貫井徳郎のレビュー一覧
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ネタバレ貫井徳郎著『紙の梟 ハーシュソサエティ』は、現代社会が抱える「正義」と「制裁」の境界線を、冷ややかでありながらも深い人間愛をもって照らし出す一冊である。
「殺人を犯した者は即死刑」という徹底したルールのもとに築かれた架空の社会。その世界を貫井は、倫理や制度の問題としてではなく、“人が他者を裁く”という根源的な問いとして描き出す。物語は短編形式で展開しつつ、どの章にも通底するのは、善悪を単純に切り分けられない人間の複雑な情念だ。
冷徹な設定でありながら、作中に流れるのは静かな慈しみの気配である。登場人物たちは罪に向き合いながらも、自らの心の奥底にある「赦し」や「理解」へと手を伸ばそうとする。その姿が、鋭利な社会批評の中に確かな温もりをもたらしている。とりわけ表題作「ハーシュソサエティ」は、制度の正しさよりも人間の弱さに焦点を当て、その弱さこそが希望であるかのように物語を締めくくる。
全体を通じて、貫井の筆致は精緻で重厚だ。論理と感情、冷静な観察と人間への信頼がせめぎ合い、読後には静かな余韻が残る。世界の残酷さを描きながらも、人間の尊厳を信じる——その矛盾の狭間にこそ、彼の文学が息づいている。
『紙の梟 ハーシュソサエティ』は、ただの社会派ミステリーではない。理性と情の両輪で「生きる意味」を問い直す、現代の寓話である。 -
Posted by ブクログ
貫井さんの悪の芽
考えさせられる話しだった
悪意なく発言した言葉が発端と思って読み始めたから、過去の発言に悪意が入っているとわかった時、苦しんでいる安達に同情することができなかった
過去のいじめの加害者が安達含め2人出てくるけど、最初は自分たちが被害者みたいな心情になってるのがすごく嫌だった
でも丁寧な描写でそれぞれの現在の背景や成長過程など細かく描かれていて良かった
プライドは上手く扱わないと傲慢に繋がるんだなと改めて実感した
現在の被害者家族の行動や心情もすごく丁寧に描かれていて、辛かったけどすごく良かった
江成さんが加害者側にならなくて良かったな -
Posted by ブクログ
夏のフェア棚に置かれていた本作。
帯が大きく新しくなっていて、
新聞のようなレイアウトのものでした。
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無差別大量殺傷事件
隠された犯人の壮絶な半生
殺人鬼を生んだ悪意のひと言。
この事件は、誰の「罪」なのか?
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アニメの大型イベント、アニコン。
そこが突如、無差別殺傷事件の現場になる。
40人近くを襲いその場で焼身自殺した犯人。
ニュースで報じられた犯人の名前、出身学校。
本作の中心人物である安達は、
小学校のかつての同級生だと気づく。
死んでしまっているから本人の口から聞くことができない。
なぜ、事件を起こしたのか?
安達のなかに後ろめたさがあった。
自分も凶行の原因となる一因だったのではないか。
過去を辿る決意をした安達がたどり着く真実とは。
みんな自分に都合が良いように受け取るし、
そうじゃないと自我を保てない。
だけど、そこからこぼれ落ちるように底へ落ちていく。
悲観したのか、憤怒に駆られていたのか、
諦めたのか、嘆いていたのか。
誰の心の中にもあるような、
自尊心、嫉妬、自分を守るために攻撃する気持ち、
それらが注がれ続けて悪の芽が大きく育つ。
一気読みでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本を数ページ読み進めた時、【あぁ、この仁藤は松坂桃李に合うなぁ】と思った
別に私、松坂桃李のファンでは無いんだけど何故だかそう思って…
読み進めていけばいくほど【松坂桃李】が浮かんでくる!
モヤモヤしだして本を一旦端に置きネットで調べたら、この本はドラマ化されてるんですね、主演が松坂桃李だった!笑
私多分、このドラマを観てるんだろうな〜
読み終えたあと、ドラマの内容を覚えてなかったからまたネットで調べたら、内容は少し違ってましたね、うん
で、本の感想は結局のところ、仁藤の犯行なのか実はやってないのか、そこはハッキリしない
嘘か真実か分からないもので塗れてる
複雑でスッキリしないラストだが
それが逆に面白かった -
Posted by ブクログ
「プリズム」
…ガラスなど透明体の三角柱で、光を屈折・分散させるもの。光の方向を変えるプリズムには種々な形のものもある。
推理小説に求める快楽って、正解を知ることだと思う。
これだけ長い文章の中で、自分流に推測を立てて「え?こいつか?いや…こっちも…」
なんて考え続けた結果、最後に導き出される正解に悦に浸る。
それが推理小説の醍醐味、そう思っている。
本作「プリズム」は、まずタイトルの秀逸さを感じる。
推理小説の手法は確かにプリズム的だ。
いろんな登場人物の主観的な目線から、被害者への思い、まだ見えぬ加害者への思いにバイアスがかかって、思考を分散させられる。
どの光を辿れば、本筋に辿り着けるか分からない。
それぞれに答えを持つ。
それこそが本作の醍醐味だ。
読み手は「え?なんで?」とちょっと味気ないような気持ちになるかもしれない。
ただあとがきで、それこそを楽しんでほしいという作者の意図を理解した時、自分ならどう結論づけるかを考える。
私的推理が正解かもしれない。
そんま想いにさせてくれる作品だ。