あらすじ
80年の歴史に輝く日本最大の紡績会社華王紡に君臨する社長藤堂。会社へのひたむきな情熱によって華王紡の王国を再建し、絶対の権力を誇った彼が、なぜ若い腹心の実力者にその地位を奪われたのか? 帝王学的な経営思想をもつワンマン社長と、会社を“運命共同体”とみなす新しいタイプの経営者――企業に生きる人間の非情な闘いと、経済のメカニズムを浮き彫りにした意欲作。
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Posted by ブクログ
面白い!!
「官僚たちの夏」でも感じたことですが、登場人物の躍動感、リアリティを描くのが抜群に上手いです。
単純な善悪二元論、勧善懲悪的世界観ではなく、「それぞれの正義」がぶつかり合い、ハレーションを起こすことで物語がいきいきと進んでいきます。
とても読み応えがあり、経済小説の傑作だと思います。
余談ですが、読んでいてひょっとしたらこの矢吹は、沈まぬ太陽の国見と同じモデルでは?と思い、調べてみたらやっぱりそうでした。違う物語がこういう形でつながるのも面白いですね。
Posted by ブクログ
大企業の社長の苦悩、孤独、焦慮、葛藤。
そして、王者の風格、余裕。
派閥抗争。
若手の追い上げ。
目まぐるしくかわる形勢。
スリリングかつ、アグレッシブ。
本格的経済小説。
Posted by ブクログ
例えが適切ではないかもしれないが、スターリンを彷彿とさせる恐怖政治により地位を築いた藤堂と、運命共同体論をかざし現代的で合理的な経営者である矢吹。時代の流れによって理想的な経営者像も変化すると思うが、何かそれを感じさせるようなストーリーラインであった。最終的な敗者である藤堂自身も非常に個性的で魅力的な人柄として描かれており、痛快な逆転劇による爽快感というよりは、微かな同情が読後感として残る。
Posted by ブクログ
経営に近い立場に自分にとって反面教師となり示唆に富んだ一冊。常に広義のステークホルダー(従業員、サプライヤー、ライバル企業、、、なども含む)とWinWinの関係を築き上げる事こそが経営に求められている事かと。一人勝ちの経営ではいずれ破綻をきたすという象徴的な事例ですね。
Posted by ブクログ
ビジネスマンなら必ず直面するテーマ「会社は誰のモノなのか?」
1960年代の鐘紡(カネボウ)が題材とのこと。藤堂と矢吹という2タイプの経営者を描いているが、どちらが主役、善玉ということではなく、その対照から考えてみたい。
作中では、矢吹の運命共同体論が藤堂を退けることになったが、カネボウがその後、粉飾決算の泥沼に手を染めていくことを考えるときに、運命共同体が理想的な企業経営であると無邪気に考えるわけにはいかないだろう。
ではやはり企業は株主のものか?
マイクロソフトやGAFAのような巨大プラットフォーマーに経済が寡占化され、オーナーの資産が膨れ上がり、租税回避や離婚騒ぎを見るときに、企業は株主のモノであると無邪気に主張できる人はどのくらいいるのだろうか。
「企業は誰のモノなのか?」資本主義で生きるうえで永遠のテーマである。
Posted by ブクログ
経済小説の開拓者、城山三郎。
初めて一冊手にとって読んてみたんだが、
非常に刺激的で面白かった。
家族経営を標榜し、
実際に功績を残し、名経営者だった社長が、
晩年、独裁的なワンマン経営に走り、
落ちぶれていく模様と、
その社長の優秀な腹心でありながら、
最終的には社長を追い落とし、
自らが社長になる男の物語。
この社長を追い落とす中堅社員の仕事っぷりがすごい。仕事のため、ホテル暮らしをする社長に仕えるため、わざわざ同じホテルに暮らし、
昼夜問わず呼ばれたらすぐに駆けつける体制をとる。土日の休みもなく仕事に捧げるその姿は、
一世代前では、サラリーマンの鏡だったんだろう。
今でもこんな人たちいるんだろうか。
決して真似したくはない
会社内のドロドロした政治の世界は今も昔も一緒なんだろう。
サラリーマン稼業を長年やってるとようやく見えてくる世界だけど、
こういう本があるとリアリティをもって想像できてしまう。
個人的にはもっと若いときに読んでおくと人生いろいろ考えたかもな。
毒されると言った方がよいかもだが。
社長を追い落とす腹心社員は、良いことも言っている。
サラリ ーマンの勝負どきは 、上役から質問を出されたとき 、いつでも明確な答えが出せるよう 、常日頃 、勉強しておくこと 。その上で 、 「おまえ 、やれ 」といわれたら 、捨て身になってやり抜くことだと思う 。
確かにこれは出世の近道なのは間違いない。
後で知ったんだが、
ストーリーは今は亡きとなった、
カネボウをモデルにしたストーリーらしい。
この会社も数十年後には、時代の流れにより、
粉飾会計とともに整理解散することになるのは感慨深い。
Posted by ブクログ
完全なる追い落とし・・・
ワンマン社長が転落するまでを描いているが、
よりによって、という相手にしてやられる。
それにしても、ワンマン社長のキャラクターが、
頁を繰るにつれて、狭窄的になってゆくのは見事。
Posted by ブクログ
戦後の紡績会社を舞台に、帝王学な経営思想を持つワンマン社長と、会社を運命共同体とみなす次代を担うタイプの部下が織りなす人間の非常な戦いを描いた作品。
時代に応じて求められる経営者は変化する事を巧みに表現している。今の時代に必要な経営者が社長をしている会社は、日本にいくつあるのだろうか。。
Posted by ブクログ
お客様に城山三郎さんを進められ購入。日本の有名だった某紡績会社の事を念頭に置いて書かれたものだろう。トップのあるべき姿、会社が崩壊していく状況やその時々の時代に応じて組織運営をいく事の大切さがよく分かる。
Posted by ブクログ
カネボウをモデルにしている話です。大社長の帝王がどうやって帝王の座から落ちるのか、勘違いしていくのか、そして日本再生機構いりしていまう家族的経営が描かれています。家族的経営は現在もありますが、裸の王様ですよ・・・・社長(苦笑)。
Posted by ブクログ
先輩から勧められて読んだ。孤高のワンマン経営を目指す藤堂と、多くの協力者と運命共同体経営を目指す矢吹。確かに藤堂は経営者として優秀だが、変革を迫られる事態に弱く感じた。急速な変化が起きうる状況では、個の能力ではいくら高くとも対応できない。多くの優秀な専門性をうまくまとめ上げる力が必要であることがよく分かった。
Posted by ブクログ
大社長として。主役として。その拘りが己自身を崩壊させる。ちょっと可哀想な部分もあるかなあ。倍返しとは似て非なるもの⁈
今の時代において、運命共同体とは⁇といぅ難題について考えてみても面白いかも…
Posted by ブクログ
2016/2/10
ある大手紡績企業の、独裁社長とキレ者若手社員を中心とした、社長・役員の座をめぐるどろどろした戦いの物語。
これほどまでに裏で手を回すものなのかと驚いた。
「サラリーマンの勝負時は、上役から質問された時、いつでも明確な答えが出せるよう常日頃勉強しておくこと」