いしいしんじのレビュー一覧
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とても良かった。
全体的にふわふわとした独特な世界観で、浮遊感を感じる作品だった。平仮名が多く、一見児童書のような優しさがあるけれど、もっと覗いてみれば、切なくて哀しい孤独感が漂っている。
言葉にするのが難しい作品。そっと寄り添ってくれているような優しさと、ふっと遠くへ行ってしまうような怖さを同時に感じた。
「あっち側」と「こっち側」、弟が何度もそう表現することで、明確にその世界が分けられているように見えるが、私はそれにより、その世界の境界がどんどん曖昧になっていった。それは私にとって怖くもあり、温かくもあった。
弟は声を失い(実質的には)、しかし動物と話すことができる。その「動物と話す」 -
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これは、唯一無二の物語。
時間、空間を自在に行き来して語られる。
なかなかストーリーをまとめることが難しいタイプの物語ではある。
主人公の「なにか」は、仏声寺に捨てられた赤ん坊。
普通の人間のように十六歳まで育っていくのに、寺の庭のコケの声が聞こえ、音が目に見え、美しい歌声を持つ、普通の人間ではない存在だ。
彼は流れ者の僧侶「お寺さん」の唱える経の中で、無数の生き物の生死を体験する。
そして、奇縁で結ばれた少女「あお」(お寺さんのふたごの弟、タマの娘)を救うため、固有の姿・形を失い、仏声寺に封じられた「悪声」、音そのものとなっていく。
たぶん、十代の頃とか、いや、十年前に読んでいたとした -
Posted by ブクログ
心に深く沁み入る言葉、大事にしたいことがたくさん詰まった小説だった。
登場人物の、真正面から物事を受け止める姿や素直な心、優しさに、涙が溢れて止まらない場面が多々あった。
星の見えない土地のプラネタリウム。手品。それは 心を和ませたり心を打ったりすることができるもの。だれでも、現実ばかり見て生きていたらかさかさに渇いて何の面白味もない人生になってしまう。まやかしや偽物でも、本物以上のきらめきを人の心に灯すことができる。大切な誰かと一緒に見たり体験したりしたすばらしい出来事は、その後自分の人生を豊かにするだけでなく、いつまでも心の中で自分の支えとなって暖かく残り続けるんだと思う。生きていれば辛 -
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恐らくは作者自身の、ある夫婦の出産の一日。日常からはじまり陣痛を経て出産へ至る過程が、実に濃密にでも淡々と描かれています。独特の言葉遣いや、こちらとあちらを行き来する文章に圧倒されながら、ずんずんとお腹の底から力が湧き出てくるかのような気持ちにさせられます。
視点は夫から妻へ、妻から夫へと移り変わり、そして生まれて来る子の視点へと繋がります。それは生き物の持つ道であり、土地が結んだ道でもある。
最後にバースプラン(どのように出産したいかを記したもの)が提示されるのですが、それを読むと今まで通った道をもう一度振り返りたくなります。何とも力に満ちた物語でした。 -
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ネタバレいろいろな短いお話がつらなる短編集。いしいさんの本はいつもそうだが、言葉や「おはなし」が自由に飛び跳ねていて、読んでいるうちにその世界にどんどん引き込まれ、手を引かれて自分も解き放たれるような気がする。
この本のテーマは、「いま」は今だけではなく、過去も未来も、場所も人もすべてがつながっていて、全部をひっくるめて「いま」なのだということだ。そして、それは「おはなし」なのか「ほんとう」なのかすら問わない。手を変え品を変え、そのことが繰り返し語られる。いしいさんの本全体に通底したテーマでもあると思うが、この本は息子さんのピッピくんが「おはなし」を通してそれを体得するためにあるような本で、いつにもま -
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ネタバレいしいしんじさん読むの4つ目。「トリツカレ男」「プラネタリウムのふたご」「ぶらんこ乗り」。
どれも世界観と文章がとても好きなんだけど、これ読んで確信した。ストーリーが自由に進んでいくようで、実はものすごーーーく緻密に構成されてるんだよ。印象的な途中のエピソードや何気ない小道具が後からバチバチバチって嵌っていって物語の中で意味を持ってくる。それが凄いの。鳥肌。
いやオムレツのエピソードに不意打ちされて涙がぶわってなりましたよ…あんなのむりだろ…うう…
クライマックスで、すべてがつながってひとつの音楽を奏でる、暗闇の中での観客たちがそれぞれの音を鳴らす、ホッチキスやはさみやおもちゃの合奏。生きて -
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ネタバレ村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』をもっと童話チックにした作品。だれかと一緒にだまされ同じ夢を見ることが、いかに人生を豊かでおもしろいものにするか、ということが手を変え品を変え実演される。手品に、まじない、言い伝え、それからもちろん小説も。目の見えない老女が家出した亭主の名をかたって書いた自分宛ての手紙を、その内実を察しながらも素知らぬふりして朗読をつづけるタットルや、「泣き男」がプラネタリウムに映してみせた見せかけの星に魅了される村の人たちや、タットル扮する熊をいつまでたっても撃ち逃してしまう猟師たちや、テンペルになりきったタットルに騙される「栓ぬき」とおなじように、一読者として私も存
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いしいしんじさん、「トリツカレ男」と「プラネタリウムのふたご」以来久しぶりに読んだのです…
あーもー、これは好きなやつだなあと最初の3ページくらいでわかる…。
小川洋子さんとも通じるんだよねえ。こう、静かな語りとどこか外国の童話のような世界。なんていうか、黒電話を使ってて、出窓のある洋館に住んでいて、肉屋で夕飯用の肉を買うような。
賢い弟とそれを見守る姉、両親、おばあちゃん、犬の家族。
母は画家、父は額縁職人。それぞれ個性的だけど愛し合って暮らしている家族。
いやほんとね、前も思ったけど、いしいさんの物語は繊細なだけにこう、薄氷の上に立ってるような危なっかしさが漂ってるというか、いつ大きな不