須賀しのぶのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ベルリンの壁が壊れる前の東ドイツ。
日本人留学生の主人公はバッハに心酔し、より純化した音を求めてあえて共産主義の東ドイツを留学先として熱望した。
けれどそこで出会ったのは自分以上に真剣に音楽に向き合い突き詰める仲間たち。
圧倒的な才能に翻弄されて自分を見失ったとき、温かく迎え入れてくれた東の人々、他国からの留学生達。
共産主義の圧政と物資不足。密告者の恐怖。自由を求める人々。
時代の臨場感。
本当に読んで良かった、ものすごい物語を読んだという感想です。
重厚感はもとより繊細な音楽描写、
相当な文章量なのにすいすい読めました。
読書好きな人なら一度は読んでみて欲しい作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読んでいる間はずっと緊張状態で気が休まらないけど、とても引き込まれて、最後の章は夜中に一気読みした。小説なのにドキュメンタリーを読んだような、どごまでが本当の話だろう?と思った。
ポーランドという国について、今まで全く興味を持ったことがなかったので、シベリア孤児が日本に助けられて本国に帰ることができた話など初めて知った。ドイツやソ連などが占領してきた歴史やワルシャワ蜂起など、そういえば世界史の教科書に一行程度で書かれていてかも、くらいの記憶のことを詳しく知ることができた。学生時代に読んでいたら、世界史の授業もただの丸暗記じゃなくて、意味を考えながら勉強できたかもしれない。
同じポーランドに生まれたポーランド人なのにユダヤ人や知識人は、攻め込んできたドイツ兵に突然連行されたり、ユダヤ人だけゲットーという地域に無理やり連れて行かれて、壁を作り、順番に収容所に連れていき、最後は街全体を焼き尽くすとか、人間って何でそんな残酷なことがてぎるんだろうと思う。
個人的にはベルリンに短期留学したときに、ドイツ語学校でポーランド人の子が仲良くしてくれたことを思い出した。日本語って、アルファベットじゃなくてどんな文字を使ってるの?とか興味持ってくれてたこととか。ポーランドと日本の友好関係とか、この本を読むまで全然知らなかったなと思った。この小説内では、ポーランド人にとってドイツとソ連は敵だけど、今の時代のポーランド人はどんな感情なんだろう。
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Posted by ブクログ
もの凄い読書体験だった……最後の一文に震えて、読後もしばらく鳥肌が止まらなかった。
計り知れない膨大な労力を費やしたこの渾身の一冊に、まんまと打ちのめされた。
文庫で1000円は安すぎる。あかん安さ。
敬意を込めてなさすぎる値段設定。
解説まで読み終わってフラフラしながら
最後のおなじみのページ「100字書評」を見て
「…100字に収められるかいっ」と
思わずツッコミを入れてしまった。
日本で生まれ育ち、家系を遡っても日本人しかいない私にとっては
「見えているものだけが世界じゃない」ことを
終始痛感してやまない。
自分が何者であるのか、なんの人種なのか、
祖国とはなんなのか、アイデンティティはどこにあるのか…
日本に育ち、日本のメディアだけを閲覧し、
一つの側面だけを信じて生きていれば
それがまごう事なき常識になり疑うこともしない。
教科書で読んだだけの第二次世界大戦も、
単純明解な2.3行の文章だけではとうてい
拾い切れていない事実がごまんとある。
敗者側の視点を高い解像度を持って想像したことが今までにあっただろうか、単に『ドイツ側vs西欧諸国』と書かれた文面の中にひっくるめられた、あらゆる人種や国籍や個々の正義を想像したことがあるだろうか。
改めて『同志少女よ敵を撃て』を読み返したいし、
『ラーゲリより愛を込めて』『戦場のピアニスト』
も触れたい。
新書『ユダヤ人の歴史』も読みたい。
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「日本もドイツも、持たざる国である。国を富ませようと思えば、力の全てを一極に集中させ、がむしゃらに突っ走らねばならない。そして資源や土地を求めて、外へと手を伸ばすしかない。
それがどこまでなら許されるのか、明確なラインはない。自分の過去はすぐに棚にあげる強国がもうける基準になど意味はないし、状況を分析して見極めるのが外交官の仕事ではあるが、ドイツがポーランドを食い荒らした現状を見るに、無力感に苛まれる」
「気がつけば、慎も飛び出していた。制止の声が聞こえたような気がするが、自分の口から迸る雄叫びにかき消されてしまった。恐怖は感じなかった。この瞬間に死んでもいいという激情だけがあった。全身を燃やすこの炎を、ドイツ兵に叩きつけてやらねば気が済まなかった。自分の中にこれほどの憎悪が存在することを初めて知った」
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シドニー・オペラハウス対岸のベンチにて。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ直前にトルストイの『光あるうち光の中を歩め』を読んでいたので、キリスト教の教えとは、信仰するとは、赦しとは、正しさとは… キリスト教について学びながらも疑いながら触れる時間が続いた。
なによりまず、須賀しのぶさん、ほんとにすごい。
物語の組み立てにしても、知識量にしても。なのに読みやすい。
この本を読んだおかげで、わたしはナチス、キリスト教、ユダヤ、第二次世界大戦について何も知らなかったんだなと気づけたことは大きい。もっと知りたい、知っておかなければと思った。
でももう残り150ページを切ったあたりからそれどころでもなくて……なにをどう言えばいいのか分からない。
せめて最後にアルベルトとイルゼが会えたら良かったのになとか思うけど、それはわたしのエゴでしかないしアルベルトは望んでいないこと。
マティアスとひとときを過ごせただけでも良かったのだろうなあ。
あまりに強くて美しく、冷静で隙のない、器用だけど一周まわって不器用にも思えるアルベルト。
許されない罪は罪としてのしかかり、本人も理解している。自分を救うのは自分というアルベルトの言葉にも納得できる。
でもやっぱり、世間一般のいう幸せをもっと味わってほしかった。罪を重ねる必要のない生活を送ってほしかった。外野からそんな風に思われることは望んでないだろうけど。
マティアスになりたかった、の言葉についてもアルベルトからもっと聞いてみたかった。
マティアスのどんなところに憧れて、羨んで、嫌だったのか。アルベルトの言葉で聞きたかった。
マティアスはこの後どのように生きていくのだろう。
きっと、変わらず信仰と疑心の間で揺れながら、でもその視点があるからこそ立派な司祭でいられるのだろう。マティアスが生きている間はまだ、そうできるのではないだろうか。
時代が過ぎるごとにアルベルトのように自分の責任は自分に還るというような考え方をする人も増え、キリスト教との関わり方も変わっていく人も増えるのだろう。今はイベントのときにだけ教会に行くという人も多いと聞くし……
まだまだキリスト教については理解が及ばない部分が多いなあ。
きっとまた読み返すことになる本。
次読むときにはどう思うのだろう。 -
「夏空白花」につぃて
日本人の多くが熱狂し、感動する全国高校野球選手権大会。
公共放送が試合を中継し、球場の名前である"甲子園"が通称になるほど多くの人に親しまれ、学生スポーツの中では屈指の人気を誇っている。
十代の限られた時期にしか立てない球児の夢の舞台に、こんな歴史があったとは知らなかった。
須賀しのぶさんの「夏空白花」は、戦争によって失われた甲子園の復活に燃えた男の物語だ。
夢の甲子園の陰の一面も描き、ただ気持ちよく読者を泣かせてくれる感動秘話で終わらないところが、実にいい。
まず主人公の新聞記者の神住が、元甲子園球児なのに、「野球は愉快だが、そこまでたいしたものではない」と思っている男なのだ。
戦時中は、軍部の言いなりになって紙の爆弾としての新聞を作り、敗戦後は平気で米軍の美談を取り上げた記事を書いている。
目的も矜持もない彼が、甲子園の復活に挑むのは、アメリカ人と日本人が共に好む野球の大会を成功させて、存続が危ぶまれる会社と居場所がなくなりそうな自分を救うため。
それでも、大会の実現に向けて奔走するうちに、かつての情熱は甦ってくるが、球場は米軍に接収され、ボールすら満足に手に入らない。
野球が新生日本の希望になるというスタンスも、関係者に批判される。
特に安斎という写真部員の「なぜ未熟な少年たちのプレーこそが日本野球だと言うんだ?」や「体を壊すほど必死にプレーする彼らを見て、それを感動という言葉に置き換えるあんたたちが、俺は時々怖くてならない」という指摘は痛烈だ。
これは現代の甲子園をめぐる状況にも、そのまま当てはまるのではないかと思う。
著者は、日本野球をこよなく愛しているが、その弱点から目をそらさない。
日本という国の過去を断罪せず、擁護することもなく、史実をできる限り冷徹に見て、希望を模索する。
終盤に描かれる奇跡の試合、夏空に咲く美しい白い花は、フェアネスを重んじる精神から生まれているのだと思います。
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Posted by ブクログ
私が今所属しているコミュニティに中国から来た留学生くんが居て、短いあいだ雑談できる機会があったので中国の歴史の授業で最重要視されている事件は何かと聞いてみたら南京大虐殺だと答えてくれた。日本の歴史の授業では南京事件、と教わる日本兵が数ヶ月にわたって30万人の中国人を虐殺した事件だった。また、日本で戦争の話はしないようにしている、と言っていて、異国の地で生活する中での苦労と配慮が伺えた。
敗戦国側の歴史は異国の地では語られない。ただその国は失われた兵士や市民の命の重みを忘れることがないように、自国の中でその歴史を語り継ぐのだと思う。私達は真実を知るために、敬意と配慮を持ってそれらに向き合っていかなくてはいけないのだと思った。 -
購入済み
上下を一気に2日で読みました。面白かったです。少女カリエが攫われて身代わりとなり、活躍する話です。
ライトノベル(コバルト文庫)の「流血女神伝」からとのことを読後に知りました。ライトノベルと小説・文芸の差がなにか解らなくなりました。