あらすじ
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、敵意に荒んだ遠い下流へとポーを押し流す……。いしいしんじが到達した深く遥かな物語世界。驚愕と感動に胸をゆすぶられる最高傑作。(解説・堀江敏幸)
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久しぶりのいしいしんじ。
「うなぎ女」という泥の川でウナギをを採る人間もどきの女性の集団の息子に生まれ、真黒な皮膚を持ち、指の間に水かきをもつ少年・ポーが主人公。その他の登場人物たちもどこか異形です。
何処とも判らない不思議な世界で繰り広げられる物語は、自然破壊や人と人との関わり方など、色んな教訓が盛り込まれているようです。しかし、さほど押し付けられる感覚は有りません。
最初は少々取っ付き難い感じでしたが、暫くするとしっかり入り込めました。最後は、どこか薄闇の(悪い意味でなく)生暖かい「いしいワールド」にどっぷり浸り込めました。
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盗人のメリーゴーランド。
物知りなひまし油。
天気を売る天気売り。
犬じじ。
うみうし娘。
そして、うなぎ女の息子・ポー。
暖かく混沌とした泥の川から海へと続く旅は、ぐるっと巡ってまた生まれた川に戻る。
川と空。うなぎと鳩。ひっくり返る黒と白。生と死をつなぐ橋。良い事と悪い事。
幾つものイメージが折り重なって、限りなく幸せで満ち足りた気持ちにさせてくれる物語。
いしいしんじさん、やっぱり大好き(^O^)
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いしいしんじの真骨頂だと思っております。
素晴らしいよ。気持ち悪い表現とかが大好きなんです。大好きですな。
うなぎ女の息子ポーが川に沿って歩いていく物語。
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物語作家いしいしんじの面目躍如、次から次へと物語が紡がれ広がっていく。善も悪も綺麗なものも汚いものも、何もかも飲み込んで物語は流れていく。
今まで読んだいしい作品の中で最もアクが強く毒も強い作品かも。しかしアクや毒が強いほどに純粋なるものも光り輝くんですね。ポーという少年がその象徴的存在として、寓話的に扱われています。そのため物語の意図は読み手に委ねられているかのような印象を受けました。
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うなぎ女から生まれた人間でも魚でもないポー。
真っ黒い体と裏腹に真っ白い無垢な心を持っている。
やがてポーはうなぎ女のもとを離れて、
悪も善も感情もたくさん吸収して、たいせつなものを知る。
メリーゴーランド、ひまし油。
天気売り。
犬じじいと少年、子供。
埋め屋の旦那と鳩レースの女房。
海岸の老人たち。
うみうし女。
ポーが出会うすべての人がいかにも人間らしくて、いとおしくて、頭から離れない。
寂しい気持ちにもなったし笑ったし悲しくもなったしうれしい気持ちにもなった。
少し長いけど、読んでみて欲しい作品。
なんというかうまい言葉がわたしには見つからないので、それを読んだ人それぞれで感じ取ってもらいたいです。
いしいしんじさんを読むのは初めて。
もとはプラネタリウムのふたごをよみたかったけど、本屋になかったので買ったのがポー。
とにかく情景の描き方が誰よりもドラマチック。
好奇心の昼間と、悪事を隠してくれる夜。
きらきらした昼間と、考え事をする夜。
泥臭い昼間と、空の深い静かな夜。
色えんぴつで描いたような、すべてがこの世界だからこそあるものだなと思った。
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初めていしいしんじさんの作品を読みましたが、よかったです。
じわじわと世界観に引き込まれました。
出てくるキャラクターもみんな魅力的で、彼らの身に起こる出来事をポーと一緒に見ている気分です。ポーの目になって。
また読みたいです。
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ポーが出会った色々な人達が個性的で面白い。
長い話に少し疲れも感じたが、後半になると情景がリアルに想像できるようになった。
童話っぽさがまたいい味を出していると思う。
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ゴミや生き物の死骸も流れるようなそんな泥川。
そこでうなぎ女たちの息子として生まれてきたポーが主人公。
出会う清も濁も、生も死も、無垢な彼の目はそのままストレートに見つめる。
残酷だったり厭わしかったりするものものも登場するし、物語全体から受ける印象は、陰であり夜のイメージ。
それでも読み終わったあとに残っているのは、切なさを包み込んだなんともいえない温かみ。
ほのかに小さな光を放っているよう。
きっと何度も読み返すと思う。
(注:水害の場面がでてきます)
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それまでのいしいしんじ作品と比べてすっと頭に入ってこないが、夢中になる。おかげで電車を乗り過しました(笑)
うなぎ女たちの野性的で絶対の母性と、天気売りの尋常じゃない真っ直ぐさが好き。
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物語の奔流。川は枝分かれして広まっていくが、最後は海に流れ込み、雨となって、また川になる。最後、ウナギが川を溯るシーンが一番印象的だった。終始丁寧な語り口調なのに、設定はかなりきわどかったりする。登場人物の豊かな個性もなかなか魅力的だった。
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いつも期待を裏切らない、ほんとうにこの人は。
上流の泥川から大海原へ、まさしく大河ドラマでした。
P111
「『ただ私はあの川が好きです。すべてのことに対し、一切なんのわけへだてもないところが』」
世界というものはそういうものだけれど、それを自分の創作物の中で再現できる作家は多くないと思う。
だからこそ彼は信頼できる作家のひとりなのだ。
P321
「天気は一切のわけへだてをしない。そこにいる誰の上にも、均等に陽はそそぎ雨風は吹く。ひどいときはしょうがない。いいときは互いに笑みをかわす。同じ空をわかちあっているからこそ、それぞれの濡れたからだを互いにいたわり、晴れの日は楽しげに声をかけあうことができる。みな空を通じつながっているのだ」
「見えないところでいつもつながっている」というのは『プラネタリウムのふたご』以来の大きなテーマなのかもしれない。
そして生きているものに残された使命としての「つぐない」と「とむらい」。
解説は堀江敏幸氏です!
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memo:
ちょっとのことだけはさ、大切にね、他のひとがやらないくらいていねいに、やらなくちゃいけない、って気がするんだよ
そういうのは、てりかえしです。ゆびはさんだり、ころんだり、そんなのいくらでも、まちがうのです。ポーのいちばんふかい底で、まちがったことをしないのが、だいじなんですよ。
ポーのきもちがほんものなら、並べた石ころだって、ほんとうの花
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いしいしんじっぽい、メルヘンの背後にある言いようのない気味の悪さ。それが嫌いという人も多いけど、違和感を抱えながら読み進めると、最後の最後でそれがちょっとだけきらきらしたものに変わる感じが好きです。
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泥の中でうなぎを捕まえる「うなぎ女」たちの子どもとして生まれた少年ポーが、数百年ぶりの大雨のなか川を流され、いろんな場所やひとに出会って別れて、また生まれた泥の中に還ってゆくおはなし。
いしいしんじの作品というのは、どうも、やさしすぎて残酷というか、ぬるま湯でゆっくりと絞殺というか、安寧と絶望がお互いを認識しないまま同居しているというか、そういう表裏的な、生と死が弧を描いているさまがあっさりと描かれていて、読み終わって直後は気持ちが動揺します。
ぐらぐらするわりに「ああそっか」と思える。どうすれば……と思うけれど回答は示されてる。
あがなうこと、つぐなうことに対してとてもまっすぐで、最後のほうはずっと「うあああぁああぁ」って言いながら読んでいました。きつかった……。今までのいしい作品のなかで一番きつかった……。
ポーが無垢で、真っ白すぎて善にも悪にも染まることができて、それでいながらどちらの味方にもならない、良い意味でも悪い意味でも「子ども」であったことが大事すぎてたまらないです。
あともうひまし油がいとしくてならない。メリーゴーランドも相当だけれど、彼女も充分に歪んでいて、それが少しでも真っ当な方向に向かうことが出来たならと思うともう。幸福になってほしいです。
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なんだー、この話!
びびったぁー。
これ、何の前置きも予備知識もなしに、のほほんと優しい話をイメージしながらタイトル/ジャケ買いしたから(笑)、もう、GAPがすごい。
最初は、謎&怖い(少し気持ち悪い)。
でも、途中辺りから、段々安定してくる。
とは言っても、結局テーマは重いんだけどね。
貧困、貧富の差(の固定)、差別、罪と贖罪、障害、死、奴隷制度、能力主義、片方を立てればもう一方が立たない歯がゆさ、老い、地方の衰退、過剰開発、環境問題、輪廻転生、慈悲の精神、などなど。。
あと、面白かったのは、一番始めの、本当の読み始めは、日本昔話のような、古い日本の話かと思うんだけど(うなぎがいきなり出てきたから)、途中で、ぁれ、これ、フランス文学の翻訳だったかな?て思った。
登場人物の名前こそ、「名前」が出てこず、「運転士」みたいな特徴で表す呼び名になっているので、どこの国とも判断できないんだけど、描写されている街並みとか生活の匂いが段々日本からは乖離していって、外国人の外見の登場人物しか頭に思い浮かべることができなかった。ゾラの居酒屋イメージ。
でも、結局のところ、最後に作者を見たらやっぱり日本人だったから、あれ?ってなったけど、作者の紹介文を読んで納得。仏文学を勉強してきたらしい。
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いやー、長い話だった。。
なぜよりによって「ポーの話」を借りたのだろう。
いしいさんの本で他に読みたい本やもっと読みやすい本あったはずなのに。
最初は、読み切れるかなぁ。。と不安なりに、少しずつ読み進めていた。でも、一章でぐっと途中から入り込み出してから面白くなったかな。二章、三章あたりは中だるみあったけど。
それぞれのキャラ設定とか好きだったかも。
みんな人間くさい。
いちばん好きだったのは誰かと聞かれたら、うーん、「天気売り」かな。。最初はあんま好きじゃなかったんだけど。二章の鳩育てるのを手伝ってるとこらへんから好きになった。
メリーゴーランドもわりと好き。
女ったらしで盗人って。めちゃキャラ濃いし。しかも背中で星はチカチカ。泥の洪水で足のびきっておそらく後で切断だし。(このあたり、いしいさん節効いてるの、いつも。ちょっとゾッとする表現がところどころに)
ポーのじゃっかん感情ないとこもリアルだったなぁ。
一章の、ゾウがバナナ食べてるところは、ゾウの鼻の感触がすぐそこまできてびっくりしたよね。ものすごい描写だって。ぬるりとした。そして、2人で笑ったシーンがなんだか好きだったなぁ。罪悪感の話してたのに、笑ってるじゃん。みたいな。
がんばってがんばって読んで、最後の最後の終わり方はあまり私的にはすっきりしなかった。長かったなぁ。。と思った。
【気になった箇所】
「わしはな、罪悪感がないんじゃない。ときどき、忘れっちまうだけのことよ。外からじゃみえないがな、腹のなかには、この森みたいに黒くてばかでかいのがたまってるんだ。ひとはな、誰だって多少なりとも、腹の底に罪悪感の種をもってるもんだ。で、そのなくしかたはそれぞれが、自分でみつけなけりゃならねえ。自分の斧にこびりついた汚れは、自分で拭くしかないだろう?ただな、ひとが、何かをほんとうにつぐなえるとは、わしには思えんよ。少なくとも、つぐなおうって思いでしているうちは、それはほんとうのつぐないじゃあないな」
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うなぎ女たちの深い愛情に守られていた純粋無垢なポーが、人間の光と闇に触れながら「たいせつなもの」を見つけていく話。善や光、純粋なものとは対極する、悪や闇、汚れをも飲みこんで、はじめて真理が理解できるというような壮大なテーマだと感じました。今までのいしい作品に比べ、ちょっと説教臭さが鼻について、うんざりした部分もありましたが、でもやっぱり読み終えた後は、こちらが浄化されたような気持ちになります。「悪」ととられやすい人々や物事にも愛しさを感じさせるものが、いつもいしい作品の根底には流れているからかな。。。
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後輩なっちゃんから拝借。
不思議ワールドが展開されているので、好みが別れるところだと思うが、
私にとっては、ひとつの哲学書かなと思えた。
不思議ワールドのなかに織り込まれた、
普遍的な価値観。本当に大切なもの。
それがちりばめられた本だな。
その代表が、天気売りであり、ボロボロの女人形なんだろう。
川の水は海へ流れ、蒸発し雲となって、
また川へ戻って行く。
ずっと前からそうであり、これから先もきっと、変わらない。
人間の根っこの部分も、きっとそうだろう。
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今まで読んだいしいしんじ小説の中で1番の長編。良い意味でも悪い意味でも純粋無垢なポーが人の心を知っていく様が印象深い。思い悩む大切な人に何もして上げれない時に渡すと良いかも。
Posted by ブクログ
1ページ目で「うなぎ女」が登場し、のちに「ポー」が生まれ・・・最初から何?何?の連続。だったけど、深く考えず読み進めるうちに、ゆっくり独特な世界観に入り込んでいく感じ。うなぎ女の母性愛はスゴイな。
Posted by ブクログ
愛すべきいしいしんじさんの作品だったので、購入。
うなぎ女に拾われ育てられたポーのお話。
ポーは善人でも悪人でもない、完全なる無垢な存在で、それが善人や悪人やどっちでもない人とかかわっていくお話。
雰囲気はいつものいしいしんじさん節全開。
ただ、展開が今まで以上にシュールでした。
地方に伝わるおとぎ話の原文・・・という感じでしょうか?
個人的には今回のようなお話よりも「プラネタリウムのふたご」みたいな話のほうが好きではあります。
でも、メリーゴーランドを愛してます。
Posted by ブクログ
子どもの発想みたいに無邪気で残酷なんだけど、どこかせつない。
ひまし油が一番好きかなぁ。不思議な世界観。
うなぎ女のあたたかさにうっかり感動しそうになった。
Posted by ブクログ
それは、ながいながいお話だった。
感覚としては読み終えた時そんな感じでした。
充実感というのか。
一人の人の一生の物語を読んだ感じ。
水の流れや
女の人たちのあたたかさ。
それに触られたかの様なあのリアルさは何なのだろう。
Posted by ブクログ
書店のポップにあった、「大人のための童話」という言葉がぴったりの内容。
あまり深いことは考えずに読んだ。というか、つい文字を追うだけになってしまった感がある…。
子供向けの「童話」がそうであるように、何度も読むうちに気付くことがあるかもしれない。
Posted by ブクログ
おおお、おとな・・・・。
堀江敏幸の解説がなかなか上品で、
ああ、そういう風に読むのね、と思った。
私は、こどもなので、
ずっと犬じじと居ようよ、と思ってしまうのです。
流れていくもの、
出会っては別れ行く、
しかしつながっているウロボロス、
そういう切なさが、
仕方ないんでしょうけども、
私には寂しいのです。