いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あぁ……涙がとまらない。。。
『トリツカレ男』
この本の表紙を初めて見たとき
〈ホラー〉かぁ…って思ったの。
だって怖いでしょ…表紙。
食わず嫌い的に苦手なもんだから…
それが全然違ってて…
100%ピュアなラブ・ストーリー❤️
ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。
何かに夢中になると、
寝ても覚めてもそればかり。
オペラ、三段跳び、サングラス集め、ハツカネズミ……他にもいっぱい!!
そんな彼が、寒い国からやって来た…
「ペチカちゃん」に恋をする物語。
第6章からなるこのお話…
第3章の「タタン」あたりから…
私の脳内に「クリープハイプ」の
「愛す」が流れて消えないの。
頭の中の音楽とジュゼッペとペチカちゃん
…もう、やられました。。。
頭の中の音楽は…
まぁ…しょうがない。
『トリツカレ男』
ひさしぶりにピュア♡…な気分に
なった1冊でした♪
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Posted by ブクログ
とても良かった。
全体的にふわふわとした独特な世界観で、浮遊感を感じる作品だった。平仮名が多く、一見児童書のような優しさがあるけれど、もっと覗いてみれば、切なくて哀しい孤独感が漂っている。
言葉にするのが難しい作品。そっと寄り添ってくれているような優しさと、ふっと遠くへ行ってしまうような怖さを同時に感じた。
「あっち側」と「こっち側」、弟が何度もそう表現することで、明確にその世界が分けられているように見えるが、私はそれにより、その世界の境界がどんどん曖昧になっていった。それは私にとって怖くもあり、温かくもあった。
弟は声を失い(実質的には)、しかし動物と話すことができる。その「動物と話す」というのも、動物たちが語りかけてくるのを根気よく待ち、動物から伝わってくる「ふるえ」からなんとか自分の言葉を探す。
「あっち側」でも「こっち側」でも完璧にその世界に統合できない弟が、ぶらんこに乗ってあっちにいったりこっちにいったりしながら必死に世界と繋がろうと、世界に自分を溶け込まそうとしているところが、見ていてとても痛々しく、愛おしい。
誰といてもいつも孤独で、世界を曖昧にいったりきたりしている弟は、本当は誰よりもこの世界の全てを丸ごと愛しているのだと思う。
読んでいくうちに、この物語、言葉のひとつひとつ、物語に出てくるもの、人、動物、全てに愛しさが溢れてくる。泣きそうになっても、それが愛しさからか、哀しさからか、切なさからか、あるいはそれら全てが混ざり合ってくるものなのか分からない。この何とも言えない感情を言葉にできないのがもどかしい。それでも、この本を読みながら感じた自分の感情の全てを大切にしたくなる。
この作品の良さを言葉で表現するのは非常に難しいと思う。いしいしんじさんの独特の世界観が滲み出ていて、まだあまり掴めていない部分も多いけれど、その掴みどころのなさもまた良い。
改めて、本っていいな〜と思える作品だった。 -
Posted by ブクログ
これは、唯一無二の物語。
時間、空間を自在に行き来して語られる。
なかなかストーリーをまとめることが難しいタイプの物語ではある。
主人公の「なにか」は、仏声寺に捨てられた赤ん坊。
普通の人間のように十六歳まで育っていくのに、寺の庭のコケの声が聞こえ、音が目に見え、美しい歌声を持つ、普通の人間ではない存在だ。
彼は流れ者の僧侶「お寺さん」の唱える経の中で、無数の生き物の生死を体験する。
そして、奇縁で結ばれた少女「あお」(お寺さんのふたごの弟、タマの娘)を救うため、固有の姿・形を失い、仏声寺に封じられた「悪声」、音そのものとなっていく。
たぶん、十代の頃とか、いや、十年前に読んでいたとしたら、この本を受け入れられなかった気がする。
でも、最近、思う。
自分もあと数十年もすれば、この世から消える。
今の姿は仮のもので、いずれ元素に戻って世界に散らばっていくのだろう。
その中で、また、いずれ別の何かの形をひょっととることもあるのかもしれない。
歳をとっていくと、自分の中にたくさんの年齢の自分がいることにも気づく。
そんな風になっていくと、一見カオスのようなこの作品の世界も、なぜかすんなり受け入れられるのだ。
悪声となった「なにか」は、「かなし、かなし、かなし」と歌う。
命は生まれ落ちた時からすでに死を内包している。
どういう形であれ、この世界に置かれた状態で生きていかなければいけない。
そのような命のありかたが「かなし」と表現されるのだ。
仏教的ともいえる生命観だが、この作品では命は「歌」でもある。
そのためか、非常にイメージ豊かに、融通無碍の形をとるいのちの在り方を美しく描いている、と感じる。
読み返すなら、どのページから読み返してもいい。
自分の感覚が解き放たれるような気がする。
でも、この作品を知人が読むとしたら、何度中断しても、最後のページまで読むことを勧めたい。 -
Posted by ブクログ
心に深く沁み入る言葉、大事にしたいことがたくさん詰まった小説だった。
登場人物の、真正面から物事を受け止める姿や素直な心、優しさに、涙が溢れて止まらない場面が多々あった。
星の見えない土地のプラネタリウム。手品。それは 心を和ませたり心を打ったりすることができるもの。だれでも、現実ばかり見て生きていたらかさかさに渇いて何の面白味もない人生になってしまう。まやかしや偽物でも、本物以上のきらめきを人の心に灯すことができる。大切な誰かと一緒に見たり体験したりしたすばらしい出来事は、その後自分の人生を豊かにするだけでなく、いつまでも心の中で自分の支えとなって暖かく残り続けるんだと思う。生きていれば辛いことや苦しいこと、受け入れられないような現実に打ちひしがれることがあるけれど、心に光のかけらが、星粒が一つでもあれば、それがきっと遠い未来まで自分を生かしてくれるはずだ、そう思える作品だった。 -
Posted by ブクログ
恐らくは作者自身の、ある夫婦の出産の一日。日常からはじまり陣痛を経て出産へ至る過程が、実に濃密にでも淡々と描かれています。独特の言葉遣いや、こちらとあちらを行き来する文章に圧倒されながら、ずんずんとお腹の底から力が湧き出てくるかのような気持ちにさせられます。
視点は夫から妻へ、妻から夫へと移り変わり、そして生まれて来る子の視点へと繋がります。それは生き物の持つ道であり、土地が結んだ道でもある。
最後にバースプラン(どのように出産したいかを記したもの)が提示されるのですが、それを読むと今まで通った道をもう一度振り返りたくなります。何とも力に満ちた物語でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいろいろな短いお話がつらなる短編集。いしいさんの本はいつもそうだが、言葉や「おはなし」が自由に飛び跳ねていて、読んでいるうちにその世界にどんどん引き込まれ、手を引かれて自分も解き放たれるような気がする。
この本のテーマは、「いま」は今だけではなく、過去も未来も、場所も人もすべてがつながっていて、全部をひっくるめて「いま」なのだということだ。そして、それは「おはなし」なのか「ほんとう」なのかすら問わない。手を変え品を変え、そのことが繰り返し語られる。いしいさんの本全体に通底したテーマでもあると思うが、この本は息子さんのピッピくんが「おはなし」を通してそれを体得するためにあるような本で、いつにもまして分かりやすく茶目っ気たっぷりに書かれていると思う。たぶん実在の、ピッピくんが知っている人たちや好きなものをちりばめてあるのだろう。
特に好きなのは、「十九歳のパチ」「さまざまな年のサンタクロース」「三千年生きる」「犬はどこへいくん?」だ。お話のほうからおいでおいでと手招きをされているようで、本当に楽しく、面白く読めた。パチの踊り、サンタのクリスマス、砂漠のオリーブ、ぴんと立ったしっぽ。何回も読みたいなあ。