貫井徳郎のレビュー一覧

  • 私に似た人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    タイトルから勝手にミステリー系を想像していたが、いい意味で裏切られた。

    物語の主軸には、個人を恨むではなく、普通に生活ができない社会を憎む貧困層によるレジスタンスとそれを使嗾するトベという存在。
    上手く生きていけないのは、社会が悪い、バブルの恩恵ばかりを受けて皺寄せを若者が被っているという漠然とした思想が中心の話だが、割とリアリティがあってゾクゾクした。

    私はあまり、そういう考えに至ったことはないが十分に納得できるし、それを一つ上の立ち位置から教唆する人々の構図も現実味を帯びていてゾッとした。

    0
    2024年11月14日
  • 悪の芽

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ものすごく考えさせられる作品だった。
    自分の何気ない一言が他者の人生を大きく変えてしまうことがある。大人になった今でも、ましてや幼少期にそこまで想像力を広げるて生きていくことなんてできない。

    想像力の欠如こそ人間の弱さ。

    まさにその通りであると思う。悪の芽も善の芽も育てるのは人間の想像力だ。

    0
    2024年10月07日
  • ひとつの祖国

    Posted by ブクログ

    戦後、朝鮮半島のように東西2カ国に分断された日本を舞台にしたありそうな作品だが、展開がヌルい。サスペンスとも言えず、政治ドラマでもない。そのくせ505ページという(大)長編。とにかくさっさと読み終わろうと思った。
    が、気づいた。これは今の日本のどうしようもないジレンマを告発しているのかも知れない。米国に追随し、とても主権国家とは言えない状況を変えることができないままでは、国民は家畜としてしか生きられないぞと警鐘を打ち鳴らしているのだと。

    0
    2024年10月02日
  • 悪の芽

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「大半の人間は、想像力などないのだ。そして、想像力がないことにも気付かずに生きている。」
    「人間が作った社会は、本当なら助け合って弱い人も生きていけるようにする仕組みだったはずだ。なのに今更自己責任って言い出すのは、人間であることの放棄だ。」
    「人間はなぜ、自分の周囲に向ける分しか優しさを持っていないのだろうか。」
    命を賭しての問題提起。善の芽を育てるのも、悪の芽を絶やすのも、人間の想像力。動物であるのをやめた人間の進歩はまだ、始まったばかり。

    0
    2024年09月17日
  • さよならの代わりに

    Posted by ブクログ

    まだまだ積読が溜まってる貫井さんの作品。
    前回の『殺人症候群』から間が空き、心に余裕ができたと思われるのでチョイス。

    まず最初に感じたのは、全然貫井さんっぽくない。
    途中何回もほんとに貫井さんの作品か?と何度もカバー見直しましたw

    それでも先が気になりすぎてほぼ一気読み。
    あれこれ感想書きたいけど、どれも先入観与えそうなので割愛。
    最後はしっかり泣きましたよ。
    貫井さんの作品でこんな感情にさせられるとは…w

    終わり方がアレなのは貫井さんイズム。
    いやー、言いたいけど言えない。

    この本が初めての貫井さんだった人は、他の作品でびっくりするんじゃないかと。
    これだから才筆がある人は…。

    0
    2024年09月15日
  • 悪の芽

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    とても興味深くて引き込まれました。事件の動機はもちろんですが、ネット社会の危うさや職業差別、弱肉強食の社会、いじめ、復讐など、色々なテーマにしっかり向き合った内容だと思いました。こういう人いそうだなというリアルな人物も沢山登場するし、凄い視点を持って書かれていると感じました。解説の石井光太さんの本も好きで読んだりしているので、そこも含めてとても良かったし考えさせられる内容でした。想像力と勇気の大切さを教わりました。

    0
    2024年09月13日
  • プリズム

    Posted by ブクログ

    出版年が2003年となってるので20年ぶりくらいか、すごい衝撃を受けたことを覚えていたのでaudibleで聴いて、ああこういう仕組みだったな、と思い出す。これは、もしかしたら事実である部分だけを抜き出して組み立てたら真犯人に辿り着ける、というものなんだろうか。でも今すぐまた読み直す気にはならないし、いずれ…と思っていたら、多分また次読んだ時に同じこと繰り返しそう。

    0
    2024年08月29日
  • 乱反射

    Posted by ブクログ

    面白かった。あらすじの事件は半分ぐらいになっても起こらず、途中まではこれらの話がどう繋がるのか?という感じだったが後半から一気に読んだ。

    終始うっすらと嫌な気分で読んだ。でもこういう人達の考え方や行動ってあるあるだと思う。自分も含めて。

    久しぶりに小説を読んだけど、楽しかった。
    こういう面白い本が世の中にまだまだ無限にあると思うと、やはり読書は最高な娯楽。

    0
    2024年07月05日
  • ひとつの祖国

    Posted by ブクログ

    ぬっくんの新作です!
    まず、設定が面白いので、いきなり引き込まれ、ぬっくんの読みやすい文でグイグイいきます。
    面白かった〜〜!!
    ただ、ラストまで読むと、
    「えーーっ!続編があるの⁈」
    と強く思う!(あるのか?)

    意図せずテロ組織を関わってしまった、一条昇と、その行方を追うことになる幼馴染で自衛隊特務連隊に所属する逸見公佑。
    この2人が、それぞれ、なかなかいい奴なだけに、もうちょっともうちょっと・・・・と思いながら・・・残りページが少なくなるにつれ、ええ〜〜どうやって終わるのよ?とハラハラしました。正直、期待した終わり方ではない。でもそれが、現実なのかなあ?
    そういう意味でも、続編が読みたい

    0
    2024年06月09日
  • 乱反射

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    久々の読書に初めて読む作家をチョイス。
    ストーリーは我が子を失った加山がその原因を追求していくという内容だが、かなり残酷である。
    事実関係だけを見ればたまたま診断を怠った街路樹が強風で倒れ、運悪く息子が下敷きになってしまったという表現が正しいはずである。

    しかし、なぜ街路樹は診断されなかったか、なぜすぐに緊急外来で処置が施されなかったか、なぜ、なぜ…を全て追っていくと多くの人間の「まあ、これくらいなら」が詰まっていて、それぞれの人物が思い思いに「責任は私にはない」という主張がやるせなさを増幅させる。

    0
    2024年05月22日
  • ドミノ倒し

    Posted by ブクログ

    貫井徳郎さんの本は今まで、「慟哭」「愚行録」の2つを読んできました。

    こちらの2冊はかなり人間の闇の部分をかなり生々しく書かれたものだったため、「ドミノ倒し」でもこのようなテイストの本かと最初は考えてみました。

    しかし実際に読んでみると、設定にリアリティが無いために感情移入して読めなかったというのもあり、特に前半から中盤は主人公の心の声や登場人物のキャラクターから、コミカルな描写で描かれていたと感じました。

    しかし、毎章の終わりでは主人公と協力関係にある署長のセリフなどで物語が動き出しそうな予感が上手く醸し出されていて、続きが気になるような構成でした。

    複数の事件が次々に繋がっていくた

    0
    2024年04月01日
  • 殺人症候群 <新装版>

    Posted by ブクログ

    貫井徳郎らしさの溢れる読み応え抜群の一冊。
    シリーズ3部作の最終作。一作目、二作目の「失踪症候群」「誘拐症候群」を順番に読むことを強くお勧めする。
    少年法や被害者遺族の置かれる悲壮な状況など、社会性の強い問題提起も感じられる傑作です。
    「そう来たか!?」と唸るような展開もあり特に後半はページを捲る手が止まりません。お勧めです。

    0
    2024年03月20日
  • 龍の墓

    Posted by ブクログ

    VRゲームを模倣した連続殺人事件が発生します。
    真似されたゲームの内容は、そこはゲームだけあ
    って、現実とはかけ離れた殺され方をされてます。

    身元が判明できないほど焼かれた焼死体や、見え
    ない槍のような凶器で貫かれた遺体などです。

    ゲームの中では究極の武器である「魔法」が使わ
    れたのではないかという議論が起きます。

    しかし現実でも同様の事件が起きてしまうのです。

    現実では「魔法」はあり得ないです。しかしゲー
    ムに見立てているのであれば、ゲームの中にも解
    決の糸口があるのではないか、と睨んだ警察はゲ
    ームの中に活路を見出そうとするのです。

    ミステリーをエンタメの極致にまで昇華させて一

    0
    2024年03月10日
  • 転生

    Posted by ブクログ

    心臓移植後に数々の不思議な体験をする。絵が上手に書ける、甘いものが好き。心臓移植に伴い、ドナーの記憶や趣味嗜好までもが転移していた。その後様々な伝を辿ってドナーの遺族を探す。会う事に成功。だが、読み進めれば読み進むほど謎が深まる。後半は、一気読みでした。

    0
    2024年03月01日
  • 微笑む人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    まるでノンフィクションを読んでいるよう。
    独特の雰囲気でよかった。
    関係者の話を聞きながら、仁藤の素顔にせまっていく。
    仁藤のサイコパスっぷりがすごい。
    最後の終わり方もなんだかゾワっとさせられてすごく好み。

    0
    2024年02月19日
  • 夜想

    購入済み

    最後まで目が離せませんでした

    途中、何が虚で何が実か分からなくなりかけて怖がりながら読みましたが、さすがは貫井氏でした。
    ただ、もう少し続きが欲しかった。

    #切ない #怖い #深い

    0
    2024年02月12日
  • 壁の男

    Posted by ブクログ

    子供に対する気持ちが、パパよりママの存在が薄くなっている点気になりながら読んでいましたが、最後の章を読んで納得。

    最後の最後で、すべてがすとんと自分の中に入ってきた。
    家族について、子供について、結婚について、諸々たくさんこことを考えさせられる小説。
    もう一度最初から読み直そうと思う。

    0
    2024年01月24日
  • 乱反射

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    かなり前に読んだものの内容を忘れてしまって再読。
    読み終わってからしばらくぼーっとしてしまうくらいの余韻。
    大勢のちょっとしたモラル違反が最終的には2歳の男の子の命を奪う結果になるなんて。
    非常に細かくよく練られたストーリー。

    0
    2024年01月23日
  • 乱反射

    Posted by ブクログ

    前に読んで本棚にあった本。たしかドラマ化にもなっていたような記憶。このどこにでも有り得る悲劇の連鎖のストーリーはずっと心に残り忘れることがない。必読です。

    0
    2024年01月04日
  • 宿命と真実の炎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    今年初の貫井作品。簡潔に言って、最高だったわ!主に三視点から構成される。まずは"犯人"視点。最初にあげるからには特別で、この作品は倒叙ミステリなのだ!次に理那ちゃん(笑)の"警察"視点。最後に前作の主人公"西條"視点だ。これらが複雑に絡み合い、素晴らしい作品になっている。良いところは沢山あるのだが、いくつか挙げよう。高城刑事が徐々に警察官として頼もしくなっていく、サツカン成長物語。西條視点だと元刑事の再生物語としても面白く読めるだろう。次作にも続く設定だったり、終わり方だったりでシリーズ化を視野に描かれていて非常に楽しみだ。勿論、ミステリとしても抜群に面白い!犯人は既に読者に開示済みで動機の追

    0
    2023年12月24日