いしいしんじのレビュー一覧

  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    見返りを求めず、ただ自分を信じた道をひたすらに進む。
    愛とはそういうものなのでしょう、愚直なまでのその直向きさに心奪われるしかなかったです。
    結局人生において大切なものっていつでもシンプルなんですよね!
    ハッピーエンドで良かったし、何があっても愛と情熱で乗り越えていけるのが簡単に想像出来る。
    ありがとう、と言いたくなる作品。

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    2026年08月31日
  • 悪声

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    私は誰が何と言おうと大好き。目に見えるような空気感とか質感とか色彩とか、この本からしか得られない何かがある。作品を通して、苔と一緒に呼吸して、鬼ちゃんと一緒に歌う、心地の良い作品。

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    2026年08月02日
  • 人生不案内(新潮新書)

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    人生相談集だと思って読み始めたが、一番印象に残ったのは「答えは相談者自身の言葉の中にある」という考え方だった。

    回答者は答えを与える人ではなく、相談者に鏡を見せ、答えは相談者自身にあることを気づかせる人。

    この考え方は人生相談だけではなく、自分自身の日記にも応用できるのではないかと感じた。日記を読み返すことで、過去の自分を客観視し、未来の自分が答えに気づくことができるかもしれない。

    人生に悩んでいる人だけでなく、人の相談を受ける立場の人にもおすすめしたい一冊。

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    2026年07月25日
  • 人生不案内(新潮新書)

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    小説家いしいさんのお悩み回答。いしいさんは、トリツカレ男などたしか大学生の頃出会い、ファンタジーだけどほわほわでは終わらない小説が面白く当時たくさん読み、その後エッセイのいしいしんじのごはん日記系にとてもハマり、新刊を楽しみにして読んでいた。最新作のチェロ湖(小説)は読破できず…
    超大作超超長編)
    そんな中こちらの人生回答。面白かった。前書きにあるようにいしいさんの回答はずばっとしてる。質問者側にあなたが謝るべき等、わたしはお悩み相談、回答本すきなのだけど、細木数子じゃないけど、いしいさんスッパリ。それが決して冷たくはない。言われてみたら確かに…だし、本当に傷ついている人に対し実直で優しい。なので相談の本質をついている。
    あとがきにも質問者の中にすでに答えがあるそうだ。
    奥さんの名前も少し出て、魚屋さんの名前とか、とてもエッセイを読んでいた頃のように懐かしく感じた。

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    2026年05月05日
  • 悪声

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    「息を吸ったときはいってくるのは
    空気だけじゃない。
    きみがいる時間や土地、風景のすべてが、
    からだにすいこまれ、細胞からはきだされ、
    すいこまれ、また吐きかえされる。
    息をする、ってのは、
    おおさっぱにいえばそういうことだ。
    生きているっていいかえてもいいが」

    これは主人公『なにか』と共に寺に住む
    寺さんの言葉

    こんな言葉が次から次へとあふれてくる

    苔たちに守られていた『なにか』
    成長して
    本人も知らないうちに
    美しい声を発するようになる
    人々の心にさまざまな風景を呼び出す
    はたして『なにか』は
    苔の妖精なのか?
    はたまたイエスキリストなのかとも思わせる
    いや、しかし普通の人間のようでもある
    まわりの人々もまた
    研ぎ澄まされたものをもっている
    特殊ななにかを‥‥

    すべてを理解しようとしても
    飽和状態になってしまって
    あふれてしまう
    なかなかむずかしい
    いしいさんのエネルギーに負けてしまう

    そんな物語

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    2026年03月25日
  • げんじものがたり

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    いしいしんじさんの訳す源氏物語。訳すというか、いしいしんじのものがたりになっているというか、現代の京都のおじさんがしゃべってるみたいなかなりぶっとんだ訳なのでびっくりした。
    セレブとかのカタカナ語、「ぐうかわ」みたいなネットスラング、「三冠王」とかの時代を超えた概念がバンバン飛び出す。登場人物の口調もすごく砕けている。いや、面白いから私はありなんだけど!奥ゆかしさ、格調高さとかは全く失われてる(笑)。その分、各登場人物の性格、特に夕顔の可愛らしさというのが、角田光代訳で読んだ時よりよく伝わってきたかも。夕顔は、ヤリチン光君にとっては死ぬほど都合が良くて、ちょうどいい感じの女だったんだなあ。かわいそう。
    現代語になった結果倫理観も現代に引っ張られるのか、光君のヤバさはより際立つ。行動もアレだけど内心のスケベ心とかクズさが現代語だとモロ出しになっちゃう。で、いしいしんじはそのクズっぷりを地の文で面白おかしくくさしてしまうから、ほんとほんと、と溜飲を下げてしまって気持ちがすっきりして読めるところがある。
    光君が死んだあとのうじうじして恩着せがましい男たち、プライド高かったりなよなよしてばっかりの女たちもいしいしんじ訳なら面白く読める気がする。全訳してほしいなあ。

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    2026年03月22日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    とりつくくらい一生懸命になれることがどれほど素敵ですごいのか教えてくれる作品でした。
    登場人物全員があたたかく優しい世界で好きでした。

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    2026年02月17日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    変な絵で初めはあんまり気が乗らなかったけど、読み進めるとどんどん面白くなってくる。登場人物も少なくシンプルで分かりやすい。いい話だった。何事にもトリツカレるトリツカレ男の変わり者扱いされるジュゼッペ、いい奴過ぎる〜。人柄が良ければ、少々変わり者でも幸せになれるんだな、と思った。読んでよかった!

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    2026年02月05日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    忘れていたけど、遠い昔にも気になっていた本。
    ひとつ一つがやさしい表現で、でもしっかりと、心の機微まで伝わるような文章なのがすごい。
    ぎこちないながらも、本当に誰かを想っている姿は、すごく胸を打つものがあった
    またいつか、読み返したい物語。

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    2026年01月16日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    映画を見て、読んでみた。
    シンプルだけど、優しい文章。
    映画のセリフもほぼ原作に忠実だった。
    途中のタタンにトリツカレた描写とかストーカーを越した感じは通常だと引いたり、読むのが躊躇われることがあるけど彼の文章だとそういうことなく読めるから不思議。
    おまけの部分だけエンディングが違うけど、どちらもほっこりした。
    彼の他の作品も読んでみようかな。

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    2025年12月09日
  • 本からはじまる物語

    購入済み

    読みやすい

    本屋の魔法使い。よかった。自分もこんな本屋の人に会いたいと思った。自分の好みの本を見抜いて勧められたり、欲しい本があるとすぐに取り寄せてもらえる。うらやましいな。

    #ほのぼの #共感する #エモい

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    2025年11月22日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    ミュージカルアニメーションで映画化ということで読んでみようと手に取った作品。
    新しいのかと思いきや奥付けを見たら平成十八年と結構古いのに驚いた。

    ページ数も160ページと薄くて隙間時間に読むのにちょうど良い一冊。
    装画も物語自体も童話のような不思議な世界観を感じさせられる。

     こんなにも物事に夢中になれるジュゼッペが羨ましく感じた。
    ただ好きだからという単純な理由でたくさんの事に次々と夢中になっていく。
    何故か子供の頃の心を思い出させられる。
    朝から夕方まで夢中でカブトムシやクワガタを採りに行ったり何をやるにも一生懸命だったなぁ。
    大人になるとどうしても仕事が優先で効率や結果を求めたり時間が割けなかったりとそんな言い訳ばかりしてしまう。失くしてしまった子供の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれる。
    どこへいってしまったのやら…

    ジュゼッペの凄いところは下手の横好きではなく好きなものを極めてしまうところが半端じゃない。
    アニメや異世界モノによくあるスキルが増えていくような感じかな。
    しかも一見、夢中になったことはバラバラで無駄な事ばかりのように感じられるけと終盤に少女を救うために今までの経験が全て役に立つことになる。
    ジュゼッペの生き方を通して「人生に無駄なことなど何もないんだよ」と身をもって教えてくれる。自分にもいつかそんな日が来るだろうかと考えてしまうが、そこまで物事を極めていないから無理か。

    ジュゼッペのように一つの事に夢中になれるのは羨ましい才能。
    その才能が結果的に大切な人、周囲の人を幸せにするのは素晴らしい。
    でもそれは純粋な心で向き合ったからだろう。
    そんな風になれるなら何かにトリツカレるのも悪くないかもしれない。

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    2025年10月31日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    もらった本。

    取り憑かれてしまう男のバイブル。
    なんだか青春みたい。

    青春の真っ只中に読んで、その時いた女の人との思い出が忘れられない、とかそんな物語があって私にくれたんだろうな。

    忘れないでおきます

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    2025年10月18日
  • 義経千本桜

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    十月大歌舞伎 通し狂言『義経千本桜』に際し課題図書。物語の筋や人物への理解が深まった新訳。「忠義」で起こる不幸の数々は、個人の価値観や気持ちとしては理解できないけれど、そんなことも忘れて物語を楽しめた。

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    2025年10月05日
  • 能・狂言/説経節/曾根崎心中/女殺油地獄/菅原伝授手習鑑/義経千本桜/仮名手本忠臣蔵

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    能や文楽、歌舞伎に行きたくなった時、読んでおくと筋がわかって理解が深まり、余裕を持って楽しめます。 時代が違うと景色が違い、常識や価値観が違って、なかなかわかりづらいことが多いのですが、どの新訳も面白く、登場人物が生き生きと動き、楽しく読み進めました。 一家に一冊。

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    2025年10月01日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    仙台駅にて。東京駅ゆきの東北新幹線の発車時刻を待つあいだ、僕は駅ビルの本屋にいた。とくに目的などはなく、ただ時間潰しを目的に。
    本屋に入れば真っ先に、文庫本の棚を見てまわるのが、いつもの癖で。吸い寄せられるように、文庫本の棚の前に立ち尽くす。目的があれば目の色も変わるけれど、今日はとくに何もない。あるとすれば、新幹線での移動時間いわゆる“繭の時間”を充実させるための何かを。さて、発車時刻まで、あと何分?そうのんびりとも、していられない。

    “繭の時間”というのは、上白石萌歌さんのエッセイに出てきた言葉。海外へ向かう飛行機など、ある程度まとまった移動時間を過ごす際、乗客の思い思いの時間の過ごしかたを“繭の時間”と表現した。繭の中にはサナギがあって、目的地に到着したら、それらサナギは羽化して旅立つのだと。なんという表現をするのだろうか。僕はいつも、表現者としての彼女について、胸を躍らせながら見守っている。僕は、上白石萌歌さんに夢中なのだ。
    仙台駅から東京駅まで、東北新幹線での所要時間はおよそ90分。萌歌さんは、自身のパリまでの空路を“繭の時間”としての例として綴っていた。所要時間は、およそ13時間。一方、僕の旅は90分程度。彼女の“繭の時間”に比べれば、繭に包まれた僕は、あっというまに羽化してしまうだろう。

    僕の、僕なりの“繭の時間”を有意義に過ごすためには、やはり何か文庫本を手に入れよう。あまり重くなく、それは内容的にも物理的にも。ただしあまりに軽すぎるのも味気ない。我ながら欲張りだな…ゆっくり選ぶほどの時間もないのに。せいぜい15分ほど。いや、間に合うのかな、と汗ばんできた。
    やや目を血走らせつつ文庫本の棚の中段の、新刊や、その時期ごとにおすすめの既刊の文庫本が、表向きに並べてあるコーナーにて、新潮文庫のその中に井伏鱒二の『黒い雨』を見つけた。僕の中でこの本は、いずれ読まなくてはならない一冊としての位置にある。
     
    「白黒の写真に色がつくような
    忘れ難い読書体験をしている」
    上白石萌音さんが『黒い雨』について、記した言葉である。萌歌さんと同じく萌音さんのことも、僕は敬愛してやまない。
    『黒い雨』については、さすがに内容くらいは知っている。ゆえに手に取ることを躊躇してきた。けれども萌音さんが読んだとなれば、ぼくも読まなければ。
    憧れの人が読んだ本を、ぼくも読むことは、生涯交わることがないお互いの人生における、ささやかな交差点となり得るのではないか、と確信している。どうだろう。おかしいかな、こんな考え方は。

    ただし『黒い雨』今日手にする本ではないだろう。さて…となると…『黒い雨』の隣には『トリツカレ男』の文庫本が。

    トリツカレ男⁉︎
    まさか、との思いが炸裂した。新潮文庫⁉︎
    原作が存在していたのか。
    まったくの予想外だった。

    今秋公開予定であるアニメーション映画
    『トリツカレ男』の原作本。この映画で登場人物であるヒロイン“ペチカ”役の声優をつとめたのが上白石萌歌さんだった。『トリツカレ男』については、その線を通して知っていた。あくまでも映画のほうの『トリツカレ男』なのだけれど。まさか原作本があったとは。

    アニメーション映画『トリツカレ男』は、その絵柄が、ぼくには、いまひとつ刺さっておらず、いくら萌歌さんが声優でも、情熱を傾けるほどには至っていなかった。
    文庫本の『トリツカレ男』を手に取った。映画公開に合わせた特別なカバー。厚みはさほどでもない。この本なら東京駅までの道中“繭の時間”にぴったりなのでは?
    なにより萌歌さん出演作の原作である。
    そうだな、今日のお供はこの本にしよう。

    と、その前に。

    状況を冷静に書き起こしているけれど、この時点での、ぼくの実際の心境は、とても冷静だったとは言い難い。
    まずはじめに出た言葉は「うそだろ」だった。
    思い出してください。
    『トリツカレ男』の隣にあったのは『黒い雨』
    ということは、上白石姉妹にまつわる本同士が隣り合っていた、ということです。
    それを目の当たりにして「うそだろ」との声が出た、ということです。
    すごくないですか?
    これはさすがに店員さん、ご存知でしたね?
    上白石姉妹との関わりを。
    ははあ…だからこの本同士が隣に…むしろ、そのほうが納得できます。いくらおすすめの本だとしても、隣同士に並べるにはコントラストがあるすぎるから。
    ですよね?
    店員さん?

    周囲に居られる店員さんに聞いてみようかな、と思い周囲を見渡しているときに限って、店員さんはどこにもいない。

    いい加減本屋を出ないと、新幹線が発車してしまう。会計を済ませカバーをかけてもらった。『黒い雨』『トリツカレ男』並んでいた真相に後ろ髪を引かれつつ、ぼくは『トリツカレ男』の文庫本を手に、本屋を飛び出した。

    『トリツカレ男』
    アニメーション映画の先入観があったものの、活字のみの文庫本、読み始めてすぐ映画の先入観は吹き飛んだ。さて、トリツカレ男とは。夢中になるというだけなら、僕にだって大いに心当たりがある。いま、このときだってそう。
    「夢中になれるものがある人は、いいですね」
    職場の同僚に言われた言葉だ。
    いつもぼくは何かしら夢中になっている。
    夢中になることが、できている。
    けっして移り気というわけではなくて、ただの欲張りなのだ。好きなものはたくさんある。
    好きなひとも、たくさんいる。
    たくさんあって、たくさんいて、それぞれに夢中になれる。夢中になれる自分だからこそ、僕は、僕でいることができている。
    ジュゼッペの言動には共感の一途。
    彼は、しあわせだと思った。僕だって、心に抱く好きなこと。夢中になれる好きなひと。これは、きっとしあわせなのだ。

    約一年振りの上京、昨年は演劇を観に行った。今日はライブを観にゆくための旅。
    「東京駅から横浜駅に向かう。もう一度乗り換えた先の、最終目的地は、みなとみらい線の馬車道駅。
    馬車道駅で下車し、ホテルのチェックインを済ませて、ふたたび馬車道駅へ。
    新高島駅まで戻って下車。
    目的地はKT Zepp Yokohama 」
    という旅の計画。
    今日は9月23日。
    このライブハウスでadieu のライブが開かれるのだ。

    “adieu”とは上白石萌歌さんの
    “クリエイティブコンソーシアム”
    クリエイターとの共同作業で作品…楽曲を創り出すプロジェクトネームが“adieu”である。
    “adieu”…アデュー。
    フランス語で“さようなら”
     
    映画『ナラタージュ』テーマ曲を担当したのがadieu だった。映画と同じタイトルの『ナラタージュ』という曲。しかし当時のadieuは素性を明かしておらず、萌歌さんが本格的に音楽活動を始める際に
    「adieuイコール上白石萌歌」
    を明らかにし、adieu名義での音楽活動が始まった。
     
    adieuは歌い手である。
    僕を夢中にさせてくれる彼女の歌声を僕は
    「固く織り込まれた感情の綾目を
    そっと解きほぐしてくれる」
    という言葉に表してみた。
    まろやかさと、はてしない響きを持った彼女の歌声に、僕はいま、夢中なのだ。
    いわば、ぼくはadieuの“トリツカレ男”だった。

    好きを貫くことは、悦びと困難が隣り合わせで、むしろ当事者には何かと困難ばかりがぶつかってくるけれど、それでも好きであることをやめないのは、その先にある悦びに、ほんの僅かでも希望を抱いているからだろう。それを求めることが果たして当事者の幸いになるのかどうか。ジュゼッペには“好き”という言葉しか見当たらなくて、困難を、困難とすら思っていない様子で、それでも何がジュゼッペ自身の、さらにはペチカの幸いに繋がるのか。大いなる覚悟を示して、好きを貫いてみせてくれた。

    悦びも困難も事柄として在るだけで当事者の受け取りかた次第。のちの幸いを語るならなおさら。各々立場が違う。持っているものも見えかたも違う。何が幸いなのかも断言できない。それならなぜ好きを貫こうとするのか。ジュゼッペは貫くことができたのか。
    adieuのことが、萌歌さんのことが好きでたまらない僕だって、どうにも覆らない困難を抱えている。はたして僕の“好き”は、この先どこまで行くことができるのだろうか。
    そしてその先に、僕の幸いはあるのかな。
    きっと、その先にこそ幸いはあるのだろう。
    ジュゼッペは、すでに見出していたのだ。

    adieuの楽曲“背中”のイントロが流れる。
    ステージ前面に下ろされていた幕が開く。
    何本もの光の糸が、あふれ出る…
    ライブのオープニング、あまりの美しさに、乗っけからため息が漏れた。
     
    adieuは、駆け抜けるかのように、ひたすら歌い続けた。緊張感の表れなのかな、それとも意図したものなのか。それでも一曲ごとに両手を広げて「ありがとう」と告げる彼女の健気さが、いじらしくも感じられ…うん、とても可愛いかった。
    “ナラタージュ”は、僕の涙腺を刺激してやまない大好きな曲。聴いても、鼻歌でも、いつも、こみ上げる感情を抑えることができなくなる。案の定、彼女の歌い始めから僕は顔を伏せてしまった。油断すると号泣してしまいそうなのを懸命に我慢しつつ、情感の込められた歌声に胸を震わせ続けた。
    “心を探している”では彼女が愛用するテイラーのギターを構えるadieuの姿が。ずっと観たかったadieuのギター。そうか。今夜は弾いてくれるんだ。
    彼女のスケジュールの充実ぶりは、よく理解している。今回のライブだって西日本を行ったり来たり、その合間に開催された。思うように準備する時間などあったのかな、と考えていた。それでも、こんなサプライズを用意してくれていた…頭の下がる思いだった。

    アンコールは“元気?”
    adieuの新曲で、この日リリースされたばかり。抑揚が抑えられた曲調で、難しい曲だな、という印象だったけれど、そこはさすがのadieuでした。歌うことへの自信が感じられた。最近の彼女の歌声の安定感、頼もしくなってきた。
     
    終演直後は余韻などまったく感じられず、ただただ終わってしまった、という虚脱感のみ。ホテルへの道のり、見慣れない夜道をどう歩いたものだったのか。ふわふわしたままホテルへ到着した。
    ホテルの部屋に入ると壁掛けテレビの画面が勝手についた。VODサービス?映画があるのか…もの珍しさでメニューを開くと『366日』というタイトルに目が留まる。
    映画『366日』は上白石萌歌さんが主演した映画ではないか。僕は、まだ観たことがなかった。おもむろに再生ボタンを押してみた。主演作だけあって、萌歌さんは、ずっと画面のどこかに映っていた。“美海”という役柄なれど、僕には萌歌さんにしか見えなかった。
    「さっきまで僕は彼女のこと、見てたよね?」
    ぼんやりと画面を眺めつつ、去来するライブの記憶を思い返した。

    今朝、本屋で見つけた『トリツカレ男』
    今夜の、adieu のライブ。
    さらに、映画『366日』
    今日は一日、上白石萌歌さんと一緒だった。
    なんということだろう。
    2025年9月23日は“上白石萌歌の日”だった。

    2025年9月24日。帰路。
    東京駅発、東北新幹線の車中にて。
    僕は昨日の車中“繭の時間”に読んだ『トリツカレ男』文庫本の残りのページをめくっていた。

    「ペチカ、お前もどうだい、歌?
    この世に朝がくるよ!
    歌は生きかたをかえるよ!」

    ペチカママの、この言葉で涙がこぼれそうになった。ダメだよ。新幹線の車内なのに。こんなところで涙なんて。

    たしかにadieuの歌は、僕の人生をかえた。
    実感が、ありあまる。
    僕自身が歌わなくてもいい。
    歌は…音楽は聴くだけで気分が変わる。

    苦しい日にも、たのしい日にも、僕の傍らにある音楽が、僕を励まし、勇気づけてくれる。この上なく幸せな気持ちにしてくれる。

    同じことを彼女も…僕の好きなadieu…上白石萌歌さんも言っている。音楽に何度も助けてもらったと。僕と彼女、互いの生きる世界に、たとえ果てしない相違があろうとも、たったひとつ、音楽があることで、いつか交わる世界線があるかもしれない。

    この確信は、僕の人生における大きな励みなのだ。

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    2025年09月29日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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     純粋な精神の塊、トリツカレ男ジュゼッペの、超絶ピュアなラブストーリー。
    一片の隙もないほどに相手の事を思い、姿形と内面までが変わるほどに行動する。そこに綺麗事感がないのがすごい。
    ちょっとどころか、ここまで変わっている人間はいないだろうというレベルの男なのに、なんだか愛されているジュゼッペ。
    こんな人になりたい。

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    2025年08月26日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    ◼️ いしいしんじ「トリツカレ男」

    なかなか胸がキュンとなるストーリー。トリツカレ男・ジュゼッペと異国の少女ペチカの物語。

    だいぶ前に「トリツカレ男」おもろしろいよね、と言う声を本友から聞いてた時、気になりながらも、なんだか気持ち悪そう、とよく知ることもなく敬遠してしまっていた。今回アニメ映画化されるとのことで読んでみたら・・見事なハートウォーミングなお話でした。

    ジュゼッペは何かに夢中になると我を忘れて没頭する癖があり、ついたあだなが「トリツカレ男」。オペラ、三段跳、探偵ごっこ、昆虫採集、十五カ国語の勉強、サングラス集め・・様々なものにとりつかれてはレストランの雇い主を困らせて、時に長期休暇を言い渡される。そんなジュゼッペが、公園にいた風船売りの少女ペチカに一目惚れした。ハツカネズミの飼育に取りつかれていた時に知り合った、人語を話すネズミを相棒に得意の語学でアプローチするが、彼女は笑顔にもどこか、かげりがあるのが気になっていたー。

    トリツカレて習得したものを武器に、ネズミと話しながら、ペチカのために次々と手を打っていくジュゼッペ。ペチカの表情の微妙な"くすみ"には哀しい物語が秘められていた。

    切なさを内包した、暖かいコメディ仕立ての作品。児童小説と言えるだろうと思う。もちろんだからファンタジックな部分もあるのだが、平易なことばながらもけっこう描写や表現に細かい気配りがあって完成度が高く、物語として没入していけるものを持っている。なるほど本友の言に何十年の時を経てうなずいてしまった。

    ちょっと行き過ぎたシラノ・ド・ベルジュラックとなるジュゼッペ。

    「しょうがないさ、おれは」
    「ばかげた、トリツカレ男なんだから」

    ネズミの諫言に対して発する言葉が、この作品を貫く全てを表している、気がする。続編でさらにジュゼッペのトリツカレ活躍ぶりを見たくなる。そんな感慨を抱くことを含めて、佳作だなと思ったりする。

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    2025年08月24日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    芸は身を助けるというお話。登場人物全員が優しくて誰も嫌な人が出てこない。心が弱っている時に読みたい本。

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    2025年07月12日
  • トリツカレ男(新潮文庫)

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    これも一万円選書のお勧めの本だった。
    いや、これは薄い本なんだけど書かれていることは深い。挿絵のために登場人物は人間ではないみたいなんだけど、それは別にどうでもいい。
    とりつかれるごとく何事もとりつかれれば(変な表現だが…)、いずれ何かの役にたつ、あるいは役にたつどころではない影響力を及ぼすことになる…
    後どのくらい人生が残っているのかは分からないから、一つでも二つでもとりつかれるが如く何かをやってみたい。

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    2025年06月10日