いしいしんじのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【2025年36冊目】
素数にとりつかれた父と、音楽にとりつかれた祖父。誰よりも身体の大きなぼくは、ねこの鳴き真似が上手く、「ねこ」と呼ばれている。ある真夏の夜、ぼくはリズムよく鳴らされる不思議な音を耳にする。それは麦ふみクーツェの足音だった。
大人向けの童話のようなお話、もしくは絵のない絵本、という表現が自分の中でしっくりくる一作でした。連作短編集というわけではないと思うのですが、章ごとにタイトルがつけられていて、ゆっくりゆっくりと物語は前に進んでいきます。
ありそうでなさそうな、ちょっぴりファンタジーも入ったお話。読み聞かせしたくなるようなリズム感。もしかしたら、Audibleと相性が良いかも。
どういった人生を歩んできたかで、この本との向き合い方はがらりと変わるような気もしました。 -
Posted by ブクログ
不思議な作品である。
幼い弟を主人公として、幼い姉の視点で描かれた、残酷な現実を生き抜くこどもたちの物語。
弟は、物語の序盤で、声を失う代わりに、声なき者の声を聞き、届かぬ声を届ける力を得る。出だしから否応なしに運命を背負うところは、もののけ姫のアシタカを連想した。
弟は声なき者たちの声を、ものがたりにしてノートに書き付けた。道尾秀介『ノエル』みたいに、そのものがたりがスパイスになり、姉目線の文体と相まって、この作品に不思議な空気感をまとわせている。
姉は何の能力もない、弟を助けることもできないしその余裕もないけれど、弟は姉がいるからこそ、その力でふたりを守っている。松本大洋『鉄コン筋クリート』みたいに。
弟の声は返ってこないのか。弟は、ふたりはこの後どうなっていくのか。ふたりに救いは来るのか。
説明はない。
説明したい作品ではないのだろう。
僕にとって、あなたにとって、
弟とは、声とは、そして、雹とは、何なのか。
そうやって、絵本『あおくんときいろちゃん』みたいに、読む本なのだろう。