あらすじ
彼はなぜ絵を描き続けたのか?
〈最後の一撃〉が読者の心を撃ち抜く感動の傑作長編。
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。
決して上手いとは言えないものの、その色彩の鮮やかさと力強さが訴えかけてくる。
そんな絵を描き続ける男、伊苅にノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが、寡黙な彼はほとんど何も語ろうとしない。
彼はなぜ絵を描き続けるのか――。
だが周辺を取材するうちに、絵に隠された真実と、孤独な男の半生が次第に明らかになっていく。
〈最後の一撃〉が読者の心を撃ち抜く感動の傑作長編。
解説・末國善己
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
子供に対する気持ちが、パパよりママの存在が薄くなっている点気になりながら読んでいましたが、最後の章を読んで納得。
最後の最後で、すべてがすとんと自分の中に入ってきた。
家族について、子供について、結婚について、諸々たくさんこことを考えさせられる小説。
もう一度最初から読み直そうと思う。
Posted by ブクログ
【仕事の休憩時間には絶対に読むな】
凄まじい文圧
文字で殴りつけてくる
何の身構えも無しに読み進めて完全に打ちのめされた
たとえこの作品が映像化や舞台化されたとしても
原作超えは絶対に起きない
それほど構成力以上に純粋な文章力、
人の行動原理を描き切るのが抜群に上手い
本作は絶対に仕事の休憩時間など
そんな半端なスキマ時間に読んではいけない
文章に横っ面を殴り飛ばされて精神が不安定になる
なんなら午後からの業務に多大なる支障を来たす
幼い娘の壮絶な闘病生活の描写など
あまりの文圧で胸が掻きむしられる
妻となる大学時代の高嶺の花に猜疑の目を向けなければならない場面は重苦しくて仕方がない
壁に絵を描く
部屋中に描く
それでは飽き足らず所有地の壁に描く
乞われて近隣住民らの壁にも絵を描く
金銭の収受は頑なに断り
ただただ無償で下手くそな絵を描く
作中でこの男の行動原理が様々な角度から語られる
SNSで話題となり観光地化された町の立役者として
闘病生活の果てに息を引き取る幼い娘を持つ悲劇の父親として
大学時代の高嶺の花と運命の再開を果たし、そんな彼女が抱える影に踏み込む青年として
他にも、嫉妬と劣等感によって崩れかけた父母の板挟で、自身もまた父と同じ仄暗い火を胸に宿す学生時代
そして無二の親友夫婦との絆を深めていく社会人成りたての頃──
絵を描く男の実直さ
その下地となった、様々な出逢いの末にそれら全てから惜別を告げられる壮絶な半生
この構成力も凄まじい
しかしやはり、まだ全貌が見えてこない状態から綴られる一つ一つの行動原理の描写
この描写があまりにも的確なので
否が応でも男の心情、そこから自ずと振る舞ってしまう言動が読んでいる自分の中にそのまま乗っかってくる
あまりに重苦しく、一文一文の圧力に揺さぶられる良作
文章で真っ向から組み伏せられる心地良い敗北体験でした
Posted by ブクログ
最後の最後で思わず「うおおおおお・・・」とうなってしまう作品だった。
壁に稚拙な絵が描いてある家が立ち並ぶ奇妙な町、その絵を描いた主人公伊苅の半生、そして、なんでそんな絵を描くのか?という疑問が徐々に明らかになっていくストーリー。
なんでこう不幸は平等じゃなく、偏ってしまうのか。。こういう話を読むと自分の幸せを噛み締めないとなと思います。
Posted by ブクログ
この地味なタイトルで表紙も地味であらすじもこれまた地味で、何に惹かれて買ったのかも忘れたけど、読んでよかった。いろいろな角度からじんわりと沁みてきて、気付けば大きななにかに包まれた。良い本だった。
Posted by ブクログ
久々の貫井徳郎作品。
数年前に慟哭を読んで以来、10作近く読んで、「慟哭ほどの作品はないか〜」と思いつつあった中での今作。
かなりよかった。
伊庭(いかり)とリエコさんの距離の詰め方や距離感、エミリちゃんとの交りなど、最後にその関係性が集約されていく感じがたまらなかった。
これまでの貫井徳郎作品とは風味が全然違って、事件!という感じがしなかった。が、それがよかった。緩やかに流れる時間の裏に潜む深層が、重く、愛に溢れていた。
Posted by ブクログ
才能の有無で人の価値は決まらない。
絵の才能がある母が言うことはきっと正しい。
たどそれを真実として自分の中に持って生きられるほどまだ自分はこの考えに納得はできない。誰よりも才能が欲しいから。
ただ父の劣等感もよくわかる。
だからこの嫌悪感はきっと同族嫌悪なんだと思う。
笑里ちゃんのとこはただひたすらに辛かった。
生々しく、でも淡々と残酷に進んでいく時間。
伊刈を抱きしめてあげたい。
と思ってたら親父は弱さを一応認められる人だったし、謝れる人だった。でも本質はなかなか変わらない。
澤谷の子どもの名前は笑里。
なんかここらでわかった気がする。
だからえりなはえみちゃん、っていう若干距離のある呼び方してたし、家出てくなんてことをすぐに決められたのか。
絵を描いたのは、女の子の絵を描いたのはそう言うことだったのか。色んな人と関わってきた伊刈の人生だけど、その中でも重要な母、笑里、りえなのどれかかと思っていたけど、結局美里だったのか。
でも街に描いたのは違うのかな?
いずれにせよノンフィクションライターと同じで、
伊刈への興味がなくなることなく、かつ、これだけ人生を見せてもらってもわからないことは多いんだなと。人一人の人生を見せてもらった感覚。
Posted by ブクログ
初めてと、2度目からでは物語の印象がガラッと変わる。大どんでん返しってわけではないのかもしれないけど、少しずつ真相が明らかになっていくうちに、伊狩の懐の深さと人間味がわかってきて、一緒に人生を歩んでいる気分になった。
あとは、子を持つ親として、読んでてとっても辛かった。読み終わって思うのは、一人の人間の歴史の深いこと。。「感動」の一言だけでは表せない。
Posted by ブクログ
集落の壁に奇抜な絵を描き続ける男の話。
章を読み進めるたびに主人公が壁に絵を描く謎が解明されていくので夢中で読んでしまった。
特に「人と人との間にわだかまりを作るのは才能の有無ではなく、劣等感」という箇所があるのだが、伊刈が人生において抱えている罪悪感のかたまりを表していると思う。
病気や離婚など暗い話ではあるが、読み終わりはなぜか心に温かみを感じる話。
Posted by ブクログ
切ない。読んでいて辛かった。
人って色々抱えてるのかな。
人間の価値について久々に感がさせられた。
才能の有無ではなく何をしたのか。
とても深い悲しみを抱えて、ひたすらヘタクソな絵を描く伊刈が胸に刺さる。
家族のことを改めて大切にしようと思った。
ありがとう。
Posted by ブクログ
孤独な男の半生と隠された真実が、ひとりのノンフィクションライターの好奇心から少しづつ明らかにされていく…
こんな風に、扉が次々と開けられていくような物語をこれまで読んだことがない。
そして最後に、どうして彼が上手ではない絵を描き続けたのか、その絵に魅力される人が増えていったのかという秘密が明かされた。
Posted by ブクログ
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。決して上手いとは言えないものの、その色彩の鮮やかさと力強さが訴えかけてくる。
そんな絵を描き続ける男、伊苅にノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが、寡黙な彼はほとんど何も語ろうとしない。
彼はなぜ絵を描き続けるのか――。
だが周辺を取材するうちに、絵に隠された真実と、孤独な男の半生が次第に明らかになっていく。
Posted by ブクログ
男は何故、上手くもない稚拙で奇抜な絵を家々の壁に描いたのか?紐解かれていく男の悲しい過去が、じっくりと読ませる。伊刈と梨絵子の夫婦に何か違和感を感じてたけど、最終章で そういう事だったのね‥と、驚きと納得。しんみりとした読後感が良かった。
Posted by ブクログ
小さな田舎町で自分の家の壁に絵を描く伊苅。
しかも、その絵は幼い子供が描くような下手な絵。
どうしてそんな絵を描き続けるのか…
その理由が深い。
2022.4.20
Posted by ブクログ
凄く良かった。
章が進む度に伏線が回収され、最後に全てが腑に落ちる。人間の感情のあらゆる部分が繊細かつ丁寧に描かれていて、主人公の人柄がとても愛おしく感じた。
⭐︎を5つ付けたかったが、あまりにも悲しく辛い主人公の半生だったので4つにした。
Posted by ブクログ
伊苅がどうして、小さな集落の家屋に稚拙で奇妙な絵を描き続けたのか、どうして金銭の見返りも求めないのか、どうしてその稚拙な絵が多くの人の胸を打つのか、言葉に表すとなんだか嘘っぽくなるけれど、その根っこにある大きな愛情と悲しみが胸を打った。
各章に渡ってこれまでの伊苅の歩みや選択、彼を取り巻く人々が時系列バラバラに描かれるのだけど、そのちょっとした違和感がどんどん後の章で明らかになり、深いヒューマンドラマとミステリが組み合わさったような読みごごちだった。
Posted by ブクログ
貫井徳郎の作品を初めて読んでからもう20年は経つだろうか。毎回斬新なミステリ、仕掛け的な文章構成に驚かされる。
一人の人物をここまで深く描き、なおかつ語られない部分を想像力で膨らませてくれる、素晴らしい作品だった。
読後、放心状態になること間違いなし。
逆に下手な映像化だけはやめてほしい。
Posted by ブクログ
自分でも意外なのだが、この作者、初読み。
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた子供の落書きのような奇妙な絵が評判となり、その不思議な絵を描く伊苅という男に、ノンフィクションライターが取材を試みるのが話の始まり。
ノンフィクションライターの存在は話のひとつの切り口でしかなく、伊苅の実像はライターの取材とは全く別に三人称で語られる話で徐々に明らかになる。
第一章、伊苅が絵を描き始め、それが町に広がっていった経過が語られる。予断にとらわれたノンフィクションライターの思いとは全く異なる経緯で、そのすれ違い様におかしみあり。
ちょっと風変わりなお話という印象だったが、ここから話が進むに連れて重さが増す。
難病に侵された娘との闘病の記録、妻との馴れ初めと別れ、子供の頃の父母の姿と友に嫉妬する自分の姿。伊苅を今の姿にした過去が描かれる。
最終章、子会社の社員である澤谷と交友を深める話がどこに向かっているかが見当がつかなかったのだが、二章三章でさらりとスルーされた妻との関係の違和感がここでこんなに効いた結末なるとは恐れ入った。
Posted by ブクログ
最初に提示されるちょっと不思議な現象。なにそれ?そんなことある?いったいどうしてなの?と感じる読者。そして、その読者を納得させるためだけにあの手この手で延々と語られる物語。如何に読者を納得させられるか、に挑戦した小説。
そんな印象。
貫井さんの巧みな語り口は素晴らしく、なんていうか、するすると読めてしまう。いつの間にか引き込まれ、感情移入してしまっている。今回もまんまと術中にはまってしまった。
流れに身を任せて読むのが良い。素直に感情移入するのが良い。そして行き着く先で、心に灯をともそう。
Posted by ブクログ
最後まで読まないとわからないが、最後まで読むと面白い。
現実でこういう人がいるのか!ってくらいの優しい人。
こういう人になれるのは、素晴らしいことだと思った。
Posted by ブクログ
第4章まで読み終えた段階では、貫井氏の作品としては、やや物足りなさを感じていた。しかし、第5章を読み終え、伏線の回収の見事さにも感心したが、それ以上に、伊苅の生き方に強い感動を覚えた。一体、どれだけの人が伊苅のような生き方ができるだろうか。
Posted by ブクログ
北関東に家々の壁に原色で描かれた稚拙で奇妙な絵で話題となり注目を集める小さな街があった。描いているのはすべて、ひとりの男だという。ライターの「私」が周囲に取材を重ねるうちに真実と男の孤独な半生が明らかになってくる。時系列を遡っていきパズルがはまってくる。子供の部分には感動してしまった、久々の貫井さんだがさすが。★5に近い4
Posted by ブクログ
全体としては、面白かった
文章にスピード感があったし
読みやすく流れもスムーズだった
ただ、ストーリー展開がかなり不思議
途中からどんな結末になるのか
少しワクワクしていたが
残りのページ数と物語りの進み具合から
おや
と思い始め、
最後は突然来た。
まるで途中で書くのをやめたような
そんな突然さであった
もっとその先を知りたかったのに
Posted by ブクログ
刹那を映像作品のような情報量で描写されるのに弱い。病室のところは凄まじかった。そういえば空白の叫び読んだ時もそんな感じのことを思ったなーと思い出した。
失ったものに対する救いが少なくてちょっと切ない。
梨絵子は不思議で、でも抱える闇には理解があるな程度だったけど、最後は同情すらした。
サッと流されたけど梨絵子は梨絵子で受けるショックや悲しみも大きかったんだと思うんだよなあ。本人がああいう質だし。
伊苅は善人で、反省も客観視もできるがゆえに、最後に掛け違えられたところがじわじわと重く、気付かれないまま綻びが広がっていったんだろうなと想像する。
人間臭いというか人間模様というか…
Posted by ブクログ
貫井徳郎の本は今まで何冊か読んできたが、この作品はそれらとはテイストが違う作品だった。
家々の壁に稚拙で奇妙な絵を描き続ける男。
常人には理解できない奇人が主人公なのか、と思って読み進めたが...
彼がどういう思いを抱えて壁に絵を描き続けているのか、是非最後まで読んでほしい。
Posted by ブクログ
読んでる途中で感じる小さい違和感を、しっかりと回収する貫井徳郎らしい作品。
登場人物の人生を振り返るように綴られる、それぞれの人生に暗い影を落とすエピソード、そして心の底に溜まっている澱は、自分の中にもあると気付かされる。
全体的に地味で、やり切れないストーリーではあるが読後感は悪くなく、伊苅という寡黙な人物に引き付けられる。
Posted by ブクログ
貫井さんの作品、というよりミステリーを読むのが本当に久しぶりでした。貫井さんの作品は多く読んでいるせいか、常に”ある種の警戒”をしながら読んでいるのですが当作品は比較的、すんなり読めました。(悪く言うと物足りない。。。)
肝心なストーリーなのですが、壁に奇特な絵が描かれている事が密かに注目を浴びていた栃木のある田舎町を訪れたノンフィクションライター・鈴木は、絵の作者・伊苅重吾を訪ね、伊苅という人物及び彼が奇特な絵を描き始めた経緯等について取材を申し込むのだが、大した情報を得る事も出来ず伊苅家を後にする。
伊苅が背負うもの・背負う過去とはいったい。。。