荒城に白百合ありて

荒城に白百合ありて

924円 (税込)

4pt

3.9

森名幸子から見て、母の鏡子は完璧な会津婦人だった。江戸で生まれ育った母は教養高く、武芸にも秀でており、幸子の誇りで憧れだった。
薩長軍が城下に迫り、白装束を差し出して幸子に自害を迫った時も、母の仮面が崩れる事はなかった。
しかし、自害の直前に老僕が差し出した一通の手紙が、母の、そして幸子の運命を大きく変えた。
手紙から視線を外し、再び幸子を見た母は、いつもの母とは違うものに変わってしまっていた。その視線を見て、幸子は悟った。
――母は、この美しい人は、いまこの瞬間、はじめて私を「見た」のだ、と。

薩摩藩士の青年・岡元伊織は昌平坂学問所で学ぶ俊才であったが、攘夷に沸く学友のように新たな世への期待を抱ききれずにいた。
そんな中、伊織は安政の大地震の際に燃え盛る江戸の町でひとりさ迷い歩く、美しい少女と出会う。あやかしのような彼女は聞いた。
「このくには、終わるの?」と。伊織は悟った。「彼女は自分と同じこの世に馴染めぬいきものである」と。
それが、伊織の運命を揺るがす青垣鏡子という女との出会いであった。魂から惹かれあう二人だが、幕末という「世界の終わり」は着実に近づいていて――。

この世界で、ともに生きられない。だから、あなたとここで死にたい。
稀代のストーリーテラーが放つ、幕末悲劇、いま開幕。

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荒城に白百合ありて のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    これを読んでいるときちょうど大河ドラマの「篤姫」の再放送を録画してたのを観てたので、時代背景がかぶりよくわかった。
    普通のラブストーリーでも歴史小説でもなかった。
    読み終わって、私がこの時代の会津に生まれてたらどうだったかな?とか考えしまう。
    やはり幕末の激動の荒波に飲み込まれてただろうか?
    おかし

    0
    2024年12月20日

    Posted by ブクログ

    文庫になるのを楽しみに待っていました。発売日に届いて一気読み。
    好みが分かれるテーマ、ストーリーだと感じます。明るいとか楽しいとかいう話ではないですが、私は大好きです。
    何と言えば良いのか…自分の行動を、もう一人の自分が少し離れた所から眺めているような感覚を持った事がある人なら、主人公たちに近い気持

    0
    2022年11月22日

    Posted by ブクログ

    須賀様安定に素晴らしかった。
    須賀様の歴史物は第二次世界大戦絡みの作品がほとんどだったけど、こちらは幕末のお話。
    カタカナだらけの登場人物よりはわかりやすいけど、歴史の知識が自分にあまりになさすぎて難しかった。

    須賀様お得意の、実在する人物と架空の人物が織り交ぜられているところはさすがでした。

    0
    2023年03月09日

    Posted by ブクログ

    須賀しのぶさんの作品はいつも、私のことを呑み込み、苦しめて苦しめて胸を鷲掴みしてくる
    苦しいと分かっているのに何度も読んでしまうのは、きっと、作品に出てくる人物の生き様が、正しく、真っ直ぐで、美しいからだ

    今作も、これ以上ない美しいラストだった
    切なさがまだ私の全身に充満している


    幕末について

    0
    2023年06月15日

    Posted by ブクログ

    薩摩の男と会津の女、激動の幕末にあって結ばれるはずのない男女、薩摩隼人と会津婦人の恋を描いた作品だ。歴史の重み、家の重み、人としての情念、あらゆる柵を振り捨てた時は死。この作品、好みが分かれるなと感じた。

    0
    2022年12月02日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    幕末の動乱について史実を基にしながら、歴史的な背景や当時の人々の思いなどがまざまざと描かれていて面白かった。すごく読み応えのある話だった。

    当時の極度の社会不安や、情報混乱、新しい時代への切迫感で、思慮深い行動が取れなくなった人々により、会津藩の悲劇が起きたと感じた。

    敵対する藩どうしに生まれな

    0
    2025年12月03日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    会津と薩摩とを見たら、それとなく主人公二人の結末を予想できるが……。

    本書は、会津戦争の前夜に、鏡子が自刃しようとする間際に一通の手紙が届いたことから始まる。それを機に過去の話が時系列順に展開される。読者はこの時点で、言うまでもなく手紙の内容をまだ知らない。話が残り10%ほどの終盤になってから初め

    0
    2025年09月06日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    須賀さん、時代劇も書けるのか…。
    須賀さんの作品は『流血女神伝』『帝冠の恋』『革命前夜』の三作読んでおり、これだけでもジャンル幅広いなーって感じでしたが、まさか日本物もいけるとは…。好奇心旺盛で勉強熱心な方なんだろうなぁ。お見それしました。
    内容的には、昨年娘を産んだ私としては、身が引き締まる思いで

    0
    2025年02月25日

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