貫井徳郎のレビュー一覧
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ネタバレ*"悪"を秘めた女は駆除する――。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮 地に立たされる。これは罠なのか?男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。第23回山本周五郎賞受賞作*
個人的趣向としては山本周五郎受賞作はいつもアタリなのですが、今作も例に違わず、かなり面白くて一気読み。
各々の屈折した心境だけでなく、西條の不倫に至るやるせない心境の描写まで、緻密で複雑な人間の内部を表すのが本当に巧い。
欲を言えば、西條に対してはもう少し救いがあって欲しかったけど、続編があるようなので期待したい。 -
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大きな事件は二つある。
法の処罰を免れて、ろくに罪も償わないで社会復帰した者たちが次々に殺される事件。
環敬吾のチームは、見えない殺人者の姿を追う。
もう一つの事件。
心臓移植をしなければいつ命を失ってしまうかわからない息子のために、心臓の提供者をつくるために殺人を犯す母。
証拠のない事件の真相を追う刑事。
二つの事件は交互に語られ、それぞれ追う者追われる者と、視点が切り替わる。
全く接点のない二つの事件が、交差し始めたのが300ページを迎えるころ。
それは、ミステリを読みなれた人にはわかりやすい展開ではないかと思う。
そして、ふつうはこのあたりから終焉に向かって急速に話が進んでいくのだが、この本では300ページはまだ半分にも満たない。
キーパーソンの正体がわかったところで、どうもこれは幸せな結末にはならないような気がしてくる。
彼にも彼女にも。
特に、息子のために殺人を犯した小島和子の章は、時に読み進めるのがつらいほどの描写が続く。
読みながら立てるいくつもの予想。
ことごとく最悪へ進んでいく。
人の命は、喪われてしまったら二度と戻らない。
その喪失感を、どうやって埋めたらいいのか。
せめて反省する姿を見せてほしいと思うのは、そんなに無理なことなのか。
本もテーマもずっしりと重い。
「症候群三部作」の構成の妙。
そして巻が進むにつれて、確実に面白くなっている
実は最初の「失踪症候群」があまり面白いとは思えなかったのだけど、この「殺人症候群」は面白い、というのとは違うか。上手い。
「失踪症候群」「誘拐症候群」「殺人症候群」と、確実に上手くなっている。
ひとつだけ不満があるとすれば、環敬吾の造形。
最後まで謎に包まれたままで、冷静で有能。彼は神なの?
人間味の片りんを見せることのなかった彼が、一体どうしてこのような陰の存在になったのか。
彼があんまり完璧すぎるので、正解対最適解の話にならなかったのが残念。
被害者が救われるための最適解。
倉持は倉持でそれを考えていたのだと思う。
実践した鏑木。阻止する環。武藤の思い。
私の中でもまだ正解は見つからない。 -
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ネタバレ主人公の迫水は、10年務めた不動産会社をリストラされ、そのうえ愛する妻に逃げられるという始末。
身に覚えがありすぎて、何が原因で逃げられたのかもわからない。
とことんダメな男であるが、妻を愛する気持ちだけは本物で、妻を見つけ出すためなら暴力団に脅されようとも、警察を出し抜こうとも、後悔はしない。
しかし、決して悲壮感漂わないのが、迫水の迫水たる所以。
本人は真面目なのだろうけれど、どこかとぼけたおかしみが、笑いを誘う。
そして、小さな小さな手がかりを情報交換することによって、少しずつ妻に近付いていくのだとしたら、これは現在のわらしべ長者のようだな。
そんなのんびりした気持ちで愉快に読んでいたら、突然の大転換。
好きだからこそ知られたくない秘密。
それがこんな悲劇を引き起こすことになるとは。
これ、ドッキリじゃないかな?迫水がみんなに引っかけられたんじゃないかな?と、祈るように読んだけど、現実だった。
このあと、迫水はどうなっちゃうんだろう? -
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劇団“うさぎの眼”に所属する駆け出しの役者・和希は、ある日、祐里という清楚な美少女に出会う。祐里に劇団の看板女優の控え室を見張っていてほしいと言われ、妙な頼み事をするものだと思いつつも引き受けるが、ほんの数分見張りを外れたすきに、その女優が殺害される。何か知っているにちがいない祐里に問いただしたところ、祐里は27年後の世界からタイムスリップしてきたと言う。容疑者は祐里と繋がりのある人物で、無実なのに逮捕されてしまった。この逮捕は、未来の祐里の人生に影響を及ぼしたため、冤罪を晴らしたくてタイムスリップしてきたらしく……。
この著者は作品ごとに作風がコロリと変わる不思議な人。ハードボイルドな『慟哭』、小学生の「僕」視点の『プリズム』などが好きでした。『追憶のかけら』(これまた分厚く659頁也)については、途中まで至上のおもしろさ。怒濤の勢いで読ませますが、ラストはメロドラマが入ってガックリ。本作はガックリではないけれど、そういうオチにしちゃうのねとしんみり。ミステリというよりは圧倒的に青春ものです。