須賀しのぶのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
どこでこの本を見つけたか忘れてしまいましたが、これはおもしろいと読む前から確信がありました。
そんな期待を裏切らない、むしろ超えていくほどの大作です。
ベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツにピアニストを目指して留学をする主人公シュウジ。
彼のピアニストとしての苦悩と成長を軸に、日本の元号が平成になった日からベルリンの壁が崩壊するまでが描かれています。
世界史の知識がほとんどない私は、この小説を通して当時の東ドイツとその周辺国の状況に驚くことばかりでした。
美しい音楽の描写はもちろん、登場人物の心理、そして最後のミステリー要素まですべて圧巻です。
最後のページはとびきりのサプライズで震えまし -
Posted by ブクログ
ネタバレ直前にトルストイの『光あるうち光の中を歩め』を読んでいたので、キリスト教の教えとは、信仰するとは、赦しとは、正しさとは… キリスト教について学びながらも疑いながら触れる時間が続いた。
なによりまず、須賀しのぶさん、ほんとにすごい。
物語の組み立てにしても、知識量にしても。なのに読みやすい。
この本を読んだおかげで、わたしはナチス、キリスト教、ユダヤ、第二次世界大戦について何も知らなかったんだなと気づけたことは大きい。もっと知りたい、知っておかなければと思った。
でももう残り150ページを切ったあたりからそれどころでもなくて……なにをどう言えばいいのか分からない。
せめて最後にアルベルトとイ -
Posted by ブクログ
久しぶりのなんとも言えない重厚な読後感を感じました。
ブグログでの評価や感想をみて興味を持ちましたが、恥ずかしい話、
世界史が苦手だった私は、
ベルリンの壁についても深く知ることもなく、教科書のわずかなページをテスト勉強のためだけに読んだだけでした。
今回、最初は難しく暗い灰色のような出だしに、あまり読むペースも進まなかったのですが、中盤に入り、平和だったら音楽だけに
打ちこめる青春時代を、大変な
世界情勢に巻き込まれ、誰が真の友達かもお互い疑いながら、
生きることに必死な若者達に、
圧倒されました。
私たちにすれば、昭和が終わり平成が始まるついこないだのような
時期に彼らは、こんなにもがきな -
Posted by ブクログ
ラカトシュやイェンツ、クリスタなど自分の信じるもののために闘い抜く姿に心打たれる。
一方、一生懸命努力するけど他の才能をもつ仲間に比べ、周りを魅了する華がないように思えて苦悩する主人公に、昔の自分を重ねて共感した。
自分の感性を信じて、ちっぽけに見える自分でも周りに惑わされずに積み重ねていけば、いずれ輝く奇跡になるのかなと。
あと、ドイツの歴史について。私は世界史に疎かったのだが、ベルリンの壁が存在する頃のドイツの国民性や生活の様が想像でき、もっと世界史を勉強していきたいと思わされた。作者の、自分の存在していない世界を表現する力に脱帽! -
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Posted by ブクログ
凄い本を読んでしまった!
ベルリンの壁崩壊の頃のドイツ
世界史が苦手だった自分にとっては
ちょっと読むのを躊躇っていたところがある
何も知らないからだ
が、そんな心配は無用だった
当時のドイツ、音楽の世界、その中で
青春を過ごすさまざまな立場の若者たち
すべてが頭の中で映像化されていった
自分が今まさに革命前夜に身をおいていた
日本が昭和から平成に変わる頃
バブル期で何もかもが花やいでいた頃
音楽を極めるために
バッハの生活していた地へ
冷戦の最中、自由の効かない東ドイツへ
留学することになるシュウ
そこは
留学生にとっては危険のない場所ではあるが
出会う友人や周りの人々との関わりの中で -
「夏空白花」につぃて
日本人の多くが熱狂し、感動する全国高校野球選手権大会。
公共放送が試合を中継し、球場の名前である"甲子園"が通称になるほど多くの人に親しまれ、学生スポーツの中では屈指の人気を誇っている。
十代の限られた時期にしか立てない球児の夢の舞台に、こんな歴史があったとは知らなかった。
須賀しのぶさんの「夏空白花」は、戦争によって失われた甲子園の復活に燃えた男の物語だ。
夢の甲子園の陰の一面も描き、ただ気持ちよく読者を泣かせてくれる感動秘話で終わらないところが、実にいい。
まず主人公の新聞記者の神住が、元甲子園球児なのに、「野球は愉快だが、そこまでたいしたものではない」と思っている -
Posted by ブクログ
ネタバレ第二次世界大戦後、ドイツ内ソ連占領地域に建国されたドイツ民主共和国(DDR)。秘密警察である国家保安省(シュタージ)による国民の監視が行われ、言論や表現の自由が制限されていた。多くのDDR国民は自由が保障されたアメリカ・イギリス・フランス戦領域のドイツ連邦共和国(西ドイツ)に憧れ、亡命を試みる者や改革を目指す者もいた。
本作の主人公である日本人音大生・眞山柊史は純粋な音を求めてDDRの音楽大学に留学。自由な感性と技巧で他を圧倒するバイオリン奏者と、正反対に楽譜に忠実に音楽を再現するバイオリン奏者、そして美しい音を奏でるオルガン奏者に出会う。
自由を求めるものはその志を砕かれても立ち上がる。監視 -
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Posted by ブクログ
このひと、“書けないものない系”の書き手だ──朝井リョウ
第18回大藪春彦賞受賞作。第37回 吉川英治文学新人賞 候補。
すごく陳腐な表現ですが、これはヤバい作品に出会った…。
まずそもそも“音楽を描写する”ことのハードルの高さ。それを実現している表現力が凄まじい。目を瞑ればその情景が浮かんでくる。
更に、そもそものベルリンの壁崩壊直前の時代背景を描く風景描写に加え、物語後半から香ってくるミステリーの様相。
そして、450ページを超えるボリュームを感じさせないくらい、物語の奥へ奥へと引き摺り込まれる没入感が凄まじい。
…語れば語るだけ陳腐になる、自分の語彙力の無さに絶望するわ。