貫井徳郎のレビュー一覧

  • 夜想

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    救済がテーマ。ダイナミックとは言えないストーリーを、この長さで飽きさせずグイグイ手繰りよせるように読者を導く手腕、貫井ワールドの真骨頂です。この作品も素晴らしいです。益々ハマっていきそうです。

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    2017年12月01日
  • 殺人症候群 <新装版>

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    大きな事件は二つある。
    法の処罰を免れて、ろくに罪も償わないで社会復帰した者たちが次々に殺される事件。
    環敬吾のチームは、見えない殺人者の姿を追う。

    もう一つの事件。
    心臓移植をしなければいつ命を失ってしまうかわからない息子のために、心臓の提供者をつくるために殺人を犯す母。
    証拠のない事件の真相を追う刑事。

    二つの事件は交互に語られ、それぞれ追う者追われる者と、視点が切り替わる。
    全く接点のない二つの事件が、交差し始めたのが300ページを迎えるころ。
    それは、ミステリを読みなれた人にはわかりやすい展開ではないかと思う。
    そして、ふつうはこのあたりから終焉に向かって急速に話が進んでいくのだが

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    2017年11月30日
  • 自薦 THE どんでん返し

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    タイトル通り、どんでん返しもの。
    自薦だけあって、それぞれの作家さんの特徴が出てて大変面白く読めました。
    なーんか読んだことある話ばかりだなー
    まー自薦だから他ので読んだんだろーなー
    と思ってたら同じ本が自宅の本棚にあったのは内緒

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    2017年10月17日
  • 愚行録

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    うわーっ!やっば!
    凄いなぁ!
    途中から段々読めてきたけど、当たった自分に「よっしゃ!」って言いたいくらい。
    こわいなぁ…。

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    2017年10月09日
  • 夜想

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    ずっしり重たい、この雰囲気はまさに貫井さん。
    もう大好きで心酔します。しかもテーマは新興宗教。

    新興宗教団体が出来上がって、怪しい世界に変わっていく、そんなドラマかと想像してたけど、全然違った。

    悲しみや苦しみの真の姿はこうなんだろうな、と。
    2つの線が最後に繋がって、そのあたりは圧巻。

    かなりの長編だけど、あっという間に読んでしまった。

    貫井氏の「神の二つの顔」、のような独特な崇高な世界感がたまらない。

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    2017年09月30日
  • 私に似た人

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    日常的に小口テロが起きる社会。十人の主人公たちの生活の変化と感情の揺れを精巧に描く連作長編小説。
    タイトルのとおり、登場人物は私たち自身である。幸せの価値観を自分なりに持ち、他人との優越感と劣等感を感じながら日々を過ごす毎日。そして不満は社会のせいにする。人間の本質なのか、日本人特有なのか。よく考えると背筋が凍る怖い物語である。

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    2017年09月22日
  • 迷宮遡行

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    ネタバレ

    主人公の迫水は、10年務めた不動産会社をリストラされ、そのうえ愛する妻に逃げられるという始末。
    身に覚えがありすぎて、何が原因で逃げられたのかもわからない。

    とことんダメな男であるが、妻を愛する気持ちだけは本物で、妻を見つけ出すためなら暴力団に脅されようとも、警察を出し抜こうとも、後悔はしない。

    しかし、決して悲壮感漂わないのが、迫水の迫水たる所以。
    本人は真面目なのだろうけれど、どこかとぼけたおかしみが、笑いを誘う。
    そして、小さな小さな手がかりを情報交換することによって、少しずつ妻に近付いていくのだとしたら、これは現在のわらしべ長者のようだな。

    そんなのんびりした気持ちで愉快に読んで

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    2017年07月14日
  • 後悔と真実の色

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    これはミステリーそのものより重厚な読み物として、大変面白かった。主人公のカリスマ性、それを起因とする物語の進行。人間活劇だね。久しぶりにお腹の大満足の小説でした。
    しかし、救いはないね。。。

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    2017年07月03日
  • 悪党たちは千里を走る

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    色々誘拐ネタはあれどこの手があったか、と感心。
    慟哭、乱反射などの貫井さんのイメージとは全く違うが楽しめるユーモアミステリ

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    2017年04月28日
  • さよならの代わりに

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    劇団“うさぎの眼”に所属する駆け出しの役者・和希は、ある日、祐里という清楚な美少女に出会う。祐里に劇団の看板女優の控え室を見張っていてほしいと言われ、妙な頼み事をするものだと思いつつも引き受けるが、ほんの数分見張りを外れたすきに、その女優が殺害される。何か知っているにちがいない祐里に問いただしたところ、祐里は27年後の世界からタイムスリップしてきたと言う。容疑者は祐里と繋がりのある人物で、無実なのに逮捕されてしまった。この逮捕は、未来の祐里の人生に影響を及ぼしたため、冤罪を晴らしたくてタイムスリップしてきたらしく……。

    この著者は作品ごとに作風がコロリと変わる不思議な人。ハードボイルドな『慟

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    2017年04月23日
  • 転生

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    心臓移植を受けたレシピエントの中に、ドナーの趣味、嗜好、記憶が転移する。心は脳にあるのか、心臓(ハート)にあるのか。細胞の一つ一つに記憶が残っているのか? 臓器移植に、何故金銭の話題がついてまわるのか。心が脳でなければならない理由。臓器移植の社会問題等も考えさせられた。 自分の死後、誰かの中で自分の一部が生き続ければ、残った家族も喜ぶかな。臓器移植というものを掘り下げて考えてみたいな。と思えるお話でした。読んだあと、スッキリとする良書でした。

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    2017年04月05日
  • 失踪症候群 <新装版>

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    暴力・残虐的なシーンは想像するのが痛かった。ここぞという時に助けに現れてくれないところが、スーパーヒーローでなく、完ぺき過ぎず良いのかもしれない。面白かった。

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    2017年04月05日
  • 殺人症候群 <新装版>

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    殺人の動機色々。憎むべきは加害者か被害者か。洋画なら職業殺人はヒーローかも。鏑木刑事の出来すぎた捜査は、のちにそういう事だったのかと感心。凄いミステリーだった。

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    2017年04月05日
  • 夜想

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    雪滕の妻子を失った悲しみの描写が酷くリアルで、貫井氏の文体に自分の感性がぴったりハマってしまっていることを感じる。天美との出会いから、それに固執し、依存し、徐々にまた壊れていく雪滕の精神構造の様子が痛々しい。その精神構造破壊の進み具合が絶妙。相変わらず人物の描き方も卓越しているし、メーター振り切ってぶっ壊れている人を描くのも上手し。宗教の怖さではなくて、宗教にハマっていく人の精神構造が怖い。もっと言えば、誰にもその破壊の過程へと陥る可能性があるからこそ、身近に感じられて怖い。慟哭とは違い、最後に救いがあったのも個人的には素敵だと感じた(ここは賛否両論だろうが)。マスターありがとう。

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    2017年01月30日
  • サイドストーリーズ

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    大分前に購入「積ん読」状態だったのをなぜか読みました。
    正直楽しかったです。
    作家さん達の代表作のスピンオフというか表題通り「サイドストーリー」。読んだことの無い作品もありましたが、丁寧に作者の横顔やメインのストーリーも書いてあるというサービス付。すべて「煙草」や「一服ひろば」に関連して書いてありますが、上手くからめてあるお話もあれば、やや無くてもいいんじゃない?的なお話も。
    冲方丁の「天地明察」は読んでみたいと思っていた本だったので、ますます読みたくなりました。
    貴志佑介の「鍵のかかった部屋」からのお話はドラマで見ていた佐藤浩市の芹沢がメインになったのには驚きましたが、まんまでしたね。
    限ら

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    2016年10月11日
  • 新月譚

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    恋愛小説というのはもっと上手くいくものではなかったか。もっと安心して読めるものではなかったか。読みながらそんなことが頭をよぎった。容姿に自信のない女性が恋を経て、整形をし華やかな美貌を手に入れ、持て余し、翻弄される…。どこか既視感があったような気もしたが、そんなものは一瞬にして吹き飛んでしまった。理屈に反するような行動ばかりする主人公。しかし、その狂気や陶酔、諦め、迷いといった心理描写が、読者にその理詰めでは説明しようのない人間の感情を、直に分からせてくれる。必死に生きる主人公に、心から共感できる作品。

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    2016年07月04日
  • 殺人症候群 <新装版>

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    「失踪症候群」「誘拐症候群」に次ぐ、症候群シリーズの3作目にして最後。

    登場人物と活躍する組織は3作とも共通するため、1作目から読むとより深く楽しめるが、この作品から読み始めても十二分に楽しめる。

    心無い少年犯罪に巻き込まれ、愛するものを無残に奪われたやり場のない怒りを、復讐代行という形で晴らしていく職業暗殺者。

    加害者少年への手厚すぎる擁護に、被害者側苦しめられる。現代日本の抱える深い闇が恐ろしくもリアルに描かれている。

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    2016年04月23日
  • サイドストーリーズ

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    読み終えるのが惜しい、
    物語がある。

    もう少し読んでいたい、
    余韻に浸っていたい、
    もしかしたら
    CDの隠しトラックの様に
    どこかに後日談的なものがあるんじゃない?

    と、いつまでも
    本を閉じたり開いていたりして。(^^;

    この本の中では
    >まほろ駅前シリーズと
    >天地明察が
    私の読み終えるのが惜しいリストの中の作品。

    サイドストーリーとして
    <一服広場>をテーマに再び彼らに会えたのは嬉しかった。
    他の作品も面白かったなぁ~
    機会があったら、本編のほうも読んでみたい。

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    2015年08月10日
  • 殺人症候群 <新装版>

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    「“症候群”シリーズ」として一部に知られているという3作品だが、“シリーズ”と言うよりも、何か「第3部―殺人症候群」に収斂する「長大な一作」という趣だ…この『殺人症候群』は名作だと思う。
    『殺人症候群』で問われる怨恨と復讐、復讐と正義、正義と暴力、命や愛というテーマ…考えさせられた…本作の“主要キャスト”ということになる、原田、武藤、倉持の3人だが、各々が「何かのシリーズの主役」であっても違和感が無い程度に惹かれるものが在る…

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    2015年08月05日
  • 夜想

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    『こんなふうに思ったんです。悲しみってのは絶対に乗り越えなきゃいけないものなのか、と。悲しければ悲しいままでいてもいいんじゃないか、とね。

    悲しいことや辛いことには、立ち向かっていかなかなければいけないように考えてしまうじゃないですか。それを克服して心の奥底にしまい込まなければいけないと、義務のように感じてしまいますよね。でも本当はそんな必要ないと思うんです。

    どうしても乗り越えられない悲しみもあるんですよ。だったら、無理に乗り越える必要はない。乗り越えられないことを恥に感じる必要なんてないと、私は思うんですよね。』

    最後の3章がすごい。
    みんなが世界を見たいように見ているから、すこしず

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    2015年07月22日