いしいしんじのレビュー一覧

  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「一万円選書」の本の中で、店主のいわたさんが紹介していた本。
    とても温かいハッピーエンドのラブストーリーで、童話のような感じだが読みやすかった。

    タイトルのトリツカレ男とは、そのまんまの意味で、すぐに何かにとりつかれてしまう男ジュゼッペの話。
    オペラ、三段跳び、外国語、昆虫採集、サングラス集め…次から次へとりつかれるとそれに夢中になってしまう男が、ペチカという少女に出会い…という話。
    レストランの主人やツイスト親分をはじめ街の人たちもなんだかんだ言いながらジュゼッペを温かく見守っていて、その関係性がいいなと思った。
    周りにどう言われようと、何かに夢中になれるということ自体が幸せなんだろうなと

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    2025年10月17日
  • 本からはじまる物語

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    作品紹介・あらすじ

    1話5分でわくわくできる、本にまつわる18のストーリー。

    森を飛びかう絵本をつかまえる狩人、ほしい本をすぐにそろえてくれる不思議な本屋、祖父がゆっくり本を読む理由、書店のバックヤードに隠された秘密……。
    青春、恋愛、時代小説から、ミステリにファンタジーまで、「本」と「本屋」をテーマに豪華執筆陣18名が集結! 本の世界の奥深さが短いお話の中にたっぷり詰まっています。1話5分でわくわくできてどこから読んでも面白い、本にまつわるショートショート・アンソロジー。

    *****

    本にまつわるショートショート18編を集めた短編集。
    僕は梨木果歩さんの作品目当てで購入。
    ホロリとさ

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    2025年10月05日
  • ぶらんこ乗り(新潮文庫)

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    ◼️ いしいしんじ「ぶらんこ乗り」

    不思議な天才、弟は今夜もブランコに乗り、動物の話を聞き、物語を紡ぐー。

    いしいしんじは先日初めて「トリツカレ男」を読み、児童文学での奇想に惹かれ、えもいわれぬ文芸的な説得力を感じた。さて、今回はー。

    姉のわたしは小学4年生。1年生のあのこ=弟がいて、画家の母、額縁を造る父、元女優で子どもにも厳しい祖母と暮らしている。他界した祖父は高名な画家で母のところには画壇関係の出入りがひっきりなしにある。

    ある日弟は雹が喉に当たったのが元で普通の声が出せなくなり、筆談するようになる。近所にいた毛が半分抜けた犬を拾ってきて「指の音」と名付けたあのこは、家の木の上に

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    2025年09月30日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    ネタバレ

    なんでも夢中になっちゃうトリツカレ男、ジュゼッペ。
    いろんなことを全力でしたことは無駄じゃない。
    ジュゼッペがペチカにとりつかれたからこそペチカの心の曇がわかって、ペチカの幸せを本当に望んで行動できたのだと思う。

    いしいさんの本は切なくて悲しいこともあるけど、なんだか素敵だと思えるラストが好きです。

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    2025年09月01日
  • 四とそれ以上の国

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    ネタバレ


    何もわからないまま知らない世界に放り出されて
    少しずつ自分の中に落とし込んで歩いていく感じでした。
    読むのに時間がかかってしまった。

    舞台は四国なんだけど、作品名の通りの「それ以上の国」。
    私たちの知らない、歴史と霊性に満ちた四国の短編集たち。

    個人的には『藍』が一番好きだったかな。
    四国に住んでる人たちには読んでほしいななんて。
    ただこの作品は好き嫌いが別れるだろうな…。

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    2025年08月28日
  • 息のかたち

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    なんとも言えない。
    文体が好きだから読めたけど、内容はうーん。
    とはいえ、コロナがあったからこそ生まれた文学。どんな状況も文化を生み出す。
    コロナを知らない世代が読んだら意味わからんのやろうなあ…。

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    2025年06月02日
  • ある一日

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    いしいしんじの作品は最初にトリツカレ男をよんでいたので文体の違いに最初は戸惑いつつも、次々と目まぐるしく映る景観が流れてくるような不思議な文章で中盤くらいから癖になっていた。

    自分は性別が男な為、慎二の立場で出産の立会いの場面を読んでいたがなかなかにハードというか、、想像を絶するのだろうという臨場感がひしひしと感じた。

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    2025年05月27日
  • 麦ふみクーツェ(新潮文庫)

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    【2025年36冊目】
    素数にとりつかれた父と、音楽にとりつかれた祖父。誰よりも身体の大きなぼくは、ねこの鳴き真似が上手く、「ねこ」と呼ばれている。ある真夏の夜、ぼくはリズムよく鳴らされる不思議な音を耳にする。それは麦ふみクーツェの足音だった。

    大人向けの童話のようなお話、もしくは絵のない絵本、という表現が自分の中でしっくりくる一作でした。連作短編集というわけではないと思うのですが、章ごとにタイトルがつけられていて、ゆっくりゆっくりと物語は前に進んでいきます。

    ありそうでなさそうな、ちょっぴりファンタジーも入ったお話。読み聞かせしたくなるようなリズム感。もしかしたら、Audibleと相性が

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    2025年03月25日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    トリツカレ男はとりつかれたら全力。

    そんなジョゼッペは周りの人みんなに愛されていて、レストランのオーナーをはじめとして、時に困りながらも(本当にそばにいたら困りそう!)温かく見守っている。

    そんな彼がある女の子に心がとりつかれて、これまでとりつかれて全力で向き合ってきたものが生きてくる。

    真っ直ぐさが時に辛く切なかったけれど、温かく素敵なお話でした。

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    2025年03月17日
  • 息のかたち

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    あることがきっかけで人の息のかたちが見えてしまう夏美の不思議小説。コロナが世間を席巻したあの時の設定。確か咳をした時にどんなふうに咳が広がっていくのか盛んに画面で説明していたっけ。それと同じように主人公には人それぞれの息のかたちが色付きで見えてしまいます。なんだが不思議でフワフワした小説。また、主人公が住む京都の街並みと京都弁がとてもマッチして浮かんできます。

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    2024年12月25日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    児童文学的な恋愛小説

    小学校の推薦図書にでも取り上げられそうな良くできた展開。軽快な文体で、風変わりな伏線が綺麗に回収されていく。

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    2024年10月08日
  • 義経千本桜

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    ネタバレ

    関西弁でくだけた表現なのでさくさく読める!しかし、やっぱり源平合戦をあまり知らないので知った上で読んだ方が面白いだろうな。

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    2024年09月06日
  • げんじものがたり

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    古文が苦手で避けて通ってきたのだけれど、楽しく読み切れました。それどころか、その後が気になるので続きが読みたいです。

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    2024年09月03日
  • 息のかたち

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    ネタバレ

    ある日金属バットが頭に当たった夏実は、人の吐く息が目に見えるようになる。そんな彼女のコロナ禍の日常、事件、悩みながら決める進路などのおはなし。色とりどり、形も様々にあらわれる息が素敵。息をしているとはつまり生きていることとおんなじであって、息のかたちを見られている側はどこか深いところに触れられるように感じてしまうがために夏実が急にモテモテになってしまうという事件が面白かった。古代ギリシアでプネウマ(息)が生命のもと、命そのものとされていたのを思い出す。私たちは自分でも知らぬうちに常に命のかたちを吐き出していて、それがちぎれては世界に満ちているなんて、なんてロマンティックなんだろうか。
    3章の展

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    2024年09月03日
  • 息のかたち

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    高校生の夏実は、ジョギング中に金属バットが頭にあたった日から、人の息が見えるようになった。そして、どうやらそれは父親も祖母も同じだということも知った。そんな夏実のコロナ禍での高校生活を描く3連作。
    不思議な設定なのに、不思議さを感じさせないところが面白かった。
    3番目の「息してますえ」が、一番好きだ。

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    2024年08月28日
  • 義経千本桜

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    ちょっとストーリーがわかりづらかった。
    もう一度歌舞伎でみたい。
    文楽ではまだみたことがないのでこちらもみたいと思った。

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    2024年08月24日
  • 息のかたち

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    新型コロナが蔓延した2020年~2023年にかけて、人は人の吐く息というものに対して異様なまでの嫌悪感を抱いていたように思う。
    「飛沫」や「エアロゾル」という言葉自体にも強烈な忌避感があったのではないだろうか。

    著者は、コロナ禍の人々の息遣いを、それとは真逆の色とりどりで生き生きとしたものとして描いている。
    見境なく周囲を疑っていたあの頃、もしこんな風に人の息遣いが見えていたらもっと穏やかな気持ちで過ごせたのではないかと考えてしまう。

    主人公の夏実を取り巻く大人も皆魅力的。
    京都が舞台なのも少し時間の流れ方が違う感じがしてくつろいだ気持ちになれる。
    ただ最後の方の夏実と母のエピソードが唐突

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    2024年08月23日
  • 麦ふみクーツェ(新潮文庫)

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    動物が死ぬのは良くない。人間も死ぬけど。
    ヘンテコな人がたくさん出てきて、気を使ってしまうようなソワソワ感がある。ただ本人たちはヘンテコであること、ヘンテコなことは一番に危険な目に遭うこと、色々を理解していて、その上で目立たないようにではなくてやりたいことや特技を磨く。それがヘンテコさに誇りを持つ方法らしい。ヘンテコじゃなくても人間はそう生きるしかないんじゃないかなと思う。

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    2024年05月22日
  • げんじものがたり

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    全編、アンミカさんの声で再生されました。
    取っ付きやすさは抜群!

    しかし、そもそもキモチワルイと思ってしまった。
    読みつがれてきた名作ですが、もっと読みたいとは思えず。

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    2024年04月04日
  • ぶらんこ乗り(新潮文庫)

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    不思議な作品である。

    幼い弟を主人公として、幼い姉の視点で描かれた、残酷な現実を生き抜くこどもたちの物語。

    弟は、物語の序盤で、声を失う代わりに、声なき者の声を聞き、届かぬ声を届ける力を得る。出だしから否応なしに運命を背負うところは、もののけ姫のアシタカを連想した。

    弟は声なき者たちの声を、ものがたりにしてノートに書き付けた。道尾秀介『ノエル』みたいに、そのものがたりがスパイスになり、姉目線の文体と相まって、この作品に不思議な空気感をまとわせている。

    姉は何の能力もない、弟を助けることもできないしその余裕もないけれど、弟は姉がいるからこそ、その力でふたりを守っている。松本大洋『鉄コン筋

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    2024年06月13日