いしいしんじのレビュー一覧
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私同様、読書好きな友人が
「この作家さん、あなたが好きそうな感じ。」と
おススメしてくれたので、チャレンジ。
初めは、この独特な文体が、
私には「ちょっとそっけない位シンプル」な感じがして、
なかなか馴染んでいかなかったが、
後半、大きく話が展開してからじわじわと心に染み込んできて、
読み終わった後、静かな感動が残った。
幸せって、ちっちゃくてもあったかい。
あったかくていつまでも握り締めていたいけれど儚い。
儚いと分かっていても、それをいつまでも大切に、大切にしていたい。
気づいても気づかなくても、そこにそっとあるもの。
ちょっと位、キズがあっても、何かの拍子で凹んだりしても、
それを -
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いつも期待を裏切らない、ほんとうにこの人は。
上流の泥川から大海原へ、まさしく大河ドラマでした。
P111
「『ただ私はあの川が好きです。すべてのことに対し、一切なんのわけへだてもないところが』」
世界というものはそういうものだけれど、それを自分の創作物の中で再現できる作家は多くないと思う。
だからこそ彼は信頼できる作家のひとりなのだ。
P321
「天気は一切のわけへだてをしない。そこにいる誰の上にも、均等に陽はそそぎ雨風は吹く。ひどいときはしょうがない。いいときは互いに笑みをかわす。同じ空をわかちあっているからこそ、それぞれの濡れたからだを互いにいたわり、晴れの日は楽しげに声をかけあう -
Posted by ブクログ
泥の中でうなぎを捕まえる「うなぎ女」たちの子どもとして生まれた少年ポーが、数百年ぶりの大雨のなか川を流され、いろんな場所やひとに出会って別れて、また生まれた泥の中に還ってゆくおはなし。
いしいしんじの作品というのは、どうも、やさしすぎて残酷というか、ぬるま湯でゆっくりと絞殺というか、安寧と絶望がお互いを認識しないまま同居しているというか、そういう表裏的な、生と死が弧を描いているさまがあっさりと描かれていて、読み終わって直後は気持ちが動揺します。
ぐらぐらするわりに「ああそっか」と思える。どうすれば……と思うけれど回答は示されてる。
あがなうこと、つぐなうことに対してとてもまっ -
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この作家さんをどう評価すべきなのか?
寓話作家なのか、一種のファンタジー作家なのか。児童文学作家なのか。カテゴライズすることは無意味と判っているのですが、悩んでしまいます。
ともかくも、この作品。特に前半は何が語りたいのか良く判らず、かなり読みにくい。ミステリーでは良く、最後にそれまで散りばめられていた場面が、ジグソーパズルのように嵌まっていくような構成があります。それにちょっと似ています。もっともパタパタ嵌ると言うより、繋がりが見えるようになるという感じですが。
読後感はなかなか良いのですが、それが何処から来るのか判らない。物語そのものの筋は通っても、その中で語りたかったことは何なのかが判ら -
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◼️ いしいしんじ「げんじものがたり」
京ことばで、くだけた語りの源氏物語。
関西弁というか、やはり京言葉、そして今ふうの言葉で訳してある源氏物語。大谷崎をはじめ多くの方が現代語訳している源氏物語。専門的なことは知らないが、私的に紫式部は素晴らしい物語作家で、一文が長すぎる人だと思う。特に日本人が訳すと古語の知識にどうしても引きずられてしまう傾向があるかなと。私が通読した与謝野晶子も苦戦している跡が見えた気がした。
まあともかく今作はある意味思い切った、パロディ的な訳。目的が違うかもと思う。
まずは「桐壺」に、「雨夜の品定め」の「箒木」。プレイボーイ光源氏が唯一?逃げられてしまう「空蝉 -