黒澤いづみのレビュー一覧

  • 人間に向いてない

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    誰しもがカフカの「変身」を思い浮かべると思われる本著。
    ある日、引きこもりの息子の部屋を訪れたら不快な見た目の「虫」になっていてーー
    という冒頭から始まり、奇形な姿に成り果てた子供を抱えながら、家族と葛藤し、仲間を求めてもがく母親を主軸に物語は進行していきます。
    この「虫」という存在が、読み手にとって如何様にも捉えられるところが本作の面白いところ。この虫になる病に冒されるのは社会的弱者という定義づけがなされていますが、それは例えば高齢者だったり障がいのある人や社会に馴染めない人など、様々に解釈ができます。
    周りにそんな人がいたら…家族が、自分が…と立場を置いて想像しながら読むのも一興です。

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    2024年10月19日
  • 人間に向いてない

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    ネタバレ

    カフカの『変身』を頭に浮かべながら、期待して読み始めた。人間が突然異形になるというのはやはりとてつもないショックと混乱を生むなぁというのが第一の感想。
    引きこもりやニートに発生する奇病としてたくさんの人が変異してしまうのが悲劇の始まりだったが、悲劇ならその前から始まっていたんだなとわかるのが虚しかった。人間というものは、結構切羽詰まらないと自分の気持ちもわからないものだと思う。恨み言をいくつも読んで、我が子を殺してしまう親の姿を見て、気持ちがどんどん沈んでいった。
    虫に変異した息子を通して、自分と家族の姿を見つめざるを得なくなった母親が、追い詰められて極端な思考に陥っているのがリアルだった。彼

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    2024年10月09日
  • 人間に向いてない

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    同僚から借りた1冊
    なかなか考えさせられる1冊だった。
    描写はなかなかグロテスクで気持ち悪いんだけど、読みやすくて最後は泣けた。
    親の立場でも子供の立場でも色々と考えることのある本だった

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    2024年09月23日
  • 人間に向いてない

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    メフィスト賞を受賞した本作。
    人が突然異形へと変化してしまうホラーな世界観ですが、内容は家族をテーマとした感動ものでした。

    衝撃的な事実や厳しい現状にも負けることなく息子を守るために戦っていく母の姿には母の強さというものを感じましたね。
    自分もそうなのですが、子育て中の人には特に刺さる作品だと思います。

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    2024年07月30日
  • 私の中にいる

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    我が子である萌果に虐待を繰り返す佳奈…ある日突発的気がつくと佳奈が頭を打って死んでいた…。元々大人しく内向的であった萌果だったが、事件後は人が変わったかのように反省の色も見えず反抗的な態度になったこともあり、児童自立支援施設で過ごすことになった…。いったい何があったのか、萌果は萌果ではないのか?…。

    内容が内容なだけに終始重い気持ちで読みすすめました。この物語の救いは、施設を変わることでかけがえのない出逢いがあったこと…自身を見つめ直せたことで、その後の人生を誠実に生きていくことこそ贖罪にあたるという思いにたどりつけたことですね!これからの彼女の人生が、明るいものでありますように…そう願わず

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    2023年03月07日
  • 私の中にいる

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    デビュー作『人間に向いてない』が良かったので、二作目に当たる本作も期待していたが、結論から言うとやや消化不良。

    虐待を受けていた小学5年生の少女が誤って母親を殺してしまう序章で心を鷲掴みにされ、その後に続く児童自立支援施設での職員とのシーンもスリリングで先が気になる展開。

    少女の中に存在しているのは羽山萌果本人なのか、それとも別人格なのか。
    「私の中にいる」正体が誰なのか気になり読み進める。

    頻繁に取り上げられる虐待の連鎖に解離性同一性障害を絡めたストーリーは新鮮ではあるけれど結末に更なるインパクトが欲しかった。

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    2023年02月16日
  • 私の中にいる

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    読んでいて心が押し潰されるようになる描写もあり、暗い気持ちになりました、辛い…。ついこの前、韓国映画の「トガニ」を観たばかりだったので、両者に共通するものを感じました。児童虐待は目を背けてはいけない問題ですよね。

    結局、萌果は誰なのでしょうか。多重人格?それとも…

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    2022年08月16日
  • 人間に向いてない

    購入済み

    もっとホラー小説よりかと思ったけど、そんなことはなかった。ヒューマンドラマだった。表紙とタイトルに引き寄せられた。

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    2021年08月06日
  • 私の中にいる

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    虐待を受けて育った萌果は、正当防衛で母親の
    佳奈を殺してしまう。
    事件後の萌果は、これまでの内向的で大人しく
    暗い様子から攻撃的で粗野に変わっていた。

    児童保護、更生の為の学園で萌果は出会う人との
    関わりのかな自分を内省していく。
    萌果の中はいったい誰なのか。
    自分を見つめ直す萌果の口から思いがけない
    打ち明けがある。
    現実世界で起こしてしまった事件、
    その罪を背負い、引き受けた生を背負い
    誠実に生きていく事が贖罪ではないか。

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    2021年06月14日
  • 私の中にいる

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    私の中にいる
    黒澤いずみさん。

    とても、不思議なお話でした。
    家庭環境。ネグレスト。虐待。
    負の連鎖。

    虐待された子が、親となり、
    同じことをする。

    本の中に、
    羊の絵本。
    というお話が出てくる。
    奥深いお話。
    結末のない、模範となるべき正解が存在しない物語。それは、まさしく、人生と同じものであるともいえた。

    いろいろ考えさせられる本でした。

    環境によって、
    とても酷い負の連鎖になることもある。
    でも、
    出会った中で、手を差し伸べてくれる人達もいる。

    考えさせられた本でした。

    罪に対する1番の贖罪とは、
    誠実に生きて死ぬこと以外にないと思う。
    償いの意識を持ち、自分が最も善いと思

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    2021年01月15日
  • 私の中にいる

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    『人間に向いてない』で衝撃のデビューを果たした黒澤いづみさんの2作目。前作では引きこもり、本作では児童虐待と、現代社会(それも家庭内)の暗部を題材に小説化する手腕は見事で、今回も引き込まれた。10歳の少女が虐待から逃れるために誤って母親を殺してしまうが、直後から彼女の言動に変化が起きる。少女になにが起きたのか、彼女の中になにがいるのかを探りながらの読書となるが、真相とその後の展開は想像を超えてずっと重いものだった。

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    2020年12月05日
  • 私の中にいる

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    ネタバレ

    ・失われた命を別の命で贖うことはできない。罪を犯した者は誠実に生きて生をまっとうするのが償いである。というのを改めて認識した話。

    ・死んだ母親の人格が娘に乗り移った?(解離性同一性障害?)なのかは深堀されなかったけど、つまりはそれだけ主人公の萌果の精神的ショックが大きかったわけで、そうそう簡単に解決する問題では無いですよ、という事なのかな。

    ・そもそも事件がきっかけで人格が変わったのか。本当は殺す前から変わっていた可能性も無きにしも非ず

    ・帯の「致命傷必須」まではいかなかったけど、深堀したくなる小説

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    2020年09月20日