という印象だった。たしかに先が気になりすぐ読み終えたし、興...続きを読む味を引く設定だったので、作品に対する期待が大きかった分残念さも大きかったかも。

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Posted by ブクログ 2023年07月16日

「異形性変異症候群」ヒトを異形の形としてしまう新しい病気。病気が社会に出現した初期は、社会生活から外れた若者に、主に発症していた。
異形はそれぞれ様々な形状となり、各形状がその患者の問題を描写しているように思った。
設定が特殊で新しく面白いと思う。その病気は、家庭、親子関係等の問題提起として使われて...続きを読むいる。設定は特異でもテーマは普遍と感じた。
グロテスクな異形と変異することで、親の愛情を試すような気がする。父親はともかく、多くの母親は動揺こそすれ、愛情を放棄しない。きっと、現実でもそうだと思う。
親、子両面からの思いを書いてはいるけれど、なんとなく子供寄りな気がする。傲慢な子育、過度の干渉は、間違っているだろうけれど。わかっていてもねえ、何をも期待しないで子育できるほど人間ができてなかったあ。

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Posted by ブクログ 2023年02月25日

異形性変異症候群という病が発生したという話。

読み始めの印象はとにかく気持ち悪い。
虫苦手だから余計に。

異形は虫ばかりではないけれど、どれも変異という表現がぴったりな形に変わってしまう。

そんな姿に変わってしまった家族をどうするか。

うーん、僕も変異してしまいそうだ…。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月05日

【わたしも向いてない。】

あー。わたし、人間向いてないわ。
人間だから人間と付き合わざるを得ないし
コミュ障だけどまあなんとか表面上はうまくやれてると思う、
でも
当たり障りなくってだけで
本心それ以上関わりたくないし
あー。めんどくさいなぁ
次生まれ変わるなら鳥か植物がいいなー
イルカもいいかな...続きを読む
という方にもおすすめできる本。

ライトな読み心地で、子が異形性変異症候群という病に罹ってしまった家庭内を描く。

子供のためを思って、としてきたことも
紐解いてみると自分の希望の押し付けだったり
あーもう、私がやってあげなきゃだめなんだわ
っていうのも
ほんとはもうちょっと見守ってあげてもいいよねって。
子どものことを一番よく知ってるのは自分っていうのは思い上がりで、
子供は子供なりに学び、気遣い、成長し、変わっていく。
親に見せていない部分もある。
また子も子で、逃げかたを知らないとその手の重圧につぶされてしまう。
絶対に正しいというお母さんやお父さんは
ある子によっては
心強くもあるかもしれないけど
ある子にとっては
息苦しいものになるだろう。


と、親目線を得て子供目線も失っていない私の感想。


主人公見晴さんのお母様の言葉。
「立ち上がり方が分からない子には、その手を掴んで引き上げまでやること。自分の足で立とうとしている子には、掴まれるように手を差し伸べてやること。歩こうとしている子には、周りから危険なものをどかして安全な道を確保してやること。」

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Posted by ブクログ 2023年01月21日

カフカ『変身』のオマージュ作。
精神疾患での休職中に手に取ったので、明日起きたら自分も虫人間や犬人間になっているかも、と身につまされる気持ちで読んだ。
単に現代を舞台にして『変身』パロディを行うのではなく、今日の日本らしい結末を描いた点に、筆者の想像力と誠実さを感じた。

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Posted by ブクログ 2023年01月16日

突如として醜い異形に姿を変える異形性変異症候群によって息子が芋虫になってしまった主婦美晴。 家族の無理解、世間の眼、被害者同士の派閥、嫌悪感の中に見出す成長と愛情。 現代世界にカフカの変身を取り入れた第57回メフィスト賞。

 嫌な話だ。 息子の生殺与奪の選択を委ねられ、葛藤する母親。 あまりに不条...続きを読む理な病によって描かれる被害者心理、傍観者心理のリアルさは心に刺さるものがある。 「生まれてこなきゃよかったのになぁ」 何者にもなれないなら、人間に向いてないなら、私が最後に望むのは・・・。 ドロドロとおぞましい物語ながら、テンポよい語り口、特に終盤の展開は圧巻だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月20日

2018年。第58回。
ホラー。ニートが異形になるという「異形性変異症候群」がじわじわ蔓延する世界。虫だの動物だのに変化するのだが、指だの目玉だの部分的に残っているよう。この病になった人は死亡と確定される。
先を読み進めたく、じゃんじゃん読むのだが。あれー。大団円なのかな?最後はこわくないw

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Posted by ブクログ 2022年07月17日

昔読んだマンガに『親はまず名前を付けることで子供を支配しようとする』というのがあった。

もともと子供を愛せないと言う奇異な例もあるが、
愛する我が子の為、というごもっともな名目の元、子供達に過度なプレッシャーと期待を掛ける…

これも一つの虐待と受け取れなくはない…取れなくはないのだが、自らも親の...続きを読む立場からすると理解出来なくは無い、それは悪意からでは無く、愛情から発せられた感情だから、愛由来のものが間違っている筈は無いと錯覚してしまうのだ。

ただ冒頭に引用させて貰った通り、親と言う生き物はそうと知らず子供を『支配』しようとするものなのだ。 庇護愛から所有物の様に扱ってしまう。

そうして親子の間に軋轢が育まれていく。
ある家庭の中でそんな軋轢が我が子を蝕み停滞させる。
その停滞が心のみならず、体にまで変容を齎らす
(作中、停滞に至るバリエーションは他にもあるが、主にはこの家庭を中心に話は進む)
と言う物語。

ただ、話は変身してしまった子供では無く、
ほぼその親の視点から綴られており、それが今作のポイントになっているのだと思う。
親の無理解も子供を取り巻く毒のひとつだと。

『変身』といえば、フランツ カフカ(だっけ)だけど、それよりも筒井康隆のショートショートや安部公房の作品が今の時世に合わせて翻訳し直された様に感じた。

終始重苦しい雰囲気ではあるが、サクサク読める作品。


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購入済み

2021年08月06日

もっとホラー小説よりかと思ったけど、そんなことはなかった。ヒューマンドラマだった。表紙とタイトルに引き寄せられた。

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