あらすじ
小規模なテロが頻発するようになった日本。実行犯たちは一様に、冷たい社会に抵抗する《レジスタント》と称していた。テロに走る者、テロリストを追う者……それぞれの心象と日常のドラマを精巧に描いた、第151回直木賞候補作、待望の文庫化。
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Posted by ブクログ
麻衣子が最初のトベになった理由が、同僚のヘイトさんを満喫にいた人の無関心により失ったこと、というのは共感できなかった。小口テロに賛同はできないが、小村義博の派遣で働きギリギリの生活の唯一の潤いである公園のネコ、ちーを交通事故で失ったことがきっかけ、というのは理解できる気がした。
選挙期間に読んだので考える事も多く、2017年発行当時より更に悲惨な社会情勢だと思う。
こんな時代もあった、と読める時が来るんだろうか…
Posted by ブクログ
タイトルから勝手にミステリー系を想像していたが、いい意味で裏切られた。
物語の主軸には、個人を恨むではなく、普通に生活ができない社会を憎む貧困層によるレジスタンスとそれを使嗾するトベという存在。
上手く生きていけないのは、社会が悪い、バブルの恩恵ばかりを受けて皺寄せを若者が被っているという漠然とした思想が中心の話だが、割とリアリティがあってゾクゾクした。
私はあまり、そういう考えに至ったことはないが十分に納得できるし、それを一つ上の立ち位置から教唆する人々の構図も現実味を帯びていてゾッとした。
Posted by ブクログ
10の短編で構成されていて10人の主人公が登場しますが、どの話にもすぐに引き込まれてしまいました。
独立した短編ではなく、それぞれに関連性があり伏線も隠されています。
そして「トベ」の正体が気になり一気に読まされます。
テロはもちろん決して認めてはいけない行為だと思うけれど、ある主人公の言葉
「他人の痛みが想像できない人を、私は絶対に認めません」は常日頃から私が感じている事なので共感出来る面もありました。
エンディングもスッキリ、読後感も良かったです。
Posted by ブクログ
小口テロが日常化した日本。
テロを起こすもの、テロを憎むもの、テロを防ごうとするもの、テロを唆かすもの、テロを模倣するもの…
色んな立場からテロが描かれている。テロを起こすものの動機とはなにか。そして読み終わった後、タイトルの私に似た人という文言に考えさせられた。
Posted by ブクログ
これはいろいろ考えさせられる。
題名の意味はなんだろうって思ったけど、そういことか・・・
この重暗い感じ、いいな笑
ラストはちょっと・・・・だけど。
読後にいろいろ考えたくなる作品。
Posted by ブクログ
小規模なテロが頻発する日本が舞台。でも全然架空っぽくなくリアルな世界。組み立ても見事。そしてなによりこの小説にこのタイトルをつけたことが衝撃。
Posted by ブクログ
日常的に小口テロが起きる社会。十人の主人公たちの生活の変化と感情の揺れを精巧に描く連作長編小説。
タイトルのとおり、登場人物は私たち自身である。幸せの価値観を自分なりに持ち、他人との優越感と劣等感を感じながら日々を過ごす毎日。そして不満は社会のせいにする。人間の本質なのか、日本人特有なのか。よく考えると背筋が凍る怖い物語である。
Posted by ブクログ
日本全国で小テロという自爆テロが頻発するわうになる。犯人たちは自分たちをレジスタンスと呼び、日本を変えるためと称して無差別殺傷事件を起こすが、特定の宗教や政党に属する集団ではない。彼らをテロに導くトダとは?その背後には何があるのか。
Posted by ブクログ
誰が私に一番似ていたかな。なんて考えてみた。
本当に今の世の中、生きているだけで偉いと思う。
追い詰められた人の中で、犯罪行為を実行に移す人とそうじゃない人の違いってなんだろう。
復讐する人としない人の違いってなに?
些細なことで、運良くストップできたり、その人の生い立ちや人となりによるのかな。
私も自分が追い詰められた時、自分でもびっくりしてしまう行動を取ったことがある。
だから、全身全霊で自分の精神を安定させることにしたんだよな。
だけどそれが不可能な環境もあるし。
結末は、少しだけ救われた。
本当に、そうであって欲しいと思った。
Posted by ブクログ
2023/06/26
#私に似た人
#貫井徳郎
《感想》
「私に似た人」っていう題名にあった通り、
読者側も、小説内の主人公たちも「私に似ているかも」と思う内容。
テロを、題材にして
日本では貧困層が社会を変えるべく、
中間層や富裕層に洗脳され小口テロを起こすという話。(テロの内容はトラックでビルに衝突や通り魔など。)
日本人は家族や身近な周りの人に対しては親切で、
想いやりがあるけれど、それよりも距離が離れると無関心になってしまう。
そして、
みんな行動が一致して、序列を乱さない律儀系な国と言うけど、それが正しいかどうか考えておらず、思考が停止してる証拠なのかもしれない。
という内容が何回か本の中にも出てきます。
一定数人間だけが豊かである=日本は平和な国
というイメージですけれど、深く掘れば一定数の貧困者もいる。
今自分が生活しているレベルが全員叶えられるとは限らないんだと思ったし、それもそれでおかしい社会だとも考えさせられた。
現状に対して、忙しくてできないとか、貧困層で夢を持てないとかで、社会の歯車に回されるだけじゃなく、よく考えて自ら行動することが大切!
頭で考えることは、無限に出来るけど
行動に起こせるのはやはり一握り。
文句ばっかり言ってても何も変わらないし、
その文句につけ込まれてしまうかもしれない!
ネットでのやり取りがメインの内容で、
現実社会で本当にあり得る話をしているから、
結構考えさせられる内容になってて、読むのは楽しかったです。
最終的には、日本の性格を非難しながらも、
日本人も捨てたもんじゃないと思わせる展開になってます!
貫井徳郎は悲劇があったとしても、
最後は希望を持たせて終わる所が好きです。
後は、もっと一人一人の主人公が
複雑に繋がりあってくれていたらよりのめり込んで読み進めれたと思いましたが、
これは欲張りですね、、。
Posted by ブクログ
格差社会、事なかれ主義など日本や日本人の風潮がぎっしりつまっていて、様々な立場から考えさせられた。
社会を恨んだ結果、起こした行動がテロというのは極端すぎるけど、どんな形であれ復讐が解決方法にはなり得ない。
Posted by ブクログ
大きなものではないけれど、頻発する小口テロ。
小口テロに関わる10人の目線から描かれている。
人に無関心、でも関係のない人までを巻き込むテロ。
貧富の差や日本人や国の変化。
何か深い…ちょっと、考え込んでしまう…
2020.9.16
Posted by ブクログ
「慟哭」はもすごいインパクトだった。このため、この作家の他のを読むのに一歩躊躇していた。たまたま連作集があったので、久しぶりに読んでみた。現代のまさに今を見事に描写していた。やはりすごかった。複雑な心境になった。いいとか悪いとか、そんなことは現実はわりきれない。見事すぎた。またしばらくは読まないことになると思う。
Posted by ブクログ
ミステリ...なのだろうか?(^ ^;
はっきりした主義主張や目的が分からないまま、
人を巻き込み自殺する「小口テロ」が蔓延する時代、
という舞台背景。
小口テロ実行犯たちは、宗教や思想など
「横のつながり」が見えてこない。
ただ「トベ」と名乗る謎の人物から、
ネットを介して教唆された形跡が見えてくる。
が、「トベ」を捕まえてみると、実は複数いて...
というストーリーが、様々な登場人物たちの
「それぞれのテロとの関わり方」を描くことで
ちょっとずつ見えてくる、という凝った構成。
私には「オチ」が弱い気がしましたが...(^ ^;
ネット上だけの、人との危ういつながりや、
頑ななまでの「正義感」、衝動的な「行動力」など、
今の現実世界と全く同じと言えるのでは。
そう、小口テロは、明日、いや今ここで起きても
全くもって不思議ではない話なのだ(^ ^;
...ということを考えると、じわじわと恐怖感が(^ ^;
こんなん防ぎようもなし、本当に運・不運だけ(^ ^;
鋭い視点から淡々とした筆致で切り取る、
貫井氏らしい社会派の一冊です。
Posted by ブクログ
貫井先生、ゴメンナサイ…あなたを最後まで信じ切れなかった——。奈良坂俊和まで読んでこれは(※前[読んだ]作『ドミノ倒し』が貫井作品一の駄作だったので)はまた駄作か?と頭を過ぎりました、が、最後の章で評価は一変。まさかこう来るとは…。そう遠くない未来を見ているようでした。星4つ半。
Posted by ブクログ
テロを起こす人、被害者、その家族、憤りを感じる人、行動できる人、傍観者。。
テロを通して、様々なタイプの人間が描かれる。私はタイトルの意味は、あなたはどのタイプ?と聞かれているように思えて、背筋がぞくぞくした。私は、、、。
最後の話が良かった。復讐を実行したら、悲しみの連鎖はいつまでたってもなくならない。誰かがその犠牲になるのではなく、そういう環境を元から作らないこと。それが大事なんだろうな。
Posted by ブクログ
◯私に似た人
最初の一文から心が揺らいだ。テロが始まったのは2001年のアメリカ同時多発テロが最初だろうか。
今まで何度のテロがあり、今では驚きも少ない。
何故慣れてしまったのか、慣れていい事なのか。
スマホも同じ。社会の変化はいつの間にか起き、気づいてみれば当たり前になっている。
世の中の全ての事象に右か左のどちらかひとつの結論を出す必要があるのだろうか。
テロを起こす人の気持ち。テロを批判する人は、弱者が見えていない人たち。
たった1つの失敗や挫折が時には取り返しのつかない事になる。自分には考えられないこともその人にとってはかけがえのない事もある。
日本人のダメなところは考えない所
自分の意志で理由があって『右に倣え(ならえ)』であればそれはいいと思う。ただ、出る杭は打たれるから出ない、何も考えずに出ないでいる事を選ぶのがいけない。
憎んでも何も始まらない。憎しみの連鎖は止めなければ止まらない。
自分の好きな人がテロリストだったら、嫌いになるのか。過去に罪を犯していたら、その人を社会から追い出すのか。それが正しいのか。
Posted by ブクログ
複数の人物からのアプローチ、無関係と思われる人物らの以外な接点、点が徐々に繋がり線になっていく展開は著者の得意とする手法であり、本作でも持ち味が発揮されている。
だが、部分的な繋がりを見せるが全てが完璧に絡まり合う事はなく、少しモヤモヤする章が多い。また似たようなエピソードがあり、必要性に疑問を持ってしまう章もあり後半で失速気味。
また、終盤で物語の肝である「最初のトベ」が明かされるが、違和感を覚える章があり多くの読者を途中で気づくはず。
消化不良の部分も多いが、テロを起こすレジスタントの行動心理には現代日本が抱える問題が数多く内包されており、フィクションと思えないほど真に迫った内容だった。
Posted by ブクログ
社会に抵抗し周辺の何人かを巻きこむ『小口テロ』が頻繁に起き始めた頃。ネットで、加害者を励まし社会に抗議するレジスタントになれと唆した者がいる。その『トベ』が増殖している。被害者側、社会への怒りが募った側、励ます側、摘発する側など様々な立場の10人。
自分と無関係な人には冷淡な日本人、弱者を無視し続けてきた社会に、命をかけてその存在を示す。ここにどれだけのリアリティを感じられるかで、恐い話/荒唐無稽な話、が変わるのかな。
Posted by ブクログ
全体的にどんよりしていて悲しくなる世界観。
だけれども作者の文章が上手いのでさくっと読み進めることができる。
色々考えさせられることがあった作品。
Posted by ブクログ
ちょっと飽きたかな。
もともと、短編少し苦手なので、繋がるとは思っていても、少し退屈だったかな。貫井さんだから最後まで読んだけど。小口テロ、これからの日本を見るようなテーマは考えさせられるものでした。
Posted by ブクログ
舞台は小口テロが頻発し問題となっている日本。自らの境遇を嘆く若者、日本人そして日本国に対する怒りと失望を露わにする会社員、自らは比較的恵まれた生活を送りつつも弱者に対するシンパシーを持ち、弱者の救済について何か出来ないかと考える者等、何らかの闇を抱える男女が登場する物語です。それら男女の物語に共通するキーパンソンはネット上で若者を教唆していると疑われている”トベ”。“トベ”はいったい何者なのか?そもそも実在する人物なのか?貫井さんの作品らしく、もう一寸ひねって欲しかったかな。