あらすじ
母子二人暮らしのアパートで発見された、女性の変死体。亡くなっていたのは母親、そして殺してしまったのは、日々虐待を受けていた小学生の娘だった。事件以降、“人”が変わったような言動をとりはじめる少女。何かが、おかしい。原因は過度の精神負荷による、解離性同一性障害……多重人格のせいなのか。では――「私の中にいる」のは、誰? 『人間に向いてない』で注目の著者が、読者に突きつける社会の底。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
最初は全て萌果の妄想かと思ったが萌果が知りようのない過去の話が出てきたから本当に入れ替わっているのか?
表紙の絵もどこを見ているのか分からなくて不気味。
Posted by ブクログ
不思議な話だった。これはミステリー?
殺人の加害者と被害者が入れ替わったのか、実は事件のショックで作り出された人格なのか。
なんにせよ、重いテーマだった。
幼い頃から虐待を受けた人の心ってこんなふうなんだ。これは苦しい。
Posted by ブクログ
母親を突き飛ばして死なせてしまった小学生の羽山萌果。
小学校ではおとなしく特に印象に残らないような少女だったが、家庭裁判所で悪態をつき施設でも何度も逃走するような問題児。
萌果の中にいるのは誰なのか。
佳奈の記憶では、自分が母親にされていた虐待を萌果にもして鬱憤をはらしていたが、萌果に「しんじゃえ」と言われてカッとなって萌果を突き飛ばし、死んだのは萌果。しかしいつの間にか死んだ萌果と佳奈は入れ替わっており、佳奈の体が死に、萌果の体の中で佳奈の精神が生きている状態になっている。
すごく不思議な話だった。
私は、いつか萌果の人格も表に出てくるのだろうと思って読み進めたが、最後まで萌果の人格は現れなかった。萌果は本当に死んでしまったようだ。
萌果の中には、佳奈の幼少期からのかなり詳しい記憶もあり、萌果が佳奈に影響を受けて人格が似てきているという状態ではなく、本当に佳奈になってしまったのだ。
肉体の死と、精神の死というのは、精神の死のほうが残酷のような気がした。肉体は死ぬことができても、精神に終わりはなく、死んだ精神がどこにいくのか分からない切なさがあるからだ。かわいそうな少女である萌果の精神は、どこに行ってしまったのか・・・私はそればかり気になった。
佳奈の「生き直し」ともいえる物語。自分に外見がそっくりな娘の体で、自分が殺すことができなかった虐待母を殺し、そして小学生として生き直す。パラレルワールドのようだ。
佳奈に大きな影響を与える「齋藤」という心理士が、性同一性障害で「生まれる体を間違えた」というのも、佳奈と萌果の精神と身体の入れ替わりを示唆しているようだ。
もし、佳奈が小学生の時に佳奈の母親を殺していたら、佳奈はこの本の通りに多くの人に出会い、つまずきながら生きていたのではないだろうか。第一の佳奈の人生とは異なる人生になっていたはずだ。
その先に萌果は誕生していないかもしれないが。ただ、最後まで読んで、私は佳奈に、萌果をもう一度生み直し、生かし直してほしいと、願ってしまった。
佳奈の精神が少しずつ自分の人生と向き合う様子は読んでいて圧巻だった。「更生」という言葉はほぼ使われていないが、すごく丁寧に書かれていて、「羊の楽園」のお話もすごく良い。やっぱりこの作者さんすごいと思った。
Posted by ブクログ
全体的に暗いトーンでテーマも重く好みではないはずだが、何故か一気に読んでしまった。
主人公の内面の本当に少しずつの変化が、嬉しくはある。また後半は周りの人達に恵まれ、向き合いたくない過去の自分と向き合うところは応援したくなった。
ただ虐待する気持ちに共感はできない。読んでいて辛かった。こう感じられる自分が恵まれた環境だというだけなのかもしれない。
Posted by ブクログ
黒澤さんの作品を読んだのは今回が初めて。
帯とあらすじから重たくなることは予想していたけれど、なかなかにして致命傷な一冊だった。
良くあるパターンの「救われて一件落着」って結末にもっていかなかったところに凄く魅力を感じた。
毒親はどこまでも連鎖することを強烈に突きつけられた。
その反面、出逢う人によって良い影響も生まれるという希望も垣間見ることができた。
Posted by ブクログ
我が子である萌果に虐待を繰り返す佳奈…ある日突発的気がつくと佳奈が頭を打って死んでいた…。元々大人しく内向的であった萌果だったが、事件後は人が変わったかのように反省の色も見えず反抗的な態度になったこともあり、児童自立支援施設で過ごすことになった…。いったい何があったのか、萌果は萌果ではないのか?…。
内容が内容なだけに終始重い気持ちで読みすすめました。この物語の救いは、施設を変わることでかけがえのない出逢いがあったこと…自身を見つめ直せたことで、その後の人生を誠実に生きていくことこそ贖罪にあたるという思いにたどりつけたことですね!これからの彼女の人生が、明るいものでありますように…そう願わずにはいられません。
Posted by ブクログ
デビュー作『人間に向いてない』が良かったので、二作目に当たる本作も期待していたが、結論から言うとやや消化不良。
虐待を受けていた小学5年生の少女が誤って母親を殺してしまう序章で心を鷲掴みにされ、その後に続く児童自立支援施設での職員とのシーンもスリリングで先が気になる展開。
少女の中に存在しているのは羽山萌果本人なのか、それとも別人格なのか。
「私の中にいる」正体が誰なのか気になり読み進める。
頻繁に取り上げられる虐待の連鎖に解離性同一性障害を絡めたストーリーは新鮮ではあるけれど結末に更なるインパクトが欲しかった。
Posted by ブクログ
読んでいて心が押し潰されるようになる描写もあり、暗い気持ちになりました、辛い…。ついこの前、韓国映画の「トガニ」を観たばかりだったので、両者に共通するものを感じました。児童虐待は目を背けてはいけない問題ですよね。
結局、萌果は誰なのでしょうか。多重人格?それとも…
Posted by ブクログ
*
虐待を受けて育った萌果は、正当防衛で母親の
佳奈を殺してしまう。
事件後の萌果は、これまでの内向的で大人しく
暗い様子から攻撃的で粗野に変わっていた。
児童保護、更生の為の学園で萌果は出会う人との
関わりのかな自分を内省していく。
萌果の中はいったい誰なのか。
自分を見つめ直す萌果の口から思いがけない
打ち明けがある。
現実世界で起こしてしまった事件、
その罪を背負い、引き受けた生を背負い
誠実に生きていく事が贖罪ではないか。
Posted by ブクログ
私の中にいる
黒澤いずみさん。
とても、不思議なお話でした。
家庭環境。ネグレスト。虐待。
負の連鎖。
虐待された子が、親となり、
同じことをする。
本の中に、
羊の絵本。
というお話が出てくる。
奥深いお話。
結末のない、模範となるべき正解が存在しない物語。それは、まさしく、人生と同じものであるともいえた。
いろいろ考えさせられる本でした。
環境によって、
とても酷い負の連鎖になることもある。
でも、
出会った中で、手を差し伸べてくれる人達もいる。
考えさせられた本でした。
罪に対する1番の贖罪とは、
誠実に生きて死ぬこと以外にないと思う。
償いの意識を持ち、自分が最も善いと思う行いを続けていくことが、贖罪。
Posted by ブクログ
『人間に向いてない』で衝撃のデビューを果たした黒澤いづみさんの2作目。前作では引きこもり、本作では児童虐待と、現代社会(それも家庭内)の暗部を題材に小説化する手腕は見事で、今回も引き込まれた。10歳の少女が虐待から逃れるために誤って母親を殺してしまうが、直後から彼女の言動に変化が起きる。少女になにが起きたのか、彼女の中になにがいるのかを探りながらの読書となるが、真相とその後の展開は想像を超えてずっと重いものだった。