いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいしいしんじ作品についてのおぼえがき
”みずうみ”をよんだあとは、水音が印象に残った。
水くみたちのみずうみから、タクシー運転手、分娩台まで全章にわたる水の気配。羊水ってどんな匂いなんだろ?としりたくなる。
ものごとはおこるだけ。みずのなかを漂っていくような。
”死産”というほんとのできごとをゆったりふくんで流れている物語がよかった。
実体験が入った小説はすきじゃないというひともいるけど、ただ受け入れるにはできすぎてて切なすぎる世界観だからこそ、人間臭さがあって安心できた。
いしいしんじ作品をよむと「湿度」や「気温」や「匂い」を感じる。
とくにみずの匂い。そしていつも羊水ってどんな匂いなのかなって知りたくなる。
ぬくい水の底から、水面にはいってくる日のひかりを眺めてるような。
大きな「ながれ」があって「ものごと」はおこるもの、という世界観が安心するような、でもこわいような。良いことも悪いこともなくて、ただ「ながれ」の中にいるだけ。
だからなにかうまくいかないとき、そんな雰囲気が親しくて、でも漂うにはこわくて、ちょっと反抗してみたくなる人間臭さが恋しくて、いしいしんじの本をよむ気がする。
麦ふみクーツェ、プラネタリウムのふたご、ポーの話、それから、みずうみ、ある一日、四とそれ以上の国と順々にもういちどたどりよみしたくなった。 -
Posted by ブクログ
いつも期待を裏切らない、ほんとうにこの人は。
上流の泥川から大海原へ、まさしく大河ドラマでした。
P111
「『ただ私はあの川が好きです。すべてのことに対し、一切なんのわけへだてもないところが』」
世界というものはそういうものだけれど、それを自分の創作物の中で再現できる作家は多くないと思う。
だからこそ彼は信頼できる作家のひとりなのだ。
P321
「天気は一切のわけへだてをしない。そこにいる誰の上にも、均等に陽はそそぎ雨風は吹く。ひどいときはしょうがない。いいときは互いに笑みをかわす。同じ空をわかちあっているからこそ、それぞれの濡れたからだを互いにいたわり、晴れの日は楽しげに声をかけあうことができる。みな空を通じつながっているのだ」
「見えないところでいつもつながっている」というのは『プラネタリウムのふたご』以来の大きなテーマなのかもしれない。
そして生きているものに残された使命としての「つぐない」と「とむらい」。
解説は堀江敏幸氏です! -
Posted by ブクログ
泥の中でうなぎを捕まえる「うなぎ女」たちの子どもとして生まれた少年ポーが、数百年ぶりの大雨のなか川を流され、いろんな場所やひとに出会って別れて、また生まれた泥の中に還ってゆくおはなし。
いしいしんじの作品というのは、どうも、やさしすぎて残酷というか、ぬるま湯でゆっくりと絞殺というか、安寧と絶望がお互いを認識しないまま同居しているというか、そういう表裏的な、生と死が弧を描いているさまがあっさりと描かれていて、読み終わって直後は気持ちが動揺します。
ぐらぐらするわりに「ああそっか」と思える。どうすれば……と思うけれど回答は示されてる。
あがなうこと、つぐなうことに対してとてもまっすぐで、最後のほうはずっと「うあああぁああぁ」って言いながら読んでいました。きつかった……。今までのいしい作品のなかで一番きつかった……。
ポーが無垢で、真っ白すぎて善にも悪にも染まることができて、それでいながらどちらの味方にもならない、良い意味でも悪い意味でも「子ども」であったことが大事すぎてたまらないです。
あともうひまし油がいとしくてならない。メリーゴーランドも相当だけれど、彼女も充分に歪んでいて、それが少しでも真っ当な方向に向かうことが出来たならと思うともう。幸福になってほしいです。