あらすじ
直木賞受賞の表題作は、株主総会の席上やその裏面で、命がけで暗躍する、財界の影武者ともいえる総会屋の老ボスを描く評判作。ほかに交通事故の時だけタクシー会社の重役の身代りで見舞いや弔問にゆく五十男の悲しみを描いた「事故専務」をはじめ、資本主義社会のからくり、陰謀などを、入念な考証に基づき、迫力あるスピード感と構成力で描く本格的な社会小説7編を収める。
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企業の話が7作入った短編集。
短く切るリズミカルな文章に、めまぐるしく変わる展開。そして主語をくるくる変えながらキャラクターの内面に迫っていく手法。
どれを取っても一級品だった。
ある種の切なさや悲しさが全体的に漂っている『総会屋錦城』よりも、バリバリ働く商社マンの光と陰を描く『輸出』やアメリカの関税規制に挑む日本人を描く『メイド・イン・ジャパン』の方が個人的には好きだな。
戦争の傷がまだ残る中で、様々な日本人が公私ひっくるめてめちゃめちゃに働き、今の日本がある。
いわゆる「古き良き」日本が知れていいですね。
城山三郎の中では一番好きな作品になった!次は随筆でも読んでみようかな。
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城山三郎は”男子の本懐”のような重厚な歴史小説も書けば、本書のような大衆の生活を描く社会小説もありとてもバラエティに富んでいる。事故専務などはこんな職業もあるのかと考えてしまう人生の悲哀さを物語っている。昭和末期の高度経済成長期の日本の様子もよく分かった。自主規制、MADE IN Japan、負けるとは一発屋に成り下がること、不意な死、死への恐怖がとりわけよく書かれていると感じた。
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経済小説の第一人者である城山三郎氏の短編集。直木賞受賞作『総会屋錦城』を収録。
高度経済成長期前夜の混沌、纏わりつく人々の熱気、時流に乗れない者の悲哀、いまとなっては懐古的であるものの泥臭い昭和のビジネスマンの姿がここにある。
最も私が好きな作品は『輸出』だ。売上至上主義の本社側と、現地と本社に挟まれた駐在所職員の悲劇と、思惑渦巻く人々の儚くも滑稽なドラマが印象的であった。
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短編小説7編。どれも主人公や状況に感情移入でき、スラスラ読める。オススメは「総会屋錦城」と「メイド・イン・ジャパン」。当時の株主総会や日本vs米国の輸出入状況が体験できる。経済小説の先駆けとして一度読んでいただきたい。
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城山三郎の短編集です。7編が収録されています。
城山三郎が経済小説という分野を開拓した人と評されることが分かりました。ここで扱われているのは、まさしく経済関係の話が収録されています。でも、単純に経済の話だけではなく、その人間模様がまたおもしろかったです。よく調べてこれだけのものを書いたなぁと思います。
この中では「総会屋錦城」が一番面白かった。
でもやっぱり一番は「落日燃ゆ」かなぁ。
Posted by ブクログ
引き出しを増やしたい人にオススメ☆
経済小説の先駆者である城山三郎さんの本を読んでみたくて、 まずは短篇集&直木賞受賞作品でもあるこの本を選んでみました。
タイトルになっている総会屋錦城は昭和33年に発行されたものですが、 心にズーンって響いてきちゃいました。
最近読んでいる小説とかみたいにスラスラ読めたわけじゃないど、自分の知らない世界の話ばかりで面白かった!
自分の中の引き出しを増やしてくれそうな一冊でした。
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経済小説というジャンルを初めて読んだ。非常に重々しく、読むのが疲れる。
しかし、読み終わったときの達成感にも似た満足感は非常に心地よい。
短編で、それぞれに関連がないので気に入らない話は読み飛ばしても良いと思う。
城山三郎は二冊目だが、読んだことないテーマばかりで新鮮だ。
Posted by ブクログ
浦野所有。
『硫黄島に死す』『官僚たちの夏』など、最近、何かと話題の多い城山三郎。
新潮文庫の『総会屋錦城』は、直木賞を受賞した表題作をはじめ7つの短編を収めています。読む前は「固そうだな」という先入観もありましたが、これがなかなか読みやすかったです。立原正秋のようなゴツゴツした感じはなかったし、テンポよく話が進んでいきました。
表題作は、総会屋として幅をきかせる老人の晩年を描いた、鬼気迫る作品。それ以外は、大きな組織のなかで、それぞれの思惑を胸に抱く人々の物語です。
タクシー会社のヒラ社員なのに、事故を起こしたときにだけ「専務」役を務め、遺族を弔問する50代男が主人公の「事故専務」なんか、短いし入門編としてオススメ。
個人的には難破船のサルベージ会社が舞台の「浮上」が一番おもしろかったです。冒険小説風の展開に目が離せません。
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戦中、戦後直後の日本企業の社会小説7編。
総会屋、貿易業、サルベージ会社、描かれる資本主義の実態、経済機構のからくり、組織と人間。
昨今のコンプライアンス云々のブラック企業とは比べ物にならない。命の重さは紙よりも軽い。
心に戦争の被害を残す戦中派世代の特異な精神構造がありありと感じられる。
当時の息吹を感じられる一冊でした。
昭和2年生まれの著者、城山三郎氏は海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。
氏の筆力があってもちろんのことだが、経験を伴っての描写を滲み出るものがあるな。
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著者は日本の経済小説の開拓者
戦争直後の方なので小説の内容も戦後
各登場人物たちも戦争の傷跡を抱えている
総会屋、新聞社の飛行士、相続問題を抱える2代目社長、製造業の社長などの短編小説
Posted by ブクログ
7編からなる短編小説で題目の作品が直木賞受賞作という事で読んでみた。
昭和20年から30年頃が時代背景の作品群だと思う。
その時代に必死に生きている人々が描かれている。
今の時代に生きている自分としては頭ではそんな時代になんだと理解は出来るが、感覚としては違和感を感じる所もあった。
主人公の側からの視点で話が進んでいくが、相手の立場になって考えてみたり、別の視点で見てみると何方が正しいのか判断が出来ない点もある。
混沌とした時代だったんだとも思う。
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終戦から10年程たった時点での作品集。この作品の後、世界からエコノミックアニマルと揶揄される日本の起点が垣間見れた。経済に重きを置いたのは政治であるが、社会の中には戦争に向かった政治と同じ精神がこの時代にはまだ残っていたことが分かる。ただ、現代よりも自由に大きなことも出来たのかな?
Posted by ブクログ
7つの小品。時代背景が、今とは大幅に異なるので、隔世感を持ったまま、同一化は出来ない。働く一人一人にそれぞれの生活、人生がある中で、会社という組織には企業経営がある。それは必ずしも、各人の個別理由を考慮にいれてはくれる訳ではない。葛藤と不条理が淡々と綴られてゆく。
Posted by ブクログ
戦後間も無くの混乱期に人々がどのように生きたかの雰囲気がつかめる。
今では考えられないような、その時代特有の葛藤もあれば、現代にも通じる普遍的なものもある。
Posted by ブクログ
単に経済小説といえない。登場人物の怒り、微妙な気持ちの変化がおもしろいし、文章が読み易い。「事故専務」「プロペラ機・着陸待て」が良かった。13.3.3