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神風特別攻撃隊第一号に選ばれ、レイテ沖に散った関行男大尉。敗戦を知らされないまま、玉音放送後に「最後」の特攻隊員として沖縄へ飛び立った中津留達雄大尉。すでに結婚をして家庭の幸せもつかんでいた青年指揮官たちは、その時をいかにして迎えたのか。海軍兵学校の同期生であった二人の人生を対比させながら、戦争と人間を描いた哀切のドキュメントノベル。城山文学の集大成。
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Posted by ブクログ
命の重さはいつでも同じはずなのに、生きる時代、為政者によって、こうも変わる。 せっかく終戦を迎えても、精神の安定を得るため、弱い立場の者をイジメ、翻弄する。 戦後は戦中の評価が180度変わり、讃えた者を、これでもかと罵倒する。 ヒトって、残酷。
指揮官たちの特攻 城山三郎 8月は毎年、戦争に関する本を読むことにしている。今年は、コロナ対応が後手後手に回っていることなどの政治の失敗が先の戦争の体制と酷似している点などが叫ばれ、「やはり日本は戦争をしてはいけない」というムードが流れているように感じる。神風特攻隊などというものは、作戦としては最...続きを読む低の代物であり、パニックに陥った当時の政府にとっての苦し紛れのものであったことが想定される。特に、本書では特攻によって死にゆく若者たちの悲哀を描いている。無論、神風特攻隊によって死にゆく道を取った人々は、しっかりと弔われるべきであり、なお本書を読むと彼ら自身が作戦に不服としながらこの世を去っていったことがわかる。航空のプロたる彼らは、飛行機乗りとして育成されながら、最終的には片道切符の特攻作戦を実行する理不尽さ、悲しみに思いを馳せる。特攻は飛行機といい、プロのパイロットを一瞬にして砂塵にしてしまう極めて非効率な作戦であり、そのコストとリターンを考えれば竹やり作戦よりもタチが悪い。しかし、思うにこれらも平常時だからわかることであり、今回のコロナ禍における緊急時の心理状況をして、現代の私たちもこのような手段を取ってしまう危うさについて認知すべきであろう。パニックに陥ったときにこそ、絶対にとってはならない手段を知るということが重要であり、それこそが歴史を学ぶ意義である。 本書では特攻の最初の犠牲となった関大尉と最後の特攻隊である中津留大尉という同期にスポットライトを当てて、城山氏の体験も交えながら特攻や当時の軍部について述懐するものである。特に中津留大尉の死はつらいものがある。戦争が終わっているにもかかわらず、指揮官の宇垣纏の死に場所探しに突き合わされたという印象がぬぐえない。しかも、これは城山氏の予測ではあるが、戦争終了の米軍のパーティーに突っ込むことを命じられたうえで、あえて米軍のパーティーを避けて近隣の水田に突っ込むという最後は、真珠湾に始まる日本の国際的な戦争の了解事項の無視ということをこれ以上起こしてはならないとする中津留大尉の最後の覚悟であった。城山氏は天皇に戦争責任が及ばぬよう最後に罪状を被った広田首相に重ね合わせ、その矜持を虚しく称賛する。
城山氏の綿密な調査と自身の経験など、あらゆることをふるいにかけた渾身の記録。読むだけで哀しさが痛切に身にしみる。歴史の教科書にもこういった人々の事実を載せるべきではないだろうか。
軍神と呼ばれ讃えられた特攻第一号の関大尉と、終戦日の玉音放送以降に長官に伴い飛び立った最後の特攻中津留大尉を中心に、彼らの性格や人とのかかわり方・そして短く儚い生涯を鮮明に書き記している。また残された妻や両親の深い悲しみと苦しみをも取材をもとに書き表していて、読んでいて胸が詰まるほど苦しくなった。 ...続きを読む変に脚色をしていないからこそ、また実際に当時海軍に所属していた経験のある筆者だからこそ当時のひりついた空気感に近いものを文章越しに感じることができたと思う。 なぜこのような悲しいことが起きなければならなかったのかと何度も繰り返し考えてしまう。 一人親かつ妻子もいた、本来なら選出対象にはならないはずの若き指揮官が唐突に特攻隊に選ばれたのはなぜだったのか、そして終戦の締結を伝えず若い部下たちを引き連れ敵地へ特攻し果てることを望んだ宇垣長官は、また終戦を知らずに特攻へ赴いた若き隊員たちはどんな心情で当時生きていたのだろうかとぐるぐると考えては怒りか悲しみかやるせなさか、はっきりと言い表せない感情がとどまることを知らない。
終戦記念日が近いこともあり、手に取った一冊。 神風特攻隊の第一号に選ばれ、レイテ沖に散った関行男大尉。最後の特攻隊員として敗戦を知らされないまま玉音放送後に沖縄へ飛び立った中津留達雄大尉。二人の人生を対比させながら、戦争と人間を描いたドキュメンタリー。 昔、鹿児島へ旅行した時、まさに特攻の地であ...続きを読むる知覧を訪れたことを思い出した。 片道分の燃料しか積まずに、その分爆弾を積んで自らもろとも敵艦隊へ突っ込んでいく。まだ10代の青年が殆どで、その心境とは如何なるものだったのだろう。 その知覧には所狭しと父母や妻あてに書かれた手紙が展示されていた。とても10代とは思えないほどね達筆で…すみからすみまで読み返した記憶が蘇った。もう一度、いつの日か知覧という地へ足を運ぼうと思った。 ウクライナの紛争しかり、今、少なくとも平和な日本の世の中に感謝しなければならない。
大戦末期のなりふり構わない特攻作戦の惨さを改めて教えてくれる城山氏晩年の作品。「回天」や「桜花」はまだしも、海に潜った人の手による「伏龍」や水上機特攻に至っては何をか言わんやである。自身の入隊体験をまじえながら描かれる指揮官2人の過酷な運命。彼ら所縁の地を目で確かめたり、遺族を探り出して取材敢行した...続きを読むり…戦争の本質を後世に伝えたいとする氏の使命感や熱意がとても強く伝わってきた。ちなみにここで語られるエピソードの数々は「永遠の0」でも引用されている。
海軍兵学校の同期で、最初と最後の特攻隊員となった関行男大尉と中津留達雄大尉。「永遠の0」の宮部さんは中津留大尉がモデルになってるのかと、読み終えて思いました。本当に特攻作戦に関する文献は何度読んでも心が痛むし、憤りを覚える。親の気持ちも辛い。
ご存知、ビジネス小説作家城山三郎氏による、渾身のノンフィクションである。城山氏自身が戦中海軍に所属していたようだが、若年だったため身分は訓練兵であり、出征は免れた。 著者の無念さが全編を通してにじみ出ている。著者自身の、特攻隊員たちへの最大限の弔いとして本書が書かれたに違いない。というのは、巻末の参...続きを読む考資料が何十冊というすごいリストなのである。何としてでも正確な記録を残そうという著者の執念というか、真摯さが感じられる。 表紙にある写真は、一人目と最後の特攻隊である。最初の関氏は、「僕ほどの技術を持ったパイロットに攻撃をさせずに特攻をさせるとは、バカげている」と言いながらも、命じられて散った。最後に特攻をした人は、何と終戦を知らず飛び込んだのであった。これら23歳の若者たちはともに家庭を持ったばかりで、何とも惜しい。また信じられないのが、戦後その母親たちが後ろ指をさされながら暮らさざるを得なかったということだ。特攻専用機の桜花や、人間魚雷の回天の記述には胸が痛んだ。 若者だった著者自身の回想も入っており、ちょっと読みにくい個所もあるが、極力分かりやすく書く努力が見受けられる。著者の使命感を感じさせる本である。
特攻一号士官の関大尉と、宇垣中将と最後の特攻をした中津留大尉を核とした特攻の物語。数々の醜悪な特攻兵器と司令部の指揮。戦争を賛美する者に呪いあれ。
23歳で特攻で散った関大尉と中津留大尉を中心としたドキュメント.城山三郎の渾身の一冊.経済小説のイメージが強いが自身の経験も踏まえた戦争関係の著書も多い.改めて強く戦争の不毛さをしる.
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