いしいしんじのレビュー一覧
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ネタバレ麦ふみクーツェ
主人公のねこはティンパニー奏者のおじいちゃんと数学教師のお父さんと暮らしていました。おじいちゃんは町の吹奏楽団の指導に没頭し、お父さんは素数に取り付かれてだんだんと奇行を繰り返すようになります。
鼠が大量に降ってきたことから町の調子がおかしくなっていき、一段落したところで現れたセールスマンによってとても大変なことになってしまいます。そんな町の物語と、音楽学校に留学していたねこの周りの物語が平行して語られていきます。
とても感心したのが、ゴシップのスクラップを趣味とするねこのクリップする物語の小さな謎解きや、その登場人物のお話が各所にちりばめられている構成で、とても楽しむことができました。
なめらかに体が動かない用務員さん、盲目のチェリスト、盲目のボクサーであるちょうちょうおじさん、そしてやせっぽちでとても長身なねこと、普通の人と比べると風変わりな登場人物の少しもの悲しい物語や人生訓がとてもやさしく心を打ちます。
連想したのは、村上春樹氏を思わせるちょっと奇妙な登場人物と不思議な物語の中に、寓話やふと心を打つ言葉がちりばめられていることと、ジョン・アーヴィングの小説のようにとてもたくさんの人があっけなく死んでいくことです。連想は連想として、作家の想像力というのはかくも豊かであるということを堪能できるとてもすてきな物語を皆さんの楽しんでみてください。
竹蔵 -
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ネタバレ「晴れ、時々クラゲを呼ぶ」で小崎ちゃんが激薦めしてたので。
山に囲まれた街にあるブラネタリウムを独りでやっていた泣き男さんが、ある日ブラネタリウムに捨てられていた双子に彗星の名前からとったテンペルとタットルという名前を付けた。二人は成長し、ブラネタリウムを手伝いながら、郵便配達をしていたが、ある時街にやってきた手品師の興業にテンペルはついて行ってしまう。双子は違った運命をたどっていく。
騙される才覚が人にないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。
タットルは熊狩りで村人たちを騙し、テンペルは手品師として人々を騙す。事故で命を落としたテンペルの代わりにタットルが一世一代の騙しをすることで、一人の少年が救われる。
長かったー。 -
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ネタバレ昔新聞で連載していたらしい日記をまとめた本。いしいさんの本久々に読んだけど、やっぱりとても好き。ことばが自由に本の中で踊りまわっていて楽しい。それはなによりいしいさん自身がとてつもなく自由な人だからだ。きぐるみや着古して破れた服を着て生活することにも、遅刻することも子供のようにはしゃぐことも本人としてはあまり気にしていない様子。でも、その場に漂う「おはなし」の気配にはなんと敏感であることか。面白いことも、日常のことも、ご家族やたくさんのご友人たちのことも、「おはなし」交じりにみずみずしいことばで生き生きと綴られていて、読んでいるとわくわく、切なく、楽しく、一緒になって心を揺さぶられてしまう。マグロわなげとかセイウチのショー、めちゃくちゃ面白そう。
この本の中でも、息子ひとひくんの発語にのせて「ことばとは、辞書や慣例にしばられた記号ではなく、ほんとうにそんなものではなくて、口に乗せるたび溌溂と身を躍らせてこの世に飛びこんでいく、それぞれが固有の燐光を帯びた、ひとつひとつの生命なのだ」と語られている。さわやかな解放感があって、元気をもらえる本だった。
いしいさんの日記を読んでいると、仕事を含めいろんな場所にひとひくんを連れて行っていてなんでもやっていてすごいなと思う。誰かに迷惑をかけることを全然恐れていない。そしてひとひくんがそれを受けて自分の世界をとても豊かにふくらませながら成長しているのがよくわかるのだ。
私は少しでも迷惑をかけそうな場所、面倒が起きそうな場合は子供を連れて行かないし、コロナもあって家にいるばかりで、子供が臆病で超インドアな子に育ちつつあるのが少し悩みの種だ。読んでいてびっくりするようなこともひとひくんはやっていて、私ももっといい加減にしていてもよかったのかなと思ったりする。子供に向き合う胆力がそもそも違いすぎる気もするけど…。ことばも自由、人生も自由に、ちょっとでもそんな風にできるだろうか? -
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『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』は一冊も読んでいないし読む気もないが、現代語訳をした方々が何を思ったのか、そして単純に「平家物語」と付くものは何でも摂取したいという気持ちから手に取りました。
「平家物語」古川日出夫
…『平家物語』のなかで人は本当によく泣きますよね。…月を見て泣きます。風が鳴ると泣きます。…現代のわれわれは近代ヨーロッパ以降に教育された泣き方しか知らないんです…現代の教育が入ってくる前の人は別の感性をもっていて、別のことで泣いていたはずなんです…(p.48)
私は月を見て泣き、空の色が変わっていくのを見て泣く人間なので、そうか私は別の感性で生きている人間なのかと指摘された気分で目から鱗でした。
「能・狂言」岡田利規
能はまだまだ初心者なのだけれど、「松風」の最後「松風ばかりや残るらん、松風ばかりや残るらん」は原文の空間構築力というか、言葉の力がすごすぎて、やはり現代語ではどの話も読みたくないといういつもの結論に達しました笑
「説経節」伊藤比呂美
読んだことないので、さっそく読みたくなった。
小栗判官の話とかは知っていたのだけれど、これは説経節だったのだな。
「義経千本桜」いしいしんじ
歌舞伎でやる段はほとんど見ていると思うけど、読んでやはり文楽を見に行かないといけないですねという気持ちが強まりました。5月ちょうど国立劇場でやるんですよねえ。豊竹咲太夫と桐竹勘十郎…
私はこの本の中で「義経千本桜」パートが一番「私もそう思う」となったのですが、サブタイトル?になっている「思いどおりにならないかなしみ」という言葉が言い得て妙だなと。『平家物語』も基本はそうだと思っていて、私的には「なくしたくないけれど、なくしてしまうかなしさ」。『平家物語』パートにも書いてありましたが、人間は必ず死ぬということ、なんですよね。いつか死ぬ中で、どう生きるか?(死に方含む)、ということなのだなと改めしみじみ。 -
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ネタバレプラネタリウムもサーカスも「現実と見紛うような虚構性」により魅力を放つが、それらはあくまでも「虚構」であることが暗黙のうちに了承されていなければならない。
「虚構」は他者と共有され「物語」化された時に命が吹き込まれる。一方で「物語」を共有しない者にとっては何の意味も持たない。
タットル扮する熊は町の猟師以外が銃を向けたら恐らく弾が当たっていたし、テンペルの悲劇は「物語」を共有しない者によって誘発される。
「虚構」と「現実」を見誤ってはいけない。
500Pほどありなかなかのボリュームでゆっくりと読んだが、興味深く読むことができる内容だった。
次は「麦ふみクーツェ」を読みたい。 -
Posted by ブクログ
とある片田舎の工場のそばにあるプラネタリウムの座席に、双子の赤ちゃんが捨てられていた。双子はプラネタリウムを経営する"泣き男"に、タットルとテンペル名付けられ、いたずら好きの青年に育つ。ある日、村にやってきた手品を見せる一団に出会い、ふとしたきっかけで双子の人生は引き裂かれ、それぞれの道を歩み始める。
大河ドラマ的にこってりとしたストーリーに、自問自答するようなストーリーテリングで、ぐいぐいと双子の人生の紆余曲折を描いていく。父親代わりの泣き男、双子のいたずらをたしなめる工場長や盲目の老女、テンペルを世話するテオ団長など、双子の成長にともなって人生に介入して導いていく。
最近気がついたことであるが、主人公の性格を難しくしてしまうことで、ストーリーが"詰まる"のであり、本作は銀髪でいたずら好きのの双子という以外は、素直であまり複雑でないキャラクター設定になっているのは好感を持てた。
一方で、テオ団長以外は、性格を表すような抽象的な名前になっており、このあたりは宮沢賢治あたりの流れを汲んでいるのであろうと思う。時々見かけるが、やはり読み始めに"泣き男は"とスタートされると、名前を探してしまう。
こってり濃厚な話で、厚みもそこそこある。ワタシはタイトルで誤解して、軽く読み飛ばしてやろうと手には取ったが、なかなか読み進まなくて時間はかかってしまった。サラリと読める話ではないが、時間の有るときに一度手にとってみてはどうだろうか。