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Posted by ブクログ
とても大好きな作品。プラネタリウムやサーカスなど、夢の中の世界みたいな、ファンタジーで、登場人物も変な名前のやつばっかりで、いびつな話ではあるのだけど、ふたごの二人がはなればなれになっても、同じ感性でつながっている話だった。
上質な童話や、絵本を読んだときの、深い感動があった。
プラネタリウムでテンペルとタットルがしりとりしてるところがかわいくて、よかった。そこにはシャボン玉があって、星空の前に一つ追加されたレイヤーが幻想度を上げてた。
すこし長い小説だけど、たぶん小学生の高学年から中学生くらいでも読めるような、ひらがなの多めなものだが、描写は正確で、過不足ない語り口なので、広く読めるものだと思う。もう15年くらい前に読んだきりだけど、これくらい語れる。
Posted by ブクログ
心に深く沁み入る言葉、大事にしたいことがたくさん詰まった小説だった。
登場人物の、真正面から物事を受け止める姿や素直な心、優しさに、涙が溢れて止まらない場面が多々あった。
星の見えない土地のプラネタリウム。手品。それは 心を和ませたり心を打ったりすることができるもの。だれでも、現実ばかり見て生きていたらかさかさに渇いて何の面白味もない人生になってしまう。まやかしや偽物でも、本物以上のきらめきを人の心に灯すことができる。大切な誰かと一緒に見たり体験したりしたすばらしい出来事は、その後自分の人生を豊かにするだけでなく、いつまでも心の中で自分の支えとなって暖かく残り続けるんだと思う。生きていれば辛いことや苦しいこと、受け入れられないような現実に打ちひしがれることがあるけれど、心に光のかけらが、星粒が一つでもあれば、それがきっと遠い未来まで自分を生かしてくれるはずだ、そう思える作品だった。
Posted by ブクログ
プラネタリウムの解説員である「泣き男」は、村で水死した女があとに残した双子を引き取って育てることになる。
双子には、太陽の周りを三十三年周期で回っているテンペルタットル彗星から、テンペル、タットルと名が付けられる。
勝ち気で活発なテンペルは、村にやってきたサーカスの一座についていき、やがて世界的な手品師として、旅から旅の暮らしを送るようになる。
対する穏やかなタットルは、村に残り、郵便配達員として、また父の仕事を手伝ったりして暮らしている。
中身は対照的でも見かけがそっくりなこの双子は、「熊」に関わってそれぞれの運命を歩んでいく。
いしいさんの作品には、いろいろなものが詰まっている。
身体の苦しみ、心の痛み、思いやりや知恵。
ここで描かれる世界は決して理想的なものではなく、雑駁で残酷なものも含まれているけれど、どこか温かい。
『麦踏みクーツェ』よりも、本作の方が好きかもしれない。
Posted by ブクログ
「手品師の舞台は、演芸小屋や劇場にかぎらない。私たち手品師は、この世のどんな場所でも、指先からコインをひねりだし、カードを宙に浮かせ、生首のまま冗談をとなえつづけなければならないのだ。いうなれば私たちはみな、そろいもそろって、目に見えない六本目の指をもっている。手品師たちのその見えない指は、この世の裏側で、たがいに離れないよう、密かに結ばれあっているものなのだよ」
ファンタジーの名手いしいしんじの傑作長編。
山間の村にただひとつあるプラネタリウム。そこに捨てられた双子のテンペル・タットルを中心に悲喜こもごもの人間模様を綴る。
剣も魔法も出てこないけど、この人の書く本はすべからくファンタジーだと思う。
どこかにありそうでない街。現実離れしてるようで、現実を引き継いだ世界観。よい人もいれば悪い人もいる、正直者もいればずるい人もいる。金持ちも貧乏人も、大人も子供も、強者も弱者も……そして彼の作品の主人公は普通の人より少し不器用で、少しだけ世界からずれたところに存在する者。
プラネタリウムに捨てられた双子は泣き男に拾われ育てられ、銀色の髪の美しい少年に成長する。
毎年工場では父親のわからない子供が産まれ養護施設に預けられる。煙突が吐き出す煙のせいで空は曇り、星は見えない。労働者は皆疲れている。そんな村で唯一、村人の娯楽として偽の星空を映し続けるプラネタリウムでは様々な出来事が起きる。
十四歳になった時、テオ座長率いる手品師一座が村を訪れたことによって、二人はそれぞれ別の道を歩むことになるのだがー……
優しくて哀しくて痛くて切なくて、いろんな感情で胸が一杯になる。
綺麗で楽しいばかりがファンタジーじゃない。
実際、作中では少なからぬ悲劇がおき、少なからぬ涙が流される。
時に、不幸に打ちのめされた人の心は絶望の闇で塗り潰されそうになる。
けれど
「くらやみなんです」
「もちろん、そこには何も見えません。見えないから、闇というのです。でもだからといって、そこに、なにもないとは、いえませんでしょう。なにかがあると感じるからこそ、われわれはきっと闇にひかれ、そして闇をおそれるのでしょうから」
作中泣き男が語るこの台詞こそ、本作の、ひいてはいしいしんじ作品すべてに通底するテーマを象徴する。
作者は目に見えないことやものを軽んじず、尊重し、あくまで純粋に向き合い、描き出そうとする。
哀しい過去を背負った不器用で真摯な人間達。
彼らが哀しみと折り合いをつけなんとかやっていこうとする姿勢が、自分が辛い時さえどん底の誰かをすくい上げようとする優しく気高い志が、「感動」の一語で括れない深遠な余韻を帯びて胸に迫る。
犬と兄貴のエピソードには思わず泣いた……。
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