エマニュエル・トッドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現代におけるドイツの擡頭(他の欧州諸国に対する経済的・政治的支配による「ドイツ帝国」化。ヨーロッパの危機)を軸に、EU問題(ユーロ問題)、フランス批判、ロシアの「健全さ」(女性の活躍率など)、アメリカ帝国の崩壊…等も描く。
巻頭の「ドイツ帝国」の勢力図を見れば、まさにヨーロッパの現状が一目瞭然である。
本書を読み、とりわけ、ドイツ、フランス、ロシアに対するイメージが大きく変わった。
国家の基本的な性格は、歴史に学ぶことでよく知ることができると再認識した。
ただ、「なぜそう言えるのか」というところの根拠、論理の説明が不十分なところが随所に見られる。
また、翻訳が基本的に読みにくいのが大変残念。
もう少し、日本語として分かりやすくなるよう意を用いてほしかった。 -
Posted by ブクログ
本書を駆け足で読み、エマニュエル・トッド来日講演を聴きに行った。サブタイトルが原題では「宗教的危機の社会学」であり、文庫化に際してこちらがメインタイトルとなったことから分かるように、トッドはシャルリ・エブド事件やそれに続くイスラム系組織によるテロを主題にしているのではない。現在のフランスが置かれた状況から、普遍的な公式を導き出そうとしている。その答えが「宗教の危機がイデオロギーの危機に転移する」ということだという。
19世紀にパリ盆地においてカトリックのおよそ半分が消滅するという宗教的危機があった時には、フランス革命という人類史に残るイデオロギーの大転換があった。
20世紀初頭には北部ヨーロッパにおいてプロテスタンティズムが危機に陥ると、ドイツやオランダを中心にナショナリズム、ファシズムが勃興した。
そして今、20世紀後半から21世紀にかけてヨーロッパの多くの地域で、カトリックもプロテスタントもその生き残りすら消えてゆこうとしている。この宗教的危機に呼応するかのように、共産主義の崩壊が起きている。
この仮説を、トッドは丁寧な調査と膨大な資料によって裏付けている。
シャルリ事件後のフランスはイスラムに対するヒステリックな反応が目立つのだが、トッドはそれに異を唱える。
フランスにおけるイスラム教徒の割合はわずか5パーセントに過ぎないのにもかかわらず、フランス国民の多くが異常なオブセッションを〜無意識のうちに〜感じている事が問題なのだという。
また社会の不安要因は経済(格差の拡大や貧困)だけではなく、宗教の空白という要素も大きいといい、そのふたつが重なると、特に危険が増すという。
高い失業率が続き、宗教も消滅しつつあるフランス社会は非常に不安定であり、まさに今、大きなイデオロギーの転換が起きる可能性があるということだろう。
フランスをはじめ欧州の今後を注視したい。 -
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グローバル化とよく叫ばれる中でグローバル化を分かりやすく批判的のとらえた一冊。
読み進める前には国境が取り払われ、規制緩和が進む現代において、保護主義的な政策の重要性を説くのは一見ナンセンスに感じた。でも違った。決して保護主義政策をとって自国を鎖国状態にするということを主張しているのではなく、グローバル化の負の影響にも目を向ける必要性を訴えているように僕は感じた。なぜグローバル化が発生したのか?どうしてこれほど現代はグローバル化を謳うのか?グローバル化の正・負それぞれの影響は何か?こういった点を理解し、グローバル化の本質にせまる理解をしておくことが現代経済を見つめるためには必要だと感じた。
では、そうすればこれらをひもとけるのか?まずは歴史(第一次世界大戦前までの第一次グローバル化→世界恐慌→現代の第二次グローバル化→世界不況)をたどることが重要であると気づかされた。
内容に関しては、グローバル化が格差拡大、隣国同士のつぶしあい、エリートの劣化、統治能力の低下などデータなどを用いて負の面が分かりやすく指摘されている。 -
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自由貿易で世界経済が復活するということに対して警告を発する。世界の経済成長率が、新自由主義が勃興する前後で約3%から1.5%へと落ちている事実など、必ずしも寄与していないという。日本では、小泉政権、そして安部政権でも、これを称賛する動きがあったのも事実。企業が儲かれば、法人税も沢山入り、国も潤うかもしれない。しかし、利益の代償として働く者の給料が減ってしまっては、企業栄えて、国滅ぶにならないだろうか。一部の富裕層のために、それはあるというのは、アメリカ、西欧を見て納得してしまう。自由主義という言葉から連想するのは、解放、個人かもしれないけど、成熟した個人ばかりの社会とは限らない。むしろ、大多数は弱者のはず。平等がすべてではないですが、せめて、脱落したものが再びレールに乗れる、そんな社会なら救いがあると思うのだけど。
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Posted by ブクログ
フランスはEUとNATOの一員でありながら、イギリスアメリカドイツとは相容れない歴史問題があるため、親中親露寄りになるのだろう。
外婚制兄弟家族のバルト三国の一員であるラトビアはボリシェヴィキズムに支持して、共産党の政治警察の創設にラトビア人活動家が積極的に関与した。ソ連時代に悲惨な目にあっているように見えたバルト三国がロシア革命に積極的に関わって、政治警察の一員だったとは驚いた。
他書でもロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナ系ユダヤ人のネオコン、ビクトリア・ヌーランドのせいだと記されていた。ユダヤ系ネオコンやシオニストに所業によって、再びユダヤ人ヘイトが起きるかもしれない。
ウクライナとは、西部のユニアト信徒のウクライナ人(ウクライナ東方カトリック教会)、中部にギリシャ正教のウクライナ人、東部にロシア系住民という三つの住民集団を抱えている。
他書でウクライナはロシアとの戦争後、ナショナリズムが暴走して国内で民族虐殺が起こらないか危惧されていたが、ウクライナの民族構成で納得した。本書では、ポーランドがウクライナ西部を併合に警鐘を鳴らしていた。
自立防衛のために日本の核保有をすすめていたが、これからはドローンの時代だと思う。 -
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ネタバレ世界の未来 ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本
【1】 『世界の未来』 エマニュエル・トッド
●私たちはどこに行くのか
はじめに「核家族」と「民主主義」があった/英米で再登場し、欧州大陸で消える民主主義/民主主義の土台を崩す高等教育/家族の形と民主主義の形/民主主義は普遍的ではない/「場所の記憶」という視点/大国であることをあきらめた日本/子供を増やしたければ、もっとルーズに/中国が直面する人口動態の危機/私と日本との関係
【2】 『民主主義の希望』 ピエール・ロザンヴァロン
●ポピュリズムと21世紀の民主主義
●政治に思いを届けるには
●投票日以外も主権者であれ
【3】 『資本主義の限界』 ヴォルフガング・シュトレーク
●グローバリゼーションと国際国家システムの危機
●資本主義社会の敗者に目を向けよ
【4】 『分断の克服』 ジェームズ・ホリフィールド
●移民政策に失敗した国は、21世紀の負け組になる
民主主義と帝国主義、核家族と大家族、ポピュリズム、資本主義、格差。
こういったキーワードに関して4名の社会学者が論じています。
大半のページがエマニュエル・トッド氏へのインタビューです。この人、ユニークな視点と歯に衣着せぬ物言いで人気があるのがわかります。
他の方々は学者っぽい視点で、解決策が今一つ腑に落ちないところがありますが、現在世界が直面している問題を知る上では役に立ちました。
日本の新聞も、本誌でこういった論客の意見を掲載して欲しいものです。
まあ、人気は出ないでしょうが・・・
竹蔵 -
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昨今の国際情勢を見るにつけ、落ち込む事の多さにやるせ無い思い。そんな中で、本書のタイトルと参加者名から、明るい展望は示されていないであろう事は分かっていながらも、今起こっている事、今後起こるであろう事を整理出来る事を期待して読んだ。
ほぼ予想通りの展開で、"そうだよなぁ、やっぱり"、との思いが強く残った読後。
以下、各氏の発言で明確に言語化され印象に残った点。
・中国やインド、ブラジル、南アフリカ、イランなど、世界の国々は明らかに西洋の勝利よりロシアの勝利を望んでいます。地球はもう西洋の傲慢には我慢ならないのだと思います。(p.32)
・米国との同盟関係に裏付けられていた安全の感覚は、危険な幻想になるでしょう。(p.37)
・私が日本の長い歴史を学んで思うのは、その伝統は中立性にあるということです。同盟によって戦争に巻き込まれることではありません。(p.45)
・「狂気」「正気」という(略)指標に照らせば、今の世界では、権威主義国の方が「正気」を保っている(三牧氏p.61)
・(トランプのゼレンスキーへのあしらいについて)人に屈辱感を与えることを楽しむという背徳的な人格が表れていると感じる(p.66)
・「頼りにならない、極めて危うい本性を持つアメリカ」に国の生存を委ね続けて良いのか、という重要な問題意識(三牧氏p.76)
・違った意見や考え方を持つ人を敵とか裏切り者とみなす。人々を統合するより分断するナショナリズム(大野氏p.134)
・もし米国が台湾を巡って、日本を中国と対立させるように仕向けたとしても、最後は日本を放り出して、倒れるままにするだろう(p.174)
・目指すべき中間の道とは、一極集中でも、個人主義でもない「多元主義」です(タン氏p.199)
・(AIの時代、人間に残されたこと、若い学生たちに教えるべきは)「好奇心」「協力」そして「共助の精神」です(タン氏p.213)
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・エマニュエル・トッド、オードリー・タン、モニカ・トフトら複数の論者が、2030年に向けた国際秩序と日本の進路を多角的に論じる構成となっている。
・出発点は「西洋の敗北」が現実となった今、世界はどこへ向かうのかという問いである。
・トッドはアメリカをニヒリズムに陥ったプロテスタンティズムの危機として位置づけ、対米同盟への過度な依存に警鐘を鳴らす。
・その上でトッドは、平和主義的中立ではなく武装した上での非同盟という選択肢を示し、日本の核武装も一つの案として提起する。
・ウクライナ戦争やガザ侵攻、AI技術の台頭を背景に、戦争への欲望とテクノロジーの暴走を人類共通の課題として扱う。
・オードリー・タンはデジタル民主主義の経験を通じ、テクノロジーと社会の意思決定の関係を論じる。
・他の論者は地域紛争や安全保障、移民・教育・コミュニティ形成といった先進国共通の課題にも言及し、単一の結論よりも多面的な視点の提示に重きを置いている。 -
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ウクライナ戦争から予想される、西洋(欧米)の敗北という書籍の流れを踏襲し、今後の世界の見通しが書かれている。
興味深いのは日本の出版社から刊行されているので、論点が「日本はどうするのか?(どうなるのか?)」が描かれている点。
当然ながら朝日新聞が刊行しているので左派的な見方が多く、当然ながらアメリカファーストなトランプが大統領の非難は多い。
もちろん共助という考え自体は悪いとは思わない。
経済的合理性、効率が進展し、自由主義が蔓延している現代社会では、格差が開き、断絶が起きていると感じることが多い。
こういった権力の集中や民族の分断が加速している世界で、どのような切り口があり、そういった対応が求められるかが語られている気がする。
しかしながら、先の選挙にしてもそうだが、世界の潮流に影響され日本でも右的な思想がぶり返してきていると感じる。
これは代表的な左派の衰退と腐敗も原因としてあるように思えるが、世界で助け合うことが理想であっても、毎日もやしばかり食べている家庭が、よその家庭に焼肉をごちそうするということはなかなかできないなぁとも感じる。
また左派的な考えも多様化してきていて、派閥内でも分断が起きているような気もする。
興味深かったのはオードリー氏の「プルラリティー」という考え方
デジタル技術を用いて新たな合意形成の仕組みを作るという流れには希望を感じる。
アンコモン・グラウンド(まれな一致点)を見つけることが、今後の世界には必要なのかと思う。 -
Posted by ブクログ
エマニュエル・トッドとオードリー・タンまでの章はメッセージが明確で面白い。
それ以降については、とにかく自分の発言に責任を持ちたくないのか、どっちつかずなよく見る中庸な意見しかなく、つまらない(そういうのは社説や記事で読んでるからわざわざ本で読む必要がないと思っている)。
勿論、学者やインテリの態度としてそんな簡単にスタンスを踏めないのはわかるし、
この世の全てのことはグレーなわけでそんな簡単に白黒つけられないのも重々承知だが、
周知の事実として、グレーなことしかないこの世の中を語る時に「この問題は、(この世の常ですが、)グレーなのです!!」と言われてもねぇ…と思ってしまう(笑)
そんなこと一定の教育を受けた者なら誰でも言えることなわけで、そんな中身のない当然のことをシンポジウムに登壇して言う必要あるのかな?
という訳でトッドとタン以外の後半の章に関しては、大学院生レベルの中身のない、悪い意味で批判のしようがない論の羅列だった。
シンポジウムに登壇するなら、批判を恐れずにスタンスを踏んでほしい…
その覚悟がないなら辞退してほしい。意味がない
というわけで後半は紙面の無駄。
トッドとタンの章は読む価値あり(そこだけなら★5つ)。
オードリータンの本、『プルラリティ』も買ったから読んでみる。 -
Posted by ブクログ
エマニュエル・トッドさんが来日された契機に、インタビュー、対談を行われた記録と、最新の著書などからの著者の思想についてまとめられています。戦争状態に近づいているかとみられている世の中についてのトッドさんの意見。人類学者としての視点。それを紹介される日本側からみた現在の世界について知ることができます。西洋といった見方では知ることができなく、地域としてのその家族構成とその類似点から導きだされる現状把握と未来の姿に、今までとは違った視点から世界を見ることの利点と必要性を感じさせられます。その視点からみた日本の現状と危険について知ることから、進むべき道と、進んではいけない道について考えることができます。
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Posted by ブクログ
『西洋の敗北』を読み終えました。長かった…そして本当に難しかった…。ページによっては、見開き1つ読むのに5〜10分かかることもあって、読み終えた時には「やっと…!」という気持ちが正直なところです。自分の知識では追いつかない部分も多く、理解できたのは全体の3分の1くらいかもしれません。
それでも、読み進める中で「世界の見え方が少し変わる」瞬間が何度かありました。特に印象に残ったのは、欧米が迷走している間にロシアが着々と準備を進めていたという指摘。2022年の侵攻直後、SWIFTから締め出されたニュースを見て「すぐ終わるのでは」と思っていた当時の自分を思い出しました。でも本書では、2014年のクリミア以降、ロシアはいつSWIFTが使えなくなってもいいように備えていたと書かれていて、なるほど…と驚かされました。
さらに、「アメリカが中東で迷走している間にロシアが復活した」「ウクライナでの目的が達成されれば、アメリカにとって最大の懸案である独ロの和解が起きてしまう」という指摘も強烈で、読みながら何度も立ち止まる場面がありました。
もちろん、一人の学者の見方として距離を置きつつ読んだのですが、“西洋はすでに負けている”というタイトルの重さがじわじわ効いてきます。理解が追いつかない部分も多かったけれど、今の世界をどう捉えるか考えるきっかけには十分な一冊でした。