城山三郎のレビュー一覧
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大東亜戦争が末期を迎える昭和16年ごろのこと。日本は秘密兵器として、日本陸海軍による「特攻」を実施する。神風特攻隊の二人の指揮官、関行男大尉と中津留達雄大尉は、海軍兵学校70期の同期生だった。同い年で一人っ子同士、おまけに妻帯者と、境遇もよく似た二人は、奇しくも特攻隊の中でも同じ運命をたどることになる。
特攻隊の兵士たちはほとんどが、予科練あがりの二十歳前後の青年兵。本来なら日本の未来を背負うべき年齢の青年兵たちは、自分の運命を知り悩んだという。片道分の燃料と爆弾をつんだだけのゼロ戦で一度飛び立てば、もう二度と生きて帰れないのは誰もがわかっていることだ。戦争状況が悪くなる中、果たして自分たち -
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・職人の世界は、効率とは対極のところにある。一見無駄と思えるところにまでこだわるのが職人だ。だが、皮肉なことにその無駄が日本の技術力を支えているのである。
・もちろんコスト意識は大切だ。だが、すべて無駄を排除しようとすると、企業はやせ細ってしまう。
・無駄には、排除していい無駄と必要な無駄がある。効率主義、合理主義一辺倒の経営では、必要な無駄まで切り落としてしまいかねない。実は無駄か否かの判断は非常に難しい。
・あらかじめつくっておいた書類に沿って説明する人を評価していなかった。自分で考え、頭の中で整理して理解していない話などするな、という考えだ。
・経済人としての最大の条件は経営手腕よりも人 -
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数十年前の商社マンの悲哀なストーリー。
高度経済成長が終わり、経済が崩壊し始めた時代が背景。当時も「前途は暗く、混乱はひろがり、生きがいは見つからない」時代であったそうだ。日本はバブルを挟み歴史を繰り返しているのか。
商社が日本経済の牽引役であると世間で見做されているのは当時も現在も同様であるが、現在との違いは「商社が諸悪の根源のように非難され、商社マンが悪者扱いされていた」時代であったこと。その時代に、大日本株式会社の尖兵として戦ってきた男達が役者として登場している。
会社のモットーは、ワタシハ、アリニナレル。ワタシハ、トンボニナレル。シカモ、ワタシハ人間デアル。
現代を生きる商社マ -
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渋沢栄一の生涯を描いた歴史小説。上巻は武州血洗島での誕生から、幕末、明治新政府での若き官吏時代に入るまで。
攘夷強硬派→一橋慶喜家臣→フランス留学→明治新政府での大隈からの協力要請
一介の農民が一橋慶喜に取り立てられる件は興味深い。慶喜の周りに開明的な側近、平岡円四郎や原市之進やがいたことはあまり知られていない。彼らが早くに暗殺されていなければ(しかも内ゲバ)、世の中も変わっていたかもしれない。
本書では、渋沢栄一だけのことでなく、幕末維新の全体の動きもよく捉えられていて頭の整理にもなる。
渋沢栄一のような偉人の生い立ちはどのようなものだったのか。
若い時から「建白魔」であり、自分の意見を -
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城山三郎と、氏の大学の恩師である山田教授との2人ゼミナールの話を中心に対談形式で話が進んでいく。
この本は城山氏のいつもの経済小説とは違い、人間城山三郎と触れられる興味深い一冊。
学生時代の恩師と、その恩師が亡くなるまで、2人で経済やそれに関連する倫理に関してそれぞれの主張を熱くぶつけ合う。読んでいて非常に羨ましい関係だなと感じた。やはり偉大な師というのは、師であるご本人自体が、非常に人間味溢れていて、謙虚でいて気さく。自分より若くてもその人のことを尊敬し、何かを学び取ろうとされる。だからこちらも師から何かを得ようと必死にぶつかっていく。私にもお会いして色々ご指導頂ける人生の先輩がいらっしゃる