いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
児童書のようなタッチで言葉が運ばれていくのに、背景にある闇が深い話だった。いしいしんじさんの作品を読んだのは二作目だけど、これがいしいしんじ作品の独特な雰囲気なんだろうなと思う。夜のシーンが印象的な作家さん。
弟はお姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんも弟が大好き。二人を中心とした、あたたかい家族のお話でした。最初の一通目が弟の最後の物語だったなんて、読んでる最中は全く気付かなかった。
そして、弟が動物の声を聞けるようになったあたりから、いつか壊れてしまうんじゃないかってあぶなっかしくて、見守るようにページを進めた。
お姉ちゃんは最後、弟に会えたのかな。 -
Posted by ブクログ
いしいしんじ氏の作品は『ポーの話』と『四とそれ以上の国』しか読んでないのだけど、冒頭からしばらく読んで、その2冊が繋がるような気がしました。第1章。しずかに淡々として、すこし不穏で、これは何かが起こる前なのだとわかるけど、起こったことさえも淡々と描かれる。
それこそひたひた水が満ちて、穏やかにまた引いていくような。
3章のラストシーン。 これまで読み手の感情はそっと抑えられていたけど、ここでやっと解放される気がします。
このシーンが最初だったのかな。今までの物語は全部、このラストに繋がるために生まれたのかなと思いました。
水が満ちて溢れる。人はいろいろなものを失くしていくけれど、どこか遠く -
Posted by ブクログ
いしいしんじの、「大人のための絵本」っぽいところが大好きで、
この本も読み始めました。
ただ、今までと違って、世界に入り込むのに時間がかかりました。
淡々と進み、物語の全容を把握するのに、300ページくらいかかりました。
このお話は、
吹奏楽部だった人、楽器を演奏することが大好きな人には、
もってこいのお話。
『音』についてのお話。
合奏をしている
それは、音を鳴らしている
音を鳴らすことによって、
誰か(何か)と繋がっていることができる
「繋がっている」ことが、どれだけ素敵なことなのか
それがわかるお話です。
演奏する喜びを知っている人は、きっと -
Posted by ブクログ
ネタバレいしいしんじ作品についてのおぼえがき
”みずうみ”をよんだあとは、水音が印象に残った。
水くみたちのみずうみから、タクシー運転手、分娩台まで全章にわたる水の気配。羊水ってどんな匂いなんだろ?としりたくなる。
ものごとはおこるだけ。みずのなかを漂っていくような。
”死産”というほんとのできごとをゆったりふくんで流れている物語がよかった。
実体験が入った小説はすきじゃないというひともいるけど、ただ受け入れるにはできすぎてて切なすぎる世界観だからこそ、人間臭さがあって安心できた。
いしいしんじ作品をよむと「湿度」や「気温」や「匂い」を感じる。
とくにみずの匂い。そしていつも羊水ってどんな匂い