あらすじ
「今年(2018年)読んだ本の中で、私のベスト3に入る1冊!」――宮部みゆき(単行本帯コメントより)
話題騒然のメフィスト賞受賞作。読者から届いた熱い、熱い声。続々重版出来。
子供を殺す前に。親に殺される前に。
すべての「向いてない人」に捧ぐ、禁断のオゾミス、または落涙の家族サスペンス!
一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる奇病「異形性変異症候群」。
この世にも奇妙な病が蔓延する日本で、家族は。
ある日、美晴の息子の部屋を、気味の悪いクリーチャーが徘徊していた。
――冗談でしょう。まさか、うちのユウくんも・・・!!??
そこから平凡な家族の、壮絶な戦いが幕を開ける。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
将来自分が親という立場になったときに、また読み返したい。
人間が虫になるっていうホラーなサスペンス。前半はグロテスクさの描写が上手くて面白いなと思って読んでいたけど、
後半は親子関係の後悔や辛さが濃く深く描かれていて、勢いに圧倒されて一気読みした。
サスペンスで括るのはちょっと勿体無いような、サスペンス読まない層にも刺さってほしい本
Posted by ブクログ
引きこもった子は、親からの目線だと、理解の範囲を超えるという点で、異形の生物に変身したように見えるのかもしれない。あるいは子ども自身が持つ自己認識そのものが異形な生物なのかも。
カフカの「変身」を思わせるような設定であるが、カフカでは、巨大な虫に変身した主人公に対して、最初は優しかった妹が、社会的、経済的に追い詰められて、やがて主人公に冷たくあたるようになる。でも、この本の母親は、過干渉だった自らの行動を反省し、どこまでも子どもに愛情を示している。その点、実際には母親にも様々な葛藤があるだろうし、そこをもう少し読んでみたかった。
引きこもりの問題についての、寓話的な話として、いろいろ考えさせられた。
Posted by ブクログ
無自覚に子どもを追い詰めてしまう場面は、どうしてもどの家庭にもある。
違う人間だから、価値観も受け取り方も言葉の選び方も違う。
親にとっては些細な言葉が、子どもにとっては人生の大事な選択が変わるほど忘れられない言葉になったり、人格形成に大きな影響がでる。
でも傷つけるつもりで発言してないから、言った本人、親は忘れている。
異形化したことをきっかけに、主人公は自分の息子への接し方を思い返し、傷つけ続けたことに気づきやり直そうと息子に寄り添い続けることを決意する。
この事に気づける親は決して多くないし、その上諦めず今から一からやり直す勇気に感激した。
それに対して、過去は許さないけどこれからやり直そうとしてくれてることには感謝し関係を築き直そうと息子が寄り添うところもすごくよかった。
Posted by ブクログ
硬くなってしまった時点で、あぁ羽化するんだなって思った
でも、戻れたヤッターめでたしめでたしってならずに良かった!
頑張っても報われなくて可哀想なお母さんだと思って読んでたのに、息子目線で見たら結構それなりに酷かったわ
可能性があるってわかっても保健所で処分できちゃうの怖いな
殺しちゃって苦しんだ人たちは戻れたかもしれないって知ってさらに苦しんだだろうなぁ
津森さんももちろん苦しむんだろうけど、気になるのは娘さんの想い人…旦那さん!?
生きてても複雑だったかな
Posted by ブクログ
カフカの『変身』を頭に浮かべながら、期待して読み始めた。人間が突然異形になるというのはやはりとてつもないショックと混乱を生むなぁというのが第一の感想。
引きこもりやニートに発生する奇病としてたくさんの人が変異してしまうのが悲劇の始まりだったが、悲劇ならその前から始まっていたんだなとわかるのが虚しかった。人間というものは、結構切羽詰まらないと自分の気持ちもわからないものだと思う。恨み言をいくつも読んで、我が子を殺してしまう親の姿を見て、気持ちがどんどん沈んでいった。
虫に変異した息子を通して、自分と家族の姿を見つめざるを得なくなった母親が、追い詰められて極端な思考に陥っているのがリアルだった。彼女のことはあまり好きにはなれなかったけれど、考えて出した結論には少し涙ぐんでしまった。
これはいつでもやり直せるというメッセージでもあるし、ひとつでも噛み合わなければ家族は瓦解するという現実でもある。一度壊れかけた家庭を立て直すのは簡単ではないと思うけれど、努力と協力次第では不可能ではないはずだ。