深町眞理子のレビュー一覧
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下巻の冒頭で起こった悲劇は非常に痛ましく、裏表紙で触れられていたため展開に驚きはなかったものの、それ自体には何の予兆もなかっただけに衝撃が強い。転じて、それ自体が幼児のいる家族のリアリティでもあり、その不幸の事故こそが恐怖の源泉でもある。
蘇りの力を持つペット用の墓地という設定に留まらず、土地にまつわる忌まわしい呪いの物語という膨らませ方は上手い。加えて、指向性のない真の邪悪には人間の善意すらも容易く汲み取られてしまう。愛する者の死に対してできない納得を弱さと断じるには残酷ではあるのだが、そこから目を背けた結果としてより残酷なしっぺ返しが起こるというのは非常に忌まわしく、物悲しい。キング作品に通じるテーマとして「信じる心」があるわけだが『猿の手』の翻案だけあってそれを逆手にとった怪作である。そして蘇りが失敗したその瞬間に、抱いていた思い出すらも漆黒に塗り潰されてしまう。その代償は非常に重く、個人的にはクライマックスにもう一捻り欲しいなとは思いつつも後味はかなり悪く、その不幸な一連の事件が忌憚として語り継がれていき、いずれ怪談と成り果てるという意味では一級品のホラーであると思う。 -
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メイン州の田舎に越してきた一家と老人の交流。そして家の裏地にある古より伝わるペット専用の墓地を巡る物語。しかしながら、ペット専用の墓地という題材にしてはペットロスを取り扱ってるわけではなく、話もペット中心の物語ではない。
ホラー作品の恐怖というのは必然的に結果としての死に直結してるが故の恐怖であり、死なないホラーで恐怖を演出することは難しい。それ故に結果としての死か、もしくは物語の導入としての死を語ることに偏りがちで、「死」そのものをテーマとしたホラーは案外珍しいものである。そんな中、本作はキング作品の中でもかなり直接的かつ広範に「死」というものをテーマとして取り扱った作品であり、そのせいかどことなく物語の根底には物悲しい悲哀が漂っている。
死に接することの多い医者という職業である主人公。幼少期の姉の死がトラウマになっている妻という設定もまた魅力的で、それ故に否応なしに死というものを意識してしまうのだ。そんな中、飼い猫チャーチの死と、そのチャーチを甦らせてしまうミクマク族の墓地という流れは非常に面白く、帰ってきた猫が「猫なるもの」と言っても過言ではない不気味な存在なのもまたゾワゾワする怖さがある。それでいながら埋めたペットが帰ってくるなら死んだ人間を埋めたらどうなる?という匂わせを出しているのも上手い。
上巻はまだ恐怖の予兆にすぎず、不穏さのみを残して終わったわけだが、これが下巻でどう展開するか楽しみである。 -
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シャーロック・ホームズシリーズ1作目
1章ではホームズとワトソンの出会いが描かれ2章では急なモルモン教徒のお話に入る
ほんとに急に違う話が始まるのでびっくりはしたが読み進めるうちに色々なものが繋がり最後には話の線と線がしっかり繋がってとても面白かった
そしてホームズの名推理
小さい細かな所から沢山の情報を引き出すのはほんとに凄いと思うしワトソンとの掛け合いもいいコンビだなと思えた
これは2作目も読まなきゃ勿体ないと思えたので読もうと思う
それにしてもモルモン教徒のお話が現実にほんとにあったことだとしたら怖すぎる……これを当たり前にしている国が今でも存在するのだろうということが本当に恐怖……悲惨な人生を送っている人が少しでも減ればいいなと願う……
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言わずと知れた大名作、【シャーロック・ホームズ】シリーズの第一作!
お恥ずかしながら自分はホームズ未履修。。。海外ミステリーということも相まって、不安と期待が同居しながら読み進めること3時間。
200項程度とは思えない綿密なストーリーが魅力的な一冊でした!
第一部ではホームズとワトソンという名コンビの誕生から、彼らが空き家で起きた奇妙な殺人事件に立ち向かっていく様子が描かれています。
傲慢ともいえるホームズと、そんな彼に懐疑の目を向けるワトソンの絡みが面白い笑
第二部では事件の動機となる、過去の出来事が語られます。
一部で疑問に思っていた部分が、丁寧に丁寧に少しずつ描写されていくとともに、逃れようのないもの悲しくも美しい結末につながっていきます。
数少ない情報の断片を組み合わせ、正解を導いたホームズの推理力には驚愕です! -
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アムステルダムのアンネの家を訪ねるのに先立っての再読。
当時収容所に連行された他のユダヤ人と比較すれば、窮屈な隠れ家生活も恵まれた環境だったとは言えるだろうが、平和な時代に考えればもちろんこれほど過酷な生活はない。外に出ることはできず、物音をたてず、協力者が持ってくる配給と本だけが頼り。多感な少女が綴る生活は、おそらくは大人が描くほどの悲惨さを醸し出さず、読書や好きな歴史の勉強、語学、狭い隠れ家での人間関係の観察、両親や姉との関係などを通して、自身を深く掘り下げる日々が淡々と報告されている。言葉を尽くして正直に書き綴っていて、ナチに追われる隠れ家の日記、という先入観を打ち破る瑞々しさにあふれている。
十代の少女の内面は、戦時であっても変わらず希望に満ち溢れ、むしろ戦時だからこそ戦後にかける希望が大きく、ジャーナリストになりたい、もっと自分の良い面を引き出したいという意欲が鮮明。平和な時代なら、もしかしたらこういう渇望は生まれないかもしれない。愛されていると分かっていながら親に反抗し、親の欠点を見、なぜ本当の自分を見てくれないのかといういらだちを募らせる。共に生活する少年に思いを寄せ、その弱さや欠点に失望する。すべての描写は、隠れ家の生活、という点を除けば、普通の少女だ。明確な希望や道筋の探求をしているという意味では、普通より強く、明晰ですらある。特に、戦争という愚かな行為が続く社会に対する憤懣、それは政治家だけでなく、市民一人一人に責任があるという自覚、歴史的に女性が男性より低い地位に甘んじてきたことへの憤慨。アンネが日記を書いた時代から80年が経ってもなお、同じ課題を抱えている現代から見ても、十代の少女の指摘は明快で的を射ている。
その強さからあふれ出る希望を書き綴り、そしてプツンと途切れる日記。密告されて連行された収容所で亡くなったアンネと姉。一人生き残って娘の日記を出版した父親の気持ちを想像すると、胸がつぶれる。