いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
新型コロナが蔓延した2020年~2023年にかけて、人は人の吐く息というものに対して異様なまでの嫌悪感を抱いていたように思う。
「飛沫」や「エアロゾル」という言葉自体にも強烈な忌避感があったのではないだろうか。
著者は、コロナ禍の人々の息遣いを、それとは真逆の色とりどりで生き生きとしたものとして描いている。
見境なく周囲を疑っていたあの頃、もしこんな風に人の息遣いが見えていたらもっと穏やかな気持ちで過ごせたのではないかと考えてしまう。
主人公の夏実を取り巻く大人も皆魅力的。
京都が舞台なのも少し時間の流れ方が違う感じがしてくつろいだ気持ちになれる。
ただ最後の方の夏実と母のエピソードが唐突 -
Posted by ブクログ
不思議な作品である。
幼い弟を主人公として、幼い姉の視点で描かれた、残酷な現実を生き抜くこどもたちの物語。
弟は、物語の序盤で、声を失う代わりに、声なき者の声を聞き、届かぬ声を届ける力を得る。出だしから否応なしに運命を背負うところは、もののけ姫のアシタカを連想した。
弟は声なき者たちの声を、ものがたりにしてノートに書き付けた。道尾秀介『ノエル』みたいに、そのものがたりがスパイスになり、姉目線の文体と相まって、この作品に不思議な空気感をまとわせている。
姉は何の能力もない、弟を助けることもできないしその余裕もないけれど、弟は姉がいるからこそ、その力でふたりを守っている。松本大洋『鉄コン筋 -
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