村田沙耶香のレビュー一覧
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ネタバレ傷ついても自分の価値観に責任を持つっていう話。
設計された通り発展していく清潔だけど不自然な新興住宅地が、その後設計図通りではなく自然発生的に街が出来ていく様と、
他人の価値観でぬくぬくと安全に生きている子供が、傷つき笑われながら自分の審美眼を持って大人になる様の対比がわかりやすくて読んでいて気持ち良かった。
ただ、大人になってから読むより中学生くらいの時に読んでいたらもっと感動できただろうな、とは思った。
p. 189
あんたくらいの子は、自分のことを世界で一番醜いと思ってるか、可愛いと思ってるか、どっちかなんだから。白雪姫の魔法の鏡が、故障しているようなもんなのよ。 -
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『ギンイロノウタ 』以来の村田沙耶香san。
小さなころ怖かった古典、過去の嫉妬を思い出す小説、何度も買った作家指南書、そして自身の著書についてー。
村田san初の書評集。村田sanが食べた本の中で、私が既に食べていたのは『にんじん』1本。これから食べたいと思ったのは『少女怪談』と『部屋』の2食です。村田sanが小さい頃の「空想から明朝体」という感覚が、ちょっと不思議で、とっても良いです。
また、芥川賞受賞の日、桃の間に呼ばれた時に”ぜんぶ聞き間違いかもしれないです”という慌てぶりも愛おし過ぎます。
あとがきで紹介されていた、小沢信男sanの「読書は、音楽に譬(たと)えれば、演奏だ」と -
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普段、ほとんど読むことのない現代の日本人作家のアンソロジー。
興味深く読んだ。
もとは、深堀骨 の作品を読んでみたかったから手に取ったが、どれもなかなか良かった。ありそうでない話というファンタジーというか、不気味な話が多い。恋愛要素はどれも少なく見えるが、一応恋愛ものという括りらしい。
一作だけ、多和田葉子の漢字の話はすでに読んでいた。
特に印象的だったのは、
本谷由希子、迫力とリアリティと奇想天外で面白かった。
村田沙耶香、細かく書き連ねて積み上げるのがうまい。
吉田知子、多分この中で一番好きなタイプの作家。
小池昌代、切れ味がよい。
星野智幸、描写がうまい。
というかんじ。
編者は岸 -
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『星が吸う水』以来の村田沙耶香san。
少女の顔をした、化け物が目覚める。私となんの関係もないあなたを、私は殺したい-。
1話目「ひかりのあしおと」は、小学二年生の誉(ほまれ)が<ピンク色の怪人>にトイレに閉じ込められるシーンから始まり、<レンアイ>を経て、呪文と光に苦しめられながら大学生となっていく物語。冒頭から「私」が敬語で語り出す距離感、大学の教室で蛍から声を掛けられた時に、「不意に、とてもきれいな発音の日本語が私に放たれました。」という表現が素敵でした。
2話目は表題作「ギンイロノウタ」。「私が”化け物”だとして、それはある日突然そうなったのか~」から始まる恐ろしさ。主人公の少女 -
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三人の女性達の女性という不確実な性別への懐疑的な思いをのせたハコブネ。
19歳の里帆は、女性である事に自信がない、あるいは懐疑的。今一度、自分の性別について考えようとする。31歳の椿は、女性としての自分磨きを怠らない。同じ31歳の友人の知佳子は、性の対象が宇宙的。彼女らは、有料自習室で出会い、お互いの性に関する認識とその対応を模索する。
ヒトが生きていく上で、性別という区分が必要か否かというところが主題なのかなと思う。肉体と精神の不一致を考えるとしても、性別のどちらかに統一するのではなく、全て自由で良いのではと前向きに終結する感じ。
男女という性別に悩むのは、ヒトのみなのかな。動物の雄雌という -
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〈変半身〉
今回は民俗学かぁ、なんかどろどろしてるなぁ、お、盛り上がってきたぞ、と思ったらあっさりと物語が放棄される。さすが村田沙耶香センセイ。
その後も力士の投げの打ち合いのように、お互いをクルンとひっくり返すような展開にハラハラしてると、最後は観客も一緒に両国国技館ごとひっくり返された感じ。強引な力技で締められました。丸ごとポーポーで埋め尽くされたページには、もう笑ってしまうしかありません。
悪意満載の社会風刺。
〈満潮〉
類型化され、商品化された性に戦いを挑む作品、なのか?
共感する事も多かったけれど、解説の小澤英美さんの「海で出会う三人の老婆たちの、なんと神々しいことだろう」と -
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絶縁がテーマの短編集。
期待していた村田沙耶香さんの短編も良かったが、意外に他の作家さんの短編が気に入った。
幼なじみの少女と結構良い仲だったのに、結局その少女とは結ばれることなく、小さい頃の少女との会話を思い出す主人公の話(「穴の中には雪蓮花が咲いている」)は、自分の思う通りには世の中は進まないということ、あともう一歩踏み出せていたらという後悔などの主人公の気持ちが押し寄せてくる。ただただ切ない。
「絶縁」では、仲の良かった先輩夫婦と主人公が、ある出来事をきっかけに疎遠になるという話。そんなことで人は袂を分けてしまうものなんだな…と思うが、譲れない思想は皆それぞれ持っている。それがたまた -
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村田さんが35歳くらいのときのエッセイ集。
こう言っては何だけど,普通の人なんだな。書いている小説から筆者はきっと凡人では考えつかないようなことを常日頃考えているのだろうと思っていたが、そんなことはなかった。
結婚や出産等で友達が減っていくと感じたり,オバサンになりきれなかったり,誰でも通る道について書かれている。
私が勝手に抱いていた村田さんのイメージとかけ離れていたのが,「必要以上に商品を褒めてしまうところ」である。
村田さんは美容部員に化粧品を進められたとき,大した効果がなくても化粧品を褒めちぎってしまうらしい。他人に気を遣い過ぎる人なのだろうな。
左半分裂けたパジャマをずっと着ている -
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『丸の内魔法少女ミラクリーナ』以来の村田沙耶香san。
無性別を求める里帆、女であることに固執する椿、物体として生きることを選んだ知佳子。三人が乗った見えない「ハコブネ」とはー。
自分のセクシャリティーに疑問を持つ里帆から始まる物語。正直、よくある展開かな と思っていたら、第2章では知佳子からの視点に変わり、世の中の皆が壮大な「おままごと」をしているみたい という捉え方がとても新鮮でした。私も少し解るから。
また、随所に私の好きなフレーズが散りばめられていました。
・声の温度が低くなったような気がして
・痛みを慈しむように、服の上から心臓を撫でた などなど。
誰かがいつか「やーめた」と -
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「コンビニ人間」以来、著者の本を読んでみた。
小学校高学年~中学校の、まさに思春期真っ只中の男女を描いている。
思春期特有の身体的な変化、気持ちの描写を非常にリアルに、繊細に描いていて、私も読んでいていて昔の自分を思い出した。
小学校、中学校でのクラスの描写も非常に生々しい。私はあまり学生時代対人関係で悩んだことはなかったが、この本で描かれているようなクラスでの序列や暗黙のルール、いやーな雰囲気みたいなものってあったなと。
子供の悩みなんて大人の悩みに比べれば大したことないだろ…と思うこともあったがとんでもない。子供は子供でその世界の中で必死に悩みもがき苦しみ日々葛藤している。
前に読んだ「嫌