【感想・ネタバレ】四人の署名【深町眞理子訳】のレビュー

あらすじ

自らの頭脳に見合う難事件のない無聊の日々を、コカインで紛らわせていたシャーロック・ホームズ。唯一の私立探偵コンサルタントを自任する彼のもとを、美貌の家庭教師メアリーが訪れる。彼女の語る事件は奇妙きわまりないものであった。父が失踪してのち、毎年、高価な真珠を送ってきていた謎の人物から呼び出しの手紙がきたというのである。ホームズとワトスンは彼女に同行するが、事態は急転直下の展開を見せる。不可解な怪死事件、不気味な〈四の符牒〉、息を呑む追跡劇、そしてワトスンの恋……。忘れがたき余韻を残すシリーズ第2長編。/解題=戸川安宣、解説=紀田順一郎

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Posted by ブクログ

シャーロック・ホームズの2作目。『緋色の研究』のような、推理と事件の背景や動機を章立てで区切ってはいませんが、後半の犯人の独白によって1作目と似た構成をとっています。自分は、この過去に遡って犯行に至るまでの経緯が、一つの物語として読めるところが好きですね。

また、原文がいいのか、訳文がいいのか。おそらく、その両方なんでしょう。会話文も登場人物ごとのキャラも立っているせいか、不思議と読んでいて気持ちよかった。後半の犯人による当時の歴史的背景を踏まえた独白は、江戸っ子言葉に遠州弁か三河弁が混じったような訳文もよく合っていたと思います。なんだか推理小説というより、文学作品を読み終えたような読後感。

といいつつも、初っ端からホームズのコカイン注射からはじまり、犬を使った捜査、宝探しや船による追跡劇、果てはロマンスありと、推理小説なので人殺しはありますが、雰囲気のよく分かるイラストも手伝って、総じてワクワクしながら楽しく読むことができました。ただ『緋色の研究』に出てきた〈ベイカー街少年隊〉がもう少し活躍してくれたらなとは思いましたが。

その『緋色の研究』と本作を比較すると、章で分けずにシームレスに物語に事件の背景や動機を組み入れている本作の方が、物語としてのまとまりが取れていたと思いました。

あらすじ:
ホームズにとって、その頭脳に見合う難事件のない日々は退屈極まりなく、日に三度も薬物を皮下注射しており、相棒のワトスンが神経にさわると評する呆れよう。ホームズ自身は、自らを唯一の私立探偵コンサルタントだと主張し。退屈しのぎに、ワトスンの書いた『緋色の研究』をけなしたり、観察や推理でワトスンの行き先や行動、はては懐中時計一つから家族構成や性格まで当ててみせ、自らの薬物依存を長広舌で正当化する始末。

そんなおり、ミス・メアリー・モースタンなる女性が訪れて、奇妙な事件の相談を持ちかけられます。それは、父が失踪したのち、毎年のように高価な真珠が送られてくるようになったというもの。そして、その送り主から呼び出しの手紙がきて、二人は同行を頼まれて、彼女とともに待ち合わせ場所に向かいます。しかし、そこで待っていたのは不可解な現場と〈四の符牒〉でした……。

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2025年05月07日

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ネタバレ

おどろおどろしい事件と謎解き、スリリングな捕物劇が次々に展開され飽きさせません。

ホームズの推理の冴えはもちろん見どころだけど、ワトソンの鬱々とした葛藤やラブロマンスもいい味出してます。

コカインにはじまりコカインに終わったり、植民地が当たり前にでてきたり、ナチュラルに人種差別的な表現がでてきたり、今読むと驚くことも多いですが、当時のイギリスの「かんじ」を知ることができるのもホームズの面白いところかもしれませんね。

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

ホームズ全集はこれまで多数の訳本が出ているところではあるが、創元の阿部訳からの改訳は深町訳で全60作を読破できる。
ワトスンがホームズの推理法に驚いたときの「驚き桃の木だ」といった台詞等、その訳し方にむしろこちらが驚いた。
「緋色の研究」に続く第二作ではあるが、犯人を追い詰めるのに、ホームズはかなり苦労する。現場に残される<四の符牒>という謎解き的要素と、最後の犯人追跡劇といった大衆冒険的要素の巧みな融合は、誰が訳したものであろうと、やはり傑作には違いない。

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2016年11月14日

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ネタバレ

シャーロック・ホームズ第2長編。

退屈を持て余すホームズの元にある依頼が舞い込む。失踪した父、謎の贈り物に謎の人物からの呼び出し。その先で起こる怪死事件。

意外と読んでなかったホームズシリーズ読み始めてみた。割と短めでサクッと読めて面白かった。

初手コカインでキマってるの笑う。

人間の複雑さを感じられる話だった。犯人の淡々とした所や覚悟が決まってたり誓いを曲げない所は嫌いじゃない。執念凄かったけど。

トンガのミスが無ければ全然違う話になってたよなあ。未開人とか描写がめちゃくちゃ貶めてる。

犬が可愛かった。

ワトスンくんの恋が実って良かったね。奥さんの名前失念してたから丁度何も知らず読めた。
神に感謝。

訳注で色々と設定がガバってるらしくて意外だった。ワトスンの傷は足のイメージのが強かった。ロザリオと王冠は謎すぎた笑

個人的には四つの署名のが聞き慣れてるし語感が良い。タイトルにも派閥というか論争があるらしいのが面白かった。

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2025年03月19日

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テムズ河の追跡劇からのふたりの拳銃が同時に火を吹く瞬間までのスピード感がとても良かった。『緋色の研究』が情緒的な印象を受けたのに対し、こちらは先の見えない展開の中で犯人を追い詰めるまでのスリルを楽しむ感じ。
ホームズが櫃の中が空っぽなことを知りながら、メアリー嬢の元へ向かうワトスンを見送っていたなら良いなぁ。

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2024年08月03日

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謎の人物からの呼び出し、行先不明の馬車、怪しげな男……からの不気味な死体、で読み飽きることない一冊だった。
神よ感謝します!の流れがかわいくて微笑ましかった

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2024年05月12日

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ネタバレ

コカインの描写ではじまり、コカインの描写でおわります。退屈な世界で、頭脳労働にたずさわっていないと生きていけないというホームズ。人間としてコカインはよくないのかもしれませんが、日常に飽き飽きしてしまうほどの頭脳を持つというホームズの非凡さを感じるようで、名探偵としては魅力的な要素にも思えてしまいました。

事件は、モースタン嬢がホームズの元に相談にやって来ることではじまります。彼女の父モースタン大尉は、十年前、イギリスに戻ったという電報の後、消息を絶ちました。そして、六年ほど前、≪タイムズ≫にミス・メアリー・モースタンの現住所を知りたいという〈尋ね人〉の広告があってから、毎年おなじ日に真珠が一粒、モースタン嬢に送られてくるようになりますが、けさはライシャム劇場に来てほしいという手紙が届いたのです。友人二名を連れてきてもよいということで、ホームズとワトスンも同行します。

呼び出したのはサディアスという人物で、モースタン大尉の友人ジョン・ショルトー少佐の双子の息子でした。知らされた財宝の存在。そしてサディアスの兄バーソロミューの死。事態は急転直下の展開を見せます。

現在では追跡劇もありつつ、最後に、事件のきっかけとなった過去が犯人の口から詳細に語られます。犯人の言葉ということもあり、仲間を思う犯人の気持ちが強く感じられ、少し同情もしました。それでもやはり、犯人が行ったことは、いけないことだと思います。

また、事件の進行とともに、ワトスンとモースタン嬢の恋愛も進行していきます。途中で“彼女の手は私の手のなかにあった(p66)”とあり驚きましたが、最後の方で“うれしいことに、モースタン嬢がぼくとの結婚を承諾してくれたんだ(p224)”とあり、さらに驚きました。まさか結婚までいくとは思いもよらず、モースタン嬢がどうして承諾したのか不思議に思いました。

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2018年02月23日

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まぁ、あちこちでフォローされてはいるものの、ホームズのコカイン描写に、運命の女性を前に、その描写にいささか冷静さを欠くワトソン君とか。

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2011年11月04日

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ネタバレ

父を失ったある女性の元に届いた、手紙から話が進んでいくストーリー。差出人と落ち合って連れ立ってある人物を訪ねると、殺害されていた。現場に居合わせたホームズとワトスンが残された手がかりから犯人を突き止めてゆく。
大掛かりなトリックがあるという訳ではないものの、テンポよく場面が切り替わって話にひき込まれた。また、現代とは違う当時の情景・当たり前も興味深かった。
これからのワトスンの恋模様にも注目

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2025年11月16日

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ホームズがコカインきめて始まり、ホームズがコカインきめて終わるお話。
サブストーリー的に綴られるワトソンが魅力的。

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2023年11月26日

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ストーリー、トリック的にはかなりシンプルだった。もう一捻りあると良かったなぁ。
今だったら問題になってそうな差別的発言?が結構あって良いか悪いかは置いておいて、時代を感じた…
注を読むと、矛盾してる部分があることが分かって、ドイルって結構大雑把だったのかなって思った(それとも校閲がちゃんとされてなかったってこと?)
ワトソンって色々な女の人に恋してるよね…

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2023年07月25日

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巻末の解題と解説までよんで、はじめて『四つの署名』でなく『4人の署名』とタイトルと訳されていることに気づく、観察力のないわたし。

以下はその巻末の解説を読んで思ったことなど。
以前『ドラキュラ』について書かれた何かの文章で、近代化されていく英国の都市に、よくわからない場所のよくわからない何かが侵略していく、という話の構造が当時の読者に興味や恐怖を喚起させた、的な文言を読んだ記憶があって、思えば本作も『緋色の研究』もその、ヴィクトリア朝後期のエンタメ小説のテンプレートに則っていると言えるなと。よくわからない場所から持ち込まれた厄介な事件がロンドンに持ち込まれて、科学と論理の権化的なホームズに解決されるわけで。なので前作も本作も、犯人の足取りに迫る(で、ホームズとワトソンが物語からフレームアウトする)後半部こそ、必要不可欠な描写だったのだろう。

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2023年05月23日

Posted by ブクログ

シャーロック・ホームズ第2弾☆
ホームズの鋭い観察力と推理力はやっぱりすごいです。
恋愛という情緒的なものは、純正かつ冷徹な理想とは相容れないとホームズは言いますが、愛も大事だと思う☆
ワトスン結婚出来てよかった

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2012年12月19日

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