いしいしんじのレビュー一覧
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不思議だけれど少しも不思議じゃない、でもやっぱり不思議なお話。
ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意だった弟。声を失ったけれど動物と話ができた弟。みんなに愛され、お話をつくるのがとても上手だった弟。
姉の“私”は、弟が残した古いノートを読みながら、彼の心の本当を知ってゆく。小さな弟が“私”を精一杯守ろうとしていたことも。
彼がノートに綴っていたお話は、どれも優しくて切なくて、不思議なのに本当すぎて、心の鈴は鳴りっぱなし。
たとえば彼が書いた「おばけのなみだ」。
「川のおばけはもう二度と川へはもどれない。それは、ひとがしんだらこのよにもどれないのとおんなじです。川のおばけは、川のなかではいきいき -
Posted by ブクログ
うなぎ女から生まれた人間でも魚でもないポー。
真っ黒い体と裏腹に真っ白い無垢な心を持っている。
やがてポーはうなぎ女のもとを離れて、
悪も善も感情もたくさん吸収して、たいせつなものを知る。
メリーゴーランド、ひまし油。
天気売り。
犬じじいと少年、子供。
埋め屋の旦那と鳩レースの女房。
海岸の老人たち。
うみうし女。
ポーが出会うすべての人がいかにも人間らしくて、いとおしくて、頭から離れない。
寂しい気持ちにもなったし笑ったし悲しくもなったしうれしい気持ちにもなった。
少し長いけど、読んでみて欲しい作品。
なんというかうまい言葉がわたしには見つからないので、それを読んだ人それぞれで感じ -
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Posted by ブクログ
ミュージカルアニメーションで映画化ということで読んでみようと手に取った作品。
新しいのかと思いきや奥付けを見たら平成十八年と結構古いのに驚いた。
ページ数も160ページと薄くて隙間時間に読むのにちょうど良い一冊。
装画も物語自体も童話のような不思議な世界観を感じさせられる。
こんなにも物事に夢中になれるジュゼッペが羨ましく感じた。
ただ好きだからという単純な理由でたくさんの事に次々と夢中になっていく。
何故か子供の頃の心を思い出させられる。
朝から夕方まで夢中でカブトムシやクワガタを採りに行ったり何をやるにも一生懸命だったなぁ。
大人になるとどうしても仕事が優先で効率や結果を求めたり時間 -
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Posted by ブクログ
仙台駅にて。東京駅ゆきの東北新幹線の発車時刻を待つあいだ、僕は駅ビルの本屋にいた。とくに目的などはなく、ただ時間潰しを目的に。
本屋に入れば真っ先に、文庫本の棚を見てまわるのが、いつもの癖で。吸い寄せられるように、文庫本の棚の前に立ち尽くす。目的があれば目の色も変わるけれど、今日はとくに何もない。あるとすれば、新幹線での移動時間いわゆる“繭の時間”を充実させるための何かを。さて、発車時刻まで、あと何分?そうのんびりとも、していられない。
“繭の時間”というのは、上白石萌歌さんのエッセイに出てきた言葉。海外へ向かう飛行機など、ある程度まとまった移動時間を過ごす際、乗客の思い思いの時間の過ごしか