いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
隅から隅までいしいしんじで満たされている。そんな短篇集です。
生と死、光と影、静と動、清と濁、それらが対を為すのではなく混じり合い、しかしひとつにはならないような。そんな混濁とした感じなのに清らかに透き通っている。それがいしいしんじの作品に接した時に感じるものなのです。
二年に一度行なわれる「村うつり」、子どもの上に現れる透明な女の人とエアー犬、海からやって来た少女とピアノ、あたらしい熊を求める僕。突拍子もない設定に放り込まれて巻き込まれて流されて、行き着く先はどこなのか。想いも感想も思考も全てを飲み込む、そんな物語たちが詰まったいしいしんじの短篇集。 -
Posted by ブクログ
ネタバレプラネタリウムに置いて行かれたふたご。テンペルタットル彗星の解説中に泣いたことから、テンペルとタットルというなまえで呼ばれるようになる。銀色の髪をした美しいふたご。
紙製品の工場が動き続ける村では、もやや煙で星が見えない。
ふたごは解説員「泣き男」のもとでプラネタリウムや星、神話に親しみながら育つ。
あるとき、魔術師テオ一座が村にやってきたことからふたごは離れ離れになる。タットルは郵便配達をしながら星を語り、テンペルは手品師へと。
「麦ふみクーツェ」以来の、いしいしんじ作品でした。
クーツェを読んだのも思い出せないくらい昔のことで、いしい作品をほぼ知らない状態での読書でした。
優しい文章は気 -
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Posted by ブクログ
毎日新聞に連載されていたエッセイをまとめたもの。
『京都ごはん日記』に書かれていたことが、
読みやすい文章で、説明も加えられて、
いしいしんじを知らない人にも分かりやすくなった感じ。
息子に対する愛情を、作家の客観性と文章力で書くと
誰のココロにも繋がっていく深みが出る。
男性作家が子供について書く文章が私はすごく好きだなー。
この作家の子供だから、で
他の子供には体験しようのないものもたくさんあるけれど
日常の中で子供が見せる新鮮な反応や言葉は、
子育ての醍醐味なんだろうと思う。
目の前の小さなことに怒ってばかりいるお母さんや、
仕事に追われるばかりで時間のないお父さんに、
こういう本を読む -
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Posted by ブクログ
漢字の開き(ひらがな)が多いので
読み切るのに少し時間がかかりました。
前半にあるのは穏やかで停滞した世界。
後半に訪れるのは残酷で優しい世界。
後半に物語がどんどん加速するので、
途中で断念してしまった人も、
ゆっくり休み休みで良いので
読み進めて欲しいなぁと思う作品でした。
終盤に主人公のバックグラウンドが
靄が晴れるように一気に明らかになっていき、
それはそれなりに鬱蒼になる内容だけれども、
根底には思いやる気持ちが流れているので深く沈み込むことなく、
読後には柔らかな余韻に包まれます。
所々散らばる一見意味不明なパーツたちが組み合わせっていく様も読みどころです。
人生には救い -
Posted by ブクログ
なかなか頭に入らない物語。
阿波、讃岐、土佐、伊予の四つの国の、過去と現在、伝説や歴史的人物、そして土地の「もの」が絡み合い、混然一体となって物語が動いていく。
冒頭の「塩」という作品で言えば、人形浄瑠璃の義太夫節がウキを乗っ取り、主人公をはじめとする登場人物を引きずり回し、カタストロフに追い込んでいく。
しかし、その混乱の中で、主人公は自分の「筋」(これは節の「筋」であると同時に、人間の生命力か何かの隠喩のように思える)を見出す。
こんな風に、何かの人知を超えた「土地の力」が人物や物語をドライブする小説と理解したけれど・・・。
読んだことないけど、中上健次の小説って、そんな感じなのかな?