【感想・ネタバレ】グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命のレビュー

あらすじ

「グローバリズムへの懐疑」「テロの恐怖の前に世界は」「Gゼロ時代で不安定化する世界はどうなる」「トランプ旋風にみる反知性主義の潮流にどう抗するか」「日本はどうあるべきか」──当代一の知識人が混迷の世界を読み解く。

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Posted by ブクログ

今や世界レベルで飛ぶ鳥を落とす、そんな人気者の御方です。
昨年末のNHKBSの単独特集はスゴかったですよね。
時宜にかなっていたいうかそのものズバリという感じで。

トッドと聞くとわたし達の世代的には
某番組のトッド=ギネスを思い出してしまうんですが
まったく無関係です。
わたし達にとっては、アムロはあれで、カミーユはアレなんですよ。
カミーユには個人的に思い入れがありまつ。同い年でしたからね。
キレてバルカンは撃ちませんが、ブチ切れてバリカンを使った事はあります。

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2018年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

グローバル化が進む中BrexitをやTrumpなどのナショナリズムの風潮の強まりに悲しむと同時に学ばなければならないと思い購入。就活がやっと終わったので読破。自分が後で見直せる様にいくつか気になった点をピックアップして書きます。

【中東地域・ISIS】
・現在ISISが台頭している理由
近代化におけるプロセスとして暴力的行為、過激派の台頭は付き物。特に中東地域は個人の自由度が低い事もあり民主化への推移における弊害は大きい。

・近代化の定義
識字率向上(特に女性) → 出生率低下
これによって女性に対しても平等に教育の機会を設けられる事で民主主義の肝となる参政権獲得に繋がる。

・現在先進国と対立している理由
文明的な違いではなく近代化移行前の時間軸のズレ。宗教的な対立に思われがちだが同じ事がアフリカにも起こると著者は予測。

【アメリカ】
・個人主義的思考の欠陥
アングロサクソン的個人主義思考は平等の思考には繋がらない。彼等が平等だと感じていたのは黒人を周縁として追いやり、白人の中での平等を作り出しから。
黒人奴隷解放から始まり2009年には黒人初オバマ大統領が出てきた事から彼等の平等は不安定になった。

・経済破綻とトランプ出現
人種差別について言及するトランプだがそこはネックではない。真のネックは自由貿易、TPPなどによる経済破綻だ。(リーマンショックが原因と勘違いされがちだが)
個人的には人種差別は彼が大統領になる為のマーケティングに過ぎないのかと思った。無駄にそういうセンシティブな話題に言及する事でアメリカ国内に及ぼす影響を考えてほしいものだ、、

・軍事志向的政策
アメリカ経済が弱くなってきた事からアメリカはイラク戦争などから分かる様に軍事力で存在感を出す他なくなった。侵攻国の規模が彼等の国力を図る指標になるという言葉は印象的だった。


【ヨーロッパ】
・ヨーロッパ内での差
同じ言語を話さず、その上で違う文化を持つ為欧州という言葉がイデオロギーとなってしまった。内部では嫌い合うような現状もありEU解体の流れに向かうと予言。
また、ドイツにはヨーロッパを牽引する力や資質はない。

・2005年までにユーロはなくなるという予言
→Brexit, Frexit未遂などから近しい傾向は伺える。

【日本】
・核武装の是非
アメリカと中国が北朝鮮への影響力を持つ中、日本は唯一の被爆国という立ち位置から武力を持っていない。
トッドによると日本も核武装する事で均衡を保つべきとか。

・アメリカとの関係
アメリカとの同盟関係はアジアにも味方がいない日本の視点から見ると一国依存となってしまっている為、"選択肢"としての同盟関係とは言えない。

【国際社会の方向性】
・欧州、米国、極東で経済圏を形成。国家単位でなくこの地域単位で保護主義的政策を取るべき。
→日中韓はその様な経済連携を探る機関を設立すべし。

・民主主義
国を牽引するエリート層が自国の中間層にも目を向け、グローバリゼーションという幻想から一度離れる事で節度ある民主主義が実現可能。これは世界に目を向ける事を止めるのではなく、各国々のエリート層がもっと自国に目を向けるべきなのだとという意味で解釈した。

【各国の文明について】
・"グローバリゼーション"という夢
結論から言うと文明が一つにまとまるということは家族的視点からも経済的視点からも不可能との事。思想としては魅力的と言及するも、極限まで近づいていく事はあるが一つになる事はないと断言。


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本の内容に関係なく個人的な意見を。
やはり政治的な要因や経済的要因も大きいがこの本は人類学者の視点から書かれていることもあり、文化の差等の描写に非常に惹かれた。

個人主義的で自由度が高いアングロサクソン文化。
その中でもイギリス人になる事を周縁部分に位置する移民にも社会的に強いる為テロが多発するイギリス。フランス人として平等に扱う事で政治的革命に対して寛容なフランス。

上下関係を重んじ、集団主義の日本ドイツなど文化によって政治に影響を及ぼすことは間違いないのだなあと改めて実感した。

個人的には身を置くには個人主義的文化の方が好きなので日本との違いを学問的な観点から再確認できて良かったと思う。自分は将来海外移住も考えているので参考にしたいと思った。

彼の著書の一つである経済幻想において各国の自由度について詳しくランキング付けしているとの事なのでそちらにも目を通そうと思う。

また、各国の周縁部分の人々には共通点があるという彼の言葉はかなりしっくりきた。東北を訪れた際に会った夫婦からトッドはフランスの地方の老夫婦を思い出したとか。寧ろ各国の文化を反映しているのはエリート層という言葉も頷ける点はあった。

各国で"成功"を掴むには勿論現地の風習に従う必要があり、それは都市や高等教育以上を経験した層に反映されやすいというのは覚えておこうと思った。


2017/6/19

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2017年06月22日

Posted by ブクログ

いま世界は動いているんだなぁ〜ということをつくづく思った。人口統計学や人類学の知見によってソ連の崩壊やアメリカの没落を予言して来たトッドさんが、本書の中で今は日々起こる世界の変化に集中するだけで大変だと語られていた。
感想書こうと内容を思い出そうとしたがかなわず…もう一回読んでみなくてはという間抜けな感想しかかけない。ぐぬぬ…でもお薦め♪読みやすい!

Mahalo

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2017年02月11日

Posted by ブクログ

『つまり、フランスの指導層は、ユーロを壊すくらいならフランス社会の一部を壊したほうがましだと考えたのです』―『日本の読者へ』

冬の朝、寒い駅のホームで電車を待っている時、背中に当たる陽を感じて温もりを思う。地平線から登ったばかりの弱々しい太陽でもこれだけの力があるのだなと感心すると同時に、何か知恵の在り処の本質のようなものに触れたような気にもなる。太陽の運行、雲の動き、未来を予測すること。それは、予測できぬ人々から見れば神の如き力にも見える。神は天変地異を司るが、その振る舞いは気まぐれにも見える。その気まぐれさのパターンを理解する力を持つことは人々を従わせる力となることは容易に想像出来る。それは何も未開の人々の間で起こることを描写して言っているのではない。現代でも日々起こっていることも含めてそう思うのだ。例えば、朝の天気予報で今日は雨が振りそうだとお告げがあれば多くの人は傘を持って出掛けるだろう。その背後にどのようなデータがあり、その時系列的変化から未来が予想されていたかを理解できなくても、シャーマンの言葉対するようにその予測する力について人々は盲信的だ。

知識として理解していることとが、ただ単にAであればBであるというような暗記式の論理であるなら、それは知恵とは呼ばれまい。繰り返される出来事の共通項を探り当て、いま起きている事象の帰結を予想する。その時々の権力者の意向や世の中の空気といった文脈に囚われることなく予測をする。それを知恵と呼ぶのだと思う。

エマニュエル・トッドはその意味において真の知恵者だと思う。彼が参照するものはデータであり手垢の付いた誰かの意見ではない。日々業界で起こっていることを伝える夥しいニュースや評論を読んでいると、そのほとんどが噂話のような一過性の真実に過ぎないことを思い知らされるが、データに基づいて先を見通す言説に触れることは稀だ。しかしデータという奴は実は扱い辛い。誤差もあるし複数の要素が畳み込まれていることも普通だ。そこから何が一番変化を司るものなのかを見極め、見えない将来を可視化する。それを面白がれる人でありたいと思いつつ、現代の混沌とした様相にお手上げな気分になることも事実。トッドの切り口の鋭利なことと、時間を経ても錆びつかない確かな刃の行方に、只々感心する他ない。

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2017年02月18日

Posted by ブクログ

グローバリズム以後
アメリカ帝国の失墜と日本の運命
著:エマニュエル・トッド
朝日新書 589

1998年から2016年の間に進行したグロバリゼーションの分析と評価が本書の目的である

グロバリゼーションを主導したのは、アメリカ帝国である
EU欧州の主導権を握っているのは、ドイツである
しかしながら、欧州は建設から解体へと移行していく
日本はかつてないほどに経済的、軍事的安全にかかわる構造的な問題の解決を迫られている

■夢の終わり

アメリカの白人層の45から54歳までの死亡率が1999年から上昇している
1世代35年は国民国家衰退の時代であった。国家の弱体化の時代、国家の破壊の時代でした。
帝国主義に苦しんでいるのは、まず自国民であった。ソ連であれば、ロシア人、アメリカでは、米国人そのものがその帝国支配に苦しめられてきた。

英国のEU離脱(Brexit)の原因はあまりにたくさんの移民を受け入れることの拒否反応である

平等の幻想。
英国社会には平等はない、なぜなら、階級の違いがある
米国には平等の伝統があるが、それは白人同士の平等で、民主主義である。ただし、黒人を含めてではない。つまり黒人の解放とはかなり幻想だということです

英国では、離脱に投票したのは、ふつうの人でした。エリートは驚愕し慄然していたのです

自由・平等を手に入れるためには、大きな犠牲を払ってきた。
英国1640年清教徒革命、1688年名誉革命、2つの革命を通じて、選挙をともなう君主制を手に入れた。それから産業革命が起き、米国の独立宣言があった。
フランスの人権宣言はそのあとに続きます。フランス革命はいわば最初の反応でした。

エリートの反逆:かつて、エリートとは共同体の公益を担うのが役目であった。教育レベルは高く、外国語で意思疎通もできる。でもそれは、目くらましであった。
欧州連合はエリートが構築したけれど、共同体の構築ということでは失敗している

重要なのは、まず起きていることを見ることです。
欧州の現実は、ドイツ経済が支配力をもつようになり、欧州東部をその中に組織していったことにあります。
しかし、ドイツは、欧州を管理できない。あまりに自己中心的であるが故に、ドイツは帝国の建設には才能がない

現在の巨大国家、世界帝国とは米国、ロシア、中国である

民主主義の危機:民主主義とは、まず普遍的な識字運動であり、だれもが読み書きができるようになるということです。でも、今は、高等教育を受けた人でも、多くの人が、グローバル化の影響に苦しんでいます。
伝統的なモデルで考えると、発展というのは、複雑だった家族構成がシンプルになり、個人というのが登場する。そして、家族構成がもっと個人中心となりもっと自由になり、もっと進歩することになることだ。

■暴力・分断・ニヒリズム

近代への移行が生じる期間は劇的である。
欧州の場合、フランスでは数十年の間、革命と戦争が続きました。
ドイツでも、宗教革命やナチズムがありました
ロシアでは、共産主義革命がありました。

歴史家として、長期間について語るなら、残酷な結果を生みだすもので、そのモデルは、過去から変わっていません。だから、イスラム世界では、今とても厳しい状況にあります。
中東では、国家を組織する能力を備えているように見える国が2つあります。トルコとイランです。
サウジが崩壊の危機にあるのであれば、イランを必要で安定的なパートナーとして見直すべきです。
イスラム世界の戦いは、シーアトスンニの戦いではなく、世代交代が起きていることによる脱イスラムの模索をしている中での対立がおきているためです。

ニヒリズムとは、あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意志を示します。

危機は、そこら中にあり、しかも、国ごとにそれぞれ違った形をとっています。
経済は手段の合理化をもたらしますが、目的の合理化ではない。経済は何が良い生き方であるかを定義してはくれません。これが限界です。

危機の4つの要素 ①共同体的な展望の欠如、②高齢化、③教育革命、④女性の地位の向上 です。

日本の本当の問

東日本大震災で目にしたものは、共同体、会社などの水平連携関係が、事態に対応ができなくなった政治制度に代わって、地域の再建を支えていた姿でした。

文明の衝突には2つの危機があります。
1つは、米欧、日韓などの発展の先頭を行く、国々の危機です。消費社会は停滞して、若者にそのしわ寄せが及んでいます。人口減少が進展し、不確実不透明になっています。
もう1つは、移行期にある途上国のものです。制度変更に伴う混乱、暴力、自由競争の導入は生活水準を押し下げています。
この2つの世界をグロバリゼーションが橋渡しをしていることで、両者を人は行き来するようになりました。これが文明の衝突です。

日本は安全保障的に西側である続ける必要はあるが、こと中東対応では最低限の連帯を口にしておけばよいと説いています。

アメリカ帝国の衰退は予想より早いスピードで進行している。まるでローマ帝国の末期に非常ににた状況である。
グローバル化でアメリカ型世界に収斂していくという予想は外れ、国家の復活、再浮上。米国、ロシア、ドイツ、中国、かつての大国が再び台頭してきている

民主主義の特徴は識字率の向上である。それとともに、出生率が低下し、女性の識字率が上がってくると、政治システムは民主主義に移行しようと、伝統的システムと決別するための政治的危機を体験する

目次
日本の読者へ
1 夢の時代の終わり(2016年8月30日)
2 暴力・分断・ニヒリズム(2016年1月27日)
3 グローバル化と民主主義の危機
4 アメリカ「金融帝国」の終焉
5 終わらない「対テロ」戦争
おわりに 大野博人
初出一覧

ISBN:9784022736895
出版社:朝日新聞出版
判型:新書
ページ数:200ページ
定価:720円(本体)
発売日:2016年10月30日第1刷
発売日:2016年12月20日第5刷

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2024年01月11日

Posted by ブクログ

本書は朝日新聞記者によるエマニュエル・トッド氏へのインタビュー集(1998年~2016年)とういことで、それぞれのインタビュー記事自体は短く読みやすいと感じました(※日本語が読みやすく大変良かった。以前別の出版社から出たトッド氏の本を読んで翻訳のひどさにストレスが溜まったのとは好対照でした)。冒頭の「日本の読者へ」で書いてあるように、トッド氏はグローバル自由主義礼賛の時代が今年終わったと述べています。米国の大統領選挙でトランプが勝利した後に本書を読んだ身からすると、この主張はかなり説得力を持つなあという印象を本書の冒頭から持ちました。

本書はインタビュー記事と言うことで基本的に読みやすいのですが、トッド氏の主要な研究成果の知識を持っていないとなかなか意味が分かりづらい記述もあります。具体的にいえば、トッド氏は本書内でも各国の家族構造について折に触れて述べていますが、多様な家族構造(兄弟関係、親子関係、婚姻制度)と浸透する政治思想の関係という彼の研究成果については、他の著書(例:「世界の多様性」ただしこの本は大著なので読むのは大変ですが)、もしくはWebで多少勉強した上で本書を読むと理解がかなり深まると思います。

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2023年04月27日

Posted by ブクログ

日本人にはない視点で世界情勢を分析するトッド氏。漂流する超大国アメリカとアメリカが唯一の同盟国である日本。中国やロシアとの関係も含め、舵取りが難しい。

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2018年10月27日

Posted by ブクログ

ロシアは日本には大事だと思う。中国とはもっとうまくやれそうな気はするが。それにしても、フランスで起こっていることと日本で今起きていることのなんと似ていることか。スケープゴートがイスラムか、中韓なのかの違いだけで。

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2017年11月18日

Posted by ブクログ

フランスの学者 エマニュエル・トッド氏のインタビューをまとめた本。
ちょっと違う独特な世界観が新鮮。


以下、読書メモ:
夢の時代の終わり
米国 エリートへの反乱 最低限の安全を脅かさることへの抵抗
EUは崩壊へ 移民への対応
世界は接近するが一致はしない

暴力・分断・ニヒリズム
ニヒリズムとは、あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意思を指す。
先進国の考察
信仰システムの崩壊=共同体的な展望の欠如
高齢化
女性の地位の向上=教育革命
不平等を受け入れる日本
指導層はテロを利用している

グローバル化と民主主義の危機
国家の再浮上 多数を占める中高年が若者にかかわる政策を多数決で決めてしまうのは民主主義にかなっているのか
ユーロは悲しみの製造機になっている。なくなったほうがいい。
民主主義の機能不全
自由貿易は新興国(中国)の景気を刺激するだけ
ハイパー個人主義

アメリカ「金融帝国」の終焉
サミュエルハンチントンの文明の衝突は国際社会の対立はイスラム教文明とキリスト教文明の境界で激化すると。それに対してトッドはイスラム文明の近代化が遅れてきた過渡期の問題にすぎないと説く。
近代化=教育レベルの向上=識字率の向上=本を読むことにより精神の構造を変える
欧州、北米、極東に保護主義圏を。それぞれで内需拡大し、地域経済を立て直し、各極を基礎に置いたグローバル化を構築すべき。
日本が核武装することで核兵器の偏在をなくし安定する。

終わらない「対テロ」戦争
米国が世界秩序混乱の原因 劇場型ミクロ軍事主義
日本は米国以外の同盟国を持つべき。
イラク危機は米国と欧州の対立、フセイン大統領は脇役。

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2017年09月05日

Posted by ブクログ

ちょうど、平行して読み漁っている水野和夫氏の著書とも通じる部分がある。(当然、異なる部分もあるが)
その中で、やはりエマニュエル・トッド氏の主張を特徴付け、説得力を持たせるのは、氏のバックグラウンドである、文化人類学や人口学の観点からの指摘であろう。
出生率の低下を根拠にイランが近代化の過程であると指摘し、家族制度を根拠に日本やドイツには不平等を受け入れる社会的背景という。さらには、民主主義の発展に不可欠な、国民の識字率や高等教育の発展などがさらに進むと、教育格差として不平等の定着につながるとの指摘も、改めて慧眼であると感じた。

そして、リーマンショックなどの金融危機以降、世界がグローバル化の問題に直面するなか、改めて国家の役割が注目されていることは、水野氏、トッド氏の指摘の通りであり、採るべき政策は自由貿易信奉による格差の拡大を是正することであることも両者の一致する見解である。

しかしながら、現実の政府はP189でトッド氏が2001年に指摘した通り、「むしろ、秩序を維持するために治安への懸念を人々に感じさせ、軍備などの支出を増やす。」、そういう国家である。
北朝鮮問題に絡み、米中に挟まれたいまの日本が、安全保障が極めて重要であることは疑いの余地がない。しかし、低成長時代への突入、資本主義の終わりという経済、そして社会体制の大きな転換点を迎えていることも確かである。
政府が国民の目を外に向けることで根本的な問題を先送りにしないよう、注視していく必要がある。

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2017年08月13日

Posted by ブクログ

先進国、つまりヨーロッパ(特に英、独、仏)とアメリカ、日本の行き詰った現状についての解説本。
著者はフランス人なのですが、長期的な歴史の視野に立って現代を観察してるんですね。
アメリカ人やイギリス人(独立志向が強く、かつ差別に寛容、よって「自分さえよければ良い」思考に陥ってる)社会とほかの国との比較が語られて、とっても興味深かったです。
国際的視野ってのは、実は単にアメリカ的視野になりがちですが、実は全然違うんですよね。
たまにヨーロッパ人の視野で話を聞くと全然違って面白いです。

ただ残念だったのは、朝日新聞に掲載されたインタビューをもとにしている割には、文章がわかりずらい。
翻訳が今一つ・・・何を言わんとしてるんだろう?と何度も何度も一文を読み返す、ということをやりました。
内容がちょっと硬くて難しめなので、なおさらでした。
2016/11/18 09:52

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2017年08月02日

Posted by ブクログ

アフガニスタン、パキスタン、サウジアラビアは中世のまま。近代化のバックラッシュとしての過激派。
フランス革命、ナチス、大日本帝国などの狂気も同じ、前近代への揺り戻しの一つと。

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2017年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新書では氏の考えが充分に伝わらないと思いました。気になった部分を列記しておきます。「グローバル化が進んだ今の時代に権力を握っているのは、実際のところ政治家たちではなくて、自由貿易という経済思想なのです。」「現在の貿易を概観すると、確かにグローバル化によって世界的に流通するものもあるが、大部分は欧州内、北米内といった地域単位、大陸単位で行われている。これに基づいて、世界を欧州、北米、極東に分けるべきだ。それぞれで内需を拡大し、地域経済を立て直し、各極を基礎に置いたグローバル化を構築すべきだ。」

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2016年12月11日

Posted by ブクログ

EUは思っているより早く解体するのかも、、、
ユーロ制度も失敗に終わりそうで、、、日本もアジアも冷静にこのことから色々学ばなければならないと思います。

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2016年12月06日

Posted by ブクログ

エマニュエルと聞いて、映画を思い出すのは、我々の年代以上でしょう、、、さておき。

以前から気になっていた、エマニュエル・トッドの著書でも、簡単そうな部類で、新しいものを読んでみた。

もう残すところ1ヶ月を切った2016年も、世界は波瀾万丈であった。イギリスのブレグジットEUからの脱退の国民投票の決定、アメリカの次期大統領にドナルド・トランプの決定。

いずれも世界に大きな波紋を投げかけた。

日本に住み、一般的な情報を入手しているだけだと、えっ、何故?となるだろうが、もしかしたら、それらは予見されていたことかもしれない。

それは、エコノミストが出版する「2050年の世界」を読んでから益々そう思うようになった。そんな中、経済学の視点では無く、社会学の視点から世界を捉え、鋭い分析をしているエマニュエル・ドットの著作は面白そうだと以前から気になっていた。

しかし、中々たどり着けずにいたが、ついに1冊読むことが出来た。

結論を書くと、読むだけの価値はあった。

特に、最初の方に新しい情報が入っており、後ろに行くに従って、過去の取材記事となっていく。最初の数十ページでもこの価格を払う価値が十分にある書籍である。

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2016年12月04日

Posted by ブクログ

『帝国以後』『デモクラシー以後』に続くタイトルかと思い即買いしたら、単なるトッドのインタビュー記事の寄せ集めでガクンと来た。相変わらずトッド節が続いていて、特に前半は新しいインタビュー記事だったので面白かったが、暗黙の前提としてトッドの理論を理解していないと内容を理解できないという点と、質問のクオリティがイマイチという点で、トッド自身のこれまでの著書と比べると見劣りしてしまうのは免れられない。自分はトッドの理論はちょっとだけ知っていたのでかろうじて読めた、という感じだった。
出版元である朝日新聞出版には、もうちょっとインタビュー記事を集めたものであるということを強調して欲しかったのと(著者がエマニュエル・トッドと書いてあること自体に悪意を感じた)、イデオロギー丸出しの感じは逆に説得力を欠くものとなるので止めたほうが良いのではと思った。

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2016年10月15日

Posted by ブクログ

日本に移民として入ってくる多くの人は若い世代。
そして移民による問題解決を求められるのも将来世代。在日韓国人、朝鮮人問題を見れば明らかです。
それにもかかわらず、移民であることも認めず、十分な説明もせず、なし崩し的に移民政策が進められ、気づけば世界有数の移民受け入れ国になってしまっている。

国民のための政治は執り行われず、国民の安全を守ることすら覚束なくなっている。そんな現実を突きつけられ反対の声を上げる国民を差別主義だとレッテル貼りする。

いわゆる国の借金問題を将来へのつけだと言うのなら、野放図な移民受け入れこそ将来へのつけ回しだ。

そんな思いを代弁してくれているかのような気持ちになりました。

書籍としては数年にわたるインタビューをまとめたものであることや、発刊から10年近く経った今読んだということもあり、特に後半に釈然としない箇所が何箇所かあった。(米国は貿易赤字のため戦争できる状態ではないとか、日本は中国を含む経済圏をつくり内需を拡大するべきとか)

あとがきにも書かれている通り、世界全体の動きを考えるきっかけとして読むのであればおすすめできるけれど、世界の動きを学びとるために読むのはやめた方がいいと思う。
あまり著者の良さを引き出せていないように感じた。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

読むに値するか、どうか悩ましい。
インタビューだから仕方ないが、確かな骨子がある訳ではない。
教育水準の向上、近代化、出生率、etc。
ただ、社会事象に対して、感情的になっているのは、日本やアメリカだけではないらしい。
フランスも、そうである。
それは、教育水準の向上や中間層の没落、知的エリートへの反発が関係しているらしい。
反グローバリズム、反ユーロらしいが、その根拠とするものは、あまり語られていない。
ただ、読む人によっては、価値観の転倒を起こすかもしれない。

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2019年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者の主な主張は以下の通り。
・今後30年間の地球を予測する際には、中東などの途上国の問題に集中してはならない。先進国にこそ本物の危機が存在する。
・先進国が直面している危機として共通する要素は、信仰システムの崩壊(集団が共有する展望の欠落、経済は何が良い生き方なのかを定義しないため限界がある)、歴史上存在しなかった高齢化、教育革命(高等教育を受けた人の割合増加、自由競争が生活水準を押し下げ、文化的に不平等な世界に)、女性の地位向上(女性が男性よりも高い教育を受ける社会)であり、途上国で起きていることは(かつての先進国でも経験された)移行期に伴う混乱。発展段階が違う社会が共存している。
・移民問題に代表されるように、(適応限界を超えた)急激なグローバル化に対する揺り戻しが起きているのではないか。自己偏愛的な社会になりつつある。

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2018年07月01日

Posted by ブクログ

インタビュー集なのでサクサクと読めました。
内容はトッド節が全開ではないものの、人口学などの自身の専門分野に裏打ちされた発言が、断定する形で連続して攻めてくる感じで、薄くて1〜2時間もあれば読めてしまう薄さながら、なかなか読み応えはありました。

印象に残ったのは2点、イランを中心とした中東の問題について、信仰の消滅という切り口がよかったのと、我々は「信仰の最後のもの」として「利益率でものを考える世界にいる」こと。
色々勉強になりました。

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2018年02月05日

Posted by ブクログ

欧州の共同体としての信仰は、キリスト教という普遍性の高い宗教の登場とともに始まり、それが政治思想に変化し、民主主義を可能にし、政党を作り上げる力になっていった。

家族構造の進化の観点からは、明治の頃の日本は、中国の紀元前500年くらいの段階にあった。第二次大戦で日独は世界の長男になろうとして失敗し、戦後の日本はアメリカの弟で満足している。他国と同列の兄弟になることにおびえがある。

民主主義とは、普遍的な識字運動であり、高等教育を受けるのはごく少数だった。第二次大戦後、高等教育を受ける人が急速に増え、高等教育を受けていない人たちとのつながりなしに存在するようになり、民主主義の破壊要因となっている。

現在は、共同体的な信仰の喪失、高齢化、社会を分断する教育レベルの向上、女性の地位の向上が合わせられた革命的な時代にある。

ドイツは規律に厳しい、まじめなモデルとされてきたが、メルケル首相がシリアやイラク、アフガニスタンの移民を大量に受け入れようと呼びかけた時から、ドイツは混乱をもたらす国になった。移民をめぐる危機は、欧州解体の最終局面をもたらしつつある。

フランス革命やロシア革命などの近代化に伴う危機の時代には、信仰の危機や大量殺戮とともに出生率の低下がみられた。人々は新しい時代に備え、子どもをつくることを控えるようになる。現在のイスラム諸国では、出生率が急速に下がっている。出生率が下がっていないのは、サウジアラビア、パキスタン、アフガニスタンの3か国。

日本がアジアの兄になろうとして失敗し、アメリカの弟の地位に収まっているという表現は、絶妙な解釈だと思った。直系家族の伝統がある日本人は、上下関係を維持することに安心感を持ち、対等な関係を築くことが得意ではないのだ。そのメンタリティは、体罰やパワハラ、情報非公開といった権威主義的行動や、サービス残業や画一的教育といった服従的、依存的態度に表れているのではないだろうか。

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2018年10月31日

Posted by ブクログ

何この行間だらけの新書?なめてんのか朝日!!1時間で読める!!あ、でもこの著者の本にしては分かりやすい!!さすが新聞記者!!
「韓国は子供を産むことを忘れてしまった」「それでもフランスは異教徒どうしの結婚率が高い」等々、随所に見られる人口学者ならではの観点が面白い。核抑止力を肯定的に言及する著者に朝日記者は「頭の体操と思って読んでほしい」と一歩引いて読者に投げ掛ける。

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2017年04月26日

Posted by ブクログ

グローバリズム以後

・アメリカが帝国となって以降、30年がたち、1世代変わった。帝国というものは、帝国の中枢こそは良いが、帝国の中にいながら辺境にいる人間にとっては良いことはないため、辺境の人々が帝国をやめようというエネルギーを発し始めた。アングロサクソンは根本的に不平等なシステムをとりやすいが、アメリカが自由平等の国としていることが出来たのは、内部に黒人差別をすることで辺境を確保し、不平等を発散していたからである。しかし、黒人解放以後、平等化が進み、白人も辺境に追いやられることで考え方が変化し、国民国家に向けて進み始めた。
・欧州は分断に向かっている。それは、一致させるべき明確なビジョンの欠落に起因する。国民国家の単なる集合体となったヨーロッパは失墜していく。
・家族構造のシステムとは、本来分散化するものである。世界はホモサピエンス以来分岐化を進み続ける。
・ISISは国家ではなく、ニヒリズムの集合体であり、国家とは逆行する流れをくむもの
・人類学的革命、人類の転換期がいま。その兆候は、①共同体的信仰の欠如②高齢化③社会を分断するほどの教育レベルの向上④女性の地位の向上。
・日本は元来長子と末っ子の序列を設けるなど、家族制度としては階層的なものは存在する。今の日本の不平等化、学歴による階層化、移民が受けるような非正規雇用の苦難を低学歴層に押し付けて、母国のない移民という最悪の状況を生み出している。しかし、それは許容されているという点で、横のつながりよりも階層化の引力の強さを目の当たりにしている。

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2016年11月25日

Posted by ブクログ

米国でトランプが登場したり、英国がEUから離脱をするなどグローバリズムが崩壊に向かうとして、今後の世界を人類学の観点から予見する。
1998年~2016年のインタビューを取りまとめた本なので、まとまりに欠けるきらいがありますが、不平等を容認してきたアングロサクソンもこれ以上容認できなくなっている中間層の崩壊。アングロサクソンは、子供が大きくなると直ぐ独立させるので文化が世代を超えて伝承しない。識字率が上がって出生率が下がるのは近代化危機の兆候など、興味深い考察が満載です。
また、日本には移民はほとんどいないが派遣労働者が同じような扱いを受けているとあるのが印象的でした。

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2016年10月30日

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